「志摩子さん!?」

 

門の方から聞こえた声に恭也たちは振り返った。

 

見ると、志摩子がこちらに向かって走ってきていた。

 

そして、そのまま志摩子は恭也の胸に飛び込んできた。

 

「うわっ、志摩子!?」

 

志摩子の行動に驚きつつも、しっかりと受け止めた恭也。

 

そして、その後から市松人形を思わせる少女が走ってきた。

 

恭也と目が合う。

 

最初、恭也のことをものすごい形相で睨んできた。

 

が、しかし・・・・・・

 

((あれ・・・・・・?))

 

恭也と乃梨子は、お互いに既視感を感じた。

 

どこかで見たことがあるような・・・・・・?

 

志摩子は、恭也が乃梨子を見ているのに首をかしげた。

 

そして

 

 

 

「あーーー!私を助けてくれた人だ!」

 

 

 

 

 

花寺のメンバーと一緒に恭也は、学園内部に入る。

 

マリア像の前で手を合わせていた少女は、恭也の姿に思わず見とれた。

 

道行く人が『きゃっ、黒薔薇さまよ♪』とか囁き合っていた。

 

館へ向かう道を歩きながら、恭也は志摩子に土曜日のことを話していた。

 

「そうだったのですか。妹を助けてくださってありがとうございます」

 

「いや・・・・・・気にしないでくれ」

 

「うふふ、やっぱり恭也さんは変わらないですね」

 

にこやかに微笑んで恭也を見ると、恭也はそっぽを向いてしまった。

 

照れているところも変わってない、と志摩子はコロコロ笑った。

 

その様子を後ろで見ていた祐麒たちは・・・・・・

 

「なあ、あの人が祐巳さんの好きな人なんだよな・・・・・・?」

 

小林が、祐麒に判っているのだが聞いた。

 

「ああ。悪いことは言わない、祐巳は諦めろ。お前じゃ勝負にならない」

 

がっくりと小林は肩を落とした。

 

「でも、恭也さまってすごくかっこいいんだね・・・・・・」

 

顔を赤くしながら、夢見がちな目をしてアリスが言った。

 

「そうだな。その上無駄の無い肉体をしている・・・・・・」

 

目を輝かせて、高田も言った。

 

その言葉に薬師寺兄弟が

 

「高田もそっちの世界の人になったんだな」

 

「先輩と同じなんだな」

 

と、二人で同じ顔をしてうなずきあった。

 

「しかし、あの二人ってすごくお似合いだよな」

 

小林が恭也と志摩子を見て言った。

 

「そうよね・・・・・・。見ててとても綺麗よね」

 

アリスもそう言ったところで、小林が「ん!?」と何か閃いた顔をしていた。

 

(そうか・・・・・・志摩子さんと恭也さんがくっつけば、必然的に祐巳さんはフリーになって、そこに俺が・・・・・・ブルァ!?」

 

「小林・・・・・・お前だけ会長権限でペナルティを落としてもいいんだぞ?」

 

祐麒の目が本気だと理解し、小林は両手を挙げて降参した。

 

 

 

二人の様子を見ている乃梨子は、なんだか面白くなかった。

 

 

 

今まで自分に向けたことのない笑顔をあの人に向けている。

 

大好きな志摩子さんを取られたような気がして、胸がムカムカしていた。

 

(なんか・・・・・・むかつく)

 

だけど、そんな顔をしたらきっと志摩子さんを悲しませてしまう。

 

自分の好きな人を、妹が嫌ったりしたら志摩子さんは遠慮してしまうだろう。

 

それにそれは誤解でもある。

 

私は別に、あの人のことが嫌いなわけではない。

 

むしろ、自分を助けてくれて感謝しているくらいだ。

 

彼は強くてかっこいい。そして悪いやつには容赦が無い。

 

その反面、自分に向けてくれた笑顔は、すごく優しいもので・・・・・・

 

 

 

あれ・・・・・・?

 

 

 

なんで志摩子さんのことじゃなくて、あの人のことを考えているんだろう。

 

駄目だ、考えるのをやめよう。

 

なんか変な気持ちになる・・・・・・。

 

 

 

「志摩子さん、先に行ってみんなに報告してくるね」

 

乃梨子はそう言って、館へ走っていった。

 

 




複雑な胸中の乃梨子ちゃん。
美姫 「さてさて、どんな事になりますやら」
祐巳たちの反応も楽しみだしな。
美姫 「それじゃ〜、また次回でね〜」
ではでは。



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