第三話「狙われた歌声」

 

七瀬 光・・・現在売り出し中のシンガーソングライター。わずか18歳にして「天才」と呼ばれ、CSSの生徒でもある。

彼女は父が世界的指揮者、母がピアノ奏者という音楽家庭に生まれた。

そんな彼女が単独のライブを日本の海鳴で行うこととなった・・・。

無論、彼女のコンサートのチケットは完売状態である。

今回の事件はここから始まる・・・。

 

SIDE 高町家

 

なぜか今日はいつもよりも慌ただしい高町家。

「恭也、光ちゃんが気に入ったら嫁にもらってもいいぞ。」

「変なことを言うな。俺には忍がいるわけだし。」

「恭也、ありがとう・・・。」

「一夫多妻でもいいじゃないか!」

「何を力説しているんだ!」

「そうですよ。士郎さん。」

今、喧嘩しているのは高町家の長男、高町 恭也とその父である、高町 士朗である。

「まあまあ、士郎さん。こうして恭也は言ってるんだし。」

「ん、まあどうでもいいか。」

変な納得で幕を閉じた喧嘩のすぐ後、なのはがお出かけ用の服を着てやって来た。

「お父さん、早くしないと間に合わないよぉ。」

となのはの一言で慌ただしく出かける準備を始めた。

そう、今日は七瀬 光の単独ライブの日なのである。

彼女の所属するCSSの好調であるティオレ・クリステラから今回のコンサートのチケットを四枚貰ったのだった。(色々と有ったらしい)

それをフィアッセが持ってきて色々と討論となった結果、

恭也と忍のカップルとなのはと士郎がコンサートへと行くことになったのだ。

なのはは特に今日のコンサートを楽しみにしていたらしく、学校でフェイトやはやて、アリサに言っていた。

「サイン貰って来てや。」とかはやてが言ってそうである。

「さて、行ってくるが大丈夫か?」

「大丈夫よ。コンサート楽しんできてね。」

「(お)師匠、行ってらっしゃい。」

「師匠、臣上げ話待ってます!」

「恭ちゃん、フィアッセの心意気無駄にしないでね。」

「うるさい!」

「はうっ!」

「行くわよ、恭也。」

「分かったよ、忍。」

「じゃあ、行ってきます!」

といってなのはが元気よく答える。

そして、士郎の車でコンサート会場へと向かっていたのだった。

 

―約三十分後―

 

「うあー、凄い人。」

一行がついて早々目にしたものは収容人数を越すか越さないかという瀬戸際の人の列であった。

「仕方ないさ、それほど凄い人なんだからね。なんだって、ティオレさんが言うにはCSSのエースなんだとさ。」

「お父さんって光さんのファンなんだもんね。」

「もちろんだとも。」

父と娘の会話はやはりほのぼのしている。

恭也と忍はというと、二人でべったりくっついている訳で・・・

「恭也、すっごく楽しみだね♪」

「そうだな。」

「もう少し、楽しそうな顔しなさいよ。笑顔で、ほら笑顔!」

と言われ、「こんな感じでいいか?」恭也は笑みを返す。

「ッ!!・・・うん・・・。」と忍は顔を赤らめ、こちらも笑って返す。

と言った繰り返しでバカップルぶりを発揮する二人なのであった。

しばらくしてなのはが人の列の中に見たことのある三人を見つけた。

「あれ?あの人たちって?」

「どうしたんだ?なのは?」

「あそこに知ってる人がいるんだよぉ。」

「友達か?」

「うんうん、この前、お世話になったウルトラ警備隊の隊員さん。お休みなのかなあ?」

「ああ、雅樹と美沙紀か。確かにいるな。終わってから声をかけてみるか。」

どうやら恭也も面識があるらしい。

「どうしたの?」と忍も参加してくる。

「あそこに雅樹と美沙紀が。」

「ふんふん、ご夫婦での来場ですか、熱々だね。」

忍がにやっと笑い、恭也の腕に腕を絡めて

「私たちみたいにねー。」とべったりと恭也にくっつく忍。

「し、忍!」

「恭也はもっと大胆だな。」

「父さん、こ、これは!」

「お兄ちゃん、本当にご馳走様。」

「だから!」

とどこまでも騒がしい二人?なのであった。

 

 

 

 

SIDE ウルトラ警備隊(オフ)

 

「ねえねえ!雅樹〜聞いてよぉ!」

「静かにしようよ・・・。」

「美沙紀、楽しむほうが勝ちよね。」

ウルトラ警備隊の雅樹、美沙紀、雪香の三人の姿は海鳴のコンサートホールの中にあった。

どうやら制服を着ていないようなのでプライベートであるらしい。

「それにしてもあの『歌姫』七瀬 光が雪香の後輩なんてびっくりしたわ」

「まあね、私も彼女と会ったときからこんなことになるなんて思ってなかったから。」

「あと、光ちゃん本人と握手した時はそれはそれは・・・」

「あのときの美沙紀は恥ずかしかったなあ。」

ゴッ!

鈍い音とともに伝家の宝刀、ツッコミが繰り出される。

「痛いよ!。」

「乙女の夢を壊すからよ!この仕事人間!」

「仕事人間って、まじめに仕事してない、美沙紀のほうが悪いだろうが!」

この二人の喧嘩を見て周りの人が「なんか修羅場かしら」とか「夫婦喧嘩でしょ?」とか言っているのを聞くと二人は顔を真っ赤にしてもとの席に座る。

「流石、こんな所でも喧嘩って仲がいいよね。」

「「どこが!!」」

「さっきのパターンと一緒。フフフッフッ。」

まあ、こんな感じで楽しんでいるようである。

実は雪香は光の中学校時代の先輩でその縁が6年たった今でも続いていたのだ。

そこで三人が光の計らいで光の楽屋に入って話しをしたのである。

こんな様子だった。

 

― 一時間前 ―

「雪香先輩、久しぶりです!」

「光〜、いっつもテレビで見てるけどやっぱり変わってないわ。」

「うあ〜本物だ!感激です!サイン下さい!」

美沙紀は本物の光と会えて狂喜乱舞している。

対して雅樹はというと「・・・」と黙りこくったままだった。緊張している様子が良く分かる。

「気を抜いても大丈夫ですよ。リラックス、リラックス。」と光に声をかけられた雅樹は「あ、あ、はい。」と緊張が取れるどころか逆に硬くなってしまっていた。

(コレが天才の出す雰囲気か。なんか凄く威圧されるなあ。)

雅樹は天才の雰囲気を身にまとっている歳が1つしか変わらない少女に感心するばかりでいる。

ここで固まっている雅樹を見て雪香が「もしかして、光に惚れたの?」と顔を覗き込んでいった。

ギロっと美沙紀の視線が雅樹に突き刺さる。

(な、それはないよね。雅樹のことだし・・・あ、でも分からないし・・・かぁー、私しっかりして!)

どうやら雅樹のことで頭がいっぱいらしい。

それに対し雅樹は、

「なっ!そ、それはないよ!」(なんでそんなこと聞かれるんだ?) 

と鈍感ぶりを見事に発揮していた。

その様子を見て雪香と光は楽しんでいるようだった。

しばらく、二人いじりと思い出話を楽しんでいた後、光が突然あることを言った。

「そういえば先輩ってウルトラ警備隊の一員なんですよね!」

「そうよ。あと、コッチの二人は同期の鎌城 雅樹君と新里 美沙紀ちゃんよ。」

「ふぇぇぇ、すごいんですね!」

マネージャーの王生さんが近づいてきて光に耳打ちをする。

「ええ、もうそんな時間?」

「ええ、そうですよ。」

「そっか・・・」光は何か言いたげな様子だが何も言わず「じゃあこの辺で失礼します」と言い残し楽屋を出て行った。

「さあ、引き上げましょう!」雪香の声を聞き雅樹たちは楽屋を後にした。

(何か彼女の様子が変だったけど・・・)雅樹は最後の彼女の様子が気にかかっていた。

それが後に事件へとつながることも知らずに・・・

 

さて、今頃二人は何をしているかというとやはり痴話喧嘩を続けていたがまもなく開園となるブザーが鳴り、雪かにこう言われたのである。

「あっ、始まるわよ。熱々バカップル。」

「「!!」」

放心状態へと陥った二人を尻目に会場のムードは一気に盛り上がる。

そして舞台袖から先ほどとは違うドレスを身にまとい大人びた様子へと変わった光が姿を現す。

「きゃー」「わー」などの歓声が観客から上がる。雪香と美沙紀も例外でなく、かなり興奮している様子だった。

そしてオープニングを飾る曲の前奏が始まり、盛り上がりはさらに加速する。

そして歌の部分に差し掛かったとき、異変が起きた。

光の歌声が聞こえてこない。いや、声が出ないといったほうがいいだろう。

光は見る見るうちに青ざめる。

観客はマイクのトラブルと感じているようだが、雅樹は彼女の異変を真っ先にキャッチしていた。

(何かがおかしい・・・。まるで何かに声を吸い取られているみたいだ・・・)

このまま演奏を止めるわけにもいかず演奏を続けるがやはり声は出ずじまい。

そして一曲目が演奏し終わり、突然、暗幕が下ろされる。

「大丈夫かなあ?」雪香の心配そうな声。

「・・・だといいんだけど。」美沙紀も心配している。

そして放送が入り、「みなさま、申し訳ございませんが七瀬 光にトラブルが発生したために今回のコンサートは中止にさせていただきます。なお・・・。」

と中止を知らせられ観客の中には怒号と飛ばすものもいた。

「「・・・」」美沙紀と雪香は落胆し、声さえ出ない。

そこで雅樹が「いったん出よう。」と提案し、この場から離れることとなったのである。

 

一方、恭也は・・・

 

「どうしちゃったのかな?光さん。」

「わからないわ。いきなり中止になっちゃったんだもん。」

「兎に角、居間は一端出るほうがいいかもな。」

となのは、忍、士郎の三人が喋っているが

恭也はあの時のある変化をうすうす感じ取っていた。

(なんだ?何かあの時、微量の魔力を感じ取ったが・・・?あれは一体?)

と心の中で考える。何かが気になった恭也は「あとで戻る。」と三人に言い、裏口へと向かった。

そこは報道陣や観客、ファンでごったがえし異様なほど混んでいた。

「恭也!?どうしてここに。」と聞き覚えのある声に振り返ると、雅樹、美沙紀、雪香の三人が立っていた。

「ああ、プライベートだ。そういう雅樹たちは?」

雅樹は同じだと話す。

そして、耳打ちで「少し、変な感じがしたんだ。」と雅樹だけに打ち明ける。

とその時、カメラの音が激しく鳴る。

振り返ると大きい帽子をかぶった光が俯いて出て来ていた。

ファンや観客の声が大きくなるが、その中を無口で出て行った。

そしてリムジンに乗るとそのままどこかへと去っていった。

後には「本当に・・・どうしちゃったの?」雪香の一人ごとが響くだけだった。

 

 

(翌日)

 

昨日の出来事があったために新聞の一面は

(七瀬 光 謎のコンサートキャンセル!!)

というすなわち光がスーパースターであることを示す記事が多く、朝から晩までその話題で持ちきりだった。

「なんか凄い扱いですよね。さすがスーパースターというか」

崎島が読み終わったスポーツ新聞を机に置き、ポツリと呟く。

「私もびっくりしちゃったんだから。一体何があったのか、知りたいわ。」

「そうそう。これもなんかいやな予感はするのね。」

(やっぱり何か別な意思が働いてたんじゃないか?やっぱりあの時の雰囲気とかおかしいし・・・)

「その辺にしておけ。ミーティングをはじめるぞ。」

と隊長の一言で周りの空気が引き締まり、いつも通りのミーティングが始まった。

「では、昨日の地球を守っている防護バリアを破壊した光線についての資料なんですが・・・」司会を務める崎島の話に昨日、コンサートに行っていた三人は首をかしげる。

「そうか。三人は知らないな。まあ、仕方ないか。見事にかぶっていたからな。」

「昨日の午後7時35分ごろに、V3からの連絡で地球の大気圏のバリアが破られているのが発見されてな。その破られたバリアの一部から光線の成分が含まれていたんです。」

「侵略者が?」雅樹が言うと、隊長が続ける。

「その線もあるな。または、この前の魔獣を送り込んできた奴らか・・・。」

「そうそう、そういえば、科学斑の調べによると光線の成分は宇宙線に何かの原因で融合されたまとまったエネルギーが光線になったのではないかという見解っす。自然現象という可能性もあるっす。ふぁぁ、眠い。」

倉科がやる気なさそうに(完全になさそう)付け加える。

「あっ、コンサートの時間と同じだ。」雪香が呟く。

「そうね。確かにその時間だったわ!」美沙紀がまくし立てるように続ける。

隊長がそんな二人をギロリとにらむ。

「シュン・・・」落ち込む二人。

「そんなことを言い出すからだよ。」古木が二人に向けて言う。

「古木さん!分からないじゃないですか!そんなこと!」

美沙紀と古木の一死即発の雰囲気(いつものことだ)

「バカモン!!喧嘩するなら謹慎にするぞ!!」隊長が必殺、権力という剣を抜く。

二人が完全に落ち着いたのを見ると、隊長はパトロールの強化を伝え、ミーティングを終わらせる。

 

一週間後の話。例の七瀬 光だが、すべてのコンサートがキャンセルされ、このまま消えていくのではないか?とまで言われるようになっていた。

まあ、ありとあらゆる憶測が飛んでいるわけだが・・・。

一週間後の警備隊も例の事件を追っていたわけなのだが、こちらの進展も見られずじまいであった。

その時、警備隊の司令室で雪香への連絡が入ったのだ。

「もしもし。あっ、もしかして王生さん?」

「!!あの光ちゃんのマネージャーさん?}雅樹、美沙紀の二人が身を乗り出す。

「えっ!!・・・分かりました。」と電話を切ると、雪香は慌てて司令室を出て行こうとした。

「どうしたんだ。雪香?」隊長が彼女を止めると、ある一言を言った。

「光ちゃんは・・・」

 

 

 

 

SIDE 高町家

 

恭也は考え込んでいた。

あの時、光が声を出せなくなった時のことである。

「うむ・・・。一体なんなんだ・・・。」

「お兄ちゃん、光さんの事件、気にしているの?」なのはが話しかけてくる。

「少しな・・・。」

「どうなのかな。やっぱり病気とか?」

「それは違う。病気なら延期したほうがいいはずだしな。」

「そっか・・・。」

「さて、なのは。少し、俺は出かけるぞ。フェイト達が遊びに来るんだろ。」

「うん。じゃあいってらっしゃい。」

恭也はなのはを置いて家を出て、ぶらつく。と携帯に連絡が入ってきた。

「アロハー!」

「・・・切るぞ・・・。」

「あははは、冗談だって。」

「で、何のようだ、智大。」

智大からの連絡である。(現在、三咲町に出張中、四話と時期が重なっている)

「コンサートのことで少し気になったんでね。連絡したんだ。」

「何か気になったのか?」

「もちろん、君にも伝えたほうがいいと思う情報がウルトラ警備隊のほうから入ったんでね。」

「警備隊から?」

「ああ、雅樹からの連絡でね、あのときのコンサートの時に・・・」

とバリア破壊事件のことと光の状況を投げかけある依頼をつけ加える。

「七瀬 光のことをウルトラ警備隊と一緒に調査に加わって欲しいんだ。大丈夫か?」

「!!それは少し・・・」

「頼む!動けないから、お前にしか頼めない。どうだ、やってくれるか?」

「仕方ない。」

「あ、後、そっちに修一郎を向かわせるから。恭也は光ちゃんについていて欲しいんだ。」

「分かった。」

こうして、恭也はウルトラ警備隊と合流することとなったのである・・・。

 

シーンチェンジ

 

緑が生い茂り、空気も澄み渡り、オーシャンビューも眺めることが出来る別荘地・・・。もう素晴らしいと言ったら完璧である。

その別荘地を疾走している一台の車は立ち並ぶ別荘、マンション、ホテルを通り越し、あるリゾートマンションの前で止まる。

その車・・・ポインターより降りてきたのは雪香、雅樹、そして正式に依頼を受けた、ボディーガードにして警備隊と関わりのある恭也の三人。

そして三人は7階の705室の前に行くと雪香がインターホンを押す。

警備隊であるということを名乗り、恭也も名乗る。

すると、部屋の中から、付き人である西浦 綾香が出てきた。

「!!」と驚く綾香だが「お入り下さい。」と中へ通した。

そしてダイニングルームにいたのは、マネージャーの王生 直美と七瀬 光本人であった。

「王生さん、光ちゃん、どうしてこんな所にいるの?」

雅樹と恭也も同感の顔をしている。

「ウルトラ警備隊の隊員さんって本当のことだったんですね。先輩!」と明るい口調で返す。

そして恭也に目を向けると「宜しくお願いします。」と打って変わって丁寧な口調で返した。

「ねえ、どうしてこんなことになったの?」と雪香が言うと王生さんが「お座り下さい。これからお話いたします。」と三人を座らせて向かい合う形となった。

気まずい沈黙が流れるなか恭也が真っ先に口火を切った。

「警備隊のお二人にお聞きしたんですが、誰かに脅されてるって言うのは本当なんですか?」

「はい・・・。」

「ウルトラ警備隊に協力を要請するということは何らかの大きなことなんですね?」雅樹がくけ加える。

「実は・・・光ちゃんは・・・宇宙人に脅されているんです・・・。」

沈黙・・・。驚いて声を出せない警備隊の二人。恭也は静かに目を瞑っていた。

「これからお話しすることは内密にお願いします。実はあの日のコンサートの時中止になってしまった理由は光の歌声が奪われてしまったんです。」

「「え!!」」驚く二人。対し恭也は(やはりあの時感じた違和感は本物だったんだな)と考えていた。

「見てもらったほうが早いかもしれません。」と王生が光に歌うように促すと光は口を開いて歌いだす。

が、歌っているような感じが見て取れるがまったく声が出ていないのだ。

「あ・・・。」有りえないといった感じで光を見るしかない雪香。

「で光さんが宇宙人に脅されているってどういうことなんですか?」

やさしく話しかける雅樹。

「お前の歌声を頂くってはっきり言っていたんです。最初は気のせいだと思っていたんですが・・・」いい終わって暗そうな顔を見せる光。

「それでも聞こえてきたと・・・。」

「はい。それでリハの時は普通に歌えたんですがあの、一曲目のときに突然、歌えなくなって・・・。」

「光さん、もうひとつお聞きしたいんですが・・・。」と恭也が聞く。

「どうして宇宙人だと分かったんですか?」

とその答えは王生が答えた。「実は、昨日電話がかかってきたんです。ここの電話番号は光ちゃんの関係者しか知らないのに・・・。」

「どんな感じでしたか?」

「ええ、『七瀬 光。貴様の歌声を返して欲しければ歌え。歌え。声を出さなくても良い、我々に歌を聞かせるのだ・・・』と・・・。」

「歌えってどういう事なのかしら?」

「一応、言われたとおり歌う練習はしているんですが・・・。」とやってきた綾香が付け加える。

「とにかくお願いなんです!光を助けてください!お願いします!」

状況が分かりにくいが雪香と雅樹は顔を見合わせると覚悟を決めた。

「分かりました。ウルトラ警備隊にお任せ下さい。この事態の解決に努めさせていただきます。」

こうして、警備隊本部に七瀬 光を保護、そして念のため、身体検査が行われることとなった。そして恭也は智大の依頼どおり、光に異変が無いようにボディガードを勤めることとなった。

七瀬光の事件はバリアの破壊事件とともに調査が進められることとなった。

 

(翌日)

 

一同が司令室に集まる。

そして光の検査結果がまもなく報告されようとしていた。

「コレが今回の検査結果です。光さんの体の異変を科学班との調査で致しました。その結果なんですが・・・」

倉科の言葉が詰まったことを気にする一同。

「大変なことが分かりました。」

「うん。では詳しい説明を頼む。」隊長の声が響くと倉科はパソコンに彼女のレントゲン写真を映し出す。

「彼女の頭部のレントゲンなのですが、彼女ののどの部分を良く見てください。」

と写真を拡大すると彼女の喉の中に黒い陰が出来ていた。

「これは・・・。」古木が呟く。

「はい。これは音を吸収するために作られたマイクロチップなんです。」

「!!」一同に緊張が走る。

「どうやって体内に埋め込まれたのは分からないですが、この黒い影の部分が歌う時の音のエネルギーを変換していると思われます。」

「ということは間違いない宇宙人の仕業か。」

「そうですね。確実な証拠としてこのマイクロチップなんですがX線の検査によって地球外の金属で出来ていることもわかりました。」

「そうか。

「しかも彼女ののどの部分に埋め込まれているから取り出すことは手術しか・・・。」

「そ、そんな・・・。それじゃあ、手術するとしたら、光ちゃんはもう歌えなくなるかもしれないの!?」

「はい。歌えという脳の命令が出たときにこのチップの特殊な力が働くことによって音を吸収しています。もし神経が傷つけば歌うことも喋ることも・・・。」

「でも!それをどうにかしなきゃ!彼女がかわいそうよ!」雪香が急に口調を強める。

「こっちだって何とかしたい!なんとか探ってみます。」

「よし、倉科。そちらのことは任せるぞ。それと雪香、雅樹。恭也君との警護を頼むぞ。」

「「「了解」」」

「それと内密にな。二人とも」

アイコンタクトをとってでて行く二人。

 

その頃・・・光は基地内にある部屋にいた。要人専用の部屋なのでほとんどホテルのスィートルームと変わらない。

歌うということは感覚に近いことがあるので練習もしなければならない。

声が出ないのでシャドーボイストレーニングになっている。

「もっと頑張って!きっと歌えるようになるはずだから!」と付き人の綾香が言っている。

「どうしてその辺にしてあげないんですか?」と恭也が思ったことをポツリと言う。

「それは光には頑張ってもらいたいんです。歌っていればきっと声が戻るから。」

(やはり何かおかしい・・・。マンションを訪ねたときの一言。それとその行動。何か綾香さんが知っているのではないのか?)恭也はそう考えていた。

同じく警護中の雅樹もどうやら気になっているらしく恭也を部屋の外へと連れ出す。

「恭也・・・。どうしても気になるんだが。」

「やっぱりか・・・。」

二人は思ったことを話し合っていく。

一方バリア破壊事件のほうはどうなったかというと御手洗 修一郎の到着で急速的な展開を見せていた。

「間違いないね。やっぱりあのバリア破壊の光線は音波をエネルギーとしていたんだ。」

修一郎は得意分野である解析で音波、つまり、光の声を基にして光線が構成されていたことを掴んだのだ。

「つまり、修一郎。あの時、宇宙人が侵入した可能性が100パーセントとなったと。」倉科が修一郎を見て呟く。

「間違いないっすね。でも、先輩も流石ですよ。ここまで解析してくれたおかげで大体理解できましたし、なんと言っても宇宙人の動きがつかめましたから。」

「じゃあ、宇宙人が動く可能性があるか・・・。ここは隊長に連絡しておくか・・・。」

 

そしてその夜、異変は起こった。

光の様子がおかしいと里美から連絡を受け、雅樹、美沙紀、雪香そして、隊長までもが部屋に向かっていた。

そして外にいた恭也が部屋へと招き入れる。

光は別途に横になっていはいたが苦しそうな顔で呟く。

「宇宙人が・・・。歌声を取りに来いって・・・・。言ってます。」

「!!何ですって!」美沙紀が興奮しながら言う。

「ポイント54地区に来いって・・・。それとボディーガードは連れてくるなって。あっ・・・。」

光は意識を失い、倒れるが恭也がしっかりと受け止める。

「行くべきです!光の歌声が返してもらえるのなら宇宙人と対話すべきです!」声を荒げて綾香が言う。

「私もそう思います。彼女にこれ以上の危険な目にあわせるわけにはいかないと思います。」

「行くのも戻るのも地獄か・・・。よし!」隊長は決心して無言でうなずくのであった。

 

司令室に集まる面々。

それぞれの指令を受け、警備隊は出撃したのである。

そして、崎島と残った隊長は・・・。

「崎島。宜しく頼むぞ。」

「お任せ下さい。隊長こそお気をつけて・・・。」

と隊長も司令室から出て行くのであった。

 

夜・・・。静かなる空気を切り裂き、疾走するポインター。

そして、里美、綾香の二人も・・・。

54地区に到着するポインター。

雪香、雅樹、美沙紀の三人はそして光、里美、綾香は降りて先へ歩を進めていく。

広く広く闇だけが支配する世界。美沙紀が先陣を切って叫ぶ。

「宇宙人!!出てきなさい!この変態ストーカー!さあ、出てきて面と向かいなさい!!」

その声で目を覚ましたのか、光が目を開く。

「あれ、どうしてこんな所に私・・・。」

「光!目を覚ましたの!?」里美が駆け寄っていく。

「光、大丈夫?貴方、宇宙人に命令されたのよ。」雪香がゆっくりと近づき言う。

と突然、苦しそうに顔をゆがめ、光が呟き始めた。

「大丈夫!?」

「ここで・・・、歌え・・・って宇宙人が・・・。」

「ここで?」

「はい。ここで歌えば、声を返してやる。だから大きな声で歌えって・・・。もし歌わなければ声は返さない・・・。いや、この二人の命も奪うって」と綾香と里美を見つめる。

「そ、そんな!!」美沙紀。

「私は大丈夫です。子のこのことを守ります。だから・・・。」と綾香がいきなり言い出し、連れて行こうとする。

「さあ、歌って。声は必ず・・・。」しかしその先の言葉は無かった。

 

明かりが突然つき、そこには隊長と古木、そしてTDFの隊員の姿があった。

また、後ろには。恭也と・・・。

 

「ど、どうして、綾香さんが・・・。」

「二人」一同が呟く。

「綾香さん。いや、アルト星人。君たちの計画もこれまでだ。」

「くっ!」綾香、いや、アルト星人は顔を歪ませる。

「どういうことですか!?隊長!?」

「ああ、彼女の身体検査を極秘で行ったのだが、その時、人間とは違う電磁波が出ていたのだよ。そして、心拍数も人間とはまったく違っていたんだ。この結果は早々と上がってきていたけども、影で動かしていたんだ。そして、今日、君たちが向かっている間に仲間が基地を襲ったんだよ。それを恭也君が退けてくれたんだ。そして本物の彼女をコンサートホールで発見したんだ。」

恭也をじっと見る偽者の綾香。

「そっか。まるで計算違い。まさか、そんな小僧にやられるなんて・・・。」と睨む。

そして偽綾香はその正体を現した。そして、光を引き寄せる!

「とうとう正体を現したわね。この宇宙人!」

銃を抜き、向ける雪香と美沙紀、雅樹の三人。恭也も戦闘体制に入るが・・・。

「フフフフフフ、君たちは爪が甘いな。少しでも動いてみろ彼女は死ぬぞ。」と人質にとったそぶりで話す。

光が盾となりうかつに撃てない。

「まあ、へまはしたが結果オーライだ。これから私たちの仲間がやってくる。地球はのっとってやる。ハハハハ」

「くっ」

「それと銃は捨てろ!貴様はその刀だ。」

銃を捨てるしかない面々。

恭也は急ぎ神速に入ろうとした瞬間

光がアルト星人の隙をついて星人の頭の突起物を破壊し地面に倒れこんだ。

「き、貴様。だがいいか。こうなれば最後にいいことを教えてやる。そのチップはのどを切り裂いて取り出さない限り、とることは出来ない。また、このままでも大爆発を起こす。面白かろう!。」

「「ふざけるな!」」雅樹と恭也の声が重なる。

「ではこのまま地獄へ行け!」と巨大化する。

「光ちゃん!」雅樹が駆け寄るが弾き飛ばされ、星人は40メートルまで巨大化。

そして、周りを火の海へと変える。

「クソ!早く脱出しなければ・・・」隊長が呟く。

「岡崎さん、光ちゃんを連れてきます!」恭也は向かおうとするが炎に行く手をさぎられ大ピンチになる。

 

弾き飛ばされた雅樹はふらふらと立ち上がるとウルトラアイを取り出し、変身した。

 

「デュワ!!」と登場したセブンは火を消していく。

そしてアルト星人と向かい合って戦闘を開始する。

星人はセブンに掴みかかるとそのまま投げるがセブンは空中でバランスを戻すとジャンプキックを浴びせかける。

吹き飛ぶ星人。その瞬間をついて、隊長たちはその場を離れ、恭也は光を抱き寄せて逃げる。

「はやく連絡をするんだ!早くしないと円盤が逃げる!」とセブンは戦いながらテレパシーで話しかけ、星人を力任せに持ち上げ放り投げる。

やはり、光に逃げられた時のダメージが大きかったようである。

「グアア。」と叫び星人は突っ込んでくる!

セブンはアッパーパンチで応戦。星人はフラフラになる。

そしてとどめはエメりウム光線!

大爆発でセブンが勝った。

それと同時に倉科の乗ったホーク三号が円盤を攻撃する。そして、円盤は四散したのであった。

 

(翌日 メディカルセンター)

 

「私、手術します。先生には申し訳ないですけど、私にはピアノがあるんです!それで誰かに勇気をあげられるなら、手術受けます。」

ベットで寝ている光が決心を告げる。

それを神妙な面持ちで見つめる警備隊と恭也。

雪香は涙を流していた。ポジティブな彼女の思考に頭の下がる思いであった。

「光。がんばってね・・・。」雪香は落胆するしかない・・・。

雅樹はある覚悟を胸にその場を後にした。

 

手術は明日であった。

 

(その夜)

 

光の枕元。なかなか寝付けない光の目の前に、昨日助けてくれたセブンが立っている。

夢なのか、ぼ〜っとした薄れていく目の前を見たくて、光は必死に起きようとしていた

「君の勇気ある決断に大きな感銘を受けた。だから私は君を助けたい。命がけで戦っている君を助けたい。だから私も覚悟を決めた。必ず君を歌えるようにしてあげる。約束だ。」

といってセブンは光の手を握る。そのとき彼女は思った。(雅樹・・・さん?)

そして彼女は眠りに落ちた。

 

(次の日)

光は目を覚まし、昨日のことを思い出す。

まさかと思って声を出したすると・・・

「!!私、歌ってる・・・。」

その連絡を受け、部屋へ向かい、驚く一同。しかし、雅樹の姿は無かった。

「良かったぁ・・。」泣いている雪香。

そのなか倉科が聞く。「どうして歌えるようになったの?」

「ウルトラセブンが私のために戦ってくれたんです。約束を守ってくれて・・・。最後まで彼を信じていたんです。セブン・・・。」

一同に厚いものがこみ上げてくる。

一方雅樹はその三日後顔を見せてある一言をいわれ、慌てるのだった。

「雅樹さん・・・。貴方の手とセブンの手・・・。一緒の暖かさでした。ありがとう、セブン。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」フリーズした・・・。

 

そして恭也はというと家に帰ると光自ら訪れて、忍たちから摂関を受けたらしい・・・。






あとがき

 

やっとできました。

由真「おつかれさま。」

かなりクロウしたわ。

由真「忙しそうだったモンね。」

これからもスローペースになると思いますがどうか宜しくお願いします。





やっぱり無事にコンサートは終わらなかったか。
美姫 「でも、解決したから良かったじゃない」
だな。いやー、本当に良かったよ。
美姫 「次回はどんなお話が待っているのかしらね」
ではでは。



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