第6話 激突〜白と黒の邂逅〜
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俺と美優希は遊園地中を駆け回った。
辺りが静かなので真が時を止めたのだろう。
それにしても数が多すぎる。
これだけの群をいったい誰がまとめてるんだ?
俺は今日いくつめかの魔獣の群をたおした。
一つの群にざっと数えて50はいるのだからたまらない。
いい加減嫌になってきたころで観覧車の上に黒いもやが現れた。
もやは龍の姿へと形を変えた。
「ほう、まだ完全では無いといえ見事なものだな」
そいつは愉快そうに眼を細めて笑っていた。
「おまえは……ダークマスター」
「久しぶりだな、龍人の小僧よ。それに光の巫女も一緒か」
自然と美優希をかばうように前へ踏み出し剣を抜く。
「我とやるというのか?その不完全な体で、面白い。ならば掛かってくるがいい」
ダークマスターは翼を広げ構えをとる。
「いわれなくてもそうさせてもらう!」
俺はダークマスターめがけ衝撃波を放った。
だがそれはあっさりと打ち消されてしまった。
「どうした?そんなものでは我が肉体を滅ぼすことはできんぞ」
「くっ、ならばこれならどうだ!」
先程使った破邪聖炎波を龍王剣に纏わせて衝撃波を放つ。
ダークマスターを七色の炎が包む。
だが炎がおさまったときそこにあったのは無傷の体。
「なっ………!!」
「なかなかの威力だったな。並大抵の魔獣だったらまず耐えられる奴はおるまい。だが我を倒すにはいまひとつといったところだな」
俺は呆然と立ち尽くしていた。
俺の技が効かない。
ダークマスターは嘲笑うかのように眼を細めて言った。
「どうした、もう攻撃は終わりか?ならばこちらからいかせてもらう」
口から漆黒の炎を吐いてきた。
俺はハッと我に返って反射的に結界を張った。
「うわあああ!」
「祐介っ!」
美優希の声が遠くで聞こえた。
薄れていく意識を懸命に引き戻した。
だが俺は全身ズタボロで動けなかった。
肉の焦げた匂いが辺りに漂っている。
「ほう、生きていたか。あの一瞬で結界を張ったのか、たいしたものだ」
感心したように眼を細める。
「だが安心しろ、すぐに楽にしてやる」
マズイ、もう一度あれをくらったらおだぶつだ。
やはり龍人族の力だけでは無理か。
となると聖龍王の力を使うしかないか。
だが今あれを使うことはできない。
くそっ、どうすればいいんだ。
「これで終わりだ」
ダークマスターは再び漆黒の炎を吐いてきた。
漆黒の炎が迫ってくる。
「くっ………」
俺は死を覚悟してきつく目をつぶった。
だがいっこうに焼かれる気配がない。
その代わりに悲鳴のようなものが聞こえてきた。
「グガアアアアアァァァァ!!」
恐る恐る眼を開けてみると、ダークマスターが吹き飛ばされて呻いていた。
「祐介っ、大丈夫!」
後ろを振り向くと巨大な蛇がいた。
あれは麗奈先輩だ。
どうやら皆が助けに来てくれたようだ。
「はい。なんとか」
先程のダメージで動けないので声だけで答える。
「よかった。無事……ではなさそうだけどとりあえず大丈夫ね」
先輩はホッと胸を撫で下ろした。
「美優希、祐介をお願い。他の皆はあいつをたたくわよ」
「はいっ!」
そう言って美優希は俺を安全な場所に移した。
それを確認してから麗奈は向き直る。
「まだいたのか。だが何人増えたところで同じこと」
ダークマスターはまだまだ余裕である。
「あら、ずいぶんなご挨拶ね。でもあんたは一つおおきなミスをおかしたわ」
「何?」
そこで初めて怪訝な顔をする。
「あんたがあたし達“聖獣王”(セイント・ビースト)に喧嘩を売ったことよっ!」
麗奈の眼が怪しく光った。
するとダークマスターを巨大な渦潮が呑み込んだ。
「グガアアアアアアア―――!!」
渦潮が黒い巨体を絞め上げていく。さらにそこに無数の岩つぶてとかまいたちが襲い掛かる。
「トドメよっ!」
締め上げている渦潮の力がいっそう強くなる。
勝った。そう思った瞬間、渦潮が消滅した。
「なっ……!」
麗奈は驚いていた。
シルフィスが結界を張っていた。
あの渦を消すには同レベルの力か結界でなければ打ち消すことは不可能である。
「何であんたがいるのよっ!」
皆も驚いていた。
「いやー、奇遇ですね。皆さんと会うなんて」
シルフィスはわざとらしい笑顔を浮かべている。
「それより何であんたがそいつを庇うのよ」
「マスターの御命令ですから。それに貴女に倒されては意味が無いんですよ。祐介一人に倒してもらわないと」
麗奈には意味が解からなかった。
「ちょっと、それどういう意味よ」
「さあ、後は祐介に訊けば解ることでしょう。それではまたお会いしましょう皆さん」
そう言ってシルフィスは消えた。
あとがき
お久しぶりです、堀江 紀衣です。前回に引き続きメイド服を着せられています。そして何故か、皆さんに使われています。しかもまだ女です。早くもとに戻してほしいです。さて今回は戦闘です。皆でばっさばっさと魔獣を倒していきます。しかし祐介さんがダークマスターに負けてしまうのです。
麗奈「あたしも、まさか祐介が負けるなんて思わなかったわ」
シルフィス「まったくです。いったい何が悪かったのでしょうね?」
麗奈「あんたのせいでしょうが!」
零一「悪は滅びろ」
シルフィス、一刀両断。
シルフィス「みゅぅぅぅぅぅぅ〜」
零一「しまった。汚染物質を切ってしまった」
静香「ゴミを増やしちゃだめですよ」
真「まいどのことながら、ひどいことになってるな。しかも今度はヘドラだし」
祐介「ゴミで済むのなら、まだマシだ」
紀衣「ところでわたしは、いつになったら元に戻れるのでしょうか?」
美優希「氷瀬さ〜ん。紀衣さんにしてほしいことがあったら言ってくださいね。デリバリーサービスもしてますよ」
紀衣「わたしのこと、無視しないで〜」
圧倒的な力を持つダークマスターの前に、祐介が。
美姫 「しかし、麗奈がダークマスターへと襲い掛かる〜」
強いぞ、麗奈。
美姫 「でも、そこに邪魔者現る?」
うんうん。後、少しという所だったのに。
美姫 「果たして、次回はどうなるのかしら」
祐介よ、立ち上がれ〜。
美姫 「と、それはそうと、堀江さんに何かさせたい事ある?」
メイドは、いるだけでよし!
美姫 「いや、それってメイドって言わないんじゃ」
……基本はネコ耳。
美姫 「それが基本なの!?」
後は、”ご主人様”だね。
美姫 「それは基本ね」
うんうん。という訳で、美姫〜。
美姫 「……その手のものは何かしら」
ふっふっふ。今までの流れからも分かるだろう。
美姫 「ほう。私に着せようと」
……ぐっ、凄まじい殺気。
しかし、このぐらいで負ける訳にはいかないんだ!
美姫 「斬!」
ぐあぁぁぁ!
美姫 「心意気だけで勝てる訳ないでしょう」
ぐぅぅ。俺が死すともメイドは死なず……。
美姫 「えーい、黙りなさい、この馬鹿」
げぼぉぉ!
うぅぅぅぅ。美姫のメイド姿が見たかった。(血涙)
美姫 「何も、血の涙までながさなくても。
……後で少しだけなら着てあげるわよ(ボソッ)」
おお! 流石、美姫!
美姫 「早っ! いつも以上の回復力じゃない」
あははは、気にしない、気にしない。
それじゃあ、また次回を待ってますね〜。
美姫 「……ちょっと後悔してたりして」
あははははは〜。