『アイギス』

 

 それはかのギリシャ神話に登場する楯の名であり、全ての邪悪を防ぐといわれている。

 

 その名を冠する組織がある。

 表向きは一般家庭から一流企業まで、幅広く活動を行う警備会社。

 しかし裏では、対象の護衛を時には非合法な手段を用いてでも行う、護り屋。

 主要な活動場所は日本であるが、裏家業はその特異性ゆえに世界でも名が知られていた。

 ガーディアンにはそれぞれナンバーが与えられ、そのナンバーが一流の証でもある。

 

 

 

 

 

 

 

其は楯なり、其は刃なり

第1話

【事件は会議室でも起こってるかもしれない】

 

 

 

 

 

 

 

 そして先ほどのセシリア狙撃事件を防ぎ、犯人を確保したのもこのアイギスである。

 当然そのことは一般に知られることはないが。

 今はそのアイギスの本部で、先ほどの事件の報告が行われているのだが、

 

「だーはっはっはっ! 何度見ても笑えちゃう。シールド9が鼻血出してぶっ倒れるムービー」

 

 とても組織の本部とは思えない笑い声が響く。

 笑っているのはオールバックに髭を生やし、サングラスをかけた正に「裏の世界の人」の典型。

 しかしその笑い声のせいか、全くもって怖くない。

 この人こそアイギスの「課長」こと神崎恭一郎その人である。

 

「オペレーター、この映像AVIにエンコードしてDVD─Rに焼いて、今すぐ」

「……はい」

 

 呼ばれたオペレーターは、しばし迷ってから指示に従い、モニターにはエンコードされている様子が映る。

 その隣のモニターでは、先ほどからひたすら映像がループ再生されていた。

 そしてその課長から少し離れた所では、

 

「へぇー、こんな可愛い顔してもう成人してるんだ。思わず欲しくなっちゃうねー」

「リスティさん、失礼ですよ」

 

 リスティ槙原と高町恭也が立っていた。

 リスティは愉快そうに映像を見て、恭也はそんなリスティを見てため息をついていた。

 

 当の鼻血を出してぶっ倒れた、シールド9こと如月修史は拳を握りしめ俯いている。

 しかし恥ずかしいというよりも、その震えるまでに力が込められている手が表しているのは怒りだろうか。

 それでも殴りかかることなく、部下として上司に尋ねる。

 

「そ、そんなに楽しいですか? 人の不幸が……」

 

 怒りを我慢し、震える声で言うと、言われた課長はあっさりと、はっきりと、

 

「めっさ楽しいよ」

 

 笑いながらそう言った。

 見事に火に油を注ぐような発言である。

 それでも殴りかかることなく、

 

(ああ、そうかよっ!)

 

 心の中で毒づいて、ぷいっと横を向く修史。

 その視線の先には、リスティと恭也が立っている。

 修史は見知らぬ人がいることに困惑を覚え、またその人達にも映像を見られていることに羞恥を感じた。

 

 ふぅ、とため息をついて学生服のボタンを外す。

 映像を消してもらおうにも、既に優秀なオペレーターの手によってエンコードされ、DVDに焼かれてしまっている。

 そして今までも同じような場面で、

 

「部下の任務を記録に保存するのは上司の仕事だ」

 

 と言われ、結局消すことができなかったことも、彼を諦めさせる要因であった。

 

 

 

 

「それで、少年」

「少年じゃありませんっ!、俺はもう成人です!」

「それはおいといて、少年よ」

「……もういいです……」

「え〜、反応してよ〜。パパ寂しいぞー」

 

 明らかにからかわれて修史は肩を落とす。

 

「さて、シールド9。任務ご苦労だった。クライアントもお前の仕事に満足していたぞ」

 

 唐突に真面目な話が始まる。

 それすらも日常なのか、修史もすぐに気持ちを切り替えた。

 

「アイギスの名に恥じぬ、素晴らしい活躍だった」

「っ、ありがとうございます」

「ただねー、最後に倒れたのはダメだよー。あんまり目立っちゃいけないんだからねー」

 

 誉められて上がった気持ちを、瞬間的に落とされる。

 修史は思わず苦虫を噛むような表情になる。

 

「ま、油断大敵って事だ。最後まで気を抜いちゃいけない」

「そうだぞー、少年。キスぐらいでぶっ倒れてちゃ、仕事になんないだろ」

「っ、俺は成人だ!」

 

 後ろからの言葉に、もはや反射の域で答える修史。

 そんな様子をリスティは実に楽しそうに見ていた。

 

「まあ油断大敵ってのはアイギスにも言えることだけどね。ねー、恭一郎?」

「んー、えー、あー」

「?」

 

 歯切れが悪そうに唸る課長。

 そんな様子を滅多に見ることのない修史は戸惑う。

 

「うちの恭也が事前に捕まえたから良かったものの、そうじゃなかったら対象は守れなかっただろ?」

「ぐっ、それについては感謝してる」

「だいたいさー、あんなストーカーがスナイパーライフル持ってる時点でおかしいでしょ。

 普通に考えてどっかの組織が絡んでるって、すぐわかる……」

「リスティさん、そのぐらいにして下さいよ」

 

 まだまだ言い足りなさそうなリスティを、横に控えていた恭也が止める。

 課長は助かったとばかりに息をついた。

 そして全く状況の掴めない修史は戸惑うばかりだった。

 

「えっと、課長。この人たちは一体……」

「ああ、こっちの女性がリスティ槙原、警察関係者ってところだな。

 それでその隣の青年が高町恭也君、凄腕の護衛だな」

「初めまして♪ 如月修史君」

「初めまして、高町と言います」

 

 リスティは変わらず楽しそうに、恭也は静かに挨拶をする。

 

「今回はこっちのミスで、危ういところを彼らに助けてもらった」

「えっ、任務は成功したんじゃ……」

「俺の想定内なら成功してたのだが……」

「?」

 

 わからない、といったように首を傾げる修史。

 それを見た課長が、可愛いな、と心から思ったかどうかは定かでない。

 

「つーまーり、あっこにはストーカー以外にも敵がいたってこと」

 

 話さない課長に代わり、リスティが答える。

 むしろその何かをいじめたそうな雰囲気は、代わりというよりも彼女がただ言いたいだけかもしれない。

 

「どういうことですか?」

「だから、あのストーカー男の気持ちを利用してセシリアを殺害しようとした組織があったってこと。

 まっ、ライフルを渡しただけなのか、ストーカー男の思考を誘導したかは知らないけど。

 そんな組織がストーカーの狙撃が失敗しただけで終わると思うかい?」

「……あっ、もしかして」

「そっ、あっこにはもしもの為に別のスナイパーが控えてたってこと。

 それもストーカーとは対象を挟んで反対側にね。

 それをうちの恭也が捕らえたってわけ」

「リスティさん、それぐらいにしておきましょう。話が進みません」

「えー、せっかく課長をいじれるのにー」

「別に遊びに来たわけではありません」

「ちぇっ、恭也は堅いんだから……」

 

 渋々といった感じで了承するリスティ。

 

「それに俺達もセシリアを護る任だったでしょう?

 別に感謝されるような謂われもないはずですが」

「はいはい、わかったよ」

 

 実はリスティと恭也は、自分の都合でその場にいたわけではない。

 CSSからの依頼で護衛の任に当たっていたのだ。

 ただしアイギスの警護がいるということで、主に敵の捜索、及び捕縛をしていたのだが。

 

「そうだな、その話はこれくらいにして」

 

 やっと立ち直った課長は真面目な顔をして、

 

「シールド9、次の任務の話をしよう」

「次の任務……ですか?」

「ああ、お前にしかできない、特殊な任務だ」

「俺にしかできない……」

 

 その言葉は修史の心は高鳴る。

 成人したといっても未だ新米と言われ続けている修史にとって、その言葉は魔法のようだった。

 ゆえに、

 

「できるか?」

「できますっ! 是非やらせてください」

 

 躊躇うことなく、話を聞くこともなく、彼は仕事を引き受けた。

 その様子を楽しそうに眺めるリスティと、哀れんだ目を向ける恭也。

 

「そうか、ではまず、シールド3! 例の変装キットを頼む!」

「はっ!」

 

 修史が気づかぬうちに、先輩のシールド3、宗像が後ろに構えていた。

 そして課長の命に従い、修史の肩を押さえる。

 

「えっ? せ、先輩?」

 

 戸惑う修史に、宗像は安心させるように笑いかけると、

 

「なーに、すぐ終わるから大人しくしてろよ」

「えっ、なっ、何を? っていやぁーー!」

 

 服を脱がしにかかる。

 組織内でも1、2を争う怪力に抑えられては、修史は抵抗のしようもなかった。

 そして全てを脱がされると、次はすね毛を剃られ、クリームを塗られ……

 

 …………

 

 30分後、そこには“別人”が立っていた。

 

「うっ、うっ、汚された。もう婿に行けない……」

「違うだろー、お婿さんじゃなくて、お・よ・め・さ・ん、だろ?」

「俺は男だ!」

「えー、コレ見てもそんなこと言えるのー?」

「えっ」

 

 課長が指さしたところには、大きな姿見を持っているシールド3の姿が。

 そしてその鏡に映るのは……

 

「おっ、女ぁーー!?」

「そっ、今の修ちゃんならどこから見ても立派な女の子だよ。んー、可愛い」

「どうなってるんだーー!」

 

「へぇー、やっぱり似合ってるね、修史君」

「…………」

 

 リスティはにやにやしながらそう言い、恭也は何を言って良いのやらといった感じで黙っている。

 

 

「まさかっ! 次の任務はこの格好で!?」

「そうだよーん、修ちゃんにぴったりの任務、なんと女学院での潜入護衛だよ」

「無理ですっ! 俺には絶対無理です! だいたい男の俺が女学院なんて入ったら絶対バレます!」

「そーんなことないって。だって見てよ修ちゃん、この見事なまでのISCO」

「ISCO?」

「そう。

 I。田舎っぽく素朴で!

 S。そばかすの似合う女の子!

 C。ちょっぴり見た目はダサいけど!

 O。お好きにな人にはたまらない!」

「なっ! なっ?」

「正しく期待通りだ。いい仕事をしたな、シールド3!」

「はっ、恐悦至極に存じまする!」

「な、な、な……」

 

 もはや何を言って良いのかわからず、ただ声を発する修史。

 どう見ても可哀相な場面なのだが、

 

「へぇー、面白いねー」

「…………」

 

 リスティからすればただの喜劇にか見えず、恭也はどうしてこんなことになったのだろうかとため息をつく。

 

「なんだこれー! おいっ、説明しろ!」

「ダメだよ修ちゃーん。女の子がそんな言葉遣いしちゃ」

「そうだ修史。これは次の任務に必要なことなんだ。理解しろ」

「だからって俺は成人だぞ! 今更女学院なんかっ」

「誰が見たって女の子にしか見えないって。今日の任務で学生服着せたのだって、これの予行みたいなものだよ」

「んなの納得できるかー!」

「シールド9!!」

「っ!!」

 

 あまりの理不尽さに叫ぶ修史。

 しかしまたもや唐突にシリアスモードになった課長に対し、思わず黙る。

 

「これは任務であり、命令だ。一度引き受けた以上、君にはこの任務をこなす義務がある。

 それにこの任命は我々の組織の状況を考えての結果だ。私の趣味では断じてない、はずだ」

 

 最後の言葉は大分小さく、修史の疑惑は一層深まる。

 誤魔化すように小さく咳をする課長。

 修史は思いついたように、

 

「三上さんがいるじゃないですか」

「彼女では生徒としての潜入は無理だ。

 ターゲットは生徒2名。できれば24時間常に警護したい。

 それには生徒としての潜入が必要不可欠となる」

 

 修史の案は敢えなく却下される。

 流石に四捨五入して四十になる女性を生徒として潜り込ませるわけにはいかない。

 がっくりと肩を落とし、項垂れる修史。

 

「潜入先は日本でも有数のお嬢様学校として名を馳せるセント・テレジア学院。

 そこで2名の生徒の護衛をしてもらう。当然ターゲットには知られないようにな」

「…………」

「カソリック系の学院で、全寮制のためお前にも寮に入ってもらう」

「…………」

「期間は不定だが、そう長くなることはないはずだ」

「…………」

「さっきから反応がないぞー、つまんなーい」

「……課長」

「んっ、なっにかなー?」

「本当に俺で大丈夫なんですか? 先の任でも俺の女性に対する反応は知っているはず。

 そんな俺にこの任務がこなせるとは思いません」

 

 ただ叫んでも無駄と判断したのか、冷静に対処してみる。

 そうすればもしかすればこのイカレた頭の課長も少しはわかるかと思ってのことだったが、

 

「その可能性も含めて、シールド9、お前を選んだ」

「……何故?」

「さっきも言ったように適任者がお前しかいない。

 この依頼を引き受けた以上、仕事をこなさないわけには行かない。

 さらに言えば潜入護衛などという任務、シールドナンバーを持つ人間にしかこなせないだろう」

「…………」

「わかるな」

 

 わかってはいる。しかし納得できない。

 それでも、どれだけ拒否したところでこの任務を降りることはできないだろう。

 それを修史は理解していた。

 

「……はぁ、わかりました。その任、お引き受けいたします」

「わーいわーい」

「ヤッター」

 

 喜ぶ課長とシールド3。

 緩んでいた拳が、再び固くなる。

 

「では任務の詳細に入ろう」

「……はい」

「ターゲットはこの二人。こっちが3年の春日崎雪乃、そしてこっちの椿原蓮」

 

 課長がファイルを修史に投げる。

 受け取った修史はタッゲートの写真を見た。

 想像以上に整った顔を見て、思わず赤面する。

 

「彼女たちは現在、とある事情から陰謀に巻き込まれる危険性がある

 学院は既に警備体制が整っているが、ここ最近不穏な動きがあり警備の強化が求められている」

「はい……」

「色々な要素を考慮し、潜入しての護衛が最も適切だと判断した。

 早速だが明日から護衛の任についてもらう。向こうには通知してあるし、寮の部屋も用意した。

 その資料を明日までに読んでおくように」

「はい」

「それと明日からお前は山田妙子、田舎の大地主の娘だ」

 

 自分の格好を省みると情けないの一言だが、それでも与えられた任務は任務。

 そう割り切ると、修史は資料に目を通す。

 が、

 

「んー、やっぱり修ちゃん可愛いな。やっぱパパって呼ん……」

「絶対いやだっ!」

 

 やっぱ嫌なものは嫌だった。

 

 

 

 

「で、そろそろ話に混ぜて貰えるかな?」

 

 ずっと蚊帳の外だったリスティが口を挟む。

 ただずっと様子を見ていたため、その顔は楽しそうだった。

 反対の恭也はずっと黙っている。

 

「そうだな。修史、今回の任務はさすがに単独では難しいと判断した。

 そのために応援を呼んである」

「はっ? それだったらその人がこなせば……」

「だめだ。あくまでメインはお前だ。

 それに応援はアイギスの人間ではない」

「えっ? それってまさか」

 

 修史は近くにいる恭也に目を向けた。

 先ほど凄腕の護衛と紹介のあった、恭也を。

 

「察しの通り、恭也君にも潜入してもらう」

「……はぁ」

 

 恭也が今度は聞こえるようにため息をつく。

 いくら仕事とはいえ、女学院に潜入するのは恭也も嫌らしい。

 まともな人がいたと、修史は嬉しくなった。

 だからといって状況は変わらないのだが。

 いや、むしろ

 

「で、恭也。キミにも女装してもらうよ」

「……は?」

「だから、恭也にも女装して潜入してもらう」

「……リスティさん、俺は教育実習生として潜入するはずでは?」

「いやー、気が……こほっ、じゃなくて状況が変わってね。生徒として潜入してもらうことにした」

「なっ!?」

 

 状況は悪化しているのかもしれない。

 突然のリスティの言葉に焦る恭也。

 もともとこのテレジア学院の話がきたのも急なことで、しぶしぶ承諾した経緯があった。

 それも教育実習生として潜入するという話。

 それがここにきて急に女装して潜入しろ、と言われれば、いくら恭也といえど動揺する。

 

「リスティさん! 普通に考えて俺が女装で潜入なんてできるはずがないですよっ!」

「いや、ほら。こうしてとても女装とは思えない子もいるわけだし。やってみないとわからないじゃない?」

 

 そう修史を指して言う。

 少しむっとしながらも、どこか認めている部分があるのか反論できない修史。

 一方の恭也は未だ拒否の姿勢を貫く。

 

「だからといって二人とも同じ立場で潜入する必要はないはずです」

「護衛対象の二人はどちらも生徒なのだから、問題はないよ。むしろ二人とも生徒として潜入してもらった方が都合がいい」

「だからといって女装は無理です……」

「とりあえずやるだけやってみようよ。話はそれからでも良いし」

「……うぅ」

 

 リスティには弱いのか、恭也は弱く呻いた。

 

「な、恭一郎もそっちの方が良いよね」

「うーん、別に修ちゃん以外の子には興味ないんだけどねー。確かに面白……都合がよさそう」

「だってさ恭也。覚悟決めちゃいな」

「……うぅ」

 

 ……途端、後ろに構えていたシールド3が襲いかかる。

 殺気がなかったため、恭也は咄嗟に反応できずに捕まれた。

 

「さて、恭也殿。参るぞ!」

「や、やめっ……」

「ほれっ!」

 

 先ほどの修史のように変身させられるのだった。

 もはや諦めがついたのか修史のようには暴れず、意外にスムーズに変身が進んでいく。

 ただやはり、

 

「いや、試しですから剃る必要はないんじゃ……」

「ですからそれを付ける必要はまだないんじゃ……」

「……って何でそこ揉むんですか!?」

 

 いくらかの反抗はしていたが。

 

 

 そして20分ほどで変身、もとい変装は終わった。

 そこには美女、というよりは麗人に近い姿があった。

 

「うーん、これは予想外、かな?」

「そーだねー、でもやっぱうちの修ちゃんに比べると無理があるよねー」

「…………」

「…………」

 

 まず身長が176cmもあり女子としては高いこと。

 そしてやはり修史に比べても肩が少し出てしまうこと。

 そして、

 

「やはり無理ですよ」

 

 声もまた少し女子と言うには低めである。

 ちなみに修史は身長は女子にしては少し高い程度で、肩もそれほど出ているわけでもなく、

 また声に至っては少し高くするだけで女子とほぼ変わらないという逸材である。

 それに比べるとやはり無理があった。

 しかしリスティは満足そうに頷くと、

 

「恭也、もう少し声のトーン上げてくれない?」

「……アー、アー……こんな感じですか?」

「うん、そうそう」

 

 リスティの指示に従い、声のトーンを上げる恭也。

 するとどうだろうか、

 

「これだったらハスキーボイスって感じだし、丁度良いと思わないかい?」

「……驚きだね。うちの修ちゃんはもうとにかく可愛いーだけど、恭也君は格好いいねー」

「だろ? やっぱボクの目に狂いはなかったね」

 

 途端に賞賛の嵐。

 課長も認め、更には修史も少し見とれていた。

 格好いいといわれる恭也に、少し嫉妬もしていたが。

 

「本気ですか?」

 

 それでも当の恭也は懐疑的、というか反対の姿勢のままだ。

 ただでさえ女学院への潜入と言うだけで嫌だというのに、更に女装まで。

 誰であれ拒否したくなる状況だ。

 

「もうここまで来たんだし諦めようよ。それに修史君だけ女装させるなんて、そんな薄情なことは言わないよね?」

「……元からその気でしたね? リスティさん……」

「いやー、そんなことはないよ。必要に迫られたからであって……」

「……もういいです……」

 

 とうとう諦める恭也。

 その肩にぽんっ、と修史が手を置く。

 互いに交わった視線は、互いの苦労を語っていた。

 一方のリスティと課長は非常に満足そうに、女装した二人が並んでいる姿を観賞していた。

 

 

 二人の受難の日々はこうして始まる。

 

 

 

 

 


 

あとがき

 

 第一話お送りしました。

 プロローグでは恭也の名前は出てこなかったですが、最後にでてきた青年が恭也です。(この話を読めばわかりますが)

 もともとは教育実習生として潜入させる予定でしたが、uppers さんの方が教師ということで、こちらは女装にしました。

 流石に同じようなシチュエーションは避けたいですし。

 ただ書いてから変更しているせいで後半の文章は自分で読んでてもおかしいような……。

 まあ気にしない方向で。

 ではまた2話でお会いしましょう。




女装した人二人が潜入。
美姫 「凄い展開ね」
だな。次回はいよいよ潜入するのかな。
美姫 「どうなるのかしら。次回も楽しみね」
うんうん、次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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