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「あの、みなさん週末なのですがご予定とかはございますか?」

 

放課後、薔薇の館でお茶会をしていると、祥子が皆に聞いてきた。

 

みんな特に無いようなことを言うと、祥子は泊りがけで遊びにこないか、と提案した。

 

なんでも、祥子の家族が留学生のためにホームパーティーを企画したそうなのだ。

 

さすがは上流階級ということなのだろうか。

 

恭也にしてみれば、この提案はありがたかった。

 

平日はこうして行動を共にすることで、みんなのそばにいられるのだが、

 

休日となってしまうとそうは行かない。当然それぞれ家にいるだろうし、出かけもする。

 

そうなったときに、恭也一人で8人を護ることは到底不可能だからだ。

 

 

 

「えっ・・・泊りがけってことは・・・その・・・つまり・・・?」

 

祐巳の顔がだらしないくらいに緩んでいる。

 

祥子と一緒に1日いられることを想像しているのだろうか。みごとなまでの百面相だ。

 

それを見た聖が祐巳をからかうべく席を立とうとしたとき、隣にいた蓉子が聖にくぎを刺す。

 

「聖・・・あなただけ仲間はずれにされても助けないわよ?」

 

蓉子の言葉に聖は「へいへい」と椅子に寄りかかり手をひらひらさせて答えていた。

 

しかし、これに驚いたのは赤星だった。

 

「えっと、それはありがたいんだけど・・・この人数だと大丈夫なのか?」

 

「そうですね、個室をそれぞれ用意するのはさすがに厳しいですが、2〜3人ごとなら平気です」

 

祥子はさらりと返す。いったいどんな家に住んでいるのだろうか、と赤星は首をひねる。

 

「ホームパーティーか・・・。クリスマスは大変だったよな・・・」

 

赤星が恭也を見て、思い出すようにつぶやいた。

 

「頼む、思い出させないでくれ・・・」

 

恭也が珍しく頭を抱えていると、聖が

 

「え、なになに?なんか面白そうじゃん」

 

興味深々、と言った感じで聞いてきた。

 

「聖ちゃん、実はね〜・・・」

 

遠い目をしている赤星と頭を抱えている恭也の代わりに、藤代が説明をした。

 

 

 

クリスマスパーティーは、翠屋で開かれた。

 

参加者は、高町家の面々、赤星・藤代・ノエルにさざなみ寮のメンバー達。

 

フィリスなど、普段お世話になっているメンバーも加えての大宴会だった。

 

宴会となれば、当然お酒も存在する。

 

お酒があるということは、さざなみのジャイアンこと仁村真雪がみんなに無理やり酒を飲ませる。

 

酔いつぶれるもの、酔って絡んでくるもの・・・さまざまだった。

 

各人の名誉のため、名前は伏せておくことにする。未成年もいたしね♪

 

そんな中、下戸でお酒の飲めない恭也は端っこの方でお茶を飲んでいたわけだが・・・

 

それを許すようなメンバーがいるはずもなく、恭也は夜通し絡まれつづけていた。

 

赤星は、忍と調子に乗って飲み比べをしてみごと惨敗。

 

ベロベロになっているところを、抜け出した恭也に連れられて介抱してもらうのだが

 

「うけけ、次の連載はあいつらの8○1ネタで決まりだな」

 

と、クリスチーヌ・ジャイ子様の良からぬ発言が飛び出したり・・・

 

 

 

藤代は、なのはや久遠と一緒にいたため、被害は無くある意味特等席で観戦していた。

 

「と・・・そんなことがあったのよんね〜・・・あの、みなさん・・・?」

 

話を聞いた一同が固まっている。藤代は、さすがにぶっ飛びすぎた話についてこれないかな、と思ったが・・・

 

「なんか、話を聞く限り・・・恭也さんと勇吾さんの周りって女性しかいないんじゃないですか?」

 

由乃が少し拗ねたように発言をすると、恭也と赤星は顔を見合わせて

 

(そりゃあ・・・こいつと一緒にいるからなぁ・・・)

 

と、互いに相手の顔をみてため息を吐く。

 

(この人たち・・・まるでわかってない)

 

残りのメンバーも、恭也たちを見てやっぱりため息を吐いた。

 

 

 

そうして話しているうちに、階段を昇る音が聞こえてきた。

 

薔薇の館に来るメンバーは既に全員そろっている。

 

まさか・・・?と思い、恭也はすぐに飛び出せるよう心の準備をする。

 

ドアをノックしてきたので、どうぞ〜、と聖が返事を返すとドアが開き、そこにはメガネをかけてカメラを持つ女性が現れた。

 

「あ、蔦子さんじゃない。ごきげんよう」

 

祐巳が席を立って蔦子と呼ばれた女性を迎え入れると、手を引いて中に招き入れた。

 

「ごきげんよう、みなさん。それと、初めまして。写真部の1年で武嶋蔦子です」

 

軽く礼をすると、祐巳がお茶を用意しようとしたが、蔦子に止められた。

 

「えっと、実は恭也さんにお願いがあってきたのですが・・・」

 

恭也を見て、そうたずねてきた。

 

うなずくと、蔦子はカメラを手にして写真をとることの許可を求めてきた。

 

「質問したいのですが、なぜわざわざ許可を取りにこられたのですか?」

 

実は、恭也は蔦子が所々で写真をとっていることに気が付いていた。

 

だが、自分に向けて一度カメラを向けたのだが、シャッターを切る音はしなかった。

 

それ以降、恭也を見かけても、カメラを下ろして自分の方には向けなかったのだ。

 

「んー、それは恭也さんを一度撮ろうとカメラを向けたときに、一瞬顔が曇ったんです。

だから、もしかしたら写真をとられるのがお嫌いなのでは、と思ったのです」

 

ですから、ちゃんと許可を取りにきた、と恭也の目を見て言った。

 

恭也は、写真をとられるのがあまり好きではなかった。

 

だが、蔦子の真摯な言葉に恭也は少し考えた。

 

「・・・俺の写真なんかとっても面白くないと思いますが、いいですよ」

 

恭也の言葉に少し驚いた赤星だったが、同時に少しうれしくなった。

 

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

思わず、蔦子は恭也の手をとってお礼を言う。

 

「あ、あの・・・喜んでいただけて・・・ありがとうございます」

 

女性の笑顔をアップで見ると、少々心臓に悪い。

 

蔦子はあまり気にした様子は無く、ちょっとした説明を加えた。

 

日常の顔を撮るので、いきなりシャッターを切ること、

 

撮った写真は必ず当事者に見せて、嫌だったらネガごと処分することなどだった。

 

恭也も、蔦子のことは十分信用に値すると感じ撮影を許可した。

 

「それでは、早速写真を撮りますね〜」

 

うれしそうに、恭也や赤星、藤代のワンショットを撮っていく。

 

それから他のメンバーを混ぜながらどんどん写真に収めていく。

 

その中で、蔦子はいくつか気がついたことがあった。

 

(白薔薇さま・・・カメラを前に輝いているのって初めてね。これも恭也さんのおかげね)

 

パシャッ

 

(う〜ん、志摩子さんったら恭也さんと写るとき、いままでに無い笑顔ね〜)

 

パシャッ

 

(あらあら、祐巳さん。恭也さんと並ぶと、祥子さんと並ぶときとまた違ったいい顔するわね)

 

パシャッ

 

(勇吾さんと写るとき・・・令様と由乃さんの顔が緩みっぱなしね)

 

パシャッ

 

(由紀さん、祐巳さんと一緒に写るときに抱きついちゃって・・・祥子様怒りますよ)

 

パシャッ

 

「それじゃあ、最後に全員で1枚お願いします〜」

 

パシャッ

 

 

 

「それでは、仕上がりましたら薔薇の館にお持ちしますね」

 

いつにも増して上機嫌で校内に引き上げていく蔦子を見て、恭也達もまた疲れながらも、出来上がる写真を楽しみにしていた。




蔦子譲、ご登場〜。
美姫 「流石は蔦子。レンズは全てをお見通し〜♪」
ほぼ、全員の現状を把握したんじゃないのだろうか…。
美姫 「うんうん。さて、週末の予定も決まった事だし、どんな事が起こるのか」
今から楽しみだな。
美姫 「それじゃあ、さっさと続きへ行くわよ」
へいへい。



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