これはとらは×リリカルなのはA'sのクロス小説です。
設定は全てリリカルなのはA'sで、舞台はリリカルなのはA's最終回その後のお話。
最終回から時間はそんなに立ってない物語なので、なのは達の年齢、学年は放送時のままです。
唯一の変更点、恭也に恋人はいません。
『Little Alice Stories1〜運命の初恋〜』
「えと……にんじん、じゃがいも、たまねぎ、おにく……うん、大丈夫。全部ちゃんと買えた」
メモに書かれたお買い物リストをもう一度チェックしながら袋の中を確認する。今日の夕食はリンディ提督がカレーを作ってくれるから私はその材料のお使いを頼まれた。
クロノもエィミィも今夜は早く帰宅出来て一緒にご飯食べれるって言ってたし、アルフはおにくがいっぱい入ったカレーがいいってとってもはしゃいでた。
お仕事とかそれぞれに大変でとても大切な事だけど私も家族みんなで一緒にご飯食べれてやっぱり嬉しいな。
一人でのお使いは前にも何度かあって初めての時は商店街のどこにどんなお店があるのかわからなくて、いっぱいいっぱい迷ってどうしようか悩んでおろおろしてた私にとても優しい笑顔で話しかけてきてくれて助けてもらった事があった。
その人はなのはのお兄さんで高町恭也さん。物静かな雰囲気で一見冷たそうな印象だけど笑顔が本当に柔らかくて温かな人。
なのはに紹介してもらって恭也さんの剣の鍛錬を見学させてもらった時、真っ直ぐで内に秘めた迷いなき意志、貫くべき信念、そして全てを守り包み込むような優しさを併せ持つ「本当に強い人」なんだって思った。
雰囲気がどことなくシグナムに似てるからなのかな、なんとなくそのなのはの家に遊びに行くと自然に恭也さんの姿を探してしまってそれに気づいて顔が真っ赤になっちゃった事もあったりして。
あー、えとえとこんな話じゃなくて(////)お使い、そう初めてお使いの時に恭也さんと会ってそのまま恭也さんにお店を案内してもらって、
それから後でもう一度なのはに商店街のお店を教えてもらって今はなんとか商店街の中であまり迷う事なくお買い物が出来るようになった。
そういえばあの時、すっごく緊張しちゃっててちゃんとお礼言えてなかったかも。
だってその……恭也さんってすごくそのかっこ良くて、優しくて憧れるってゆーか……素敵な人だなって……ええっとね、別に違うんだよ?ほ、ほら私にも「お兄ちゃん」って言うと真っ赤になって照れちゃうお兄ちゃんがいて、
恭也さんはなのはのお兄さんだから同じお兄ちゃんみたいな感じでその……頭の中でいったい誰にいいわけしてるのかわからないくらい必死に弁明を繰り返し続ける私。
あう、もしかしてこれって妄想とか言うのかな。なんだか自分がちょっぴり情けなくて恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。なんて考えていると何か目の前にトンとぶつかってしまいよたついた所を誰かに肩を支えてもらってしまった。
「わわっ、ご、ごめんなさいっ」
「大丈夫ですか?……ん?フェイトじゃないか。考え事をして道を歩くのは危ないぞ」
「えっ!?きょ、恭也さん?」
聞き覚えのある声に顔を上げるとやっぱりそこには恭也さんがいて私の身体を支えてくれている。私は慌てて体勢を整えてから羞恥で真っ赤に染まる頬の熱を感じながらとりあえずご挨拶を。
「こ、こんにちは恭也さん。それとさっきはぶつかってごめんなさいっ」
「あぁ、こんにちはフェイト。いやそれは構わないが何か悩み事か?何か困った事があるのなら話を聞く事ぐらいなら俺にも出来る。そこで俺に出来る事であればフェイトの力になるし、俺では解決出来ない悩みでも人に話す事でずいぶんと気持ちが楽になる」
心配そうに私を気遣ってくれる恭也さんの優しい気持ちがとっても嬉しい。でもさすがに本人の前で「恭也さんの事を考えていてボーっとしてしてました」なんて恥ずかしくて口が裂けても言えない。
「いえ、本当に何でも無いんです。ただちょっとお天気が良くてボーっとしちゃってただけで。これからはちゃんと気をつけます」
私の顔を少しの間じっと覗うように見つめた恭也さんは、少し安心した表情を浮かべて微笑んでくれた。
「そうか、それだったらいい。確かに今日は天気が良いから気持ちはわかる。でもあまり気を抜きすぎてもいけない。思わぬ事故に合うかも知れないから気をつけるように」
「はい、ありがとうございます♪」
「ところでフェイト、今日はお使いか?」
両手に抱えた材料の入った袋に目線を落す恭也さんに、私はこの間の事を思い出しながら両手の袋を抱きしめてゆっくりと頭を下げる。
「はい、リンディ提督にお使いを頼まれたので。この間、恭也さんとなのはに商店街を案内してもらえたおかげで今日はちゃんとお買い物が出来ました。あの時はありがとうございました」
「そうか、役に立てて良かった。家のお手伝いもちゃんとしてフェイトはいい子だな」
そう言って私の頭にポンと軽く手を乗せると温かくて大きな手で私の頭をゆっくりと撫でてくれた。恭也さんにはきっとなのはによくしてあげたりしている自然な行為なんだろうけど、私はあまり誰かにこんな風に頭を撫でてもらった経験がなくて。
突然の事でびっくりとかちょっぴり照れくさくて緊張しちゃったりもしたけど、それ以上に私の頭を撫でてくれる恭也さんの慈しみに満ちた穏やかで優しい笑顔に包まれるように、
私の心にも何かじんわりと恭也さんの優しい気持ちが流れてくるかのように温かくなる。それが凄く心地よくて私は素直にそれを受け入れた。
「あっ……ありがとう……ございます(////)」
少しの間身を任せるように撫でてくれた手がそっと頭から離れる。少し名残惜しいような寂しい気持ちになりながら恭也さんの手を見送っていると
「ふむ、フェイト。この後何か用事でもあるか?」
「えっ?いえ、特にはないですけど」
「じゃぁ、すまないが少しの間俺の話し相手になってくれるとありがたいのだが……」
「本当にすまないな、少し暇を持て余して散歩中だったんだ。話し相手になってもらえて助かる」
「いえ、私もこの後用事とかなくて。それにその、恭也さんとお話しするの私も楽しいですし……」
「ふむ、よく妹たちには「枯れている」などと不名誉な烙印を押されてしまってたまにお年寄り扱いされるような事はあるがそう言ってもらえると嬉しいな」
「そ、そんな事ないですよ。この国古来の伝統的なご趣味でとても綺麗でした。私はとても素敵だと思います」
「そうか?ありがとう。うちに遊びに来た時はまたいつでも見てやってくれ。良ければ手入れの仕方も教えよう」
「はい、楽しみにしてます♪」
ちなみに先ほどの話の元は以前なのはのおうちに遊びに言って見せてもらった恭也さんの趣味の「盆栽」というもの。とっても良く手入れがされていて独特な雰囲気があって見ていると心が落ち着くような気がして本当に綺麗だなって思った。
ガーデニングと同じなようでちょっと違うような。美由希さんやなのはは「おじいちゃんみたい」だなんて言ってたけどそうなのかな?
なんて事を恭也さんと楽しくお話しながら海鳴臨海公園の方まで歩いてきてふと目に止まったのがとてもおいしそうな匂いがするなにかのお店。
「おっ、たい焼きか。ちょうど少し小腹が空いてきたところだ。どうだろう、たい焼きでも食べながらそこのベンチで話をするというのは?」
「あっ、はい。あれがたい焼きって言うんですね」
「ん?フェイトはたい焼きは食べた事がなかったか?」
「はい、どんなものかは知ってはいましたが実際に食べた事はないです」
「そうか、なら尚更食べて見よう。ここは俺も美由希やなのはも良く買って食べている屋台だ。中身が頭からしっぽまで入っていて味の方も保障しよう」
一緒にたい焼き屋さんの前に行くとちょうど焼きあがったのかこんがりと湯気を立てておいしそうな匂いがいっぱいこちら側に流れてくる。本当にお魚の形をしていてちょっと可愛い。
「俺にはチーズとカレーを。フェイト、ここにあるメニューから好きなのを選ぶといい」
「はい。えーと、いろんな種類があるんですね」
恭也さんはチーズ味とカレー味というのを頼んでいたみたいでその他にもほんとにいっぱい種類があってどれにしようか迷ってしまう。私が何を頼もうか決めかねていると
「美由希となのははそれぞれあんことカスタードがとてもお気に入りだそうだ。甘いのが苦手じゃないならそれを頼んで見てはどうだろう。たい焼きとしてはスタンダードだから初めて食べるフェイトにぴったりだと思うぞ」
「そうなんですか。じゃぁ私はそれにします」
それぞれのたい焼きと飲み物を手に持ちながら私達は近くのベンチに腰を下しました。
「あの、本当に奢ってもらっていいんでしょうか?たい焼きもそうだしジュースも買っていただいて」
「あぁ、全然構わない。俺がフェイトに話し相手になって欲しいと頼んだわけだし、それに家のお手伝いを頑張ったフェイトへの俺からのささやかなご褒美だと思って受け取ってもらえると嬉しい」
「……はい、ありがとうございます。とっても嬉しいです、いただきます♪」
恭也さんのさりげない優しさと穏やかな視線にに見守れながら一緒にたい焼きを食べた。出来立てで少し熱かったけど中にいっぱいの餡子が詰まっていてとってもおいしい。隣の恭也さんも二つのたい焼きを重ねるようにして一口食べて満足そうな顔をしていた。
なんかいいなこういうの。恭也さんといると凄く安心できるってゆーか落ち着くってゆーかとても不思議な人だと思う。そんな事を考えながら隣で食べている姿を見ているとその視線に気づいた恭也さんはおもむろに食べていたたい焼きをこちらの方に差し出す。
「?」
「この食べ方が気に入っていてな、意外と美味いんだ。フェイトもどうだ?しっぽまで中身が詰まっているから大丈夫だぞ」
「……えぇっ!?いえ、その、わ、私そんなつもりで見てたわけじゃっ」
「別に気にしないでいい。うちの妹たちはたまにこうやって一口づつ食べてゆくからな。特になのははこういった時は喜んで甘えてくる。アレは食べさせてもらったりするのが好きだから(苦笑)だからフェイトも遠慮なく食べてくれ、美味いぞ」
そう言って笑顔で私が食べやすい口元の高さまで移動するたい焼き。ええええと、どどどどうしようっ!?こ、これってそのまま食べろって事なのかな?それってなんだか凄く恥ずかしいし、
でもでも恭也さんの厚意を無下に断るなんて絶対したくないし……はうぅ〜どうしよう。さっきなのはは喜んで甘えるって言ってたよね、恭也さんにとっては妹にするような行為でそれが自然なんだから、
わ、私も今はなのはみたいに恭也さんの妹になったつもりで……うん、よ、よしっ!頑張れ、フェイトっ!
「じゃ、じゃぁ、その……一口だけ(////)」
「ああ。少し熱いから気をつけてな」
「あー……あむ、あち、あちちち。でも、おいひぃ♪」
うー、顔から火が出るほど真っ赤になってるのが自分でもわかるけど凄く幸せな気分。ちょっぴりなのはが羨ましいな。私は自分の持っていたたい焼きをお返しに今度は恭也さんに差し出して
「恭也さんも良かったお一つどうですか?」
「ん?じゃぁ一口だけ……ふむ、少し甘いが美味い。ありがとう、フェイト」
「はい♪」
……あれ?なんか私今自然にもの凄い事をしてしまったのでは?お互いに食べさせ合うだなんてまるで……おおおお、落ち着いて落ち着くんだよフェイト!き、きっとなのはだって食べさせてもらったら恭也さんに食べさせてあげたりしたはず。
うん、きっとそうだよ、とっても仲の良い兄妹なんだもん。だからなのはと同い年の私がやっても別に変じゃないよ、きっと。でも私と恭也さんは兄妹じゃないし、もしかしたらこいび……
「フェイト」
「はっ、はいっ!?」
「この街や学校にはもう慣れたか?」
「えと、もう随分この街にも慣れました。色んな場所があって自然もいっぱいあってとても良い街だと思います。学校もなのはやアリサやすずかがいてくれてたくさんのお友達が出来て凄く楽しいです」
変な妄想じみた頭と心をゆっくりと呼吸を整えながら落ち着かせていき、なんとか通常の思考回路を取り戻す事が出来た。
「そうか。向こうの仕事の方もフェイトもなのはもうまくやれているか?」
「……はい。まだまだ私もなのはも学ぶ事がいっぱいで大変ですけど、自分のしたい事と望む事、その先にあるものの為に、今、自分に出来る事とすべき事を全力でやっています。なのはは大丈夫ですよ、優秀な魔導師ですから。誰よりも優しくて真っ直ぐで……」
「俺にはアレがやろうとする事、やりたいと思える事に何の手を貸してやる事も出来ないだろう。でもやっぱり兄としては心配でな(苦笑)でも安心した。なのはにはフェイト、君がいる。その他にもアレを支えてくれる人もたくさんいてくれる。フェイト、なのはにはこの先越えなければならない大きな壁がいくつも立ちはだかるだろう。時には道に迷う時もあるかも知れない。そんな時どうか俺の代わりに、なのはを支えて力になってやってくれないか」
憂いを帯びた瞳と穏やかな表情に映るのは、少しの寂しさと兄が妹を心配する想い。それと大きな期待と私に対する全幅の信頼。なのはの事と私の事まで心配してくれる本当に優しい人だと思う。
真剣な瞳に私もまたその願いと信頼に答えられるように真剣な瞳で恭也さんの瞳を見つめ返し自らに改めて誓いを立てる。
「はい、必ず。なのはは私が守ります。恭也さんの想いを私の剣に乗せて全力で。でも恭也さんは少しだけ誤解してるみたいです」
「誤解?俺がか?」
「はい。恭也さんは何も出来ない事なんてないです。なのはが前に話してくれたんです。自分のその力で少しでも誰かの笑顔を守る事が出来て、少しでも悲しみを減らす事が出来るなら私は迷わずにこの力を使いたい。大切な人たちやたくさんの人がそれぞれの幸せの中で笑顔でいて欲しいから。だから私はこの道を選んだ、お兄ちゃんのように強くて優しい人になりたいからって」
「……」
「だからなのはは強いんだと思います。どんな時も決して諦める事なくで迷う事なく誰かの為に全力で守る為に戦う。なのはの力の原点は恭也さんへの想い。なのはは恭也さんの想いと信念をちゃんと受け継いだから今のなのはがあるんだと思います。だから恭也さんは何も出来ないなんて事はありません。ちゃんとなのはを守ってます。私も、きっとなのはと同じです。私も恭也さんのような人になりたいです……」
「……そうか、なのはがそんな事を……」
「はい。ってあのっ、す、すみません、年下の私がなんか凄いえらそうな事を言ってしまって(汗)」
私が急に謝ると神妙そうになにか考え事をしていた恭也さんは一瞬キョトンとした表情をしてから苦笑しながらポンと手を私の上に乗せて
「いや、構わない。むしろ礼を言いたい。まだ子供だと思っていたのになのはもそんな風な事を考えるようになったのか。俺はなのはやフェイトが思うような立派な人間じゃない。それでもちゃんと自分の考えをもってやりたい事を見つけて頑張っている二人を俺は心から誇りに思う」
そう言って私に乗せた手をくしゃっとゆっくりと撫でてくれる恭也さん。さっきのように、ううんその時よりもずっと優しい感じがして温かくてとっても気持ちいい。
「こういうと気分を悪くするかも知れないがフェイト、君は俺によく似ているな」
「えっ?ほ、ほんとですか♪ど、どんな所が恭也さんに似てますか?」
撫でられる事が気持ちよくて目を細めながら身を任していたが私は嬉しくてちょっと興奮気味に聞いて見ると、恭也さんは少しからかうような笑みで
「無茶と無理をし過ぎる所。違うか?」
「あう、それは(////)」
「フェイトは優しい子だから周りの人の為に頑張りすぎる所があるんじゃないか?でもそれは逆に周りの人にも心配をかける事になるんだ」
「はい……」
「でもな、そうやってひたむきにがむしゃらに頑張る人が俺は嫌いじゃないしむしろ好きだ。だから周りの人に心配かけすぎず、全力で目指すものの為に頑張れ、フェイト」
「……はい♪」
優しい笑顔で応援してくれた恭也さんに私も元気一杯の笑顔でそう答えて二人で笑い合った。その後もなのはや私、はやての事とか色んな事をたくさんたくさん話をする事が出来た。
自分でも不思議なくらい自然にお話する事が出来て恭也さんもどのお話も真剣に聞いてくれるのが嬉しくてまたお話して。恭也さんからも盆栽の事や近接戦闘での注意点とか色んな事を教えてくれたりしてとても楽しい時間だった。での時間が立つの早いもので気がつけばもう夕方。
「もうこんな時間か。悪いな、少しの間のはずだったのに長い間話に付き合ってもらって」
「いえ、そんな事ないです。とても楽しかったです」
「そうか、だったら俺も嬉しい。もう暗くなるから家まで送ろう」
「あの、いいんですか?送ってもらっても。」
「ああ、構わない。いくら家が近くとはいえ子供があまり遅くに一人で帰るものじゃないからな。だから送らせてもらえないか?」
「じゃぁ、あのお願いしてもいいですか?」
あぁと短い返事で二人してベンチから立つと同時に恭也さんは私の買い物袋をひょいと手に取る。
「あ、あの、そんな私持ちます。送ってもらって荷物まで持ってもらうなんて悪いですし」
「家まで送るついでだ、そんな大した事じゃないから素直に甘えてもらえると助かるんだが」
そう言ってくれた恭也さんの態度というか私に対する接し方がなんとなくもしかしたら気のせいかも知れないけどなのはの時と同じような気がして前より近づけたようなそんな感じがする。だから私も……
「じゃぁ、甘えちゃいますね。恭也さん♪」
「ああ」
そうして長く伸びる影を背に私達は公園を後にしました。ちょっとだけ恭也さんとの隣の距離を縮めて一緒に歩きながら。
あっという間に自宅のマンションの前まで辿り着いたしまった。どうして楽しい時間というのはこんなにも早く過ぎ去ってしまうのか。本当に残念だけど仕方が無い。
それに今日はいっぱいお話出来たし、恭也さんとの距離が前よりもっと近くなれたから今日はもうそれでいい。名残惜しい気持ちに区切りをつけて私は恭也さんにお礼とお別れの挨拶を。
「恭也さん、今日は本当にありがとうございました。とっても楽しかったです。また良かったら……一緒にお話してもらってもいいですか?」
「ああ、俺も楽しかったよ。俺なんかで良かったらいつでも構わない。また話相手になってくれ。俺からも頼む」
「はい、喜んで♪」
そうして新しい約束と少しだけ近づいた温かな気持ちを感じながら、荷物を受け取ろうと恭也さんに一歩踏み出した時、地面の小石につまずいてしまい倒れそうになった瞬間ギュっと何かに抱きしめられた。
「大丈夫か、フェイト?昼間も言ったが夜道は暗いからもっと気をつけないといけないぞ」
「……」
「フェイト?」
恭也さんの声が私のすぐ上から聞こえてくる。私って確か小石につまづいてこけそうになっちゃった所を何かに抱きしめてもらって支えてもらってるんだよね。あの、それってもしかして……私、今恭也さんの腕の中にいるの?
突然の自体に頭か反応していなかったがようやくその事実に脳が認識した途端、トクンと今までに感じた事がないような胸が高鳴るのを感じた。
な、なんだろう、この感じ。顔どころじゃなくて全身の血液が沸騰しそうなくらい真っ赤になっちゃいそうなほど身体がじんじんと熱を帯びてくるのがわかる。服を通して伝わる恭也さんの体温や服の匂いに気がついて余計意識しちゃうっ。
ど、どうしよう、何だか頭の中が真っ白になっちゃって何も考えられないしかもまるで自分の身体じゃないみたいにピクリとも動かなくなっちゃってる。
いつまでも反応しない私を不思議に思ったのか抱きしめてくれていた私の身体を少し離して今度は覗き込むように私の目の前に恭也さんの顔が触れそうな程私に近づいて……
「ひゃぅっ!?えっ、えと、あう、あう〜〜〜(////)」
「どうかしたのか?顔が真っ赤だぞ?」
「あっ、あのっ、えっとえと、だ、大丈夫ですっ!きょ、今日はありがとうございましたっ!わ、私ここで失礼しますっ!?(////)」
「あ、ああ。気をつけて帰るんだぞ、じゃぁなフェイト」
「はっ、はいっ!(////)」
恭也さんに持っていてもらった荷物を一瞬にして受け取ると勢い良く深々と直角90度近く頭を下げながらお礼を言うと全速力でその場を戦線離脱。
あとちょっとでも恭也さんの顔を見ていたら恥ずかしくて気を失ってしまうかも知れないと本気で思った。玄関までノンストップで駆け抜けて玄関のドアを閉めてようやく緊張が解けたのかへなへなとその場に座り込んでしまった。少し落ち着いてからリビングの方へ向かうと
「お帰りなさい、フェイトさん。随分遅かったのね、ちょっと頼みすぎちゃったかしら」
リンディ提督が帰ってきた私を出迎えてくれて、クノロもエイミィも既に帰宅していたのかアルフと一緒に部屋の奥から顔を出して来てくれると皆一様に訝しげにびっくりした表情を見せる。
「え、えっとこれ頼まれた買い物です。遅くなってすみませんでした……あ、あの、みんなどうかしたの?私の顔に何かついてる?」
「何かついてるって、フェイトさん何かあったの?あなた顔が真っ赤よ?」
「えっ!?あぅ、えとえと……な、なんでもないんです〜っ(////)」
買い物袋をリンディ提督に渡すと私はまたすぐに自分の部屋へ駆け込んだ。アルフ達が何かあったのかと訪ねてきたが何も無いから心配しないでとドアを閉める。
部屋の鏡に写った私の顔は恭也さんの腕の中にいた時と同じで未だにゆでだこのように真っ赤だった。私どうしちゃったんだろう、さっきからずっと恭也さんの顔や温もりが頭から離れない。
今日の事思い出す度に胸がキュンと締め付けられるような切ない気持ちでいっぱいになるし、胸のドキドキが収まらない。傍にあったクッションをおもむろに両手でギュっと抱きしめて顔をうずめる。
さっき恭也さんが私にしてくれていたみたいにギュっと……今までに感じた事がない自分でもよくわからないこの切ない気持ち。
唯一つわかる事は恭也さんへの想いの「何か」が私の中で確かに変り始めたというただそれだけが漠然とだけどわかるような気がする。
「……恭也……さん……」
その後私は夕食時に直接と念話による多重波状尋問を家族から集中的に浴びせられるが頑なに黙秘権を行使し続けた(みんなに恭也さんとの事なんて恥ずかしくて言える訳ないよ〜(////))
終わり
あとがき
初めまして、天神 十夜です。
色んな方の小説を読んでいる内に、とらは魂に再び火がつきペンを取りました。
今作品はとらはとリリカルA'sのクロス小説となります。
小説を書く上で主人公いやこの場合はヒロインになるのか、原作ファンとしては
やはり恭也であって欲しいという願いから恭也をメインに置きました。
Little Alice Storiesは「小さな少女の物語」という意味合いで、その名の通り今回はフェイトの物語。
フェイトはどことなく恭也に似てる気がするので相性が良いのではないかなと個人的には思います。
なのでちょっとめずらしい恭也×フェイトというカップリングでした。
フェイトの人気はかなり高いようで、何を隠そう私もフェイトが好きな一人。照れっぷりが果てなく可愛い。
さてこの物語はあくまで「序章」言わば土台の一つです。
私の構想の中では土台は後2つ。全3作が揃った時初めて少女達の新たなる物語が始まります。
どうかこんな作品ですがキャラへの愛だけはひたすらに注いで書いていますので、よろしければお付き合い下さい。
フェイトが可愛い〜。
美姫 「本当よね〜。照れるフェイト。貴重だわ」
うんうん。これから、彼女はどんな物語を紡ぐのか。
美姫 「その小さな胸に宿ったほのかな想いの行方は」
いやいやいや。楽しいお話をありがとうございます。
美姫 「ありがとうございました」