まず始めにこの小説を読む上での注意をさせていただきます。この物語の主人公はオリジナルキャラです。オリジナルのキャラクターが苦手な方はご遠慮ください。また、この物語の本編キャラは多少壊れ気味なところがあります。キャラのイメージが壊れるのが嫌な方は読まないほうがいいかもしれません(そんなに酷く壊れることはないと思いますが;;)。最後に作者はマリみての原作を読んだことがありません。TVアニメと他の作家さん達が書いた二次創作、またはマリみて関連HPのDBを元に小説を書かせていただきました。原作と細部が異なることがあるかとも思いますがその点はご了承ください。ここまでのことを気にしないという寛大な方は是非先にお進みください。

 

 

 

 

秋になり、学園祭も間近に迫ったリリアン女学園では今、一つの噂が生徒たちの間で話題になっていた。

それは今年の山百合会主催の劇の手伝いに来ている、男子生徒に対するものだった。なんと言っても、かっこいいというのが大方の意見であったが、一部の情報通の生徒の話によると、その人物は今、紅薔薇の蕾の妹候補として話題になっている福沢祐巳の実の兄だという話である。

これだけの要素が揃えば、話題にならない方がおかしいというものである。そして、リリアン女学園にはそういった話題に目がない人物がいるのである。

 

「フフフ、これはスクープの予感がするわ。」

 

 その人物こそ、リリアン女学園新聞部部長、築山三奈子である。

 

 

 

 

マリみてif〜お兄様もみてる?〜

第五話 突撃!!となりの新聞部?

 

 

 祐介が山百合会の手伝いに来るようになってから数日がたった。

 祐介も祐巳も、最初は慣れないダンスの練習などに戸惑っていたが、蓉子達の教え方の上手さと本人の熱心さもあってだいぶさまになってきた。祐介も、祐巳の兄というのも手伝ってかだいぶ山百合会メンバー達にも馴染んできたようだ。男嫌いの祥子でさえも祐介に対しては友好的に接していた。

そんな祐介とメンバー達の様子を見て祐巳は、一人頭を悩ますのだった。祐介が自分の知り合いと仲がよくなるのは嬉しいが、必要以上に仲がよくなってしまうのは祐巳にとっては由々しき事態だ。しかし、前回の暴走で失敗している祐巳としては安易な行動は出来ず、今はただ成り行きを見守るしか出来なかった。

 

「今日は祐介さん、まだ来ませんね。」

「あら、令ったらそんなに祐介くんに会いたいのかしら?」

 

由乃や志摩子とお茶の準備をしている令が呟くと、すかさず江利子がからかった。

 

「い、いえ別にそういうわけじゃ(////

「そんなこと言って令ちゃん、今日もお菓子作ってきているじゃない。そんなに祐介さんに食べてもらいたいの!?」

「そ、それはたまたまだよ(汗 それより由乃学校では・・・」

「お姉さまでしょ、わかってるわよ、ふんだ。」

 

 不機嫌になる由乃に令が慌てふためく。黄薔薇の蕾の威厳なんてあったもんじゃない。その様子を江利子は満足そうに見つめている。

 学園祭の劇の練習を始める前に、薔薇の館でお茶をするのはいつもの定番だった。そして、令は祐介が練習に来るようになってから毎日の様に、お茶会にクッキーなどのお菓子を家で作って持ってきていた。もともとお菓子作りが得意な令は、ときたま学校にお菓子を作ってくることはあったのだが、毎日のように作ってくることはなかった。

 本人は否定しているが、祐介の大ファンである令が祐介に食べてもらいたいが為に、毎日お菓子を作ってきているのは周知の事実だった。

 令は祐介が来て最初のお茶会のときに出したクッキーが、祐介に喜んでもらえたのが相当嬉しかったらしく、毎日家に帰っては翌日のお茶会用のお菓子つくりに勤しんでいた。

 そんな令に、祐巳の視線は自然と厳しくなり、最初のうちは令も祐巳の視線に怯えていたのだが今では多少は耐性が付いてきたらしい。

 そんなこんなで令は、祐巳の中での現在の要注意人物ナンバー1だった。

 

「しかし、令がこんなに積極的だったなんて意外だったねぇ。祥子はいいの?ぼやぼやしていると手遅れになっちゃうかもよ?」

「わ、私には関係のないことです。」

 

 聖の問いを慌てて否定する祥子。男嫌いの祥子が、祐介に対して興味を示しているのもまた周知の事実である。

まぁ山百合会メンバー全員が祐介には興味を持ってはいるのだが。

 

「白薔薇ファミリーからは立候補はないの?三薔薇揃い踏みだとますます面白くなりそうなんだけど。」

「そうだねぇ、私が立候補してもいいけど、志摩子どう立候補してみない?」

「お、お姉様何を言うんですか(////

 

 心底面白そうに話す江利子と聖に対して、志摩子は顔を真っ赤にして俯いてしまう。満更でもないのかもしれない。

 

「ほら、あなた達バカなことを言っていないで、もうすぐ祐介さんもくるわよ。」

「あら、蓉子も立候補するのかしら。紅薔薇ファミリーは大変ねぇ。」

「祐巳ちゃんも入れると3人全員だもんねぇ♪」

「まったく二人とも何を言っているのよ。

 

 江利子と聖のからかいも、志摩子や祥子とは違い蓉子は平然と受け流す。ここら辺は経験の差かもしれない。だが、よく見れば蓉子の耳は紅く染まっていたのだが。

 

 トントン・・・

 そんな話をしていると不意にビスケット扉がノックされた。全員が祐介が来たのだろうと思ったが聞こえてきた声は女子生徒のものだった。

 

「失礼します、新聞部の者です。」

「ごきげんよう、新聞部の部長さんが今日は何の御用かしら?」

 

 扉を開けて入ってきたのは新聞部部長の築山三奈子だった。新聞部の突然の訪問を疑問に思いつつ蓉子が三奈子に訊ねる。山百合会と新聞部の間柄上、蓉子達は三奈子を知っている。彼女もまたリリアンでは有名人なのだ。

 

「ごきげんよう、薔薇様方。今日はお願いがあって参りました。」

「お願い?」

「はい、我々新聞部に福沢祐介さんの取材をさせてほしいのです!!

「な、何でお兄ちゃんの取材なんてするんですか!?」

 

 三奈子の話に誰よりも早く反応したのは祐巳だった。なぜ急に兄である祐介の取材をしたいなどと言ったのかまったく持って謎である。

 

「ご存知かしら祐巳さん。今リリアンの生徒達の間では、あなたのお兄さんの噂で持ちきりよ。そして大勢の生徒が福沢祐介さんのことを知りたがっているわ。そして、読者が知りたがっている情報を提供するのが新聞部の使命なのよ!!

 

 祐巳の疑問に少々興奮した様子で三奈子が答える。

 祐巳としては予想外の答えだった。祐巳自身、どこからか自分と祐介が兄妹だと知ったクラスメイトに、祐介のことを尋ねられたことが何度かあったが、まさかリリアン全体の話題になっているとは思ってもみなかった。

 

「というわけで、福沢祐介さんに取材させてください。よろしくお願いします。」

「困ったわね、祐介さんに対する取材の許可を私たちが勝手に出すわけにもいかないし・・・」

「ダメダメダメです、取材なんて断固不許可です!!

 

 三奈子のお願いに答えあぐねる蓉子だったが、祐巳が断固として反対の声を上げた。

 突然大声を出した祐巳に驚いた三奈子だったが何とか気を取り直す。他の者は祐巳のブラコンぶりを知っているだけに大して驚かなかった。

 

「あら、どうしてかしら?取材を受けるかどうかは祐介さんの意思によると思うけれど。」

「そ、それは・・・」

 

 祐巳としては、祐介がこれ以上リリアンで注目されるのは好ましくなかった。もしかわら版に祐介の記事が載ったとしたら、ライバルを増やすことになってしまう。その確信が祐巳にはあった。しかし、そんなことを三奈子に言ったら、どんな記事にされてしまうか分かったものではないので口ごもってしまう。

 

トントン・・・

祐巳と三奈子がそんなやり取りを繰り広げていると不意にビスケト扉を叩く音が響いた。

 

「失礼します。」

 

 扉をあけて入ってきたのは、今まさに話題の渦中にあった祐介だった。

 

「すいません、遅くなってしまいまして。・・・あの、どうかしましたか?」

 

 今まで話の話題になっていた祐介が、急に現れたため皆一斉に祐介に注目してしまった。全員に注目された祐介は、なんとなく気恥ずかしいものを感じたのだが見慣れたメンバーの中に一人、見知らぬ人物がいたことに気がついた。

 

「あのぉ、そちらの方は?お会いするのは初めてだと思うのですか。」

 

 祐介は近くにいた蓉子に三奈子のことを尋ねる。

 

「あ、あぁこちらはウチの学園の新聞部の部長さん。三奈子さん、こちらが福沢祐介さんよ。三奈子さん?」

「・・・・(////

 

 蓉子に祐介の紹介を受けた三奈子だったが、蓉子の声は三奈子には届いていなかった。三奈子は顔を真っ赤にして祐介に見惚れていた。

 学校の噂で祐介がカッコイイというのは聞かされていたが、これほどまでとは思っても見なかった。これなら話題になるのもしょうがないと思う。

 

「は、はじめまして、私は新聞部部長の築山三奈子といいます(////

「はじめまして、花寺学院の福沢祐介です。今日は新聞部の部長さんがどうして?」

「そ、そうです実は我が新聞部に祐介さんの取材をさせて頂きたいのです!!

「え、俺のですか!?」

「はい!!是非お願いします。」

 

 突然自分を取材したいと言った三奈子に、祐介は驚いた。自分の記事など読みたがる人がいるとは思えなかった。えてして噂というものは本人には聞こえないように広まっていくものである。祐介は自分が今、リリアンの話題を独占しているとは夢にも思わなかった。

 

「しかし、俺のことを記事にしても皆さん興味を持たないかと思うのですが?」

「そんなことありません!!今リリアンの学生の間では祐介さんの話題で持ちきりです、多くの学生が祐介さんのことを知りたがっています!!

「そ、そうですか(汗 確かに女子高に男子生徒がいるというのは皆さんにとっては十分な話題になるでしょうね。皆さんに不快な気持ちにさせていなければいいのですが・・・」

「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」

 

 三奈子の勢いに押される祐介だったが、自分が話題に上がる理由を思いつき一人納得する。それを聞いた全員が一様に言葉を失った。鈍感というのは時には罪である。

 

「えっと、まぁそういう訳で取材を引き受けてはくれないでしょうか?」

「しかし、あまり目立つのは苦手でして・・・」

「そ、そうだよ。お兄ちゃんは目立つのが苦手なんです!!だから取材はダメです!!

 

なんとか立ち直った三奈子だが、目立つことが苦手な祐介は取材に難色を示す。祐巳はここぞとばかりに反対意見をもらした。

しかし三奈子もここですんなり諦めるわけはなかった。

 

「お願いします、絶対に変な記事は書きません。記事もかわら版に載せる前にまず祐介さんにお見せします。ですから、私に取材をさせてくださいお願いします!!

 

 祐介に対し深々と頭を下げてお願いする三奈子。あまりにも真剣なその様子に祐介は慌ててしまう。

 

「あぁ、顔を上げてください。分かりました、取材はお受けしますから(汗」

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます。」

 

 本来の人の良さも手伝ってか結局祐介は断ることが出来なかった。逆に三奈子は満面の笑みでもう一度深々と頭を下げた。

 

「ちょっと、お兄ちゃん。なんで引き受けちゃうのよ!?目立つの苦手なんでしょう。」

「確かに苦手だけど、こんなに真剣に言ってくださっているんだから悪いじゃないか・・・」

「ん〜〜〜・・・」

 

 祐介の答えが納得いかなかったのか祐巳は頬を膨らませてむくれてしまう。そんな祐巳の頭を祐介は右手で撫でた。

 

「でも、ありがとうな、俺の心配をしてくれて。やっぱり祐巳はやさしい子だな(ニコ」

「お兄ちゃ〜〜〜〜ん」

 

 微笑を浮かべて祐巳の頭を撫でる祐介に、祐巳は嬉しさのあまり抱きついた。もう祐巳には取材のことなんてどうでもよくなっている。

 他のメンバーはそんな祐巳を羨ましそうに眺めていた。

 

「すいません、それで取材なんですがもし宜しければ、これからすぐにでも始めさせていただきたいんですが。」

「これからですか?」

「はい、学園祭まで日数もありませんし、学園祭前に発行する分に掲載したいので。」

「しかし、これから劇の練習がありますし、蓉子さんどうでしょうか?」

 

 祐介と祐巳のスキンシップが一段落したのを見計らって三奈子が声を掛ける。劇の練習がある祐介は、責任者である蓉子に尋ねてみる。

 

「確かにそろそろ練習の時間ですけれど、新聞部も急いでるようだし練習の開始を30分遅らせるからその時間でいいのなら大丈夫よ。」

「ありがとうございます!!

 

蓉子からの許しが出て、三奈子がもう一度頭を下げた。

すると聖が蓉子に近づき耳元で囁く。

 

「(ずいぶんサービスいいね、蓉子も祐介くんの記事が読みたかったの?)」

「(べ、べつにそんなんじゃないわよ(//// )」

 

 聖の囁きに、先ほどのときとは違い蓉子ははっきりと顔を赤くしてしまった。

 

「早速取材を始めたいと思うのですが、実はかわら版に掲載する写真の撮影を、写真部にお願いしているんです。もうすぐ来ると思いますんで少々お待ちいただけますか?」

「はい、わかりました。」

「(三奈子様、最初から断られることを想定してなかったのかしら、ずいぶん強気よね。)」

「(うん、だけど志摩子さん、撮影に来る写真部の人ってやっぱり蔦子さんかな?)」

「(たぶんそうでしょうね。)」

 

 三奈子の根拠のない自信と行動力に多少あきれた一年生3人組だったが、撮影にくる人物に心当たりがあった。いつもカメラを持ち歩いている友人の姿が目に浮かぶ。

トントン・・・

 

「失礼します。」

 

 そんなことを祐巳たちが考えていると今日三度目の扉を叩く音が聞こえて、一人のカメラを持った女生徒が入ってきた。祐巳たちの予想どおりリリアン女学園1年写真部のエース武嶋蔦子その人だった。

 

「すいません、遅くなってしまいまして。早速写真を・・・Σ(ガシャン」

 

 謝罪の言葉を述べて全員を見回した蔦子の視線が、ある一点で停止した。蔦子の手からカメラが滑り落ちる。蔦子の目が驚愕に見開き、顔色が一気に青くなった。

 

「蔦子さん・・・」

 バッ!!

 

 蔦子の様子の変化に驚いた祐巳が声を掛けようとすると、急に蔦子が動いた。今度は祐巳の目が驚愕に見開く番だった。

 蔦子は祐介に向かってかけだし、その胸に思いっきり抱きついた。

 この突然の行動に祐介を含むその場にいた全員が言葉を失った。

 

「#$ΦЭ★дξ%〜〜〜!?」

 

 祐巳は言葉にならない悲鳴を上げた。また一つ悩みの種が増えた瞬間だった。

 

つづく

 

 

 

 

 


あとがき

 

 お久しぶりです、シュウです。

 兄みて第五話をやっとUPできました。やはりというかなんというか更新が遅くなってしまいました。やっぱり年度末は忙しいですね(汗

 今回はまた新たに蔦子さんと三奈子さんの2人が話しに係わってきました。2人とも自分のお気に入りキャラです。2人ともいい味だしていていい感じです。まぁ、祐巳の悩みの種は増えていくわけですが(笑

 がんばれ祐巳、負けるな祐巳、兄との明るい未来のために!!

 というわけでまた次回までごきげんよう♪




おお、予想外の蔦子の行動。
美姫 「一体、どんな事になるのかしら」
益々、目が離せませんな〜。
美姫 「そうよね〜」
うがぁー、次回が楽しみだー!
美姫 「ほら、落ち着いて。でも、私も楽しみだわ」
次回も、楽しみに待ってますね!
美姫 「待ってま〜す」



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