恭也と分かれた後、静は校内に引き返し階段を昇っていた。

 

静は恭也と話しているとき、階段の踊り場の窓からこちらを見ていた人物に気が付いていた。

 

視線に対する感覚が敏感な恭也が気がつかず、静は気が付いた理由は、その視線に殺気が無かったからである。静が気が付いた理由は・・・・・・女の第六感である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静は、昼休みにクラスメイト同士が話していたことを思い出していた。

 

 

『あ〜あ、次の白薔薇さまが1年だなんて・・・・・・ちょっとショックね』

 

3人で固まっているクラスメイトがそう言っているのを、静はそちらの方をみずに聞いていた。

 

『でも、仕方ないわよ。佐藤聖さまの妹だし・・・・・・悔しいけど1年なのに他の次期薔薇さまと並んでも遜色ないわ・・・・・・。マリア様・・・むしろ天使みたいに見える』

 

静は聞いてておかしくなった。

 

志摩子は・・・・・・天使でも・・・ましてやマリア様などもってのほか。

 

そんな立派な人間じゃない。自分を出すのを恐れている、迷える羊に他ならない。

 

『・・・・・・でも、私は静さんを差し置いてあの人が薔薇だなんて認めたくない』

 

『友里亜さん・・・・・・』

 

静は、それ以上3人の会話が聞こえてしまうのが嫌になり、席を立った。

 

志摩子は・・・・・・危うい人間だけれども、それでも私は認める。

 

だって、あの白薔薇さまが妹に選んだ人だったから・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・志摩子」

 

窓から恭也を見ている志摩子に、静は後ろから声をかけた。

 

はっとして振り向くと、驚いていた顔をすぐ引っ込めて「ごきげんよう、静さま」と挨拶をした。

 

「何を話していたか気になった?」

 

「え・・・・・・?」

 

静の問いに志摩子が驚いた顔をした。

 

「なぜ・・・・・・って顔してるわね。さっき、中庭にいる私たちを見てたでしょう。悪い子ね」

 

そういわれて、志摩子は小さく「すみません」と答えた。

 

「いいわ・・・・・・別に見られて困るものでもないし。恭也さまにはお礼を言ってきたのよ」

 

なんのことかは教えないけどね、と静は心の中で言った。

 

「静さまは・・・・・・」

 

「志摩子、あなたはどうするの?」

 

「・・・・・・」

 

「あなたがどうしようと構わない。だけど、今度は背中は押せないわよ」

 

「・・・・・・はい」

 

それから、静はいたずらっぽい笑みを浮かべて

 

「今度こそ・・・・・・横一線のスタートね。ごきげんよう、ライバルさん」

 

そういって静は志摩子を置いて階段を昇っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業を終えて薔薇の館へ向かう途中、志摩子は階段を下りていると窓から恭也が中庭へ向かうのを見た。

 

(恭也さんと・・・・・・あれは静さま?)

 

静は、少し前に薔薇様選挙を争った相手だ。そして、敵である自分の背中を押してくれた人だった。

 

そんな静が、恭也と2人で中庭へ歩いていく。志摩子は窓から2人の様子を眺めていた。

 

少しすると、静が校内に引き返してくるのがわかった。恭也も少し遅れて校内に向かっていった。

 

2人が何を話していたかが気になっている。

 

嫉妬をしている自分が嫌になってくる。自分は、恭也を愛する資格なんて無いというのに・・・・・・。

 

「・・・・・・志摩子」

 

いきなり後ろから声をかけられ、振り向くとそれはさっきまで中庭にいた静だった。

 

「ごきげんよう、静さま」

 

努めて冷静に挨拶を返すと、静は笑みを浮かべて言った。

 

「何を話していたか気になった?」

 

「え・・・・・・?」

 

「なぜ・・・・・・って顔してるわね。さっき、中庭にいる私たちを見てたでしょう」

 

悪い子ね、といってくすりと笑った。

 

志摩子は素直に「すみません」と謝った。

 

「いいわ・・・・・・別に見られて困るものでもないし。恭也さまにはお礼を言ってきたのよ」

 

そういう静の顔は少し赤かった。志摩子の胸でもやもやしたものが浮かんでくる。

 

「静さまは・・・・・・」

 

「志摩子、あなたはどうするの?」

 

突然言葉を返されて戸惑ったが、静の言いたいことはなんとなくわかっていた。

 

『あなたも恭也さまが好きなんでしょう』

 

自分の心が見透かされているようだった。

 

「・・・・・・」

 

志摩子は答えられなかった。

 

「あなたがどうしようと構わない。だけど、今度は背中は押せないわよ」

 

「・・・・・・はい」

 

やっと答えると、静はいたずらっぽい笑みを浮かべて

 

「今度こそ・・・・・・横一線のスタートね。ごきげんよう、ライバルさん」

 

静は、そう言うと階段を昇っていった。

 

 

ありがとうございます、静さま。

 

私も 恭也さんを 好きになっても いいんですね・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

そのとき、階段の下で一部始終を聞いていた女性が憎々しげに顔を歪ませていたのを、知る者はいなかった。




ライバル宣言!
美姫 「静もやるわね〜」
益々、混迷を見せる恭也争奪戦!
美姫 「果たして、その先に待つものは」
次回が楽しみだー!
美姫 「次回もまた楽しみにしてますね」
ではでは。



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