『魔法詩篇とらいあるぐるハートA's』




詩篇 〜TRANSMIGRATION OF LOVE PROVE〜 

第八話 BLACK OR WHITE


会話設定


「」=人間の会話
【】=場所、他
『』=回想
≪≫=ディバイス英語、もしくはドイツ語
<>=ディバイス日本語
()=人間思っていること




























          心を剣にできますか?
























【沖縄 神咲道場】























 鏡の中から現れるモンスターを前に、神咲本家の者達は苦戦を強いられていた。






 そのモンスターの一撃は容易く人間を死に陥らせる。






 神咲の者達の物理攻撃は全く効かず、霊気技で倒せるにしても、この数では無意味。






 神咲一灯流の伝承刀である十六夜と三架月は、共に主の腕の中でその刀身を歪めていた。






「なみっ!」






「久遠いくよ」






 その場で憔悴しきっている薫は、一度感じたことのある――――枯れ草に鉄錆を混ぜたような匂いを感じた瞬間、微睡んでいた意識
が、一気に覚醒した。






                         「「儚き運命の果てより舞い降り」」






「やめるんや!?那美」






 結論から言うなら、薫の願いは届かなかった。






                         「「苦業を癒やす為」」






                         「「幻となりて虚現する」」






                         「「我、理の巫女」」






                         「「剣士を守護するものなり」」







































「神社に仕事の資料忘れてきちゃった」






 神社の掃除を済ませて、階段を下り、バス停までもう少しというところで那美は気づいた。






 恭也に元気付けられたものの、那美は久遠のことで悩んでいて、仕事を回さないでもらっていたが、その資料を返すのをすっかり忘
れていたのだ。 慌てて、那美は神社に戻る。自慢の姉である薫は、どんなときでもミスはしないと思っているし、退魔師の仕事に関
しては、厳しいのだ。もし、紛失や盗難でもしたならば大変な迷惑をかけてしまう。






「はぁ〜、はぁ〜、やっと階段まで……」






『kyululuuuuuuu』






「きゃっ!?」






 突然、神社まで百段ほどの所で、白淡に光る鳥が、那美のから出てきて鳴いた。鳥とは形容しがたいほど角ばっているが、鳥としか
言いようがない。






「うぅ〜、いった〜い」






 その鳴き声に驚いた那美は、足を階段から滑らせて転んでしまった。






『kyululuuuuuuu』






(式神も呼べるんだぁ〜、でも、なんで出てきたの?)






 那美の周りを一回りすると、那美よりも速く神社まで向かった。






「待って! 痛っ」






―――また、転んだ那美を置いて……






―――那美がたどり着くと、そこには久遠と先ほどの鳥、そして、薫がいた。 鳥は、薫と久遠の間にいる。





 不思議なことに、翼をばたつかせていないのに中に浮いていた。






「え……」






 薫は右手で愛刀「十六夜」を握っていて、すでに抜刀していた。よく見ると、袖やズボンが何か鋭利なもので斬られたかのように傷
だらけだった。






「……那美の式神……か」






 式神は、術者と距離が離れるほど簡単な命令でしか使えない、戦闘では式神は人間のように高度な独立した思考を持っているわけで
はないので、退魔師であれば簡単に対処できるのだが、まるで、薫の動きを知っているかのように軽々と、薫の攻撃をかわした後にか
まいたちを放って、一定の距離を保っている。この神社付近には今来た那美以外に人はいない。運動はまるでだめな那美にこんな力が
あったのかと薫は、嬉しさ半分、自分が油断した後悔半分、複雑な気持ちになった。






「……早く、戻せ」






 那美は、この鳥の戻し方などしらないし、そんなことを考えられるほどの余裕はなかった。






「……なんで」






 それが、震える口でやっと出た、那美の最初の言葉だった。






「……久遠を斬る」






「え……」






「……なんで、薫ちゃん!! まだ期日には早いのに……」






「……失敗したら……うちら神咲総出で肩代わりできるほど、久遠は弱くない」






「でも……薫ちゃんなら……」






「那美。勘違いしてる。十年前の「祟り狐」は久遠の本当の力の半分以下しかない……不完全な「祟り狐」だ。うちに、そんな力は、ない」






「邪魔をしないでくれ!!」






 鳥を両断した後、久遠に向かって疾走した。






「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!」






 那美の悲痛な叫びが響いた後、突然、突風が吹き荒れた。






「くっ、これは……」






 桜の花弁が、薫の視界を塞いだ後、薫全体を包んだ。






「たあああ」 刀を振るい目前を斬るが、弾かれた。






「せからしかーーー!」






 物理攻撃に意味がないと判断した薫は祝詞を言う。






「神気発勝……」






「真威・楓陣刃ああああっ!」






 刀身に炎が宿り、花弁を切り裂くが、すぐに元に戻ってしまった。






(だめか、なら)






「追の太刀・疾っ!」






 追撃する。花弁はやっとその動きが穏やかになり、斬ったところから花弁が燃え始めていた。






(よし!)






「閃の太刀・弧月ッ!」






 三撃目でやっと花弁が無くなった。






「はあー、はあー」






 まだ霊力は久遠のを殺すくらい軽く残っている薫だが、那美の力に翻弄され精神的な疲労が蓄積されていた。






(この尋常じゃない力はなにかとねん。那美にこんな力……今は久遠が先や)






「だめ」






「!?」






 いつの間にか、薫の顔にくっつく距離にまで那美が迫っていた。 薫はとっさに離れる。本来、薫は相手に近づかれたら力で押し進
む……一灯流の剣そのままの行動をするが、薫の直感が距離をとった。いや、とらせた。






「十六夜、あれは本当に那美なんか?」






「霊気は間違いなく那美の霊気なのですが……那美の気配が……なんというのでしょうか、薄くなっています」






 運動はまるで駄目な那美に、気配の断絶などのやり取りや操作はできるはずがない。那美に起きている異変に、薫は、久遠を斬ると
いうことを心の片隅に追いやられてしまうほど動揺していた。






「どういうことや!!」






「分かりません。ですが、那美の持っている何かに、那美のほとんどの霊力が注がれています」






「! あれか!」






 那美が手に握っている名刺が薫の目に入った。






「……だめ……久遠……は……」






 先の言葉を言えずに那美が倒れたのを見て、今がチャンスをばかりに久遠に斬りかかった。






「ごめん、久遠!!」






 涙を一滴たらし、薫は刀身に炎の宿った十六夜を上段の構えから一気に振り下ろした。






「!?」






 薫が真剣同士で打ち合ったかのような剣戟を聞いたとき、十六夜が受け止められていた。 十六夜を受け止めた剣は、日本刀にして
は短い、短刀としては少し長い小太刀で、刀身のみならず刀自体黒かった。






―――薫が霊力を使っても、黒光りしなければ見えないほど。






「ダメですよ」






 初めて薫が相手を見る。全身真っ黒な服装、真っ黒な鞘と真っ黒な刀。そして、その存在自体が、この夜にぴったり合っていた。顔
は、那美なら惚れるほどの美青年だ。






「君は……」






「那美さんの依頼で、久遠を救いにきました」






「……那美が?!」






「はい」






 そういえば、那美が久遠関係で仕事を頼んだと聞いている。何を依頼内容は誑かされたが、仕事をしているので依頼するお金くらい
はあるだろうし、薫自身も久遠が気になっていたので深く追求しなかった。だが、那美が久遠に限って他人にすべてを任せるというの
だろうか。 薫は深く思考しようとしたが、無理だった。今の那美とのやりとりで、久遠の封印に影響が出るかもしれない。封印がと
かれる前に、薫は、久遠を斬らなければならなかった。






「どいてくれ」






「どきません」






「……」






「……意思は変わらないようですね」






「……神気発勝」






「神気発勝……」






 十六夜に霊気を注ぐ祝詞を言う薫の後に、彼は、薫と同じ神咲の祝詞言った。






「!?」






 それは、はったりなどではなく刀身に霊気が集っているのが分かる。






(なに!! なら)






 普通の人間相手に霊気技を使うのを躊躇っていた薫だが、それを見て、自身の得意技を放った。






「真威・楓陣刃っ!!!!!」






「奥義 封神・楓華疾光弾ツツツツツツツ!!」






 彼は、隠し持っていたもう一つの小太刀を一瞬のうちに抜刀し、神咲三流の奥義を放った。













 那美は、その場で霊力を使い果たし、疲労からくる睡魔に身を任せていた。






 久遠との思い出の夢の中で、声が聞こえてくる。






「……那美さん、ごめんなさい」






 女性の声が聞こえてくる。その声は那美に届いてしまった。






「……だ……れ?」






 聞き覚えのない女性の声に那美は戸惑う。






『愛する者を護る。彼の誓いと共に我願う。幸あらんことを!』






 その声が聞こえた瞬間、那美の視界は真っ暗になり、意識は途絶えた。






 その瞬間に一瞬だけ見えたのは、一本の蒼い花色の桜だった。










































            『桜花時幻流 愛音』






























【高町家朝方】
















「今日の朝食はっと」






 桃子は、朝食の準備をしようとエプロンを身につけた。






 その時、誰かの足音が聞こえ振り向くと---






「桃子....会いたかったぞ」






 死んだはずの士郎がいた。






「あなた」






「お父さん?」






 朝の弱いなのはが起きてきた。






「この子か゛俺の子供か?」






「そうよ、なのはっていうの」






「そうか、なのはおいで」






「お父さん、お父さーん」






 なのはが士郎に近づこうとした時、なのはは途中で止まった。






「お兄ちゃんどうしてお父さんを攻撃するの?」






 なのはは、恭也の放った飛針を同じく飛針で弾く。






「どういうことだ、なのはもいたんだぞ。危ないだろ」






「偽物に用はない」






「どうしたの? 恭也士郎さんじゃない!」






「不破の伝承刀八景には代々の継承者の魂が宿っている」






「かあさんが偽物だと分からないのはあたりまえだ」






「かあさんが知っている父さんなんだから」






 その事実を聞いた瞬間、士郎の姿があやふやになる。





















 存在しないものが、本来知らなくていいものが実体化する現象。






 死者が蘇り、ありとあらゆる鏡に定義されるものから怪物が現われ人を襲う。









 はやて宅には両親が現われた。






 フェイト宅にはクロノの父親が現れる。






―――永劫の開演






物語の始まりだった。



















『それはいつのことだろうか』

『一人の少女が描いた世界で、たった一つの願いを叶える為に13人の選ばれし者達が戦い続けた』

『その世界は消えることもなく』

『人々のすぐ側に存在する』

『その世界で、再び―――』

『次回、詩篇 〜TRANSMIGRATION OF LOVE PROVE〜 第九話 心の仮面に「ドライブ、イグニッション」』






一体、何が起ころうとしているのか。
美姫 「各地で起こったらしい不可思議な現象」
それは一体!?
美姫 「次回を待てぇ!」
ではでは。



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