恭也が中で話している間、外では・・・
「それじゃあフィアッセ、私は音楽室に行って来るから」
「え?ママ・・・私は?」
「うふふ・・・私一人で行けるから大丈夫よ。それより、きっとあなたからお話を聞きたい人がいるんじゃないかしら?」
ティオレの視線の先には、外で恭也を待っていたメンバーがいた。
その視線に反応した人が・・・3人ほどいた。志摩子と聖と祐巳である。
フィアッセはティオレの言わんとしていることに気がつき、それを察した赤星が
「それじゃあ・・・フィアッセさんを薔薇の館にご招待してもいいかな?」
その言葉に一同は頷いて、ティオレに館の場所を教え、ティオレは音楽室に、
フィアッセたちは薔薇の館へ向かった。
館に戻り、赤星と藤代を除くメンバー同士で自己紹介をしたところで
「えっと・・・みんな聞きたいことは恭也のことだよね」
フィアッセの言葉に一同が頷く。
「私は、恭也の幼馴染で恭也のお姉さんみたいなものかな?一応、恭也と付き合ってはいないから安心していいよー♪」
胸をなでおろす者、残念そうな者、興味深く聞いている者とそれぞれだ。
(今ので・・・反応したのは3人か・・・。恭也〜、ライバル増やさないでよ〜)
心の中でフィアッセは悲鳴をあげた。
話は恭也を取り巻く女性関係と、恭也の枯れきった生活に鈍い性格の話が中心だった。
普段なら蓉子も止めるところだが、あまりに面白くみんな聞き入っていた。
恭也は、薔薇の館の前まで戻ってくると受け取った封筒を鞄にしまった。
なるべく音を立てないように階段を上がると、中からみんなの笑い声が聞こえた。
こんな人たちを恐怖に陥れようとするまだ見ぬ敵に怒りを覚え、
そしてこの人たちを護りたい、という気持ちが強く息づいているのを感じながら
恭也は扉を開いた。
「でね・・・そのとき恭也ったら・・・あ、き、恭也!?」
恭也が中に入ると、みんなと話していたフィアッセが慌てふためいた。
「フィアッセ・・・俺に聞かれると都合の悪いことを話してたのか・・・?」
恭也は少し眉をピクっとさせながらフィアッセに近づいた。
「ち、違うよ〜。ちょ〜っと恭也の趣味とか・・・昔話とか〜」
そう言いながら、フィアッセは目を逸らしてごまかしている。
はぁ・・・、とちょっとため息を漏らしながらも恭也は追及しても仕方ないので
自分の席についた。
志摩子がその間にもしっかりお茶を用意しているところ、さすがである。
しばらくしてティオレが館にくると、今度はフィアッセのお話で盛り上がった。
最初こそ、世界のティオレを前にみんな一様に緊張していたのだが、
ティオレがとても面白い人である、ということがわかってだんだん打ち解けていった。
もっとも、ティオレのお話は少々いたずらっぽいお話が多いのだが。
フィアッセが恭也と会えなくて泣いていたこととか赤裸々に話され、顔を真っ赤にしながらティオレに抗議をしている。
ティオレが「どうせ恭也君の話をして盛り上がったんでしょ?」というと、ぐぅの音も出ない様子で、夕方までおもちゃにされていた。
う〜ん、流石はティオレ。
美姫 「フィアッセすら、頭が上がらないみたいね」
しかし、そのティオレを恐怖に陥れる人物が一人!
美姫 「その名も、イリア教頭」
さしものティオレも、イリアの前では…。
美姫 「かと思いきや、ティオレの悪戯に頭を抱えるイリアというのもあるのよね」
つまり、二人は互角か。
美姫 「って、そんな話じゃないでしょうが」
まあ、確かに、今回の話とはそんなに関係なかったかな。
美姫 「はぁ〜。益々、馬鹿に磨きが掛かってるわね」
あははは。そんなに褒めるなよ〜。
美姫 「褒めてないって…」