『An unexpected excuse』
〜少女と狐編〜
ご都合主義です
「・・・・・・なのはと・・・久遠?」
と、恭也は二つの気配が近づいて来るのを感じながら呟いた
このセリフを恭也の答えと勘違いしたのか
FCの者たちはその場を後にし─後日『高町恭也二股説』が流れる事になるが─
美由希たちは絶句して固まっていた
(間違いないな、この気配はなのはと久遠だ・・・しかし、何故ここに?)
二人がここへ来た理由を考えようとしたが、恭也はそこで思考を中断した
「きょうや〜♪」
「(ハァハァ)く〜ちゃん・・・(ハァハァ)走るの早いよ・・・」
久遠が嬉しそうに、なのはが少し遅れるようにしてやってきたのを確認したからである
それを確認した美由希たちの方も自分の勘違いに気付いたのか、再起動を果たす
「それで、どうしてなのはと久遠がここに・・・いやヤッパリ言わなくていい
どういうことか大体わかった」
恭也は二人がここへ来た理由を聞こうとしたが
二人の姿を見た瞬間に─イヤイヤながらも─疑問が氷解していくのを感じた
なにせ、久遠はいつもの巫女服、なのはは聖祥の制服の上から
『翠屋のエプロン』を身に着けていたのだから
しかもなのはは右手に何かを持っている
これが示す事は─
(これは、やはり・・・アレ・・・だよな?)
「毎度ご利用ありがとうございます、翠屋デリバリーサービスです♪」
「・・・・・・・・・です♪」
恭也の考えを肯定するかのように二人は声をそろえて言い
恭也はだれの差し金であるかを理解した
(はぁ〜・・・かーさんの仕業か・・・)
周囲に一種異様な空気が流れている中で、恭也は申し訳なさそうに口を開く
「しかし、なのはに久遠よ
折角来て貰ったのに悪いが、もう昼飯を済ませてしまったんだ・・・」
本当に申し訳ない、と言った感じで恭也は口にするが
「平気だよ、持ってきたのはデザートだから
ちゃんと甘さも控えてあるし」
「みんなのも・・・あるから・・・いっしょにたべる」
二人が持ってきたのがデザート─甘さ控えめ─と言うので、恭也は食べることにし
自分達の分もあると言われたので美由希たちも食べる事にした
「それでなのはよ、何を持ってきたんだ?」
「えっとね、おにーちゃん・・・これだよ」
「じゃ〜ん♪」といってなのはが蓋を開けるとそこには少々歪ながらも
立派なチョコレートケーキがあった
「えへへ〜♪なのはとく〜ちゃんとで作ったんだよ」
「くおん・・・なのはといっしょに・・・がんばった」
なのはは嬉しそうに、久遠は胸の前で小さくガッツポーズをしながら言った
「ほう、それは楽しみだ」
「なのちゃんとくーの奴の合作かぁ、楽しみだな」
「せやな、何処まで出来とるか楽しみやわ」
「どんな出来なのか、忍ちゃんも楽しみ〜♪」
「・・・まさか・・・久遠が・・・」
「・・・久遠、あなたいつの間に料理をするようになったの?」
なのはと久遠の手作り・・・という事で、純粋に楽しみにする者と
何かにすがるような複雑な気持ちを持つ物とに分かれた
「では、いただくとするか」
「あっ!おにーちゃん、待って」
「きょうや・・・まだ・・・たべちゃだめ・・・」
恭也は食べようとするのの二人に止められたので、首を傾げつつも聞く
「・・・何故だ?」
その疑問に答えるかのように二人は行動を起こした
ケーキを一口サイズに切り取り、それをフォークに刺し、恭也の口に近づけながら
「「(おにーちゃん)(きょうや)・・・あ〜ん♪」
(はぁ〜・・・やはりこうなったか・・・)
すでに予想されていたので、恭也たちはそろってため息を吐いた
そいえて、恭也は観念したのか差し出されたものを口にする
「おにーちゃん、どう・・・かな?」
「・・・きょうや・・・おいしい・・・?」
なのはと久遠は不安なのか、恐る恐る・・・といった感じで恭也に尋ね
美由希たちも恭也がどう答えるのか注目していた
「ん、美味しいぞ、甘さも丁度いい具合だし
なのはも久遠も料理が上手だな」
恭也はご褒美とばかりに二人の頭を撫でる
「はやや〜♪」
「くぅん♪」
(それに比べて・・・ハァ〜・・・)
周囲が羨ましそうにその光景を見ている中
恭也は哀れみを込めた視線で美由希を一瞥した後
何事もなかったかのように、ケーキを食べ─食べさせて貰い─続ける
「恭〜ちゃ〜ん、何かな〜その態度は〜」
「・・・言わなければ分からないか?・・・愚妹よ
まあ、食べてみればわかる事だから『あえて』何も言わんが
みんなも食べてみるといい・・・きっと驚くぞ」
恭也の言葉にみんな一斉に食べ始め・・・各々感想を述べる
「おししょーの言うとおり、ホンマに美味しいですわ」
「ああ、これはオレたちもうかうかしていらんないな」
「ノエルにも食べさせてあげたいわね」
「・・・久遠に負けた・・・久遠に負けた・・・久遠にまけた・・・」
「・・・うぅ・・・・なのはどころか・・・久遠にも負けるなんて・・・」
若干ショックを受けている者も居るようだが、概ね好評のようである
みんなの評価が嬉しいのか、恭也に撫でられているのが嬉しいのか
─おそらく両方であろう─二人は顔を見合わせ笑みを浮かべあった
そんな二人を微笑ましく見つめながらも、恭也は1つの疑問を口にした
「そう言えば、なのはと久遠は口にしていないようだが
折角作って持ってきたのに自分たちは食べないのか?」
「えっとね・・・」
「う〜んと・・・」
「「(おにーちゃん)(きょうや)が食べさせて♪」」
まあ、ある意味これも予想されていた事で特に驚かなかった
しかし、仕掛け人はさらなる爆弾を用意していた
「「くちうつしで♪」」
「「「「「「・・・・・・ハァ!?!?!?」」」」」」
そのセリフが信じられないかのように美由紀たちが固まる中
恭也は顔をしかめながら聞く─予想はつくが、納得をしたくないようだ
「・・・誰に何を言われたのか分かってはいるが・・・
それでも、あえて聞こう・・・誰に言われた?」
「にゃ?おかーさんがこうしなさい・・・って」
「・・・きょうやがよろこぶから・・・って・・・なのはのおかあさんが・・・」
(高町母よ・・・母としてそれでいいのか?)
恭也は実の娘とその親友を唆した母の行動を疑問に思い
周囲では美由希たちがぎこちない笑みを浮かべていた
─桃子に殺意を抱いたのか目は笑っていない─
(ビクッ)
「店長〜、どうかしたんですか?」
「何か、急に寒気が・・・」
「風邪ですか?」
「心配しないで松っちゃん、たぶん気のせいだから」
「それならいいんですけどね・・・」
翠屋厨房ではこんな会話がなされていた
恭也がどうしたものか・・・と考えているとなのはたちが止めを刺しに来た
「おにーちゃん、ダメ?(ウルウル)」
「きょうや・・・いや・・・?(ウルウル)」
胸の前で手を組み上目使いで見つめてきた
その光景に美由希たちは悲鳴をあげ
恭也は自身の敗北を悟りつつも抵抗した─無駄な足掻きとも言う─
「まあ、予想はできるが・・・聞かないわけにも行くまい
・・・その頼み方は誰から聞いた?」
「こうすればおにーちゃんは必ず言う事を聞くから・・・って・・・おかあさんが」
「なのはのおかあさんが・・・こうすれば・・・きょうやは・・・ことわらないから・・・って・・・」
(・・・高町母よ・・・俺に何か恨みでもあるのか?)
恭也は内心でそう思いがら脳裏に思い浮かべる
─悪魔の格好をし素敵な笑みを浮かべている自分の母を─
恭也・なのは・久遠の三人は高町家のリビングに居た
なのはと久遠の頼みを断りきれなかった恭也は
最後の抵抗として誰にも見られないよう、家でする事を頼み込んだのだった
─当然午後は自主休校である
「そう言えば、ここまで来ておきながら何だが
・・・なのはと久遠は嫌ではないのか?」
「にゃ?」
「くぅん?」
恭也の突然の質問に、二人はそろって首を傾げる
「・・・えっと・・・・その・・・・俺と・・・・・口付けをする・・・・事・・・について・・・・だが・・・」
恭也は恥ずかしいのか、赤く染まった顔を背けながら尋ねる
「なのははイヤじゃないよ」
「・・・くおんも・・・きらいじゃない・・・・」
「・・・そうなのか?」
自分の質問を即否定された事に恭也は驚きを隠せないでいる
その様子を見たなのはと久遠は笑みを浮かべながら続ける
「なのははおにーちゃんの事が大好きなんだよ」
「くおんも・・・きょうやのこと・・・すき・・・きょうやとやた・・・いっしょ・・・」
「そうか・・・」
恭也は目を閉じ考え込むような素振りをみせた
その仕草を見て不安に思ったのか・・・
「それとも、おにーちゃんはなのはのこと好きじゃないの?」
「・・・きょうやは・・・くおんのこと・・・きらい・・・?」
「そんな事はない、俺はなのはも久遠も好きだぞ」
恭也は二人の不安を取り除くかのように微笑み二人の頭を撫でながら即答した
その瞬間、なのはと久遠の表情は「ぱぁ」と輝いた
「それじゃあ、おにーちゃん♪」(わくわく)
「きょうや・・・はやく♪」(わくわく)
二人は喜びを体中で表現しながら、待ちきれずに恭也を急かす
そんな二人を苦笑しつつ眺めていた恭也は意を決し
ケーキを口の中に含むとなのはに口付けをした
「んっ♪んんっ〜〜〜〜〜〜(コクッ)・・・はぁ・・・」
口付けをされたなのはは蕩けた様な表情でケーキを飲み込んだ
それを確認した恭也はそっと顔を離す
─なのはは恭也が離れていくのを名残惜しげにに見つめていた
「・・・なのは?」
「えっとね、とっても甘くておにーちゃんの味がした♪」
「きょうや〜・・・くおんも〜」
「分かった」
お預けに近い形で待たせていた久遠に
恭也は、なのはの時と同じ様に久遠に口付けをする
「・・・ん♪・・・んん〜・・・(コクッ)・・・はぁ・・」
久遠の方は嬉しそうに尻尾と耳を動かしながらケーキを飲み込んだ
それを確認してから、同じ様に顔を離す
─久遠の方も残念そうに離れていく恭也を見つめる
「・・・久遠?」
「・・・けーきと・・・きょうやの・・・あじがした・・・♪」
恭也はこれで終ったと思い気を抜こうとしたが
「えへへ〜♪おにーちゃん、もう1回〜♪」
「きょうや・・・くおんも〜」
「・・・分かった」
と、先程と同じ様に口付けをしていく
そして、このやり取りはケーキがなくなるまで続いた
「えへへ♪おにーちゃん、大好きだよ♪」
「くおんも・・・きょうやのこと・・・好き♪」
「ああ、俺も好きだぞ」
そう言いながら恭也は自分の膝の上に座っている二人の頭を撫でる
「〜〜♪」
「くぅ〜ん♪」
三人は微笑みながら、流れる時間に身を委ねた
おまけ
その日の夕食─
「ねぇ、桃子・・・何でこんな状況になっているの?」
「・・・あは・・・あははははは・・・・・」
フィアッセが視線を向けた先には─
「ほら、なのは」
「あ〜ん♪美味しい〜♪おにーちゃんも、はいあ〜ん♪」
「ん、美味しいぞなのは、ほら、久遠も」
「〜〜♪きょうやも・・・あ〜ん♪」
「ん、久遠のも美味しいぞ」
「おにーちゃん、なのは、お味噌汁飲みたいな♪」
「分かった」
「ん〜♪(コクコクコク)はぁ♪」
「きょうや・・・くおんにも・・・のませて♪」
「ちょっと待ってろ」
「〜♪(コクコクコク)ぷはぁ♪」
そこには過激なスキンシップをしている恭也・なのは・久遠の姿と
(メラメラメラメラ)
と嫉妬の炎を宿した美由希・忍・那美・晶・レンの姿があった
「・・・桃子・・・心当たりはないの?」
「あははは・・・」
(まさかこんな事になるなんてね)
(・・・さすがの桃子さんもここまでは予想出来なかったわよ)
恭也を恥ずかしがらせようと思い、なのはと久遠を嗾けたまでは良かったが
まさかこんな事にはなるとは思いもせず
フィアッセの問いに苦笑いでしか答える事が出来ない
そんな桃子を美由希たち5人は殺気混じりの視線で睨みつけた
「・・・桃子・・・一体何をしたの?」
「あははは・・・(これは死んだかも)」
フィアッセは桃子が原因である事は分かったものの
誰も─桃子自身さえ─その理由を言わないので首を傾げ続けるしかなく
殺意の視線に晒された桃子は死を覚悟した
「おにーちゃ〜ん(は〜と)」
「きょうや〜(は〜と)」
「「すき〜♪」」
「おれも好きだぞ」
そんな事を気にも留めない恭也・なのは・久遠
それを目にした瞬間─美由希たち5人はキレた
「「「「「桃子(さん)(はん)(かあさん)」」」」」
「ゴメンナサ〜イ(泣)」
あとがきと言う名の言い訳
・・・え〜と、何で蓑虫状態になっているのでしょう?
セティ「分からない?」
・・・ああ
セティ「じゃあ教えてあげる・・・何んなのよ!これは!」
・・・何って・・・恭也×なのは&久遠だが?
セティ「・・・アンタ、恭也を犯罪者にでもするつもりなの?」
・・・犯罪者・・・って、人聞きの悪い事を言わないでくれ
セティ「・・・前回が桃子&なのはで、今回がなのは&久遠
これが犯罪じゃなければ何だと言うの!」
・・・・・・・・・え〜と・・・純愛?
セティ「しかも『高町義姉妹編』を書いている始末だし・・・
大体なんで後に書き始めた方が先なのよ」
・・・・・・「義姉妹編』は詰まってしまったから、気分転換にこれを書き始めたんだ
そしたらいつの間にやら完成してしまった・・・と言う事
セティ「・・・まあいいわ、そういう事もあるでしょうし」
納得していただけたのなら解放して欲しいなぁ・・・
セティ「(無視)なのはが風高に来れた理由・・・というか、学校はどうしたのよ?
それは・・・聖祥が創立記念日だったから・・・という事で
なのはと久遠が一緒に居る理由もそこから想像していただけると・・・
セティ「否定する理由が見つからないわね
あと、今回『も』美由希の扱いが酷いみたいだけど?」
言われるほど酷くないはずだぞ、美由希の料理≠料理だしな
セティ「アンタ、そのうち美由希のファンに刺されるんじゃないの?」
・・・大丈夫だと・・・思いたい
セティ「『義姉妹編』でフォローでもするつもりでいるの
こればかりはさすがに美由希&なのはになるんでしょう?」
さあな・・・何せあそこは姉的存在と妹的存在も居るしな
セティ「ハァ〜〜・・・もういいわ・・・私刑執行するわよ」
・・・今回は一体何をされるのでしょう?
セティ「折角だし、このまま何処かに吊るすことにするわね」
・・・それって・・・まさか・・・(ガクガクブルブル)
セティ「うん♪即席サンドバッグね、ストレス発散したいからね♪」
くっ・・・今回ばかりは逃げ出すぞ
セティ「何言っているのよアンタ、その状態で逃げられるわけないでしょう?」
・・・ハッ・・・しまった〜・・・(泣)
セティ「それでは逝きましょうか♪(ずるずる)」
・・・・・・・・・(♪ドナドナド〜ナド〜ナ〜(泣)♪)
あははは。過激なスキンシップ。
美姫 「恐るべしは、なのはと久遠よね」
幾ら桃子の入れ知恵とは言え。まあ、恭也も幸せそうだから良いか。
美姫 「今回も甘々な展開をありがとうございました」
ございました〜。