このお話は誰のENDにも行っておりません。

かといって、ALLENDではなく、何も解決していないだけです。(時期が時期なので)

しかし、那美が桜並木の少女で退魔師であること、忍が夜の一族であること、フィアッセがHGSであることは知って(思い出して)いて、美由希に「お前は俺の宝物」発言もしたことにしてください。

以上の点が気に食わない場合は見ないようお願いします。

それでもいい方は、どうぞ、ご賞味あれ〜。

 

 

 

 

 

 

 

Triangle Mighty Heart

   〜序章〜

 

 

 

 

 

チュンチュン・・・

 

高町家休日の早朝……朝の心地よいまどろんだ空気が高町家、いや、海鳴全体を包んでいるような時間…。

外の天気はこの時期にふさわしい五月晴れ。

起きている者は充血した眼で新聞配達に勤しんでいる者、夜通し遊びとおしていたような若い男女、この時間まで酒を飲んでいたとしか思えない赤い顔をした男しか見受けられない。

 

「すー…すー…」

 

彼、高町恭也もまた、そんな空気に逆らうことなく夢の世界の住人であった。

無防備な寝顔は、普段の鋭い目つきや、凛とした表情を忘れたかのような、可愛い、と評されてもいいような穏やかな顔だった。

この顔を、彼の母親が見れば、写真に収め、彼の親しい友人や彼に好意を寄せる者たちに配り歩くことだろう。

この顔を、彼の妹たちが見れば、普段とのギャップに惚けてしまうだろう。

しかし、この顔を見ることは非常に困難であり、もしもこの顔を見ることができたものがいたならば、それは非常に幸運であったとしか言いようがない。

なぜなら彼は、その肉体や顔つきでは想像しがたいほどの武術の達人であり、常に心に刃を置き、たとえどれだけ親しいものであっても、近づけばすぐに反応できるからである。

そして、今日の彼の眠りは侵入者の手によって妨げられる。

 

ギシ・・・ギシ・・・

 

(む…誰か俺の部屋に近づいている…?

 こんな近くまで反応できなかったとは…誰だ?)

 

微かに床を踏み鳴らす音と、何者かの気配によって彼は目覚めた。

気配は部屋を隔てている障子の前から感じられた。

敵意は感じられない。

しかし、この気配は家にいる誰のものでもなかった。

恭也は警戒のために起き上がり、障子の前に立つ者にいつでも迎撃できる態勢をとろうとした…が……

 

「きょおおおおおおやああああああああああ!!!!」

 

障子が開くと同時に叫び声をあげ、まだ迎撃態勢も整っていない恭也に黒い影が襲い掛かってきた。

 

「なっ!?」

 

その影は恭也もよく知る人物であった。

しかし、この人物が普段この時間に、この場所に現れるはずがない。

まして、起きている、なんてありえない!

そういった思考が恭也の頭を駆け巡り、普段から気をつけている奇襲に対する対処方法を満足に行うことができなかった。

そのため……

 

「隙あり!!

 どっせいぃいい!!」

 

朝とはとても思えない叫び声とともに、思い切りのいい正拳突きをノーガードで喰らってしまった。

 

「がはぁっ!」

 

なんでこんな早朝からこんな不条理な目に…恭也はそう考えつつ目の前の男を睨み付けた。

 

「なかなか反抗的な目つきじゃねーか、恭也。

 俺が熊だったら、お前死んでたぜ?」

 

熊よりもお前が怖い…考えはしたが、現状で口に出す勇気は恭也にはなかった。

たとえ彼が武術の達人とはいえ、目の前の不条理に対しては口を噤むほかなかった。

 

ドタドタドタ………

 

男の叫び声で起きたのか、家の中を走る音がいくつか聞こえる。

 

(この気配は美由希か・・・)

 

滑り込むようにして、まず飛び込んできたのは彼の義妹であり、愛弟子でもある美由希だった。

 

「恭ちゃんなにがあったの!?

 って、巻島館長!?」

 

美由希は、目の前にいる男――巻島十蔵を見て、目を白黒させている。

巻島十蔵――明心館という、妹分の一人、城島晶が通う空手道場の館長を勤め、恭也の父、高町士郎の友人。

性格は士郎の友人、という部分で察することができてしまうような、豪気な性格。

 

「おう、美由希ちゃんじゃねーか。

 久しぶりだな」

 

「あ、はい。

 お久しぶりです館長。

 いつも晶がお世話になってます。

 ……じゃなくて!

 どうして館長がこんな時間に恭ちゃんの部屋にいるんですか!?」

 

恭也が聞きたかったことを代わりに言ってくれたので、彼もまた巻島館長の方を向き、質問の回答を待つ。

 

「んー?

 こんな時間からいるのかって質問に対する返答は・・・この時間まで飲んでたんだよ、酒をな」

 

くいっと手で酒を飲むしぐさをしながら答える巻島。

冷静に頭を働かせると、恭也も美由希も、この男から漂う異常な酒気を嗅ぎ取った。

 

「ようやく気づいたのですが…とてもお酒の臭いがしますよ…どれくらい飲まれたのですか?」

 

恭也は顔をしかめつつ、巻島に問うと、彼は両手を開いて突き出した。

 

「…10杯?」

 

指の数から考えてそう答えるも、巻島は首を振り、男臭い笑みを浮かべ、

 

10本だ!

 一升瓶を、一人当たり!」

 

正気の沙汰とは思えなかった。

恭也も美由希も、こいつ人間か?といった視線を巻島に突き刺していた。

がっはっは!と巻島は誇らしげに笑い声をあげると、ほかの家族も全員恭也の部屋に集まってきた。

 

「恭也〜、どうしたの?」

 

「お師匠〜、どないしはったんですか〜?」

 

「師匠、どうしたんですか?

 ・・・って館長!?」

 

「よう、晶ぼうず!

 元気にやってるか?」

 

「あ、はい!

 じゃなくて、館長、なんでここにいるんですか!?

 って、酒臭っ!!」

 

部屋に入ってきた桃子、レン、晶は漂う酒気にひたすら顔をしかめた。

 

「いやあ、久しぶりに親友に会ったんで、つい飲みすぎちまった。

 すみません桃子さん、酒の臭いぷんぷんさせちまって」

 

「あ、いえ、そんな気にしないでください。

 恭也の部屋ですし」

 

そこは気にするべきじゃないだろうか、と恭也はぼんやりと思ったが口には出さなかった。

彼女には言っても無駄であることは、長年の付き合いで心得ている。

若くして老成しているのも伊達じゃない。

 

「それで、巻島館長、どうして俺の部屋に殴りこんできたんですか?」

 

「いや、俺が起きてるのに、お前が寝てるって事実にむかついて寄らせてもらっただけだが?」

 

…つっこむ点はいくつもあった。

まずこの男は起きているのではなく、寝ていないのではないか?

次に誰もが寝ている時間、ましてや休日の早朝、朝の鍛錬をはじめる時間になっていないにもかかわらず、その事柄に腹を立てるのはおかしくないだろうか?

さらに寄らせてもらった、と言っているが、恭也はこの男に奇襲され、正拳突きまでいただいている。

 

結論―ヤッチャッテモイイヨネ?

 

恭也が理不尽な暴力に制裁を加えようと立ち上がると、

 

「まぁ、冗談だよ。

 用事はあるさ、恭也」

 

出鼻をくじかれ、巻島が笑いながら言った。

 

「さっきも言ったとおり、久しぶりに親友に会ったんだよ。

 そいつはある学校の校長のようなものをしてるんだ」

 

「はぁ。

 それがいったい俺に何の関係があると?」

 

なんとなくいやな予感を全身で感じつつも、先を促してみる。

 

「そいつもかなりの達人でな。

 恭也の話をしたら是非、会ってみたい!

 と、こういうわけだ」

 

「それで、俺はどうすればいいんですか…」

 

もう半ばあきらめ気味にさらに先を促す。

恭也の顔は一日の始まりとは思えないほど憔悴しきっていて、彼の家族は一様に憐憫のまなざしを向けていた。

 

「話が早くて結構結構!

 そういうわけで、恭也、お前転校してそいつの学校いってみないか?

 あ、美由希ちゃんもよかったら一緒に」

 

『はああああああぁあああああ〜〜〜〜!?!?』

 

恭也は突然の転校というフレーズに。

晶とレンは自分の好意と尊敬の対象人物がいなくなることに対して。

美由希はなぜ自分も!?といった気持ちで。

桃子は自分ですら聞かされてなかったことと、あることを気がかりに。

この部屋にいた巻島以外の人物たちは皆そろって叫び声を上げていた。

 

「ちょ、巻島館長!

 それはちょ…」

 

「巻島さん!

 私に相談もなくそういうことは決めないでください!!」

 

「かーさん…」

 

恭也はまさか桃子が怒ってくれるとは思っていなかったので、呆然と、だが嬉しい感情が胸の奥でじわじわと広がっていく。

 

「だいたい恭也は3年生で受験も控えているんです!

 そんな達人がいるような男子校になんて転校させられません!!」

 

桃子の剣幕に若干押され気味になりつつも、巻島もなんとか返答しようとする。

 

「い、いや、桃子さんの了承はもちろん取るつもりでしたよ!

 順序が逆になっただけでして…」

 

「母親である私に何の相談もなくそういう話はしないでください!

 大体、その学校はどんなところなんですか!?

 達人が校長という学校ってことはスポーツばかりの学校ですか!?」

 

「い、いえいえ、そいつの学校とは思えない、なかなか学力のある学校で、生徒も先生も個性豊かな人ばかりらしいですよ。

 もちろんスポーツも有名な学校ですが、そいつも士郎の友人でしたし、決して悪いやつじゃありませんから!」

 

「え、士郎さんの?」

 

士郎の友人。

その言葉だけでさっきの勢いをどこかに置いてきたかのように落ち着いてしまう桃子。

 

「そうですよ。

 昔士郎とやりあったこともある奴でして。

 あ、あと、勘違いされてましたけど、一応共学です」

 

「共学…士郎さんの友人…」

 

突然桃子はぶつぶつと顔を俯かせ、自分の思考の中に没頭し始めたかと思えば、がばっと顔を上げ、恭也の方を向き、肩に手を置いた。

 

「恭也、せっかくだしいってみたら?」

 

「ちょっとまてええええええ!!」

 

「いいじゃない、何事も経験よ?

 学力も風芽丘よりいいのかもしれないし、何より士郎さんの友人だったら信用できるじゃない?

 …共学だし

 

「かーさん、最後聞こえなかったんだが?」

 

「とにかく!

 私としては賛成することにします。

 恭也が決めてもいいけど、一応その学校に顔だしてみてもいいんじゃないかしら?

 今はゴールデンウィークなんだし、あんたどうせ暇なんでしょ?」

 

「はぁ・・・わかった。

 行くだけ行ってみる…」

 

「きょ、恭ちゃん、私はどうすればいいかな?」

 

「好きにしろ。

 と、言いたいところだが、顔見せにはお前も付き合え…。

 転校についてはまた後日考えればよかろう」

 

「あ、うん…。

 わかったよ…」

 

「なんだ?

 予定でもあったのか?」

 

どうにも歯切れが悪い美由希に、予定でもあったかと思ったが、

 

「まぁ、予定もあったんだけどさ…それはいいとして、その学校ってどこにあるの?」

 

「…どこにあるんですか、巻島館長?」

 

すっかり自分も失念していた事柄だったため、もう一度巻島に向き直り、聞いてみると、巻島はにっと笑って、

 

「場所は…松笠市。

 学校の名前は…竜鳴館だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ドドン!
美姫 「こうして恭也の竜鳴館行きが決定〜♪」
睦月如月さん、投稿ありがとうございます。
美姫 「つよきすとのクロスね」
おう! 自分も書きたくて書きたくて仕方なかったクロスもの。
だから、嬉しいよ〜!
美姫 「これからどんな物語が紡がれていくのか」
とっても楽しみにしてます。
美姫 「それでは、また次回で」
ではでは。



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