魔法少女リリカルなのはA’SIF
プロローグ
夜の海鳴臨海公園。
そこにある一つのベンチに三人の女性と一匹の犬が集まっていた。
紫の髪を一つに束ねて僅かに上にあげた女性が話を終えたとき、
赤いお下げを二つつけた少女が緑の髪の女性に食って掛かった。
「シャマル! お前回復魔法得意なんだろ! 何とかなんねぇのかよ!」
「ごめんなさい。こればかりは私にもどうしようも……」
「ちくしょう……。なんでだ……なんでなんだよ!!」
泣き出した少女を抱きしめるシャマルと呼ばれた女性。
なぜ、このようなことになるのか。
なぜ、あの優しい主がこのような目に合わなければならないのか。
それはここにいる誰もが思っていること。
しかし今彼らに置かれている状況もまた現実。
そして主を救う唯一の方法。
それは彼らが一番よく知っている事だった。
「とにかく、こうなってしまった以上、蒐集を行うしかあるまい」
「シグナムはそれでいいのかよ」
少女は紫の髪の女性――シグナムに聞く。
蒐集を行わない。それは騎士の誇りを賭けた主に対する誓いだった。
この選択は自らその誓いを破り、誇りを捨てる意味でもあった。
それでも主を救いたい。それがシグナムの思い。
少女――ヴィータの問いにそう答えようとした時だった。
「その話……詳しく聞かせてくれないか……」
三人と一匹が声のしたほうを向く。
そこには一人の少年が立っていた。
その顔は彼女らもよく知った顔だった
「あの、これは…」
シャマルが答えようとするのを遮って放たれた言葉は驚愕に値するものだった。
「答えてくれ、『闇の書の守護騎士プログラム』たち」
「なんでお前がその事を知っている」
そう言って蒼い狼――ザフィーラが立ち上がり少年を睨む。
まるで知って欲しくない事を知られたかのように。
「俺も魔導師だからな。手伝える事があるはずだ」
「でも、これは私達の事だし…」
「頼む、俺だってあいつと居たい」
何とか断わろうとするシャマルに少年が頭を下げた。
「なんだか、それって…」
「どう取ってもらおうと構わない。そういう事だから」
そう言って少年は恥かしそうにそっぽを向いた。
その少年にシグナムが近づく。
「わかった、よろしく頼む―――」
少年の思いが伝わったのか、シグナムは手を差し出した。
「ああ、こちらこそ。シグナム」
少年もまた手を差し出し、二人は握手を交わした。
〜11月15日〜
ある次元世界で召喚魔導師を破ったシグナムは仲間に思念通信を行った。
「こちらシグナムだ。ヴィータ、ザフィーラ、そっちはどうだ」
〈今、目下捜索中だよ! いちいち通信してくんな!〉
すると苛立ちを隠さない少女の声が返ってきた。
「そうか」
〈捕獲対象はまだ見つかっていない。見つかり次第捕らえて糧とする〉
〈もういいな、切るぞ!〉
「ああ、気をつけてな」
〈わかってら!〉
苛立ち収めないヴィータから通信が切られた。
〈苛立ってるな。仕方がないといえばそうなのだが〉
今度は男の声がシグナムの耳に届いた。
ヴィータとは正反対に、シグナムと同じくらい落ち着いた声だった。
「ヴィントか。そっちはどうだ」
〈魔導師を3人片付けた。おそらく八ページ分だ〉
シグナムが返答を返すよりも早く、女性の声が割り込んできた。
〈さすがね〉
海鳴に残って探索魔法で目標を探しているシャマルだ。
〈ヴィントのおかげで私達もかなり助かってるわ〉
〈あ〜、褒め言葉を頂いて恐縮なんだが……〉
ヴィントの声に戸惑いが混じった。
「どうした?」
〈さっきの連中なんだが…〉
〈? 何か問題でも?〉
シャマルは普通に尋ねたが、シグナムは何やら嫌な予感を感じていた。
〈あいつら…管理局だ〉
予想通り、洒落になっていない報告だった。
「おい!」
〈ちょ、ちょっと〜!?〉
〈し、仕方がないだろう!?
ランダム転送した所の近くに観測所があったんだから!〉
どうやらランダム転送したら管理局の観測所の近くに出てしまったようだ。
「まあいい。そろそろ管理局も気がついている頃だろうからな」
〈……そうね〉
〈これからが本番と言ったところか……〉
「ああ、忙しくなる」
そこで切れたのを終わりと判断したのか、シャマルが次の目標を指示する。
休んでから行くかというヴィントの問いにすぐ向かうと答える。
〈わかった。なら目標の世界で合流しよう〉
「承知した」
そこで通信が切れる。
「……今日も長くなるな」
空に目を向け、呟くシグナム。
「お許しを…我らが主、八神はやて…」
転送魔法を使い、次の世界へ向かうシグナム。
それを万物に優しい光を注ぐ月だけが見ていた。
ヴィントというキャラがシグナムたちへと協力。
美姫 「彼は一体」
それはおいおい分かるんじゃないかな。
美姫 「ともあれ、これからどうなっていくのかしらね」
うんうん。次回の展開を待っています。
美姫 「待ってますね」