月曜日・・・・・・
今日は花寺メンバーも合流し、完全な舞台合わせが出来る。
序盤〜中盤にかけて出番の少ない祥子、そして中盤〜後半にかけて同じく出番の少ない令が、
監督として舞台の下から演技指導に当たっていた。
時折、演劇部ホープと呼ばれる瞳子の意見も交えながら指導していく中・・・・・・
(あら、可南子ちゃんの演技が心なしか良くなった気がするわね)
可南子演じる『城野亜紀』は、祐麒演じる『青山夕一』や祐巳演じる『青山夕子』との兼ね合いが悪かった。
だがあの一件以来、少しずつではあるが、ぎこちないながらも様になってきている。
それと、これは思わぬ副作用だったが・・・・・・
乃梨子の演技も変わってきていた。
今回のシナリオ上、志摩子演じる『中町沙希』と妹である。
『中町沙希』自身は、兄役である『中町純也』に恋心を抱いている。
だが、台本上では乃梨子演じる『中町ほのか』は、そうではない。
祥子と令は少し考えたのだが・・・・・・
「黄薔薇さま・・・・・・どう思って?」
「面白いから、このまま行きませんこと?」
「ふふ、そうね・・・・・・」
カレーにチョコレートを入れるような、そんな『隠し味』も悪くない。
隠し味によって、味は引き立つというものだ。
恭也と志摩子が絡むシーンに、乃梨子がふてた表情で演技する姿を見て、祥子と令は微笑んだ。
(さて、乃梨子ちゃんはどっちに嫉妬してるのかしらね)
しばらくして、演劇部と交代の時間がやってきたので場所を空ける。
瞳子はそのまま演劇部に残り、今度はエイミーとしての役をこなす。
見ていきたい、という衝動にみんな駆られるのだが、残念ながらこの後、
衣装のことを相談する予定になっていた。
発声練習をもう一度する瞳子を背に、一同は手芸部の待つ被服室へ向かった。
被服室には、既に手芸部のメンバーが待機していた。
まず祥子・令と、衣装の型などを確認すると・・・・・・
「それでは、寸法を測りたいので・・・・・・こちらの方へ」
女性と男性で部屋を分け、手芸部のメンバーも二手に分かれた。
こちら、女性の部屋・・・・・・
手芸部のメンバーは、とても緊張していた。
あの麗しき薔薇さまやそのつぼみたち・・・・・・
その方々の寸法を測る、というのは光栄の至りであった。
しかし、そんな手芸部のドキドキを他所に、山百合女性メンバーはたわいない話をしていた。
「ところで乃梨子ちゃん・・・・・・。恭也さんとの一日はどうだったの?」
祥子が笑みを浮かべながら乃梨子に聞いた。
「うう・・・・・・どうもこうもありませんでした。商店街では、彼氏に間違えられて・・・・・・」
菫子さんにはいじられるわ、諸々大変だった、とため息を吐いた。
その話を聞いた志摩子は・・・・・・
「乃梨子・・・・・・?恭也さん、乃梨子のお宅へ行ったの?」
「あ、はい。菫子さんからぜひ黒薔薇さまを連れてくるように、と。お礼を兼ねて、もてなしたいと言ってました」
志摩子は、「そう・・・・・・」と言って目を閉じた。
乃梨子は、そんな志摩子の姿を見て違和感を感じる。
「志摩子さん・・・・・・?」
「なに?乃梨子」
だが、志摩子の様子に別段変わったことはない。
だけど、なぜか志摩子の反応がすごく気になる。
「乃梨子・・・・・・?」
志摩子は、乃梨子の様子がおかしいことに気が付いて、乃梨子の名前を呼んだ。
心配そうに自分をみた志摩子に、乃梨子はただ一言
「・・・・・・なんでも無いよ、志摩子さん」
一方、こちらは男子の部屋。
「それでは、黒薔薇さまからお願いします」
その言葉に、恭也が上着を脱いだ。
決して裸になったわけでもないのに、『キャッ』っと黄色い声があがる。
そして、アリス・・・・・・さらには高田も視線を外せないでいた。
「おお、服を脱ぐとより判る・・・・・・あの美しき無駄の無い筋肉が・・・・・・」
高田の言葉に、花寺メンバーはぞっとした。
「お、おい・・・・・・アレって、柏木先輩よりヤバいんじゃ・・・・・・」
「もはや、『崇拝』だな・・・・・・」
小林と祐麒は顔を見合わせていると・・・・・・
「あ、あの・・・・・・みなさんもよろしいでしょうか・・・・・・」
もじもじと、恥ずかしそうにしながら手芸部の人が祐麒たちに言う。
「そんな緊張するほどのものでも・・・・・・」
祐麒はそう言うが、手芸部の・・・・・・1年生だろうか、彼女は
「いえ、花寺の幹部の方々に対して粗相などをしてしまったらと思うと・・・・・・」
自信なさげにうつむきそうになるその子に、小林が笑って
「そんなことないって。俺ら、そんな大したもんじゃないし、気を使わないで」
小林はぱっぱと上着を脱いで、測りやすいように両手を上にあげた。
「あの・・・・・・出来れば横に手を広げていただけると・・・・・・」
少し困ったように彼女が言うと
「小林が一番困らせてるんだな」
「かっこわるいんだな、小林」
薬師寺兄弟の突っ込みに、バツが悪そうにする小林をみて、その子の緊張もほぐれていた。
寸法を測り終えて、今日は解散となった。
乃梨子は一緒に帰ろうと思って、志摩子の姿を探す。
志摩子は恭也と何やら話をしていた。
すごく楽しそうに笑っていて、恭也と並んで一枚の絵のようだった。
志摩子の幸せそうな顔は、乃梨子にとって一番好きな顔だ・・・・・・。
乃梨子は、足を動かした。
だが、それは志摩子を避けるように、校門の方へ動いていた。
志摩子がそんな乃梨子の姿を見つけたのは、追いかけても間に合わない位置まで歩いた時だった。
(乃梨子・・・・・・?)
「どうしたんだ、志摩子」
志摩子の視線が、突然遠くを見るようになって恭也もその視線を追った。
だが、乃梨子は既に校門を出た後なので、恭也には確認できなかった。
「いいえ、何でもないですよ。恭也さん・・・・・・」
志摩子は、恭也に心配をかけないよう、再び恭也に視線を戻した。
複雑な乙女心〜。
美姫 「これが今後、どう動いていく事になるのかしらね」
様々な人間関係が構築されていく中、物語はどう進んで行くのか。
美姫 「非常に楽しみ〜♪」
次回も気になるしな。
美姫 「うんうん。次回が待ち遠しいわ」
次回も楽しみに待ってますね。
美姫 「それじゃ〜」