『An unexpected excuse』

   〜高町義姉妹編〜




ご都合主義満載です

 

 

(さて、どうしたものかな・・・)

 

実は恭也にはすでに恋人として付き合っている女性が存在する

秘密にしているわけでもないので、話す事自体には抵抗はない

しかし、その事は家族にすらも告げていないのである

家族を第一に考えている恭也だからこそ、この場で話す事に抵抗がある

 

(だが、教えないと諦めそうにないな・・・)

 

周囲の気配を察した恭也は諦めつつも口を開く

 

「一応好きな人・・・というか、俺の全てを賭けてでも護りたい女性はいる

 それを恋人と言うのなら、そう取って貰っても構わない

 だから、これで納得をしてはくれないか?」

 

「「「「「えっ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」

 

当然周囲はさらに追求しようとするが、それを見越していたのか

恭也は質問をさえぎる形で話し出す─FCの方を見ながら

 

「申し訳ないがこれが最大限の譲歩なんだ

 この事は家族にも言っていないし、 それが誰かを家族より先に教える気もない

 だから『恋人がいる』と言うことだけで納得してくれないか?」

 

恭也が困ったように言うと、FCは「そう言う事ならば」と納得してその場から立ち去った

そして、何かを聞きたそうにしている「家族」に対して釘を差すように告げる

 

「家族がそろっていないから今ここで言う気はない

 それにそろそろ戻らないと授業に間に合わなくなるぞ」

 

と言いながら恭也立ち去っていったので渋々ながらその場は解散となった

 

 

 

放課後恭也は忍、那美、フィリスと共に翠屋に向かっていた

忍が恭也を教室から強引に引っ張り、校門で那美が、商店街でフィリスと会った時に

翠屋に向かうというので、一緒に行くことになったのである

ちなみに美由希は古書を得る為に蔵書整理に精を出していた

 

「いらっしゃいませ・・・と恭也かい、久しぶりだね」

 

恭也を出迎えたのは翠屋の制服に身を包んだ美沙斗だった

 

「こんにちは〜、美沙斗さん」

「こんにちは〜」

「美沙斗さん、こんにちは」

「お久しぶりです、美沙斗さん

 それで、どうしてここで働いているのですか?」

「昼過ぎくらいに海鳴に戻ってきてね

 それで家に行っても誰もいないだろうからこっちに来たんだ

 そうしたらフィアッセが買い出しにいくから、と言う事で急遽借り出されてしまってね」

「そう言う事でしたら代わりましょうか?」 

「心配はいらないよ、そろそろ戻ってくるはずだしね」

「分かりました。それと、今回の休暇はどのくらいですか?」

「2週間といったところだね

 だからまたしばらく厄介になるよ」

「気にしないで下さいよ、美沙斗さん

 美沙斗さんも家族の一員なんですから」

「そう言って貰えると助かるよ」

 

と言い合いながら恭也と美沙斗笑みを交わす

その光景に店内にいる全員が見惚れていた

 

 

 

「だけど美沙斗さんも、よく笑うようになったわよね〜」

「そうですよね〜、最初の頃からは想像できないですよ」

「フィアッセもかなり喜んでいたしね」

 

シュークリームを口にしながら先程の美沙斗に関して述べる

 

(美沙斗さんも帰ってきた事だし、今夜にでも伝えるか)

 

そうと決まれば・・・

 

「そう言えば、忍に那美さん、フィリス先生は今晩空いています?

 よかったら家でたべていきませんか?」

 

その瞬間3人は驚いたように恭也見つめる

 

(どうしたんだ・・・一体?)

 

「珍しいね、恭也からそう言う事を言い出すなんて」

「そうですよね、私もビックリしてしまいました」

「恭也くん、何かあるんですか?」

 

「ええ、昼間の件でちょっと・・・」

「昼間の件って、恭也くんの恋人が誰か?・・・っていう事でしたか?」

「恭也、いう気になったの?」

「恭也さん、教えてくれるんですか?」

「美沙斗さんが帰ってきたら言うつもりだったので・・・

 どうせ言うのなら一緒に言ったほうがいいと思ったので、それに・・・」

 

と途中で言葉を切り恭也は忍を睨む

 

「・・・恭也・・・その目は何かな〜?」

「(ハァ)こいつが家に盗聴器を仕掛けていないはずがないからな(キッパリ)」

 

顔を引きつらせている忍に嘆息しつつ断言する

当然忍も黙ってはいない─実際仕掛けてはいるが─

 

「恭也それは言いがかりよ、何か証拠でもあるの?」

「ほう、そこまで言うからには仕掛けていないんだろうな

 では今夜辺りにでもなのはに調べてもらうか

 それでもし、万が一にでも見つかったら・・・」

「(ゴクッ)見つかったら・・?」

 

恭也は一呼吸置き、忍は恐る恐る先を促す

そして、恭也は爆弾を投下した

 

「発見された盗聴器1個に付き・・・美由希の料理1品・・・」

「ゴメンナサイ(即答)、私が悪かったわ、だからそれだけは許して〜〜」

 

恭也が言い終わらないうちに忍は罪を認め謝罪した

 

「許して欲しければ仕掛けた盗聴器を今夜にでも全て回収しろ

 ああ、わざと見落としたり新しく仕掛けたりすることがないよう

 なのはを見張りにつけるからな」

「・・・・・・・・・そこまでするならいっその事なのはちゃんにやらせればいいのに」

「ハァ〜・・・そんな危険な事をなのはにさせる訳にはいかないだろう

 感電でもしたらどうするんだ」

「・・・・・・シスコンもここまで来ると、いっそ清々しいわ」

「「あ、あはははは・・・」」

 

なのはを溺愛している恭也にもう諦めたのか、3人は苦笑いを浮かべるしかなかった

 

 

 

「そう言えば師匠、結局師匠の恋人って誰なんですか?」

「それはウチも知りたいです」

 

夕食後に高町家の料理番がそろって口火を開いた

 

「へぇ〜恭也にもそういう人が居たんだ〜

 それは桃子さんも『是非』知りたいわね」

 

(ハァ・・・かーさん・・・絶対楽しんでいるな・・・)

 

「それで、それで、誰なの?」

「かーさん・・・絶対楽しんでいるだろう、

 まあいい、今から言うから

 それで、俺の恋人は・・・」

 

「「「「「「「「恋人は?」」」」」」」」

 

いいながら恭也は移動し桃子と美沙斗の間に座る

 

「かーさんと美沙斗さんだ」

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

 

 

「恭也・・・その冗談は面白くないわよ」

 

沈黙から真っ先に立ち直った忍が冗談だと思い反論する

しかし恭也もその反論は予想していたので、対抗手段を講じる

ちなみに桃子と美沙斗は若干顔を赤らめながら沈黙を保っていた

 

「まぁ、信じられないのも無理はないか

 かと言って納得するまで説明するのも面倒だしな・・・」

 

と言いながらフィリスの方に視線を向け続ける

 

「フィリス先生、読んでもらえませんか?

 それが一番手っ取り早いと思うので」

「えっ、あ、はい、分かりました

 それでは失礼しますね」

 

そう断ってからフィリスは能力の封印を解き、

フィン─昆虫の羽を連想させる透き通った6枚羽─を展開して恭也の心を読む

 

しばらくして─

 

「信じていただけましたか?」

「え、ええ、信じられませんが恭也くんの言ってる事は正しいです・・・」

 

フィリスは呆然としつつも恭也の問いに答えた

フィリスの言葉─嘘を付く意味がない─が徐々に理解する事が出来てきたのか

周囲は一気に騒然とする

 

「恭ちゃん、何でかあさんたちなの?」

「恭也は内縁の妻である忍ちゃんを捨てるのね?」

「まさか恭也と桃子と美沙斗がね〜」

「恭也さんは年上好きだったのですか・・・」

「なぁカメ、これって禁断の恋って奴か?」

「一応どっちとも結婚は出来るからはずやから・・・」

 

一方少し離れたところでも

 

「みんな何故ここまで騒ぐんだ?」

「恭也、あんたのせいでしょうに・・・」

「と言うか、私たちも突然の事に驚いているんだが・・・」

「それよ、どうしていきなりこんな事をしたの?しかも相談もなしに」

「家族が全員そろったら言うつもりだったのだが・・・迷惑だったか?」

 

恭也は申し訳なさそうな表情で二人に聞く

 

「そんな事はないわよ恭也、みんなの前で言ってくれた事は嬉しいし

 ただ事前に相談くらいしてくれてもよかったんじゃない?」

「そうだね、恭也の気持ちも分かるけれども事前に言って欲しかったかな」

「スマン、次からは気をつける」

「そうしてちょうだいね、恭也♪」

「そうしてもらえると助かるよ、恭也」

 

そう言って二人はニコニコと笑いながら恭也の腕をそれぞれ取る

それを見たなのは─姉たちの騒ぎからは逃げ出してきた─は

話が終ったということを理解したので今まで聞けなかったことを聞く

 

「えっと、じゃあ、おにーちゃんはなのはとおねーちゃんのおにーちゃんだけど

 なのはとおねーちゃんのおとーさんにもなる・・・って言う事なの?」

「なのはは兄が父ではいやか?」

「ううん、そんな事はないよ?

 今でもおにーちゃんはなのはのおにーちゃんでおとーさんだから」

 

「えへへ〜♪」と言いながらなのはは恭也の膝の上に座る

 

「なのはちゃんはその場所がお気に入りたいだね」

「その場所はなのはの特等席だから♪」

「うん♪なのはにとって、ここが世界で一番安心できる所なんだよ♪」

 

 

 

 

(ふぅ、いつの間にか時間が経っていたんだな

 さすがにこの時間になってしまうと、今夜の鍛錬は中止だな

 しかし・・・いつまで騒ぎ続けるつもりなんだ?)

 

リビングの方から偶に声が聞こえてくる様子から、騒ぎが収まる気配は

 

(放って置くか・・・)

 

縁側でお茶をすすりながら恭也はそんな事を考え

その隣では同じ様な仕草をしている美沙斗が座っていた

 

そこへなのはを寝かしつけた桃子がやってきて、その光景を目にした途端絶句した

 

「かーさん、どうかしたのか?」

「桃子さん、どうかしましたか?」

 

動きが止まった桃子を心配したのか二人は声をかける

二人のその言葉に反応したのか、桃子が再起動を果たし

先程感じた事を正直に述べた

 

「あはは、何ていうか恭也のそういう仕草が変に違和感がないのは分かっていたけれど

 美沙斗さんも加わると破壊力が増すわね

 何て言うか・・・『長年連れ添った老夫婦?』・・・って感じで

 それよりも恭也、私にもお茶ちょうだ〜い」

 

その桃子の言葉に二人は顔を見合わせ、苦笑する事で答える事にした

─そういう仕草の事を言われているのだが、二人がその事を自覚する事はなかった

 

「騒がしいのも好きだけれど

 偶にはこんな風にのんびりするのもいいかもね」

 

桃子は恭也の隣─美沙斗の居る反対側─に腰を下ろし

お茶を受け取りつつもそう呟いた

 

三人がしばし無言でお茶を飲みながら月を見上げていると

美沙斗が静寂を打ち破り、恭也に問いかけた

 

「・・・恭也は・・・後悔はしていないのかい?」

「後悔・・・って、どういう意味ですか・・・美沙斗さん?」

 

恭也は問われた事の意味が理解できなかったので

首をかしげながら、美沙斗に問い返した

その隣では桃子も疑問符を浮かべながら、同様に首を傾げていた

─余談だが、その仕草は20サバを読んでも通用するだろう

 

「・・・いや、恭也はこんなオバサンを恋人にして後悔していないのか?

 ・・・と思ったんだが・・・」

 

美沙斗は不安そうに恭也に問いかけるが

言われた恭也は即座に否定した

 

「俺は後悔なんてしていませんよ

 美沙斗さんもかーさんもまだまだ十分若いですから

 それに・・・」

 

「「それに?」」

 

「俺はかーさんや美沙斗さん『自身』を好きになったから

 もちろん母や叔母としてではなく、一人の女性として

 そして、そんな風に想える女性を一生を賭けてでも護りたいと思ったから

 だから、後悔なんてしていませんよ」

 

自分が二人をどう想っているのか・・・

自分の想いをありのまま言葉にし、二人に伝える

 

「まぁ・・・無節操と言われても仕方ありませんけれどね

 何せ二人の女性を同時に愛しているんですから」

 

「我ながら優柔不断ですね」・・・と恭也は苦笑しながら最後に言う

 

「それも恭也が真剣に悩んで出してくれた答えだから・・・

 だから、私は恭也のその答えを尊重するよ

 それに─」 

「恭也が私たちを一人の女性として想ってくれる事に変わりはないから

 ・・・さすがに、自分の息子とこういう関係になるとは思いもしなかったけどね」

「私も桃子さんと同じ意見だよ

 息子同然に可愛がっていた恭也とこうなるなんて・・・」

 

桃子と美沙斗は互いに笑みを浮かべながら言う

恭也はそんな二人を何も言わずに抱き寄せ月を見上げ

抱き寄せられた二人は嬉しそうに目を細めながら恭也の肩に頭をのせた

 

そうして三人は、時間を忘れながら互いに心地いい雰囲気を共有した

 

 

 

おまけ

 

「そう言えばさ、恭ちゃん

 それぞれに子供が出来た場合、私となのは、母さんたちはどう呼ばせるの?」

「何故そんな決まりきった事をわざわざ聞くんだ・・・愚妹よ?」

 

恭也は呆れ返ったような表情を浮かべる

 

「かーさんとの場合は

 美沙斗お姉さんになのはお姉ちゃん・・・あと・・・当然美由希『オバ』さんだ」

 

一同美由希の方を見るが美由希が俯いている為にその表情は窺えない

ただし拳は硬く握り締められ身体が震えている

 

「ちなみに、美沙斗さんとの場合は・・・桃子お姉さんになのはお姉ちゃん

 あと非常〜〜に心苦しいが・・・・・・美由希お姉ちゃん・・・だ」

 

ホントに悔しいのか若干俯き顔をしかめながら恭也はつぶやく

それの瞬間、地獄から轟く様な声を発しながら美由希が沈黙を破った

 

「恭〜ちゃ〜ん、どういうことなのかな〜

 かあさん達ですらお姉さんと呼ばせるのに

 どうして私だけが『オバサン』扱いなのかな〜?」

「・・・言わなければ分からないか?」

「全っ然っ!納得が出来る理由を説明して!!」

 

美由希は「理不尽だ」とでも言わんばかりに声を張り上げるが

恭也は黙殺して、止めを刺した

 

「その答えは、貴様の雰囲気がいかにも『オバサン』だからだ(キッパリ)

 いつもいつも兄の事を『枯れている』などと言うが

 それは貴様自身にもいえる事だ」

 

恭也のその言葉に美由希以外は思い当たる節があるのか周囲が沈黙する

 

「ちょっと!何でみんな黙っているの!?

 私は恭ちゃんとは違うんだから!!」

「愚妹よ、理解しろ

 みんなのこの反応が兄の言っている事が正しい何よりの証拠だ」

 

「私は『オバサン』なんかじゃな〜〜い!!」

 

美由希の魂の叫びに答える者は・・・悲しいかな・・・この場には存在しなかった

 

 

 

 


あとがきと言う名の言い訳

 

 

セティ「(わなわな)アンタ・・・何なのよ!これは!?」

何って・・・桃子と美沙斗の二人で『義姉妹編』だが・・・何か間違っているか?

セティ「確かに間違ってはいないけれど・・・何でよりにもよってこの二人なの!?」

俺が書きたかったから(キッパリ)

セティ「・・・一度アンタの頭の中身を覗いて見たいわ・・・マジで」

失礼な事を言うな!

セティ「親子編、少女と狐編、義姉妹編でマジ物を書いているアンタが言っても

    説得力なんてある訳がないでしょう!」

ぐっ・・・反論できない・・・

セティ「それにしても、今回遅くない?あと何か量も少ない気がするし

    ・・・言い訳があるのなら言ってみなさい」

・・・う〜ん、大抵勢いに任せて書くから一回詰まってしまうとどうしても・・・

セティ「普段何も考えない人が考え出すとろくでもない・・・と」

・・・当たっている事実だけに何も言い返せない・・・

で、量に関してはシーンを削ったからだな

セティ「何でそんな事をしたのよ」

二人が恭也を異性として意識した頃を対比して書くつもりだったんだが

上手くバランスが取れなくてな・・・なら削ってしまえ・・・と

他にもあるが、大きなのはこれだな

セティ「どういう意味?」

桃子=士郎死亡時、美沙斗=コンサート襲撃時・・・で考えていたんだが・・・

セティ「そこまで考えていながら削った理由は?」

美沙斗の方は戦闘を書けないのと、既に一通り書いているから・・・

セティ「で、それ以外だと桃子とバランスが取れない・・・と?」

ああ、一応桃子の方もいずれは書くつもりでいるぞ

セティ「もしかして次はそれになるの?」

いや、違う・・・はず・・・

セティ「自信がないのはいいとして・・・じゃあ何を書くの?」

少女と狐編の感想で恭也を懲らしめてくれ・・・と言われたので

それを基にドタバタしたのを書こうかなぁ・・・と

セティ「過大にも好評価を得ているんだから

    ・・・期待を裏切らないようにしなさいよ」

・・・それは十分承知している

セティ「・・・これで見捨てられるかもしれないけれどね」

・・・・・・・・・

セティ「一通り聞いたところで、お待ちかねの私刑執行ね」

・・・いや、俺は待っていない・・・

セティ「(無視)次回は遅れないようにしないとね」

・・・ああ

セティ「・・・と言う訳で、不眠不休で書き上げなさい」

マテ・・・それは死刑になるのでは?

セティ「アンタが早く書き上げればいいだけの話よ」

・・・・・・・・・(鬼め・・・)

セティ「それじゃあ、早速書きなさい

    もちろん逃げ出そうなんて考えたりしたら・・・(ニヤリ)♪」

・・・・・・・・・・・・(ハァ〜・・・遅れたのは事実だしなぁ・・・)





桃子と美沙斗だったのか。
美姫 「義姉妹が誰か悩んだのよね」
ああ。確かに、この二人は義姉妹だったな。
美姫 「にしても、美由希ってばここでも」
まあまあ。これでこそ美由希ということで(笑)
美姫 「次は誰の番なのかしらね」
この次も待っています。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る