『魔法詩篇とらいあるぐるハートA's』
第四話
儚い星空 後編
会話設定
「」=人間の会話
【】=場所、他
『』=回想
≪≫=ディバイス英語、もしくはドイツ語
<>=ディバイス日本語
()=人間思っていること
【アースラ医療施設ICU】
「恭也、戻って来いよ」
『私がやろうとしていることは……恭也の記憶を追体験することに近い。断章との出会い、プレシアが起こした次元震によって発生し
虚数空間でどうして魔法が使えたのか分かるかもしれない』
(でもそれは、していいこと?)
「考えたって仕方ない。始めるかー!! 長文詠唱苦手なんだけどね」
「アルタス クルタス エイギアス 導くは祈り 祈りは奇跡を呼び 道を照らす アルタス クルタス エイギアス 迷宮の先の命
の鼓動を鳴らせ マインドアクセス!!」
(どうやらうまくいったみたいだね。さっそく、恭也をさがしますか!)
体の自由が利かなくなっていることから、魔法が効いていることことを確認する。
【恭也の記憶世界―夢の雫 鍛錬】
(あれは……恭也と、えっ! ふぇ、フェイトぉぉ!?)
アルフは驚いた。何故かというと、フェイトが大人になっていたからだ。アルフが混乱している間にも恭也の記憶は進む。
一人、フェイトはバリアジャケット姿、独り、恭也は黒色のシャツに黒いジーパン。
――――――――――手に持つのは互いに二刀の剣。
闇夜に輝く刀身は、一つは銀色に輝き、もう一つはさらに闇を濃くさせる黒い光沢を放っている。
フェイトと恭也は剣を両腰に差して、互いに両腕にはリールとホルスターを備えていた。
独りが教え、一人が習っている剣術、御神流のフル装備。
風に紛れてしまう程の小さな音でありながら、よく響く−鯉口を切るフェイト。
その音を聞いて、高町恭也は右の一刀を抜く。その動作は剣の素人の人ですらため息をつく程洗練されていた。
――――――――――何秒待っただろうか?
(でも、恭也は弟子を取らないって言ってたのに……)
先にフェイトが恭也に踏み込んできた。
「はあぁぁっ!」
高速の突きが放たれる。風を切る音が一般に聞くことのあるものよりも大きい。その音を聴いた恭也は、瞬時に紙一重でかわす。
ぎりぎりでかわしているはずなのに、目を閉じ、呼吸の乱れもなく、楽々かわしている。
突きは薙に派生する技であるとよく言われた。突きから薙に変わる攻撃がある可能性を考えていたのか、手首に踵で軽く蹴り勢いを
殺す。
「...!!」
フェイトは、焦りの表情を見せる。だが、恭也は未だに目を閉じていた。
(蹴り...しかないか)
恭也は、まるで目を閉じていてもフェイトの行動がある程度予測できる。
恭也の予測どおり、フェイトは素早い横蹴りを放ってきた。
フェイトの蹴りも紙一重でかわした恭也は、今まで抜かなかったもう一刀を抜いた。
恭也が初めて攻撃に転じる。
すると、フェイトの目が追えることのできない速度で剣閃が奔り、フェイトの小太刀が二刀
とも弾き飛ばされていた。
「あっ!」
高速の4連撃。御神流の奥義のひとつ「薙旋」だ。
(はぁ〜、いつ見ても恭也の剣術ってすごいねぇ〜。フェイト大丈夫。って言っても恭也の記憶だから意味ないんだけど……)
フェイトには、剣を弾き飛ばした恭也の姿がまるで眠りについた人が無理矢理動かされているかのように、穏やかな表情をして立ち
はだかっているように見えた。
一瞬で武器を封じられたフェイトは、右手を不自然に垂らし、何かを振るう。その間、恭也は詰め寄ってくる。
目の前を不自然な風が通り過ぎる。微妙に風が震えていた。瞬時に何が起こったか分かった恭也は、動きを止めて右に首を少し傾け
る。
フェイトの袖口から木の針が恭也の目の前を通過した。それから数本放たれ、すべて避け切るのが不可能と分かった恭也は刀ではじ
く。
これで恭也は追撃を止められる。木の針。飛針と呼ばれるもので本来は鉄製である。フェイトはその隙に、先端に錘の付いているワ
イヤーで剣を一刀からめとった。
「たぁっっっっ!」
一刀で攻めるフェイト、上段、中段、下段、右上腕部、左下腹部と仕掛ける。だが、恭也に擦りもしなかった。
「っっっっ!?」
冷静さを欠いたフェイトは、距離を取ろうとし、一瞬恭也から目を離した。その一瞬が直接の敗因となった。恭也は、その重心の傾
いた隙にフェイトを倒させのだ。
「これでお前は死んだ」
フェイトの目の前に刀を突き出した恭也は言う。
「はい」
「―――フェイト」
「はい」
「蹴を混ぜるのはいいが、多用し過ぎだ。後、劣勢になってから攻撃が単調になって読みやすくなっている。飛針と鋼糸を補助的な役
割で使用するのではなく、敵を倒すために使え。うまくやれば、鋼糸や飛針でも人は死ぬんだからな」
「はい......あっ、恭也……さん」
「師範代と呼べ馬鹿者」
「いたっ、師範代」
「何だ、フェイト」
「目、大丈夫なんですか?」
「大丈夫に決まっているだろう」
「良かった」
「明日もあるんだ、もう休め」
「うん! わかった」
フェイトが帰宅したのを目にして、空を見上げる恭也。住宅街のすぐ側とは思えないほどの綺麗な星々が煌めいている。
「アルフ、俺はそう簡単には救えないぞ」
(えっ、恭也の記憶を見ているだけじゃないのかこれ? ってことは、あれが恭也の本体!!)
「まってぇぇぇぇ、恭也!!」
【恭也の記憶世界―夢の雫 朝食】
「いやー今日もおいしいな。特にこのスクランブルエッグが」
「ほんと!! トッピングにトマトとピーマンそれに、バジルが隠し味なの」
「ほらみんなもっと喜べ。こんなに料理上手なおかーさんを持って、幸せなんだぞ。わかっているのか?」
「わかってるよねっ。なのは」
「うん」
「もう、あなたったら」
(はぁ、なのはの両親は、未だに新婚バリバリだねぇ)
「……リボンが曲がっている」
「ほんと……あれっ」
「ほらかしてみろ」
(? 何かおかしいよーな……)
「ほら」
「ありがとう恭ちゃん」
「!?」
(そうだよ、何でなのはの父親がいないんだよ。それに、恭也がなのはの父親をやっているのにも疑問に思わなかった……何なんだよ
恭也の世界、何かおかしいよ。もう、一気に最深部行こう)
【恭也の記憶世界―最深部】
「ここは……ここが恭也の記憶の一番深いところかぁ〜」
足元は5センチ程の浅瀬になっている。薄暗いのに、そこにある一本の木だけははっきり見える。
「なんか嫌な匂いだけど……嗅いだことがあるような気がする……枯れ草に鉄錆びを混ぜたような」
「まさか……」
アルフが言う枯れ草に鉄錆びを混ぜたような匂いは、この世界全体をかなり充満しているようで、気づかないうちにアルフの狼とし
て優れた嗅覚の機能を半ば駄目にしていた。
足元の水を獣フォームに戻って舐めてみる。
「血!? この水溜り全部……血」
その驚きとともに探索しながら歩いていると人影が見えた。
(もしかして、恭也!!)
――――――――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――ぐしゃぐしゃ―――――
暗闇の中で誰かが何かを食べている。
――――――――――ぐはっ―――――おえっ―――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――がり―――――がり―――――
食べている誰かは、時には吐き出して、その吐き出したものすら食べようとする。
その姿は暗闇で見えないが、その食事をしている音から、普通のものを食べているとは到底思えない。
じっと、その音を目を閉じ耳を手で押さえてて耐えていた。
――――――――――がり―――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――うっ―――――おえっ―――――ぐしゃ―――――
―――――がり―――――
「えっ、フェイト!?」
「あっ、アルフ、もしかして恭也さんに一緒に食べてもらいたいの」
すでに下半身の大半を食べられているフェイトが、笑顔でアルフに言う。
「やめて恭也!」
「あぁぁぁぁぁっぁあぁああああ」
最初に掛けた言葉しか声に出せない。体が鉛のように重い。血の涙を流しながら最後にフェイトの頭部を食べ終わった恭也を見て、
アルフは泣いた。恭也の記憶なのにまるで、本当にフェイトが食べられているとしか思えない。
「来て欲しくなかったな、アルフ」
「……えっ、恭也……」
アルフのすぐ後ろに、恭也は魔導士の姿で空中に浮いていた。血滴る白い片翼を広げて、空中浮遊の魔法を使ってないのか魔法陣は
見当たらなかった。
「ここは、俺の意識と異界の狭間。魔法を使えるようになったのも、ここで――――アリシアを食べたからだ」
「ここは――――どの次元、時空、時代関係なく、俺の関わる人達が俺に食われることを望む―――――地獄だ」
『リニスは、バルディッシュに闇を切り裂く刃という想いを込めていた』
『ユーノ君はレイジングハートに不屈の心という想いを込めていた』
『『忘れていた、込められた想いに私達は再び立ち上がる』』
『だけど、突然バルディッシュが機能不全を起こして強化前の姿で戦うことになる』
『『次回、魔法詩篇とらいあんぐるハートA's 「復活、魔法剣士達なの!? 前編」に ドライブ、イグニッション』』
恭也の最深部の世界が意味するのは一体。
美姫 「これが今後、どう関係してくるのか」
次回も益々目が離せない展開に。
美姫 「一体、どうなるの!?」
次回も楽しみに待っています。
美姫 「待ってま〜す」