まず始めにこの小説を読む上での注意をさせていただきます。この物語の主人公はオリジナルキャラです。オリジナルのキャラクターが苦手な方はご遠慮ください。また、この物語の本編キャラは多少壊れ気味なところがあります。キャラのイメージが壊れるのが嫌な方は読まないほうがいいかもしれません(そんなに酷く壊れることはないと思いますが;;)。最後に作者はマリみての原作を読んだことがありません。TVアニメと他の作家さん達が書いた二次創作、またはマリみて関連HPのDBを元に小説を書かせていただきました。原作と細部が異なることがあるかとも思いますがその点はご了承ください。ここまでのことを気にしないという寛大な方は是非先にお進みください。
「すいません、花寺学院から来たものですが。」
ビスケット扉の向こうから聞こえてきた声に祐巳は耳を疑った。その声はリリアンでは決して聞くことの出来ないもののはずである。そう今頃はその声の主はまだ学校にいるか家への帰路についているはずなのである。しかし祐巳の予想は見事に打ち破られた。ビスケット扉を開けて入ってきたのは祐巳の見知った人物だった、いや見知ったなどという生半可なものではない。なぜなら祐巳がこの世の中で一番好きな人物なのだから。その人物の存在を確認した祐巳の体は無意識に走り出しその勢いのまま目標に思いっきり抱きついた。そして満面の笑みを浮かべて言った。
「お兄ちゃ〜〜〜〜ん♪」
リリアン女学園の歴史に残る謎の絶叫の原因となる言葉だった・・・
マリみてif〜お兄様もみてる?〜
第二話 祐巳の苦悩、学園祭は前途多難?
花寺学院3年福沢祐介、彼は今混乱していた。花寺学院生徒会長であり彼の悪友でもある柏木優、やつにどうしてもはずせない所用があるから代理としてリリアンとの打ち合わせに行ってくれと言われた。祐介は生徒会に所属しているわけではない。たまに柏木に頼まれ手伝いなどはしていたが正規の生徒会メンバーではないのだ。そんな自分が行くよりも今までの打ち合わせにも参加している他の生徒会メンバーを代理にたてた方がいいのではないかと言ったのだが他のメンバーもそれぞれ仕事で手が離せないし何よりもこの役目は祐介が一番適任だからと言われてしまい頭を下げてきたのだ。柏木が他人に頭を下げるところなど今までみたことのない祐介は持ち前の人の良さも手伝って柏木の代理を承諾したのだ。そして自分は今リリアン女学園の生徒会室、通称薔薇の館にいるわけだ。しかしそこで起こったことはまったく予想外なことだった。案の定自分のことを認識していなかったリリアンの生徒会メンバー(なぜかみな顔が紅かった)に自己紹介をしようとしたところ何かが自分に抱きついてきた。突然の衝撃にもなんとか踏みとどまりその人物を確認するとなんと妹の祐巳だったのだ。確かにここの生徒である祐巳にこの場で会う確率はないわけではない。しかし自分の訪れたこの薔薇の館には少なくとも祐巳は無関係のはずだった。突然のことにもなんとか頭を働かせ祐巳に話しかけると満面の笑みを浮かべ自分のことを呼ぶ妹の言葉に室内にいた他の少女達から絶叫の声が上がった。これでは混乱するなというほうが無理である(汗
「祐巳どうしてお前がここにいるんだ?」
「お兄ちゃ〜ん♪」
なんとかこの状況を理解しようと語りかける祐介だが祐巳は笑顔で自分に抱きついたまま自分のことを呼び続けている。こうなったら祐巳はしばらく元には戻らない。今までの経験からそのことを理解している祐介は現状を打破するために山百合会メンバーの方をみる。すると少女達は絶叫を上げたままの格好で固まっていた・・・
「あ、あのぉすいません水野さん(汗」
先ほど代表して自己紹介をしてくれたこの中で唯一名前を知っている蓉子に話しかける。すると蓉子は先ほどと同じようにハっと我に返ったようだ。
「す、すいません。突然のことに少々驚いてしまいまして(汗 えぇと・・・」
蓉子の言葉に他の少女達も我に返ったようである。祐巳はまだ祐介に抱きついたままだったが・・・
「申し送れました、自分は花寺学院から柏木の代理で来ました福沢祐介といいます。そしてもうお分かりでしょうがここにいる福沢祐巳の兄です。」
祐巳の頭を撫でながら挨拶をする祐介。祐介に頭を撫でられた祐巳はさらに笑みを浮かべ抱きつく腕に力をいれる。もし祐巳に尻尾が着いていたらそれは千切れんばかりに左右に振られていただろう。
「まさか、祐巳にお兄様がいたなんて・・・あ、申し送れました小笠原祥子と申します。紅薔薇様の妹で紅薔薇の蕾です。」
一瞬聞きなれない言葉に頭を傾げる祐介だったがリリアンの生徒会メンバーは代々通り名があると祐巳から聞いたことがあるのを思い出した。そして上級生が下級生を導くためにスールの契りを結ぶという独特の制度があるということも。
「私は鳥居江利子、黄薔薇です。」
「私は白薔薇の佐藤聖よろしくね。しかし祐巳ちゃんみんなの前で大胆だね(笑」
祥子に続いて自己紹介する江利子と聖。聖はからかうように祐介と祐巳をみるが、祐巳はまったく気にした様子もなくいまだに抱きついたままである。しかし祐介の方は聖の言葉にやはり気恥ずかしいものがあるらしく苦笑いを浮かべる。
「昔から甘えん坊でして、高校生になってもこんな感じなんです。もう少し大人になってほしいのですが、ほら祐巳みなさんが見ているぞ、いい加減離してくれ・・・」
祐介の少し困った声がやっと耳に届いたのかようやく顔を上げる祐巳、しかし今度は腕にしがみついたまま離れない。祐介はここで無理やり引き剥がすと祐巳が泣きそうになるのを解っているので好きにさせることにした。
「そういえばお兄ちゃん、なんでここにいるの?」
兄に会えたことは嬉しいが何故祐介がここにいるのか解らない祐巳は当然のように疑問を投げかける。自分が祐介に抱きついている間に祐介がした説明は全然聞こえていなかったらしい(汗。
「はぁ〜・・・、やっぱり聞いていなかったのかウチの生徒会長が所用でこられなくなってしまってな、そこで俺が頼まれて代理としてくることになったんだ。」
祐介の言葉にまったく話を聞いていなかったことを恥ずかしく思ったのか祐巳の顔が真っ赤に染まる。そんな祐巳の様子を可愛いと思ってしまう祐介も相当な兄バカなのかもしれない。自分は祐巳に対しては甘いと自覚しているだけに始末が悪いなと思い苦笑いを浮かべる。
「あ、あのぉ・・・」
突然声を掛けられその声のした方向をみるとそこには一見して美少年かと思ってしまうような少女がいた。祐介はこの少女をどこかで見たことがあるような錯覚を受ける。
「すいません私は黄薔薇様の妹で黄薔薇の蕾の支倉令といいます。もし違っていたら申し訳ないのですがもしかして花寺学院剣道部の福沢祐介さんですか?」
少し緊張した様子でおずおずと令が問いかける。
「はい、もう引退しましたが剣道部に在籍していました。えぇと、どこかでお会いしましたか?」
自分のなかでも何か引っかかるものを感じながらも祐介が答える。
「わ、私も剣道部に所属しているんです!それで今年の夏の地区大会決勝の福沢さんの試合観ました。足を怪我していたのにあんなすばらしい試合をしていて・・・とても感動しましたっ!」
興奮したように一気にまくし立てる令、いつもの凛々しくミスターリリアンと言われる令の姿はそこにはなかった。まるでアイドルを目の前にする一人の少女である。
「結局は負けてしまいましたけどね、そうでしたかあなたが支倉令さんでしたか。自分も支倉さんの試合は観させていただきましたよ、女子の部にいい新人がいると噂になっていましたから。」
祐介は自分の中で引っかかっていたものが解決したためか穏やかな笑みを浮かべる。
「そ、そんな怪我さえしてなければ福沢さんは負けなかったと思いますし・・・、それに私の試合を観ていてくださったなんて感激です(////」
令は緊張と感激のあまり顔を真っ赤にして俯いてしまう。山百合会メンバーもこんな令の普段とは違う一面に驚いていた。
「(何よ、令ちゃんたら真っ赤な顔しちゃってっ!でもこの人が令ちゃんが何度も話していた福沢さんかぁ、まさか祐巳さんのお兄さんだったなんて)」
「(へぇ、あの令が由乃ちゃん以外のことでここまで興奮するなんて・・・ふふふ、なんだか面白いことになりそうね)」
令の姉と妹である江利子と由乃も令の様子にそれぞれの感想をもったようだ。そして山百合会メンバー共通の思いは福沢祐介という人物がとても興味深い存在であるということ、男嫌いのはずの祥子ですらそう思ってしまったほどだった。
「まぁ、勝負の世界にたらればはありませんし、あれが俺の実力だったんですよ。でもそう言っていただけるのは嬉しいです。ありがとうございます(ニコ」
令の自分に対する評価に謙遜しながらも微笑みながらお礼言う祐介をみて令はますます顔を紅くする。いまにでも湯気が上がりそうだ。見た目と違って少女趣味な令はもう恋する乙女状態、しかも結構ミーハーなのかもしれない。
「(うわぁ、本当にあの福沢祐介さんだ、まさかこんな所で会えるなんて思ってもみなかった。山百合会に入っててよかっ・・・Σはうっ!?)」
あまりもの嬉しさから悦に浸り少しばかり罰当たりなことを考えていた令を突然の寒気が襲った。いや殺気といっていいかもしれない、幼い頃より剣道を習い普通の人間よりは感覚が研ぎ澄まされている令はそれを敏感に感じ取ったのだ。慌てて顔を上げ殺気のする方を見てみる。そこには穏やかに微笑む祐介がいた、しかしその穏やかな表情をする人物が殺気を放っているとは令には思えなかった。だが祐介の近くから放たれていることは間違いない。そこで令はふと思いつく・・・
「(ま、まてよ、まさか・・・・Σヒィィィ(汗」
令は恐る恐る祐介から視線を下げていった、思わず悲鳴を上げそうになるのをなんとか我慢した。そこには小さな鬼がいた、祐巳がものすごい形相で自分を睨んでいた・・・
ここにも敵がいた。そう祐巳は思った。祐巳の兄福沢祐介は身内の贔屓目なしにもかっこいいしとても優しい、さらに先ほど令が言ったように花寺学院剣道部のエースとしても名前の知られる存在だった。そのため祐介はとてももてるのである(祐介自身は理解してないらしい)。夏の地区大会祐介はある理由から怪我をしていた、そんな怪我しながらも大会を勝ち抜いていく祐介に祐巳は感動した。しかしそれは祐巳だけではなかった、同じようにその様子をみて感動し、またその容姿も手伝って祐介のファンになってしまった少女はたくさんいたのだ。そう目の前にいる令のように・・・
祐巳は自他共に認めるブラコンである。そのため祐介に好意をよせる人々(女子限定)に対して警戒心をもってしまう。それは純粋に大好きなお兄ちゃんを取られたくないという一心から来るものであり祐巳にしても悪気があるわけではない、ただどうしても祐介のことに関してはムキになってしまう自分がいる。だから心の中ではわかっていても祐介に対して明らかに好意を持っている様子の令に厳しい視線を送ってしまったのだ。そして祐巳は気づいた山百合会メンバーが程度こそ違うが少なからず祐介に興味を持ち始めているという事を・・・
ふとした事から祥子の妹候補として山百合会の手伝いをすることになった祐巳だったが今自分がこの場にいられることをマリア様に感謝した。祐巳は今回の学園祭が前途多難なものになるような気がした・・・
つづく
あとがき
こんにちは、シュウです。マリみてif〜お兄様もみてる?〜、略して兄みての第二話がなんとか完成しました(我ながら安直だ)。
今回ついにこの作品の主人公がベールを脱ぎました。福沢祐介、彼の名前を考えるのがまた大変でした。祐巳や祐麒と同じように名前に祐の字をどうしても入れたかったのですがまったく浮かんできませんでした。数少ない候補の中から選ばれたのがこの名前、どこかで聞いたことがあるというツッコミは勘弁してください。他の候補も同じようなものでした、自分のキャパシティーの無さに涙がでてきます。
今回は何気に令が目立ちました。これは作者の好みと普段あまりスポットライトが当たらない令を前面に押し出してみたいといったことから今回のような位置づけになりました。個性の強いキャラが多い山百合会において令は貴重な存在だと思います。そしてもう一人、この作品の準主役の祐巳ですが本作品の祐巳は決して黒い訳ではありません。ただ極度のブラコンで少しだけ嫉妬深いというだけです。ある意味この作品は祐巳ちゃん奮闘記と言えるかもしれません。このように各キャラクターが早くも壊れ始めた兄みてですが今後ともよろしくお願いいたします。それではまた次回までごきげんよう♪
ブラコン祐巳ちゃんが良いね〜。
美姫 「うんうん、新鮮で良いわよね」
祐介に興味を持った山百合会の面々を相手に、祐巳がリリアン女学園を所狭しと駆け回る。
美姫 「まさに、祐巳ちゃん奮闘記」
続きが読みたくて、読みたくてウズウズ。
美姫 「次回も楽しみにして待っていますね〜」
待っています。ではでは。