『魔法詩篇とらいあるぐるハートA's』




第ニ話

砕かれたディーヴァ


会話設定


「」=人間の会話
【】=場所、他
『』=回想
≪≫=ディバイス英語、もしくはドイツ語
<>=ディバイス日本語
()=人間思っていること


























この広い空の下には

いく千 いく万の人たちがいて

いろんな人が ねがいや思いを抱いてくらしていて

その思いは

ときにふれあって ぶつかりあって

だけど その中のいくつかは

つながっていける

伝え合っていける

これからも そうだったら





『良かったのに』







これから始まるのは

再び始まる 新たな出会いとふれ合いのお話








魔法詩篇とらいあるぐるハートA's 始まります





































 悠子とアリサが話したのはたった一度だけ。






「あっ、あれ?」






 カバンリュックの中に昨日やった算数の宿題を書いたノートがないことに泣きそうになる悠子。






(ランドセル今は使わない学校多いですね)






「う....そ」






 いくら似たような問題が出題されるからと言っても、量的には膨大で、すぐに終わるとは思えない。






 算数が二時間目にあるのが唯一の救いだった。






「はい」






「えっ」





「早く写しなさいよ」






 同じクラスで、悠子とは違い自信に満ち溢れた女の子。アリサ・バニングスであり、アリサ・ローウェルになるかもしれなかった人。






「ありがとう」





 その時から今までほとんど接点はなかった悠子とアリサだったが、悠子はアリサのことを思うようになっていた。







 悠子は、内向的で、会話も短く相手と噛み合わない。加えてTHAT'sマイナス思考。そんな彼女、自分を救けてくれたアリサに何かして
あげることができるだろうかと考えれば、占いや呪いなどに頼ることになる。







―――――――――彼女は、決意した。





 女性限定で最近噂になっている都市伝説がある。






 神社の恋愛成就の御守りを手に持ち、夜中に誰もいない暗い場所で祈ると、和服を来た美しい女性剣士が自分の命を代償に、一度だ
け好きな人を命の危機から救ってくれるという。 だか、この都市伝説には細部に違うところがある。





 恋愛成就の御守りではなく小さなナイフだったり、代償が記憶だったり―――共通するのは、愛する人を護る為に剣士になった女性
だったが護れないで逆に護られてしまった。という部分である。







―――――――――強き想いに答える剣士―――――――――






―――――――――女性剣士に憧れた男性がいつのまにかその女性剣士になってしまった―――――――――





―――――――――絶対に叶わない愛を叶える人―――――――――





―――――――――幽霊になっても、恋人であり弟子でもある男性を探し続けている―――――――――





―――――――――愛の死神―――――――――





―――――――――自身の命を代価に一度だけ、想い人を護る ―――――――――









                              【理の剣士召喚の儀式】






『刃物に、一ヵ月間毎日深夜二時に自分の血を付着させる。新鮮で量が多ければなお良い。』






『儀式を始めたら、欠かさず行うこと。もし途中でやめると、異界に飲み込まれ二度と帰ってこない。』






『儀式が完了したら、あなたの願いを込めてひたすら祈りましょう』






『理の剣士があなたの前に現れたら、あなたの願いはあなた自信の死と共に約束されます。』














(わたしは後悔しない。....これからも)






「よかった」






 アリサを屋上から見つめているのは、和服を着た女性だった。






「契約は完遂されました」






 同じ女性とは思えないような低めの声を出す。






「ありがとう。理の剣士さん。いえ、愛音さん」






 その声を最後に、中野悠子という存在はこの世界から完全に消滅した。






「ふぅ〜」





≪MISSING OUT≫






「....断章の力を借りても、理の剣士の力を使えなくなってきたな」





































―――――桜―――――下―――――死体―――――埋―――――





「桜の下にはしたいが埋まっている。」






―――――桜―――――血―――――養分―――――綺麗―――――桃色―――――花―――――咲―――――





「桜は血を養分にして綺麗な桃色の花を咲かせる。」





―――――桜―――――異世界―――――繋―――――





「桜は異界に繋がっている。」





―――――桜―――――妖樹―――――





「桜は妖樹であり、人を惑わす。」







―――――噂はマヤカシ―――――






 そんな桜にも、蒼色の花を咲かせるものがある。その桜の辺りは闇に包まれていた。






―――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――ぐしゃぐしゃ―――――






 暗闇の中で誰かが何かを食べている。






―――――ぐはっ―――――おえっ―――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――がり―――――がり―――――






 食べている誰かは、時には吐き出して、その吐き出したものすら食べようとする。

 その姿は暗闇で見えないが、その食事をしている音から、普通のものを食べているとは到底思えない。

 じっと、その音を目を閉じ耳を手で押さえてて耐えていた。






―――――がり―――――ぐしゃ―――――ぐしゃ―――――うっ―――――おえっ―――――ぐしゃ―――――






――――――――――がり―――――





 音が止んで、目を開け、耳から手を離した瞬間に見えたのは、自分が人を食べている姿だった。








































【海鳴大学】





 海鳴大学で、恭也が唯一得意となっている教科、もとい得意とならなければならなかった保健の講義中だ。だが、現在の恭也は、数
学や科学などの不得意科目と同じ状態になっている。






―――――――――――――――――――――――――熟睡という状態に






≪CALL!! CALL!!≫






 普段は両耳にイヤリングとして擬態しているディバイス、断章の音声が大音量で聞こえたものだから、恭也は耳を押さえて起きた。






「断章、授業中になんだ」






「おい、高町」






 教師が恭也に注意するが恭也は一言も耳を貸さない。











<封時結界が町全体を覆いました。かなりの高ランクの魔導士が侵入している模様。結界の中になのはさんが巻き込まれました>











「恭也....ねぇ、恭....っ!?」






「きゃあああああ」






「いったい何が」






 恭也が神速を使った影響で窓ガラスが割れ、地震のような音と揺れで、教室がパニックになる。






「恭也....何があったの?」






 たまたま恭也と同じ科目を受講していた恋人である忍は、恭也の行動にただ驚くばかりだった。







 パニックを利用して、人の注意を自分のクラスに移す。人気のない場所に移動して、念のためすぐ側に人の気配がないことも確認す
る。







「断章、なのはの正確な位置は俺の血を辿れ」







(これを使うと、断章のシステムチェックと修復作業で魔導士としての力は長い間使えない。リスクは高いな)











≪LOCK≫

≪OPEREATING SYSTEM CALL≫

≪TRANSMISSION≫

≪LIMITLESS≫

≪DRIVE≫








































【封時結界内 海鳴市街地】











『わたし、もうダメかな』







 突然、ヴィータの攻撃が防がれる甲高い接触音と共に一人の男が現われた。







「なっ、おまえ!!」







 後ろで意識が朦朧としているなのはに恭也は語り掛ける。







「なのは、見ていろ。これが御神流だ」







「お(兄ちゃん)」







「ちっ」







 ヴィータはビルの中から外に出る。







「フェイト、ユーノ、なのはを頼む」







 気配でその場に後から来た二人が誰かわかった恭也、なのはを二人に委ね、ヴィータを追う。







「はい」

「わかりました」







 ビルの屋上に着いた恭也は上空にいるヴィータに飛針を投げるが、1投目はオートバリアに弾かれ、2投目は上空に逃げられ避けら
れる。







「へっ、魔力がないんだから空飛べないだろ」







(断章、現状は?)






≪SYSTEM CHECK ALL COMP≫

≪ALL COMP 70%≫













(違う、後どれくらい掛かる)






<約5分です>












(それなら管理局にも怪しまれずに済むか……)







 未だに出現元が良く分かっていない断章とそのディバイスを扱う恭也。すでに怪しいので、余り意味はないと思うが……







「これでもくらえっ!!」







 なのはと同系の魔法攻撃が恭也に迫る。







「ちっ」







 恭也は素早く避ける。なのはと同系のスフィアを使った攻撃でも、剣でスフィアを破壊するという動作にはすぐには移れない。どう
してかというと、そのスフィアに何か特殊な魔法が施されている可能性と、スフィアをコーティングしている魔力を測らなければなら
ないからだ。







 魔導士になれないということは、普段断章が補助している部分を自分で補うという作業を自分で行わなければならないし、魔力とい
う戦闘手段がないということで、その場その場の対処方法が狭まるので、実際に恭也はかなり追い詰められた状況にある。







「これならどうだっ!!」







 スフィアの数を増やされた恭也は、致し方なく神速を使う。







「なっ、なんだよお前、魔法がつかえねーんだろ」







 ヴィータには、魔法を使わずシグナムと同等の高速戦闘をやってのける恭也に驚くことだろう。







(いくぞ、薙旋)







 断章のサポートなしでは、例えば徹を込めた射抜きを放ったとしても、動いている球体のスフィアを的確に狙えるほどの技術は、今
の恭也にはない。危険なスフィアを確実に壊すことを選んだ。







 1撃目に3個のスフィアに亀裂が入り、2撃目にそのうち2個のスフィアを破壊。3撃目に2個のスフィアに亀裂が入り、4撃目に
残りすべてのスフィアが破壊された。







「ふん、いけっ!」







 ヴィータは、残りのスフィア2個を恭也に向かわせる。抜刀後の恭也は、必ず隙が発生する。







「えっ」







「抜刀後の隙を的確に狙ってくるとは、子供ながらに随分といいセンスを持ってるな」







 恭也は、敵を子供と思って油断はしていないつもりではあったが、さすがにここまで追い詰められるとは思わなかった。







「君は、俺が空を飛べないと言ったが、本当にそうかな」







 恭也は上空にジャンプした。







「ばっかじゃねーのここまでとど...」







「なっ」







 恭也は、空中を疾走する。その後ヴィータに徹を込めた一撃を放つ。







「やはり弾かれたか」







 地上に落下していった恭也を見ながらヴィータは言う。







「あいつ人間か?」







 恭也は、鋼糸を命綱にして地面に着地する。







 空中の二段疾走。体の柔軟性もさることながら、ちょうど、重力と反発力が零になる状態を維持することも重要。だが、一番重要な
のは、上空の敵の動きをある程度予測できる分析力と空間把握力だ。












《LIMIT OVER》












「よし」







「永き輪廻より舞い降りる、現実を受け止め断たれた心、戦えぬ我、護れぬ我、無力に嘆く我に力を!! 断章!! set up!!」







 桃色の花びらが舞落ちると守護の舞姫が現われた。







「さあ、舞いましょうか」







「あいつ、なんで魔力あるんだよ」







恭也は優雅にヴィータの前に向かった。







「あなた、お名前は?」







「闇の書の主を護る守護騎士。鉄槌の騎士、ヴィータ」







「私は、愛する者を護る守護の舞姫。悲愴の断章、不破恭也」







『いいか、もし不破を相手に名乗るのなら、その戦いに敗北は許されない』







「くらいやがれ」







「ちっ」







 片方の断章が砕け散る。ヴィータの攻撃を一点に受けたためだ。断章事体の基礎フレーム強度は最弱といってもいい。だが、いつも
魔力で覆っているのでヒビがたまに小さく残ってしまう程度でしかない断章が砕かれたという事実に恭也は驚く。












≪CAST OFF≫












 恭也のバリアジャケットがヴィータの視界を一瞬覆った瞬間に、恭也は八景を取る。







 剣と扇の、変則的戦闘スタイル。ヴィータは、その攻撃に意識を奪われてしまう。







「ふぅ」







 注意が恭也に向いたおかげで、三回目にようやく束縛魔法が成功したアルフは長い息を吐く。







「念のために、私も」












≪STINGER BIND≫












 恭也の髪がヴィータを捕らえる。







(くっそ、とけねー)







 上空から結界の内側に強引に割り入ったシグナムが、恭也の髪を斬った。






≪STINGER BREAK≫












 魔力で変化していた飛針の変化が解けて、ヴィータとシグナムに放たれる。







「くっ、いてー!」

「魔法ではないのか?」







 魔力で生成した飛針と物質である飛針を魔法を纏って普通の髪に見せるようにしている、束縛系攻撃魔法の威力は絶大である。







 だが、その魔力消費は無視できない。このままで行くと、今回の戦いですべての魔力を使い果たすまで行くだろう。







(ユーノは転送の準備を、アルフは同系統の使い魔の相手を、フェイトは赤い魔導士の相手を頼む。この戦い、圧倒的にこちら側が不利だ。
特にフェイト、できるだけ接近戦には持ち込むな。ディバイスが一撃で破壊される。)







「はっ!」







 安全圏の念話での指示で、少し今の戦闘に意識が逸れた恭也に、シグナムの斬撃が迫る。







 とっさに断章で防御するが....







「しまった」







 だが、度重なる戦闘に断章は耐えきれなく、コアが砕け散る。







 断章の機能停止と同時に、魔力がなくなった恭也は落ちる。







「お兄ちゃん!!」







「恭也さん!!」







 落下していく恭也。


















―――――ピシ












 鋼糸が負荷に耐えられずに切れる。先ほどの着地の際にも使ったが、そのときの負荷がかなりのものだったのだろう。







「くっ」







 八景をビルに引っ掛けて少しでも落下速度を落とそうとする恭也。







「チェーンバインド」







「ふぅ」







 ユーノはチェーンバインドを使って恭也出はなく、恭也のすぐそばにあった排気口を束縛する。







 恭也はチェーンバインドを掴み難を逃れたかのように見えた。







「紫電一閃」







 ユーノはシグナムの攻撃に耐えられなく、一瞬気を失う。







 チェーンバインドの効力が無くなり、恭也は再び落ちていった。







 恭也が上空から落下した。ビルに刺さったままのはずの八景が自由落下し、丁度恭也の真上から落下していった。






















【アースラ艦内】











「結界破れました。映像、来ます」







 ディスプレイには、街中でSTARLIGHTBREAKERを撃っているという事実。その後次々に表示される映像。







「何これ、どういう状況」







「これは」







 クロノの目に飛び込んできたのは魔導士が持っていた一つの本。










 なのはがSTARLIGHTBREAKERで結界を破ると、体をふらつかせながら倒れた。







(結界が抜かれた。引くぞ)

(承知)

(シャマル、ごめん。たすかった)

(うん、いったん散って、いつもの場所に集合)











 キーボードを素早くタイプする音。







「あぁ、にげる、ロック急いで! 転送の足跡を!」







「いけないわ、急いで向こうに医療班を飛ばして」







「後、本局内の医療施設の配備を」







「ロック外れました」







「ごめんクロノ君、しくじった」







「第一級捜索指定遺失物」







「ロストロギア【闇の書】」







 クロノは、拳を強く握り返す。その様子を見てエイミィは問う。







「クロノ君、あれ知ってるの?」







「ああ」







「知っている。少しばかり嫌な因縁がある。」







 そのディスプレイに映るのは、ユーノが恭也に回復魔法を掛けている姿と、フェイトがなのはに回復魔法を掛けている姿だった。























『恭也、早く目を覚ましてくれよ。』

『あれから一命を取り留めた恭也は一週間経っても眠り続けている。』

『管理局の雰囲気は悪くなる一方。私には関係ないけど、この雰囲気は嫌だ。』

『なのはは、心を塞ぎこんでる。ユーノに聞いたら、昔、父親も大怪我をしたことがあるらしい。』

『フェイトは、必死になのはのお姉さんに剣を習っている。もう、痛々しくて見ていられないよ。』

『もう、待っていられない。今必要なのは、私でなくて恭也なんだ。私はどうなってもいいから、恭也は助ける』

『ごめんね、フェイト。そして、さようなら』

『次回、魔法詩篇とらいあんぐるハートA's 「儚い星空 前編」に ドライブ、イグニッション』





闇の書の登場。
美姫 「そして、倒れた恭也」
一体、何が!?
美姫 「次回も非常に気になるわね」
うんうん。
美姫 「次回も待ってますね〜」
待ってます。



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