深紅の堕天使
プロローグ
静岡県の山中、一組の男女が山道を歩いていた
「あん?」
「どうした、夏織」
「なんか聞こえねぇか?」
「ああ、なんか泣き声みてぇなのが……」
夏織と呼ばれた女性に言われて耳を澄ますと確かに泣き声が聞こえてきた。
二人はそっちに行くと、しばらくして夏織がある一点を指差した。
「あのガキ…」
指差した先に一人の女の子が泣いていた。
二人が近づく。
一見すると、どうやら生まれたばかりの幼子のようだ。
ずっと泣き叫んでいたのか、その声はすでに小さく、弱弱しくなっている。
その女の子の背には鴉に似た小さな翼が生えていた。
「なんだ? 妖怪の子供か?」
「どうすんだ士郎。連れて帰るのか?」
「ああ、放っとく訳にゃいかねぇしな。
それに、幸い家がすぐ其処だしな」
士郎と呼ばれた男はそう言って少女を抱えると、山を下っていく。
夏織は士郎を「珍しい」と笑みを浮かべながら後を追う。
山を出るとすぐに屋敷が見えてきた。
「てでぇまーっと」
「おーっす」
士郎、夏織の順に屋敷の門をくぐる。
「ああ、お帰りなさい、兄さん、義姉さん」
「おお、美沙斗。 学校は終わったのか」
二人を向かえたのは士郎の妹、美沙斗だった。
「ああ、今帰ってきたところですよ。 ところでその子は?」
士郎が抱えた子供を見やる。
「すぐそこの山で拾ってきた」
「山で…?」
「捨て子みたいだったからな。
この馬鹿が珍しく良心をみせたのさ」
夏織が士郎を指差しながら言う。
「な、てめえ、珍しくって、そりゃどういう意味だ!」
「自分の胸に手を当てて今までのことを振り返ってみな」
そう言い放つ夏織はくくく、と笑いながら家の中へと入っていった
「ったく、あいつは…」
「ふふふ、相変わらず仲がいいですね」
「冗談! むしろいねえ方が清々すらぁ」
「まあまあ。それで、その子はどうするんだい?」
「そりゃ、うちの養子にするさ」
即答する士郎。
「相変わらず突拍子もないですね。
静馬さんや美影さんの相談もなしに決めていいんですか」
「いいんだよ。 その方が俺らしいだろ」
「自覚あるのなら、その性格を直したらどうです」
美沙斗がため息混じりに言う
「へ、うるせぇよ」
そう言いながら家の中に入る士郎に美沙斗は再びため息をつきながら
自分も家の中へ入っていった。
そしてこの日から、この家にもう一人家族が増えた。
家の名は「不破」。
与えられた名は「要」
父の名は「不破士郎」
母の名は「不破夏織」
二人の間に授かった子供「不破恭也」が生まれる三年前の事だった。
そして物語は
この15年後
海鳴の地から始まる……
投稿ありがとうございます!
美姫 「ありがと〜」
恭也に姉ができたみたいだな。
美姫 「果たして、どんな物語が綴られていくのかしらね」
次回も待って…。
美姫 「その次回がまとめて送られて来てるわよ」
なら、早速。