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夢・・・そうか。これは夢なのか。

 

こっちに来て日が浅いからきっとまだ寝ぼけているんだろう。

 

そうだよな、この眼前に広がる世界は絶対おかしい。

 

ふむ、隣の赤星も同じように固まっている。

 

そうだよな、どう考えてもこれは悪い夢だよな。

 

さて・・・。夢とわかったら起きないとな。

 

「あのー、もしもし?二人とも大丈夫?」

 

なんだ藤代。俺たちは夢から覚めないといけないんだ。

 

「信じられないと思うんだけど、これは・・・現実なのよ」

 

そうか。夢じゃなくこの目の前に広がる世界は現実だ、と。そうなんだな?

 

「ええ、あたしも正直夢だと思いたいけど、赤星君が痛そうだし」

 

「いててて、ふっ・・・藤代、つねるなら自分の顔をつねってくれ!」

 

そうなのか・・・

 

じゃあ、このリリアン女学園という「女子校」に交換留学する・・・と。

 

「一体なんの冗談だ」

 

「あたしに聞かれても・・・ねぇ」

 

 

 

 

 

 

「ごきげんよう」

 

純粋培養の乙女たちが集う、私立リリアン女学院。

制服を翻らせないようにゆっくりと歩くことがここのたしなみ。

汚れをしらず、温室育ちのお嬢様が箱入りで出荷される今どき珍しい学園。

ここには清く正しい学園生活を受け継いでいくため先輩が後輩にロザリオを渡すことで「姉妹(スール)」となるシステムが存在していた。

 

 

 

そして今、その学園を前に立ち尽くす3人の生徒がいた・・・。

 

 

 

 

「初めまして。高町恭也といいます。風芽丘学園から来ました。よろしくおねがいします」

 

恭也はシンプルに自己紹介をしたつもりだが、クラスがどよめきに包まれているのに不安になる。

 

それは当然だよな、女子校に男がいるのは・・・と恭也は思いつつも担任から空いている席を指定されて席に着く。

 

クラス中の視線が集まる中、自分が異質の存在であることを実感する。

 

最も、生徒の半分は男性がいるということに違和感を持っているのだが、もう半分は

 

恭也の落ち着いていて、そして端正な顔立ちに目を離せないでいるのだが。

 

そんなことに気がつくはずもない恭也は視線に困惑しつつ、ホームルームは進んだ。

 

 

 

恭也、赤星、藤代はそれぞれ3年藤組、椿組、菊組になった。

 

正直3人まとめてくれるほうが助かるのだが、と思う。

 

HRが終わって先生が教室から出ると、隣の生徒が声をかけてきた。

 

「あの、恭也さん・・・でよろしかったですか?」

 

「あ、はい。えっと・・・」

 

「申し遅れました。私は斎藤奈津穂といいます。奈津穂と呼んでください。」

 

「え、いや・・・あの、いきなりお名前で呼ぶのは・・・」

 

「実は、リリアンでは互いに名前で呼び合うのが暗黙の了解みたいになってまして・・・。

もし嫌でなかったら名前で呼んでいただけると」

 

「そういうことでしたら・・・。奈津穂さん、よろしくお願いします。それと、教えてくれてありがとうございます」

 

恭也はやわらかい笑顔で答えると、奈津穂は真っ赤になって小さい声でいいえ、と答えた。

 

それを皮切りに、他の生徒もみんな恭也を取り囲むようにして話をしてきた。

 

「あの、恭也さんの学校ってどのようなところなのですか?」

 

「私のことも名前で呼んでもらっていいですか?」

 

「・・・」

 

こんな感じで休み時間の度に囲まれていった恭也は、2〜3日もすれば飽きてくれるだろうという考えを支えに、押し寄せる女性の波に耐えるのであった。

 

 

 

 

昼休みになり、ようやく眠れない授業から開放されたのもつかの間

 

「恭也さんはお昼どうなさるのですか?よろしければ私とご一緒しませんか?」

 

「あら、私もご一緒してよろしいでしょうか」

 

・・・これ以上はさすがに辛い。

 

「あ、あの。すみません、ちょっと一緒に来た友人を探しますので」

 

そういって、教室を飛び出していった。

 

「ふぅ・・・なんとか抜け出せたけど、赤星は確か椿組だったよな・・・」

 

椿組につくと、そこには同じように逃げ出してきた赤星がいた。

 

「・・・ははは、高町も同じか」

 

「ああ、とりあえず落ち着いて昼は取りたいところだが・・・」

 

2人してため息をついた。

 

 

 

 

「大変そうだね、留学生君」

 

振り返ると、一人の女性が笑いながら2人を見ていた。

 

その女性は、日本人離れした大きな瞳と整った顔を持っていて見る者を魅了するような雰囲気を持っていた。

 

「ええ・・・。どこか落ち着けるところがあったらいいんですが。」

 

「あー、残念だけどあんたたち2人が落ち着いて食事するのは無理だと思うなー。

みんな騒ぐのがわかるしね。」

 

女性は2人を交互に見て、にやにやしている。

 

恭也と赤星は互いに顔を見合わせると、何かに気がついたかのように

 

((そうか、つまりこいつがモテるからなのか))

 

と、自分のことを棚に上げて・・・というか自分にも原因があることに気がつかず納得する。

 

それを見て、その女性は我慢できないとばかりにお腹を抱えて笑い出した。

 

「あっはっはっは・・・君たち最高だよ。そうだね、せっかくだから落ち着けるところに案内してあげるよ。それに君たちなら大丈夫そうだし」

 

最後の言葉に多少引っかかりを覚えるのだが、何せ状況が状況だ。

 

その言葉に1も2も無くうなづくと、3人はちょうど教室から出てきた藤代を加えて

 

その女性の後についていった。

 

 

 




恭也たちを連れて行った女性は一体、誰なのか!?
美姫 「そして、何処へと連れて行かれるのか」
気になる次回は、すぐそこ!
美姫 「いやー、面白くてどんどん読んじゃうわね」
うんうん。という訳で、すぐさま次回へ〜。



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