『とらいあんぐるハート～無想剣客浪漫譚』
LXXXⅠ・海鳴市攻防～黒き狂者は静かに散り逝く
空は二人の間に漂う闘気に呼応したかのように、それまで出ていた月を重苦しい雲で覆い隠した。金色の堕天使は、フィンの光が闇が深くなった校庭に映え、彼女の周囲だけは未だ満月が顔を覗かせているかのようだった。それに対し無造作に刀を手にした黒笠は、そこにいるだけで地獄の底に人を連れ込む悪魔に見えた。
「ＨＧＳであれば手を抜ける筈もないか」
黒笠・鵜堂刃衛は顎に手を当てて怒りを顕わにしているフィリスを眺めつつも頷いて、だらりと刀を持った腕を己の目の前に持ってきた。すぐに襲いかかってくると踏んでいたフィリスは、その行動に少しだけ表情を開いた。そんな彼女に気を払う事もなく、じっと刀に映った自分の眼をしばし見詰めると、そこへ恭也や美由希に仕掛けた心の一方と同じ剣気をぶつけた。
「我……不敗也」
刀に反射した剣気が視覚と視神経に飛び込む。進入した剣気は光速に近い速度で、刃衛の脳に刺激を与えた。
「我……無敵也」
剣気は運動機能の調整を取る小脳へと到達する。瞬間、刃衛の肉体に急激な変化が表れた。筋肉組織が膨張し、それまで中肉だった身体が一回り大きく膨れ上がる。
そして剣を凝視していた瞳がフィリスに戻った時――。
「我、最強也」
そこには目付きから全身から溢れ出る雰囲気まで、全てを一新させて、ぎらぎらとした視線を持つ狂人が誕生していた。
「な？ 人体改造？ で、でも何か服用した形跡はないですし……」
美由希から硬気功なる技があるのは聞いてはいたが、目の前で急激な変身と言っても過言ではない変化をまざまざと見せられ、ＨＧＳという自分自身もまだ研究途中である病なのを忘れる程に驚いて、目を見開いた。
「人体改造？ ふん。そんな事しなくとも人間程度の神経構造であればすぐに変化できるわ」
心の一方とは一言で言えば一種の催眠術である。剣気をぶつける事で一気に相手の精神組織にまで影響を与える技だ。しかしそれを自分自身に対して使用すればどうなるのか？ 水晶体を通った剣気は神経を通過するたびに増幅し、元々ある自分の剣気と混じり合う。同一のものが二つ存在すると、自然の摂理に法って強者が弱者を吸収して更に巨大になる。刃衛の剣気もこれと同じプロセスを通じて自分の気を大きくさせ、それに合わせて体が対応できる大きさに変化させる。一種の自己暗示。
二階堂平法奥義・憑鬼の術。
未だ二回しか使った事のない技に気分を高揚させて、刃衛は大きく刀を振り上げ、そして地面に叩きつけた。途端、地面はクレーターに似た状態に円形に抉り取られた。異化にＨＧＳの念動力で作られたバリアがあろうとも、限界を超えてしまえばただの薄い膜にしかならない。
何時の間にかからからに乾いた口内に固唾を強引に飲みこんで、フィリスは気持ちを取り戻すためにかいてもいない汗を拭うために頬を撫でた。
思えば龍を抜けて以来、こう言った戦闘関係は殆ど行っていない。一度だけどうしても必要で他人に力を翳した事はあるが、それ以外は専らリスティが多い。すぐに医療に興味を持って勉強にのめり込んだために、それ以上の力の行使はした事がなかった。それでも負ける訳にはいかない理由がある。
「一撃で静かになってもらいます！」
だから彼女は刃衛よりも先に力を展開した。小さな体を念動力で浮かばせると、そのまま高速で左右に体を振りながら体当たりを敢行する。しかし刃衛は憑鬼の術で上げた反射神経によって容易くぎりぎりのタイミングを狙って回避すると、擦れ違い様にまたもや唐竹に剣を振り下ろす。激しい鉄とバリアの衝突が刹那の合間だけ起き、二人はそのまま離れる。だが本来であれば人を五人は吹き飛ばせられるバリアと衝突したにも関らず、刃衛はその場に踏み留まった。正直、それはフィリスから見れば冗談では過ぎないものだった。しかもバリアには流動電流も表面に流している。一撃で終らせるには、間違いなく致死レベルまで念動力を練りこまねばならないという証明にしかならなかったからだ。
でも……私は医者……。
力の一線を超える事への戸惑いにフィリスの視線が僅かに下がった。
「闘いの最中に視線を逸らすなど、愚の骨頂！」
だが明治維新を強さと血と肉の斬れる音と感触だけを求めて戦い続けた刃衛の前で、そんな彼女の経験の薄さは格好の的であった。例えどれだけ離れていようとも銃弾と刃の下で駆け抜けて生き延びてきた刃衛は、武道をしていないフィリスには凶悪な速度を持って接近すると意識が完全に自分を向く前にバリアごと吹き飛ばした。
「キャアァァァァァァァァ！」
まさかバリアすら弾くとは思っておらず、生まれた油断がフィリスを学校の周囲を囲っている塀まで転がっていく。バリアのおかげで土に擦れたり刀による斬り傷はなかったが、伝わった衝撃は確実に彼女の頭を揺らして、軽い脳震盪を起こさせる。
ＨＧＳじゃないのに……こんな……。
乗り物酔いにも似た状態で、刃衛の憑鬼の術の威力に驚きを隠せない。それでも怒りはあれど徹底的に叩く事に躊躇いが残る。例え唯子達に凶刃を向けたとしても、相手も人間なのだから――。
「ハッハッハァ！ こんなものか！ これが元龍のＨＧＳ部隊の実力かぁ！」
追撃でフィリスに接近した刃衛は、型なしで何度も刀をフィリスに叩きつける。そのたびに球状のバリアはまるでラリーを続けるテニスボールのように縦横無尽に転がっていく。あまりの激しさにバリアを解除する事も適わず、また苦手ではあるが瞬間移動を行う余裕すらない。一瞬物質移動を試そうかとも思ったが、瞬間移動と多分に変わらない熟練度しか持ち合わせていないため、問題外だ。
どうするべきか？ と、必死にバリアの展開に力を込めている時、不意に少し離れた場所から金属製の滑車が回る音がした。また転がしてダメージを与えようと逆薙に引いた刃衛と、踏ん張ろうと両手を突き出したフィリスは同時に音の方向へ顔を向けた。
「こっちです！ こっちから逃げれます！」
「あまり押さないでください！ お願いします！」
そこには南京錠のかかっていた裏口を開けて、逃げ出す非難した人々と誘導する二人の男女の姿があった。
その二人にフィリスは名前を呼んだ。
「相川さん！ 野々村さん！」
それに気付き、二人は小さく頭を縦に振った。それは謝罪であるのは理解できた。しかし別にフィリスは怒っているよりも、感謝したい気持ちだった。確か北海道に行っていた筈の二人が先導してくれたおかげで、これ以上の犠牲者を出さなくても済む。後はタイミングを見計らってフィリスも逃げる事が出来れば、この場はとりあえずでも決着がつく。もちろん、重傷である鷹城親子を連れていかなければいけないのだが、それだけのプロセスを行える自信が、今のフィリスにはなかった。
しかし、そんな彼女の不安や今後の行動の思案を全て破壊する行為にでる人物がいた。
「貴様等ぁ、俺の許可なく勝手に動くなよ」
「ま、待ちなさい！」
動いたのは黒笠。止めたのは堕天使。
そして反応したのは、女の子のような優しげな表情を浮かべる男性だった。獲物が逃走を図るのを御仕置きするために、黒い風は一直線にまだ残されている人々――特に一番弱者に見える小鳥に、何人もの血を吸ってきた牙を切り上げた。
フィリスの悲鳴のような叫びに反応して振り返った視線の先に、急激に視界を埋め尽くす刃衛の姿は、次の瞬間には目の前で凶悪な耳まで裂けた笑みを浮かべていた。
「え……？」
あまりに突然な状況の変化についていけず、小鳥は疑問を含んだ声を上げるので精一杯だった。ただ理解できるのは目の前の巨人に見える黒い男性が、オペラ座の怪人風な仮面の下の眼で小鳥を射抜き、歯茎まで剥き出しにした笑顔を顔に張りつけているというだけだ。
不意に――本当に不意に、そんな刃衛を見上げていた小鳥の体が横に叩きつけられていた。突然の痛みに心の準備ができていなかった彼女は、片目を瞑り口を歪めたがすぐに顔を上げた。その瞬間、顔の右半分に温かい液体がべっとりと貼りついた。と、同時に鼻を擽る鉄を多く含んだ匂いを嗅ぎ、無意識に手で液体を撫でた。液体はすぐに生理的に不快感をもたらす粘りを感じさせる。たったそれだけなのに、彼女の心臓は信じられない高鳴りを発し、足ががくがくと震えてくる。遠く唯子が倒れているのを見た時は、ここまで震えなかった。薄情と言われるかもしれないが隣にどんな風に思われていても真一郎が居たから。
小鳥は恐る恐る本能で見てはいけないと警告を発しているのを拒否して、手を顔から離して、視界に納め――そして悲鳴を上げた。
クルクルと綺麗に切断された左腕が宙を舞い、このようなパターンの御約束のように切断面を下にして地面に落ちた。
あの瞬間、動けたのは彼だけだった。フィリスは遠くにいて、小鳥は何が起きたのか理解すらできていなかった。だから彼は肌を突く悪寒を感じた右下から小鳥を守るために突き飛ばした。
こうして相川真一郎の左腕は二の腕の中程から切断された。
「ぐぅ！」
それでも小鳥を恐がらせていけないと信じられない痛みを堪えるが、すぐに事実を見てしまった小鳥は、耳を劈く悲鳴を上げた。
大丈夫だ。俺は痛くないから。そんな泣かなくていいんだ。
慰めを口にしようとするが、出るのはくぐもった苦痛だけで、それが更に顔半分を真一郎の血で染めた小鳥を煽る。
「ん～ふふふふふふふふ。中々の悲鳴だ。だがお前達には獲物を逃がしたツケは支払ってもらうぞ」
昔から悲鳴を聞くのは好きだった。
だから新撰組に入隊したし、脱走したし、維新志士側の人斬りになったし、そして黒笠となった。どれだけ時代が過ぎてもこの感触だけは捨てきれない。例え一度死んだとしても、この楽しみだけは捨てられないのだ。
だから刃衛は再度感触を味わうために、真一郎の無防備な頭蓋に向けて刀を振り下ろした。
しかし、鍛え上げられた刃は、黄金色の半透明な膜にいとも容易く弾き返された。
「く……邪魔をするなフィリス＝やざ……？」
楽しい時間をまたもや邪魔され、少しだけ歪めた眉でフィリスを睨み付けようとして、動きを止めた。いや止めざるを得なかった。それまでは簡単に吹き飛ばせていたバリアは、反対に刃衛に踏鞴を踏ませ、僅か数十センチのスペースだったところを数メートルまで後退させた。
それを見るとフィリスはゆっくりとついていた膝を上げた。
「例えテロリストだとしても、傷つけたくない。私はそう思ってました」
急激に震える大気は、小鳥の意識をはっきりさせ、苦痛に喘いでいる真一郎も痛みを一瞬だけ忘れてぽかんと口を開けた。
フィンに影響されてなのか、純粋で透明な瞳から流れ出る涙は黄金色に光り、フィンだけだった輝きは、何時しか彼女全身を包み込んでいる。
「でも、そんな私の甘さが相川さんを傷つけました。だから……」
大気の震動が止まり、フィリスの周辺にあるバリアが完全な球状で固定されて、風もないのに髪を天に向けて吹き上げた。
「償いはしなければいけません」
瞬間、刃衛の背筋に悪寒が走った。長年の戦闘経験から身を沈めた彼の頭上を雷状に収縮させた念動力が通り過ぎる。しかしそれは目の前にいるフィリスではなく、誰も居ない筈の右からである。
何？ 何故誰もいない方向から？
続けざまに刃衛を狙って縦横無尽に降り注ぐ雷を避け、時に脇差を避雷針代わりにしてかわしながら、更に五メートルの距離を取る。
「だから貴方をコロシマス――」
絶対に医者から出てはならない言葉に、真一郎と小鳥は驚愕し、刃衛は一瞬だけぽかんと口を開けてから、顔を抑えて大きく高笑いを上げた。
「ん～ふふふふふふふははははははははははは！ 面白い！ やって見せろ！」
刀を中段刺突の構えに固定し、足を肩幅より少しだけ大きく広げる。
「やってみせます。私の罪は私自身で取り払います」
ふわりと地面から一メートル付近まで体を浮かばせ、バリアの表面に細かい雷が走り出す。
張り詰めた殺気という名の糸は、次第に限界まで引き絞られていく。それを放出している二人はいいが、何とか止血した腕を抱えた真一郎と彼に寄り添う小鳥には、呼吸を妨げるほどに鋭敏に感じられた。
そして糸は己の耐久性を限界まで堪えると、いともあっさりと切れた。
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉ！」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
二人の戦士は、同時に動き出した。
剣技において尤も速度があるのは最短距離を行く刺突だ。かの明治維新の折に活躍した沖田総司は刹那の間に三箇所を射抜く刺突を必殺としていた程だ。そしてまた二階堂平法も、刺突を必殺としていた。
二階堂平法・交わりの型・混載突。
それは腰に溜めた力を刀に乗せ、相手を射抜くだけであった。しかし、ただそれだけではなく、インパクトの瞬間に手首に捻りを入れる。回転の加わった刺突は、通常の十倍に及ぶ破壊力を持つ。だが、今の刃衛は憑鬼の術も併用している。実質威力の計測は不可能に近い。
命中さえすればＨＧＳのバリアなど粉砕できる！ 否！ 前は粉砕した！
龍に残っていたクローンＨＧＳ部隊の一人を実験体にして行った時は、あまりの破壊力に身震いを禁じえないくらいだった。
混載突はスムーズにフィリスへと一直線に突き進み、そして――。
「甘いです」
切っ先にバリアが触れた瞬間、フィリスは金色の残像となってシャボン玉のようにぽわんと情けない音を立てて破裂した。
「何？ 何処へ……」
声だけは耳元で聞える。だが周囲を見回しても姿の見えない彼女に、刃衛は久しく感じなかった恐怖を体感した。
そんな刃衛に構わず、フィリスは言葉を続ける。
「私が何故医者を志したか分かりますか？ 答えは簡単です。それまで行っていた事を悔い改めるためには、正反対の行為によって人々を救いたいと思ったからです」
声は次第にはっきりと大きく、聞えてくる。
「最初に目覚めたのは知佳さんを手に入れるために日本に赴いたリスティでした。その後でリスティの実験を引きうけたのはシェリー。私は一番最後に目覚め、そして二人が行っていない実験を受けました」
「ど、何処だ！ 何処にいる！」
「それは如何に効率よく人を殺せるか。そのために世界各地の小さな村を何度も襲撃し、技を磨き上げました」
その時、はっきりと空気を切る音が聞こえ、刃衛は即座に頭上を見上げた。
「分かりますか？ 私は……姉や妹よりも……強いんです」
金色の第二の月と呼べる明るさを持って、体中に限界まで溜め込んだ雷が放電している夜叉がそこに浮いていた。
「フィリス＝矢沢ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
「ライトニング・プラズマ」
念動力は周囲の静電気を巻き込んで、最初は拳大の小さな塊を作った。そしてそれがフィリスの手元を離れた瞬間、彼女の体を走っていた放電を引き連れて、一気に膨れ上がる。高密度まで圧縮された塊は、そのまま周囲の電子を際限なく取りこみ、何時しか内部に変化を生じさせる。金色だった色が青に近くなり、太陽のプロミネンスを想像させるグラデーションを見せつけた。重力と刃衛の刀に導かれるように速度を加速した塊は、光速の速さで黒笠を包み込んだ。
僅か数十秒の出来事。それなのに観戦する事になった二人は数時間にも及ぶものに感じた。グラウンドに命中したライトニング・プラズマは爆発を起こしたように球体を広げ、すぐに収縮した。そこには半ばから折れた刀と、衣類の焦げた燃え滓が残っているだけだった。
刃衛は走った。
何とか脇差と大刀を地面に突き刺してほんの少しだけ電気を受け流すと、合間にできた隙をついて脱兎の如く駆け出した。フィリスも自分の発したエネルギーに瞼を閉じたのは確認済みなので、逃げるのは容易だった。すぐに近かった壁を一足飛びで超え、着地と共にすぐさま体を住宅地の道路へとねじ込んだ。
「くそ……。情報と違ったか。まさか一番弱いと思われていたフィリス＝矢沢がここまでとは……」
仮面をしていたため顔自体にダメージはないが、それでも衣服と肌は焦げている。何とか持ち応えているのは刃衛が霊剣である他にならない。
舌打をしながら、フィリスが負いかけてこないのを確認すると、すぐに海鳴に作った簡易型アジトへ戻るために足を一歩踏み出して、すぐに止まった。
そこには短身痩躯で胸まである赤毛を紐で結んだ、一人の少年が立っていた。
「鵜堂刃衛……」
「緋村……抜刀斎……」
戻った剣士は二ヶ月前に相手をした敵を前に、逆刃刀をすらりと抜いた。それに呼応してか、刃衛も鉄製の鞘を手にする。
「これはお前がやったのか？」
「そうだ」
「こんな馬鹿げた事を？」
「馬鹿げた？ 冗談ではない。俺にとって抜刀斎や御神と決着をつけるのは当然の事。これは必要な事だった」
「腐ってるな……」
「一度死んだ人間を前に言う台詞ではない」
会話が途切れた。
シンと静まり返った空気に、月を覆い隠した重い雲が拍車をかける。湿り気を帯びた風はただ二人を撫で上げた。
「行くぞ、抜刀斎ぃぃぃぃ！」
何の合図もなく強靭な鉄でできた鞘を一文字の型に構え、刃衛は突進した。フィリスのライトニング・プラズマでやられた右半身が痛みで悲鳴を上げるが、気にしている余裕などなかった。ただ一直線に二ヶ月間待ち焦がれた決着をつける為に、剣心へ残された最後の牙を振るい上げる。
だが、その瞬間、剣心が動いた。と、同時に九つの光が視界を覆った。
『壱』『弐』『参』『肆』『伍』『陸』『漆』『捌』『玖』！
光は一瞬の閃光となり、刃衛を打つ。それでも最後の玖を受けるために鞘を鳩尾に動かしたのは奇跡と言えよう。だが剣心は冷静に鞘を見るや人を殺さぬために柄尻を向けていた逆刃刀をくるりと反転させた。鞘と逆刃刀が衝突する。本来であれば厚さから逆刃刀が折れていてもおかしくはない。しかし、ライトニング・プラズマを受けた鞘はすでに限界に達していた。
ピシリ。
と、亀裂の入った音がした。いや音だけではない。はっきりと鞘に入った亀裂は、剣心の突進に耐えきれず、そのまま皹を拡大していく。
そして――。
パリィィィィン。
乾いた音を立てて、鞘は砕け散った。同時に刃衛の身体も糸を切られた人形のように、その場に崩れ落ちた。
とりあえず、各地で起こった海鳴テロは一先ず一段落。
美姫 「でも、その被害は大きいわね」
ああ。果たして、この後どうなるのか。
美姫 「緊迫した事態はまだまだ終らない」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「夜上さん、また次回で！」
ではでは。