悠久の剣〜魂と共にあるもの〜

 

 

 

取れる可能性は取ることができた

でも彼を呼んだ事は正解だったのだろうか?

彼ならば彼女を護ってくれるだろう

でも彼の足枷にはなってしまうのではないか

彼の立場はまだ磐石とはいえない

それに事件は収束したがまだ決着はしていない

私もできる限りの事を

まずは…彼女と打ちける事からかしら

それに私、娘も欲しかったのよね

 

 

 

5幕 〜 物語の閉幕と家族への思い

 

事件が終わり、治療を終えた恭也とリンディがブリッジでゆっくりしていた。

 

「お疲れ様です、リンディさん」

 「お疲れ様、恭也君」

 「ごめんなさいね。折角の休暇だった所をとんでもない事件に巻き込んでしまって。貴方にはここまで出番があるとは想定してなかったんだけど」

 「構いませんよ。今回は感情で動いてしまったり色々教訓を拾う事もできましたから。それにいくつか思う所がなかったわけじゃないですし」

「思うところ?」

恭也の言葉にリンディは首をかしげる。

「プレシア・テスタロッサ…もしかしたら彼女は俺だったかもしれない」

「………」

「もし、あの時に失っていたら、もし皆に出会えなかったら俺は力を行使していたかもしれない…それに俺は、失った者の気持ちもわかるつもりです。だからこそ許せなかったのかもしれません…フェイトのことがなかったとしても。すいません…これは唯の感傷にすぎませんね」

「そうでもないと思うんだけど…気にしないで」

恭也の事情と能力を知っているリンディは、恭也の表情が少しでも曇りあるものを嫌うように即答する。その言葉に恭也は暗くなりかけていた表情を元に戻す。

 

「報告と頼みごとが一ずつ…いいですか?」

 「あら? 何かしら? なのはさんの事かしら? たいていの事は貴方の判断に任せるけど」

「高町なのは…彼女に関係する事ではないですね」 

「そっちじゃないとなると何かしら」

 「被害者を送りましたよね?」

「ええ」

 

恭也のその言葉にリンディは表情を硬くする。

 

「彼女からのフェイトへの遺言があります」

 「え?」

 

 それこそ意外そうな顔をする。まだ報告を受けていないため、どうしてリニスが送られてきたのかも実は判らなかったのだが

 

 「彼女は生かされていた、駆動炉と融合させられる形で。しかも、解放されない限り痛みは永遠に消えない状態で。駆動炉を封印した際に彼女は少しだけ…命の灯を揺らしながら、言葉を遺しました…フェイト・テスタロッサへ向けて」

 

恭也がそう言い切ったのをリンディは驚きながら続きを促す。

 

「彼女に対する行動は俺の権限で出来る範囲ですので本当は問題が無いといえば無いんですが報告はしておかないと思いまして。それに…フェイト・テスタロッサのデータを見たのならば、彼女は…リニスはフェイト自身に弔ってほしいと思っているのですが」

 

「……」

 

「悲しみを背負わせる事になるかもしれません、母親にああいった形で別れさせられて、この上さらに辛いことを押し付けるのかと思われるかもしれませんね」

 

 自分でも今の段階で話していいものかと迷うことでもある。リンディの沈黙も同じことだろう、だが…最後に見送るのならば今しかないということが大切な事だと考えているため恭也はかまわず続ける。

 

「今、余計なことを背負わせるのは確かに迷いますけど…リニスを自分が納得行く形で見送ることができるのは今しかないということ…でもそれすらも、屁理屈かもしれません。ただ彼女の想いを受け取ったものとして、最後は俺よりも、あの娘に送ってあげてもらいたいと思うんですよ」

 

「見せてもらえるかしら?」

 

「…えぇ」

 

そう、記録してあるリニスとの最後のやり取りをリンディに見せる。

 

「…判りました、とゆうか之を見たら、それは出来ないとは言えないわね」

 

そうリンディは苦笑いをする。

 

「こちらは、承認しましょう。戦技教導隊副官 不破准将。それとも提督か〈黒翼の戦神〉がいいかしらね?」

 

 リンディは意地悪く恭也をそう呼ぶ。

「やめてください」

 

わざわざ階級と通り名で呼ばれ肩を竦めながら苦笑いする。階級…恭也は戦技教導隊のなかでもトップクラスの地位と、艦船を任せられるだけの提督の地位を得ている…クロノの師であるリーゼ姉妹は「まぁあんだけ強ければ…一人であの戦局をひっくり返せるとかありえないし」と恭也の階級について語ったことがある。

 

「じゃ俺は、彼女の遺言を伝えてきます。それでは準備のほうも、よろしくお願いします」

 

「ええ、それは任せて」

 

それを聞き恭也はブリッジを後にしようとするが、思い出したようにリンディに告げる。

 

「そうだ報告のほうですが…確かF・A・T・E計画でしたか…あれはほぼ完成してたのかもしれませんね」

 

(足りなかったのは時間だろうな…。憶測にすぎないがアリシア・テスタロッサは…)

リンディの反応を待たずに恭也はそう思いながらブリッジを出て行く。

 

 

     ◆ アースラ医務室 ◆◆

 

アースラの医務室には、時の庭園での戦闘で傷を負い治療を受けているなのはとクロノ、それぞれの治療に当たっているエイミィとユーノがいた。

 

「あれ? フェイトちゃんは?」

 

「彼女はこの事件の重要参考人だからね。申し訳ないがしばらく隔離になる。今回の事件は一歩間違えば、次元断層すら起こしかねない重要な事件なんだ、時空管理局としては関係者の処遇には慎重にならざるを得ない」

 

「そんなっ…いたたたた…」

 「ちょっと、なのは動かないで」

 

涙目になりながら、なのははユーノに包帯を巻いてもらう。

 

 「ただ、出来ることの事はする。それについては信用してほしい…ってエイミィこれやり直し」

 

 頭に包帯を巻いてもらっていたクロノだが、包帯をリボン結びにして満足気な顔をしているエイミィに文句を言う。

 

 「ちぇー、ちょっとくらいいいじゃないの〜」

 

渋々ながらエイミィは包帯を直していく。

 

 「フェイトちゃんの事はクロノ君を信じてるんだけど…あの、お兄ちゃんは?」

 

 その言葉に、クロノとエイミィはどう説明しようか迷う。

 

 「提督は無事に戻ってきている、とゆうか君達をここまで無事に転送してくれたのも、提督だしね。それに庭園で言ったと思うが、本人に直接聞いてほしい…それに話す機会なら僕が必ず作るから今は治療に専念して」

 「ただ、提督と話すなら覚悟が必要なのは理解しておいてね? 色々、複雑な人だから」

 クロノは迷った末そういい、エイミィは補足するようにそう付け足す。

 「うん…」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

そして、いろんなことが終わりました。私とユーノ君と出会ってから、今日まで終わって

みればなんだかあっという間の日々、次元振の余波が治まるまでの間私たちは数日アースラの中ですごして…それから

 

「今回の事件解決について、大きな功績があったとして、略式ではありますが、ここに功績を称え表彰いたします。高町なのはさん、ユーノ・スクライア君…ありがとう」

 

ちょっと緊張の中で表彰なんてされていました。クルーの皆さんに囲まれてかなり緊張していたのですが…探してみてあの人の姿を見ることはできませんでした。

 

 表彰を終えてクロノと共に、廊下を歩いているときに。傷の治療で細かく聞けなかった事をなのは問いかける。

 

「クロノ君、これからフェイトちゃんはこれからどうなっちゃうの?」

 「事情があったといえ、彼女が次元干渉犯罪の一端を担っていたのは紛れも無い事実だ…重罪だからね、数百年以上の幽閉が普通なんだが」

 「そんなっ!?」

 「なんだがっ!」

 

 クロノはなのはの言葉に被せる様にして続ける。

 

 「状況が特殊だし、彼女が自らの意思で次元犯罪に加担していなかったこともはっきりとしている。あとは偉い人に、その事実をどう理解させるかなんだけど…その辺にはちょっと自信がある。心配しなくていいよ」

 

(偉い人…兄さんに理解させればいい話だしね…)

 

そう考えるが表情には出さずなのはに告げる。だがクロノはこの言葉が恭也にどんな意味をもたらすのかまでは考えていなかった。

 

「クロノくん…」

 

「何も知らされず、ただ母親の願いを叶える事に一生懸命だった子を罪に問うほど、管理局は冷酷な集団じゃないから」

 

「クロノ君ってもしかして凄く優しい?」

 

「なっ!?」

 

そうなのはに下から覗き込まれながら言われ、クロノは真っ赤になる

 

「はは…」

 

その様子を眺めていたユーノはちょっと面白くなさそうに笑う。

 

「執務官として当然の発言だ、別に私情ははいっていない」

 

「あはは、別に照れなくていいのに」

 「クロノは照れ屋だからね〜、素直になれないんだよね?」

 「「え?」」

 

 クロノの背後から、自分と同年代くらいの女の子…黒い髪を今日は後ろでポニーテールに纏め白いワンピースに身をつつんだ快活そうな少女、ラスティが顔をだす。正直それになのははすごく驚く。ここに自分と同い年の女の子なんていないと思っていたのだから。

 

「ラスティ! 余計なこと言わないでくれ。それにどっから沸いてでた?」

 「ん〜、あえて言うなら…そこから? それに沸いて出たって酷くない? 本当はなんかクロノが格好つけてたから面白い話をきけるかなぁって思ってね」

 

 ラスティは先ほどまで気配を消して隠れていた先を指差し、にこにこと笑っている。

 

「そこって…思いっきり柱の影じゃないか…しかも盗み聞きだし」

 「いいじゃない、お兄ちゃんなら気配くらい読めとか言いそうだけど」

 「あの人なら…言いかねないな…いや確実に言うな。修行が足りんと」

 「あの〜、その子はどちら様?」

 

ラスティとクロノの掛け合いが終わりそうも無いので、なのはは質問する。

 

 「あぁ、彼女はラスティといって、臨時の船のクルーなんだが…本当の所はオプションだな」

 「オプション…まぁ否定はしないけどね。で、貴女が高町なのはさん?」

 「えっ? なんで私の名前を?」

 「ってそれくらい知ってなきゃアースラに乗ってるのか怪しくなるよ、小さな勇者さん」

 

 そうラスティは手を振りながら笑みを浮かべる。なのはは話してみて、明るい子だなと漠然と思ってるだけだったが、ラスティはなのはを観察していた。

 

 (この娘が、お兄ちゃんのこの世界での妹さんか…)

 

 「もう時間もないけど、よろしくね? え〜となのはさん?」

 そう言いながらなのはに手をだす。

 「うん、こちらこそ。あ…わたしのことはさんで呼ばないでほしいなぁ」

 なのはは、なのはで新しい知り合いが出来たと喜んでいる様子である。

 

探査(スキャン)…マスターとの接触でのパラドックスの可能性…データ取得…解析(アナライズ)…)

 ラスティが握手を求めたのはいわゆる探査の為…彼女と会うことで、今安定している時間がねじれることが無いか? 本当の事を言えば、この世界でのもう一人の自分と会ったところで、過去、未来からきたのでは無く、もう一つの時間軸から来ているだけなので平気なのだが…保険のためである。そして究極的に言うなら恭也の身になにもおきないか。

 

「ラスティ、提督との時間つくれそうか? なのはが帰る前までに」

 

ラスティが出てきた理由もうっすらと悟っていたクロノがラスティに言う。

 

 「ん〜…多分平気かな? それに、なのはも気持ち悪いでしょ? すこしはすっきりさせないと」

 今握手のしている相手が、兄だと思っている人の関係者だと今の会話でなのはは悟る。

 

 「ラスティちゃん…」

 「帰る前までには、大丈夫だと思うよ? お兄ちゃんは迷ってるみたいだけどね。それじゃ私はいくね〜」

 

 なのはの呟きに、独り言を返すようにラスティは何事も無かったように、歩き出す。

 

 「多分、もう少ししたら自室に戻るだろうからそのときにいくといいよ? あぁ…クロノさっきの台詞だけど管理局は…いえここで言う事じゃないわねなんでもない。忘れてね〜、それじゃお昼にまた〜」

 

(冷酷な集団じゃないか…とんだ皮肉よね…ねぇクロノ、管理局はそんな甘いところじゃないよ…。貴方は知らないだろうけどね…そうじゃなきゃお兄ちゃんだって…)

 そうアドバイスらしきものを残し、ラスティそんな事を考えながらは恭也の部屋に戻ってゆく。

 

「クロノくん…今のって」

 

「理解しかねるけど…提督には僕のほうからも言っておくからどうにかなりそうだよ」

(ラスティ…君は何を言いかけた?)

 

「うんっ」

 

胸のもやもやを晴らすように、なのはは頷いた。それを見てクロノは恭也の部屋へ向かう。

 

「提督…失礼します」

 

そうノックしてなのはとの事を説得する為に、恭也の私室に入ってゆく

 

◆ アースラ艦内 食堂 ◆

 

恭也と話す機会が無いままなのははアースラで最後の食事をクロノ達と共に食事を取っていた。プレシアが行おうとしていた事を説明してもらいながら

 

「あらゆる魔法がその究極の姿にたどり着き、叶わぬ望みはないとすら言われたアルハザードの秘術…時間を遡り過去を変える魔法、死者を蘇らせる魔法、彼女はそれを求めたのね」

 

「はい」

 

「でも、魔法を学ぶものなら誰でも知っている。過去を変えることも、死者を蘇らせる事も決して出来ないって」

 

「だから、その両方を望んだ彼女は御伽噺に等しい伝承にしか頼れなかった…頼らざる得なかったんだ…」

 

リンディの言葉に頷いたなのはに続き、ユーノ、クロノが順に考えを述べて行く。最後のクロノの言葉は魔法を学んできたものなら当然の事なんだろう…しかしそれを否定する言葉が背後から聞こえる

 

「御伽噺ね…なんで全てを否定しちゃうかなぁ」

「そうだな、少なくとも先ほどの一つの事なら実際に可能なんだが」

 

「なっ」

 

クロノが驚き後ろをふえりかるとそこには、食事のトレーを持ったラスティと恭也が居た。

 

「あっ…」

 

「やっほー」

 

「すまんが、一緒させてもらう」

 

そういいながら二人は、なのは達の隣に座る。

 

「それで…兄さんにラスティ、さっきの言葉だがどういうことだけど?」

 

「ん〜? アルハザードはあるよ?」

 

なのはの反応も気になるがそれよりも、クロノはラスティの言葉が気になっていた。

 

「古の都がいまだ存在しているとでも?」

 

「言葉道理あるよ? まぁ御伽噺とは違うものであるんだけどね。そもそも古代(ロスト)遺産(ロギア)がなぜ存在するのか、今の技術に関してだって考えてみれば…まぁそれは後々説明してあげる、てかそんな話をしに来たわけじゃないし」

 

ラスティがそういうと全員が恭也を見る。

 

「それじゃ…ちょっと私たちは席をは外しましょうか」

 

リンディがそういってクロノとエイミィを伴って席を立つ。

 

 「すみません…後から来たのに」

 「気にしないでちょうだい」

 

 そういって少し離れた所で三人は様子を伺う。

 

 

 「さて、高町なのは…君は何から聞きたい?」

 

 そう恭也はあえて妹と接するような対応を取らずそうなのはに問いかける。当然である恭也はなのはの兄では有るが、この時間の高町恭也ではなく存在するはずの無い唯のイレギュラーなのだから。

 

「えっと…あなたは私のお兄ちゃん…高町恭也さんじゃないんですか?」

 

 恭也の態度にどうしていいか迷わずに居られないが一番気がかりな事を聞く。

 

 「どう答えたものかな…確かに俺は『なのは』の兄ではあるが、君の『兄』ではない」

 「え…それはどういうこと?」

 「ん〜…ちょっと複雑なんだけどね。お兄ちゃんは簡単に言うこと違う時間でのあなたのお兄さんって言えばいいかな」

「俺は確かになのはという名の妹はいる。それは君ではなく、向こうのなのはだ。だから俺は君の兄ではない」

 

なのはの疑問にラスティが簡単に説明する。ぽつぽつと恭也の身に起こったことを多少誤魔化しながら話してゆく…ここに来るまでの経緯等全ては聞かせるものでもないのだから。

彼が一度死に掛けている事や向こうの彼女の身内が死んでいる等といった話をする必要も無い。

 こうして直接話をしてみてなのはは思う…確かに「私」の兄ではない、話してみると兄とは違うと強く認識できる。似ていても在り方に違いが大きく感じる。しかし、違うといってもこの人は間違いなく自分の兄だという事をなのはは感じてしまう。

 

「やっぱり…おにいちゃんだ…色々あったのかもしれないけど、違うのかもしれないけどやっぱりなのはのお兄ちゃんだ」

 

「なのは…」

(まだ…向こうのなのはを重ねてしまうか…いかんなそれだけは)

 

「お兄ちゃんが増えちゃった、なんか嬉しい」

 (お兄ちゃんは私の初恋だったんだと思うんだけど…この人は…)

 

なのはは吹っ切れたように笑みを浮かべる。その笑顔は恭也が本来の時間に忘れてきた物だった…この場で涙を見せることはしないが、純粋に嬉しかった。

 

「…こっちの家族は元気か?」

 

なのはの笑顔を見て、この時間での家族のことを聞いてみる。

 

「おかーさんも、お姉ちゃんも、お兄ちゃんも、お父さんも皆元気だよ!」

 

その言葉に恭也は驚く…

 

「……士郎さんが生きているのか」

 

 (そうか…あそこが運命の分かれ道だったのか。晶やレンが居ないのも頷ける…。だが父よ、向こうでもあんたにはなのはの為にも生きていて欲しかったよ…いや…これは居なくなってしまった俺に言える台詞ではないか)

 

恭也は士郎が生きている事をしってそんな事を考えるが表情には一切出さないため。なのはは気にする事もなく話を進める。

 

「にゃ? うん、生きてるよ。私が本当に小さいころに大怪我をしてたけど…だから私は少しだけ…」

 

「ん?」

 

恭也はとぼけては見るがなのはが何かを言いかけたのを聞き逃しては居なかった。

 

「おとーさんが生きていてくれたのは嬉しかったんだ…おねーちゃんは付きっ切りで看病、あかーさんもお仕事、おにーちゃんも…そのときに私は…」

 

恭也はなのはが何を言いたいのかはっきりと解った。向こうで自分がなのはに甘いと言われていたのも、父の代わりであり二役を背負っていたから。だがそれでも自分はなのはに寂しい思いさせてたと思う。なのはが生まれてから少しは自分にも自信が無かった。だからこそ、その間を埋めてくれたレンと晶の存在に感謝をしたり無いと思っている。

 

 「そういえばお兄ちゃんの周りの人ってどんな人がいたの? こっちでは月村忍さんと恋人同士になってるんだけど向こうにも同じ人っているのかな?」

 

なのはの一言でコーヒーを口にしようとしていた恭也の時が止まる。

 

「すまない…なのは、何か言ったか? 誰と誰が恋人だって?」

「え? お兄ちゃんと月村忍さんだけど」

「忍とだと…あれと恋人考えるだけでも涙が出てくる勘弁してくれ」

 

過去の自分の身に起きた人体実験という名の遊びを思い出しながら恭也げんなりしながら答える。なのはは恭也の様子を見てやっぱり違う人だなと思う。

 

「あのね、あのね」

 

色々話そうとするなのはの話に恭也は耳を傾けてゆく…もう話すことも無いだろうと思っていた家族との、家族の代替(オルタナティブ)なのかもしれないが…それでも会話を味わうかのように。

 

 

 

 

 

そしてなのはとユーノが海鳴へと帰る朝。

「それじゃ今回は本当にありがとう」

 

「ユーノ君も帰りたくなったら連絡してね? ゲートを使わせてあげる」

 

「ありがとうございます」

 

クロノはなのはを見て頬を少し赤らめている。

 

「じゃぁそろそろいいかな?」

 

少し悲しそうなエイミィが告げる。

 

「それじゃ」

 

「うん、またねクロノ君、リンディさん、エイミィさん。…それにお兄ちゃん」

 

少し後ろで優しそうな表情を浮かべている恭也に笑みを向ける。それに恭也は軽く手を振る。分かれはちょっと寂しいけどこれが最後ではないので私はすっきりと海鳴へ家と戻れます。そして戻ってくる私の日常

 

「帰ろっかユーノ君」

「うん」

 

私は肩にのせたユーノ君にそういいながら小走りに家へと行きます。まずは心配させただろう家族に元気いっぱいに

 

「ただいま!!!

「なのはぁ…おかえり」

 

その言葉と共に姉の美由希が駆け寄って私を抱きしめてくれます。私の後ろではお兄ちゃんが優しく笑みを浮かべています。それを見て私はその辺はあまり変わらないんだと考えていました。「私」のお兄ちゃんは私の様子を不思議そうな顔をしていましたが。

夢中だった頃のことは一瞬だったけど私の心の中に残っている…けど一番心配なのはあの娘の事…

 

◆ アースラ艦内 護送室 ◆

 

恭也はなのはを送った後ラスティを伴って、封鎖されている護送室の扉を開く。

 

「ん? …あんたは何のようだい?」

 

少し俯いたままのフェイトではなく先に反応したのは、少し警戒したようなアルフだった。

 

「手厳しいな…ちょっと話をしたいんだが、…幾つか聞きたいことと伝えないといけないことが幾つか有る」

 「ええ、大丈夫です」

 ゆっくりでは有るが、反応をしたフェイトを見て二人に話をしていく。

 「二人は、リニスという女性を知っているね」

 「…何故それを? それに彼女はもう居ません、それがどうしましたか?」 

「彼女からの遺言が有るといったらどうしますか?」

 

無機質な言葉を返すフェイトに、ラスティは言葉を重ねる。驚きの表情を浮かべているがそれすらも気にせず問いかける。どうするかと?

 

 「遺言…?」

 「彼女は、時の庭園の駆動炉と融合させられる形で生かされていた…死んでいてもおかしくない状態だったものを。崩壊の前に、助け出すことはできたが…俺に出来たのは彼女を見取る事と君への遺言を持ってくることだけだった…あの行動は結果として彼女を助けられなかった」

 

 恭也は助けられなかった悔しさを思い出していた…。何も出来なかった自分の無力さをかみ締めながら。

 

 「…聞かせていただけますか?」

 「ラスティ」

 「うん」

 

 フェイトの言葉に、遺言の記録をラスティに投影させる。それを、見たフェイトとアルフの瞳から涙がこぼれる。全てを見せ、フェイトが落ち着いたのを見計らって、恭也は最後の提案を出した。

 

 「…君次第だが、彼女を見送ってあげてほしい」

 「君次第って私たち、出られないんだけど?」

 「それだったら安心して」

 

 アルフがそう言ったのをラスティが安心するように言う。お兄ちゃんなら、大丈夫と。

 

 「フェイト・テスタロッサ。彼女の見送りを頼めないだろうか?」

 「はい」

 

 フェイトはそう答え、なのは達がアースラから海鳴に戻り再開した後に、リニスを見送った。葬儀が終わり、恭也とフェイトは初めてのあのとき以来ゆっくりと話していた。

 

 「…ありがとうございます」

 「彼女の意思だ…それを尊重したのと自己満足に過ぎないさ」

 「それでも、良いんです。私が言いたかったんですから」

 

 悲しみを隠すように無理に笑おうとしているフェイトに近寄り頭を撫でる。

 

 「えっえっえ」

 

どうしていいのか判らず赤くなっているフェイトに優しい表情で語りかける。

 

「悲しければ泣いても良いんだ…自分だけで溜め込むな。溜め込んだ物に潰されそうな時は尚更な。泣けなくなる事もある、そうなってからでは遅い…今はフェイトの支え位にはなってやる…だから泣いても良いんだ」

 

その言葉と共にフェイトの瞳に涙が溢れる。

 

「うあああああぁぁぁぁ」

 

今まで見ていた、大人びた少女の姿ではなく年相応の姿で恭也の胸に泣きついた。そうだろうフェイトは聡いといっても10歳の少女であり、親を失い、近しい者を失った事に耐えられるわけも無い。恭也はフェイトの頭をゆっくりと撫でながら落ち着くまで胸を貸し続ける。

 

 「落ち着いたか?」

 「すみません…」

 「なに、誤ることじゃない」

 

恭也が肩を竦めながらそう答えたのを見てフェイトは言葉を変える。

 

「恭也さん…ありがとうございます」

 

 フェイトのその様子をみて恭也は笑みを深める。そして何か突然思い出したように告げる。

 

 「そうだ、少し時間が開いてからになるが本局に君達の身柄は移されるんだが」

 「そうですか…」

 「ただ、其処での保護観察については俺とリンディ提督に一任れるだろう、フェイト、これからよろしく頼む」

 「え?」

 

 フェイトはその言葉で疑問を浮かべる。アースラクルーのはずのこの人が何故?と

 

 「疑問に思って当然か。俺は端的に言うと、アースラのクルーじゃない。非常勤みたいなものかな」

 

 恭也の言葉にまだ疑問に残ることは多いがあとで聞けばいいだろうと思い、リニスと最後の機会を作ってくれた恭也にぎこちないが笑みを返す。

 

 「これからよろしく、フェイト」

 

「はいっ、恭也さん!!

 

今の自分にできる最大限の笑顔をこの人の為に。そのときの恭也の自然な笑みを見てフェイトがの顔がほんのり赤くなってたのは言うまでもない。

 

 

 

 


あとがき

これで一応次で一期までの物語を終えます。突貫工事だったのでアニメを見ていないと苦しいかもしれませんが…次で最終話までもっていけますのでこれで本番へ話をもっていく事ができます。

上手くなのはとフェイトの様子。恭也の介入での変化を着けられるように少し変える予定ですがお付き合いいただければと思います。

ラスティ「書き直してから随分時間かかってるわよね」

色々…あるんだ色々

ラスティ「まぁ次をしっかりかけばここは何も言わないけどね」

んーちょっと構成弄ってるけどそこまでは時間はかからない予定。早いところ本編へもってきたいので。では次でもお付き合いしていただければ幸いです。





一つの事件は無事に幕を降ろした…。
美姫 「でも、彼、彼女たちのその先に待つものが」
さてさて、次はどんな感じのお話になるのかな〜。
美姫 「次回も勿論、楽しみに待っていますね〜」
また次回で。



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