何時か重なり合う明日(未来)へ  IFシリーズ

 

 

    王様と王妃様、異世界を渡る

 

ー魔法少女リリカルなのはシリーズ編ー

 

 

 

 

 

第2話           始まりはいつも突然に

 

 

                              (1)

 

あれからだいぶ経つ。落ち着いたところで今の状況と亜空間に置かれた自分たちの別荘(手持ちの別荘の中でこれにつながったのは予想していなかった。後日に詳細を明かす予定)にある資産と資材の備蓄を確認し、士郎さんのコネをフルに活用して戸籍の捏造(限りなく本物に近い贋物)。宝石と貴金属の売却を行い資金を調達。(かなり巨額)銀行において口座の開設、海鳴市役所に転入届と婚姻届を出し社会における基盤を整える。日常生活では士郎さん夫妻の経営する喫茶翠屋の臨時店員をしつつ俺は恭也君と美由希ちゃんの剣の練習相手。さつきは高町家の家事と美由希ちゃんの料理の指導(スパルタ教育方式)をしているが・・・さつき曰く、「味付けの時に目を盗んでオリジナルの味付けをしてしまう癖を徹底的に矯正すれば普通に食べられる・・・かも?」らしい。・・・前途は多難な様である。

なのはちゃんには亜空間の別荘の敷地を提供し、そこで魔法の特訓と実戦形式の訓練相手。なのはちゃんのパートナー、インテリジェンスデバイス・レイジングハートと情報交換、魔法関連のアドバイスをしてもらう。

 

 

周囲の人間関係の構築も上々でご近所には「高町さんを頼ってやってきた美男美女の若夫婦」として認知され、月村姉妹となのはちゃんの親友、アリサ・バニングスを紹介され誼を結ぶことができた。

 

 

今日、翠屋の人手が充実していることもあり海鳴図書館でより知識を高める為に法律書を中心に書物を読み進める。3時を過ぎた頃に見知った者の気配を感じ顔を上げて感じた方向に向けると月村すずかが閲覧スペースに入ってきた。法律書を閉じすずかに歩み寄るとすずかが気付いた。

「こんにちわ、すずかちゃん。学校の帰りかい?」

「こんにちわ、裕一お兄さん。はい、そうですよ。裕一お兄さんは?」

「俺は今日は翠屋のシフトから外れてるから、知識の増強に図書館を利用しているんだ」

すずかとともに歩く。

「そうですか」

「すずかちゃんは?」

「わたしは借りていた本を返して新しい本を借りようかと」

すずかに笑顔を向ける。

「そうか、すずかちゃんは読書家だったんだ。」

「はい」

笑顔を返すすずか。

児童文学の棚列にさしかかると車椅子の少女が明らかにその身では届かない目当ての本に向けて懸命に手を伸ばしていた。

「・・・・・・」

すずかはなにかを決意すると小走りで車椅子の少女に駆け寄り、伸ばした手の先にあった本を抜き取って車椅子の少女に差し出した。

「この本でで良かったかな?」

「あ、ありがとう」

車椅子の少女は本を受け取るとはにかんですずかに感謝の言葉を告げた。

 

 

裕一は読み終わった後の本を元の場所に戻しその足で自動販売機で三本のミルクティーの缶を買い二人の少女達の所に戻る。

二人は終始微笑んで語り合っており最初のぎこちなさはすっかり無くなっていた。

「二人とも友達にはなれたようだね。ああ、俺の自己紹介がまだだったな。俺の名前は、柊裕一。職業は喫茶店のアルバイト店員で・・・すずかちゃんのお姉さんの同僚ってことになるのかな?ま、ともかくよろしくな」

二人にミルクティーを手渡し少女に自己紹介の口上を述べる。

二人がミルクティーを受け取り御礼を口にして、

「私は八神はやて。よろしくな、おにいさん」

はやてははにかみながら自分の名前を裕一に伝えた・・・。

 

 

                    (2)

 

 

深夜。

 

風呂上りの裕一とさつきは客間で今日あった出来事を肩を寄せ合って語り合っていた。今は図書館で出会った車椅子の少女、八神はやての話題である。

「私もその子に会ってみたいです」

さつきははやてに興味を示した。

「さつきもはやてが気に入ると思うぞ。早いうちに翠屋を訪ねてくるようにいったからな。近いうち逢えるさ」

「楽しみです」

さらに語り合いそろそろ床に就こうかといううちに空気が一変する。

「なんだこれ?」

「さあ?でもこれって・・・結界?」

さつきは自分の経験からおおまかなあたりをつける。すると二階からあわてた足取りで誰かが駆け下りて家から飛び出していく。

「いまのは?」

「なのはちゃんだな。・・・心配だ、追いかけるぞ」

「はい!」

 

 

手早く着替えて後を追い、市街地の中心で追いついたときにはなのはは赤い少女に戦槌で吹き飛ばされビルに叩き込まれたところだった。

「ちっ、急ごう!」

「はい!」

ビルの非常口を蹴り壊し中に侵入。階段を駆け上がりなのはがいる所にたどり着くとなのはとなのはを抱き起こした少年。

そして赤の少女に光刃の大鎌を突き出し対峙している黒衣の少女。

「・・・・・・なのはちゃん、大分手酷くされたみたいだな?さつき、診てやってくれ」

「はい。さ、なのはちゃん診るからね」

二人は周りを気にせずなのはの傍につき、さつきがなのはを診る。

「あ、あなたたちは?」

少年が尋ねる。

「なのはちゃんの家で厄介になっている。まあ、居候ってところだ」

赤の少女と黒の少女が言い合う中、裕一たちはなのはを囲んだ中で言葉のやり取りを始める。

「君たちの事はなのはちゃんから聞いている。君がユーノだね。で、あの子がフェイト」

「は、はい」

ユーノが肯く。

「俺は柊裕一。こっちがさつき」

「よろしくね・・・。裕一さん、なのはちゃんの怪我、酷くはないです」

「そうか」

「なのは・・・よかった」

少年・・・ユーノが安心する。

その間、赤の少女とフェイトの問答が物別れとなり、赤の少女がその場から飛び出す。

「ユーノ、なのはをお願い」

フェイトはそう言うと赤の少女を追いかける為にビルから飛び立つ。

「さつき・・・なのはちゃんの治療を」

「はい」

さつきはなのはに手をかざすと淡い光が舞い踊りなのはを包み込む。

「ユーノ君・・・どうして・・・」

「・・・フェイトの裁判が終わって連絡を取ろうとしたら取れなくて、局のほうで調べたら広域結界が張られていて、急いで僕とフェイトとアルフが先に来たんだ」

「・・・アルフさんも?そう・・・ありがとう、ごめんね」

「・・・話しているところすまないが抜き差しならない状況になりつつあるので簡単に聞くぞ?」

「は、はい」

「この結界の解呪。君単独で可能か?」

「ええっと・・・時間をかければできますが・・・すぐには無理です」

裕一の問いにユーノが答える。

「・・・俺もこの手の結界の解呪は不得手でな、力技でならどうとでもなるんだが周りの被害が洒落にならないので最後に取っておきたい。相手方に増援が来たようなのでな、俺も前に出なきゃならん」

裕一が破壊された窓に向く。

「あ、貴方も魔導師なんですか?」

「まあな。もっとも君達とは技術体系が違うがね」

「・・・そんな・・・この世界には魔法文明が無いはずなのに!」

「その話は後だ。時間は稼ぐから君はここでなのはちゃんの護衛と結界の解呪を。

さつきもここで護衛と治療を」

「解りました、裕一さんもお気を付けて」

「・・・なるべく早くに済ませます」

裕一は破口に立つ。

「頼んだよ。・・・・・・フュージョン、テックセット。PWA『シャドウ・ウィルダー』アーミング」

言の葉に力を込めて呟くと光の瞬きの後には・・・・・・

 

黒紫を主体として金と象牙色が要所要所に配されたSFじみた全身鎧を着込んだ人間の姿。

 

「・・・出撃」

 

背中の翼状の推進器から光の粒子を盛大に吐き散らし破口から飛び立つ。

 

 

上空に上がった裕一の眼に入った状況は・・・・・・

 

フェイトとアルフが三人に囲まれ苦戦している所であった。

 

「ちっ。交戦記録開始、フォトンアサルトスタンバイ」

舌打ちをして左背に保持していた銃を抜き取り構え照準。さらに速度を上げ突撃する。

「ターゲットインサイト、クラウン1バンデットインレンジ。フォックス3!」

銃口から矢継ぎ早に放たれる光の弾丸。

標的の三人はその場を飛び離れ光弾を避わす。速度を上げている裕一はその間に距離を詰めきり体格の良い男を足刀で蹴り弾く。

「がぁ!」

「ザフィーラ!?てめぇ!邪魔すんなよ!」

背後から戦槌を振りかぶって裕一に殴りかかる赤い少女。

裕一は振り返らずに体を左に滑らせ死に体となって体が泳いでいる少女の首筋に手刀を叩き込む。少女は体の制御を無くしてビルの屋上に落下する。

「紫電一閃!」

横合いから長剣で切りかかられるが、

「・・・・・・グラビティーウォール」

積層五重の魔法陣で生成された不可視の壁で阻んで弾き返す。

 

 

「・・・・・・あの人・・・強い」

「フェイト・・・何だい、あれ?」

圧倒的な裕一の戦いに魅入られるフェイトとアルフ。

(・・・・・・聞こえるかね?)

頭に響く男性の声。

(あなたは?)

(レイジングハートから君達の念話波長を予め聞いていたんだが同調するのに手間が掛かってな、俺の名、この世界では柊裕一と名乗っている。まーなんだ、なのはの家の居候ってところだ)

(所でなのはは?)

(俺の妻のさつきとユーノが側に付いている。安心していい)

(そうかい。よかったね、フェイト)

(うん)

(安心したところで説明するぞ。今ユーノが結界の解呪を試みているが時間が掛かるらしい)

三人の猛攻をいなしながら念話を続ける裕一。

(・・・俺もこの手の結界の解呪は不得手でな、力技でならどうとでもなるんだが周りの被害が洒落にならないので最後に取っておきたい)

((・・・・・・))

(時間を稼ぐために協力して欲しい)

(・・・・・・わかりました、あなたに協力します)

(フェイト?)

(この状況じゃ私達二人だけでは不利、判るよね、アルフ)

(・・・解ったよ、あたしも協力する)

(君らに感謝を。プランを説明する。彼らのプライドを刺激して一騎討ちの状況を作り出し足止め、その間君らは俺となのは達の中間点で阻止線を構築、不測の事態に備えつつ結界の解呪をサポート、解呪の時間の短縮を図る)

(あんたひとりで大丈夫なのかい?)

(任せろ、必ず勝つ)

(・・・・・・あの)

(なんだ?)

(気を付けて)

(・・・なのはは良い友達を持ったな・・・。まかせろ)

 

 

フェイトとアルフが後方に下がったのを見届け右背に保持された自分の愛剣を引き抜き切っ先を紫の女剣士に向けて口上を言い放つ。

「我が名は裕一・アレクサンドル・ゼオ・ラティオ・イサレリアス!平行世界地球、イサレリアス皇国の建国王なり!貴殿の名は!?」

「私の名はベルカの剣の騎士シグナム。闇の書の主を守りし守護騎士ヴォルケンリッターの将!」

紫の女剣士・・・騎士シグナムは正眼の構えで切っ先を裕一に向け名乗り返す。

「ならば、騎士シグナム!我は貴殿に一騎討ちを所望する!我、貴殿らの望み知らねども貴殿らの望み叶えたくば我を倒して見せよ!返答はいかに!?」

「シグナム、あいつの言う事なんかほっとけよ!」

赤の少女は裕一を睨み付けて一騎討ちを受けるのを反対する。

「…いや、ヴィータ。ああも正々堂々挑まれ断れば私は騎士を名乗れなくなる。……ザフィーラ、お前も止めるなよ?」

「しかたあるまい」

ザフィーラは渋々一騎討ちを受けることを認める。

「だけどよぉ・・・。うう、わーったよ!」

ヴィータはそっぽ向いてむくれる。

「私が見知らぬ国の王よ貴方の挑戦、我が剣炎の魔剣レヴァンティンと共に受けて立つ」

「・・・貴殿に感謝を。ならばいざ!」

「尋常に!」

 

「「勝負!!」」

 

 

 

続く・・・

 

 

 

 


後書き

 

あえて言い訳もしない。後悔もしない。頭の中でこねくり回したらこう成った・・・。

 

次は何時になるだろう・・・。orz__





ヴォルケンリッターと対決!
美姫 「裕一の相手はシグナムが」
さてさて、どうなるのやら。
美姫 「うーん、さつきがなのはの傍にいて、シグナムを裕一が」
となると、フェイトがヴィータになるのかな。
美姫 「どうなるのかしらね」
次回を待つしかないな。
美姫 「それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。



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