こころ〜優しい力〜




 

プロローグ

 

遥かなる昔、神は人々に力を与えた。

大空を自由に羽ばたく翼と、どんなことでも

可能にする魔法のような力。

 それは清く純粋な心、信じる心の強き者ほど扱える力も大きかった。

人々は神に感謝の意を込めて、その力を使って神殿を建てた。その中には神を(かたど)って作った像をまつり、年に一度だけ盛大に神殿の周りで祭りが行われた。そのときのみ礼拝をするために、人々は神殿に入ることを許された。

 それ以外のときは“光の巫女”と呼ばれる、汚れなき心と純白の翼(翼は心の清らかさわ表し、心が汚れると白から灰、そして黒へと変化していく。)を持つ選ばれた者が神殿を清めていた。

世界は穏やかだった。

 しかし人々はしだいに神の恩恵を忘れていき、自分達の欲望を満たす為に力を使い始めてしまった。そのため神によって、虐げられていた闇が再び動き出し、欲望に満ちた人々は闇の囁きに負け、次々と堕落し魔物と化していった。

 それを見兼ねた神は、光の巫女と、純粋な心と強大な力を持つ“龍人族”に闇の討伐を命じた。

 龍人族とは、とある女性と傷ついた龍が心を通わせたことから始まった種族のことである。

 光の巫女と龍人族は、“()()統べる(クマス)(ター)”と戦い倒すことはできなかったが、封印することに成功した。

 その時に、使ったのが龍人族が守り続けてきた剣、“龍王剣”である。

 人々は自分達の過ちに気付き、二度とこんなことにならないように、神に力を返し翼を使うことをやめた。

そして人々は、それらの力に頼らずに自分達の力で生きていこうと決意したのだった。

 いっぽう龍人族は、この戦いを石碑に刻み、“闇との戦い”の話と“龍王剣”を、先祖から子孫へと託していった。また何か起こったときの為に………

 

 それが俺の村に、古くから伝わる伝承だ。

      * 

 俺は高橋(たかはし)(ゆう)(すけ)。一見ごく普通の高校生だが、他の皆と違うところは俺が龍人族の末裔であることだ。学校の皆にはそのことは、黙っている。話したところで、信じてもらえないだろう。

俺自身、数年前まではそんな実感はなかった。

 それはある事件で実際に初めて力を使ったのがきっかけだった。

 

俺がまだ小さな子供だった頃、住んでいた村が突然、得体の知れない化け物に襲われた。

次々と民家は崩され、人々は切り裂かれ、倒れていった。

 俺の家も当然襲われた。父さんは、母さんと俺を守る為に戦った。

 俺はその時怯えながらも強く願った。

父さんの力になりたい。

この村を、沢山の思い出がつまったこの村を守りたい。

 心の底からの想いだった。

その時だった。俺の体の中を灼熱の炎が駆け巡った。

「うわああああぁぁぁぁぁ―――――!?

 その熱さに耐え切れずおもわず叫んでしまった。母さんが隣で悲鳴を上げていたようだが周りを気にしている余裕はない。

しばらくして、急に熱さが消えその代わりに、何処からともなく声が聞こえてきた。

「汝、力が欲しいか?」

 それは腹の底に重く響く男の声だった。

「だ、誰?」

 それはまだ幼い子供にとって恐怖以外のなにものでもなかった。それでも突然の声に怯えながらも、尋ねた。

「我、汝に宿りし力なり。汝の心に応じ目覚めた」

「俺の心?」

 俺はその声が、何を言っているのか解らなかった。

「そう、汝はこの村を守りたい、誰かの力になりたいと、強く願った。我はその強い心を待っていた。その心こそが、我を呼んだのだ。汝、力が欲しいか?」

 その声の言っていることはよく解らなかったが、力が得られるのなら何でも構わないと思った。

俺は何も無い空間を睨み、叫んだ。

「何でもいい、俺は皆を助ける為の力が欲しい!」

 すると、突然目の前にソフトボール大の、光の球が現れた。

「そうだ、その強い心、まさに我が主に相応しい。汝に我が力を託そう」

 男の声がこだます中、光の球は次第に形を変え剣となった。

 俺は剣を握ったとき、何故か懐かしく思った。ずっと前からこの剣を知っているような気がする。何故だろう?

 だが今は、そんなことを考えている暇はない。父さんを助けなくては。

 俺は剣を握り直し、父さんと戦っている化け物を睨み一歩前へ歩みでた。

 その時。

「ぐああぁぁぁ!」

「父さん!」

 俺はおもわず駆け寄ろうとして、脇腹を押さえて呻いている父さんに制止された。

「来るなっ!、お前達は隠れていなさい。こんな化け物、父さんが倒してやる!」

 父さんがよろめきながらも剣を構え直したとき、化け物は口を開いて人語を喋った。

「ほぅ、そんな体でよくそんなことが、ほざけるな」

 化け物は愉快そうに眼を細めた。

「黙れ化け物、我ら龍人族をなめるなよ。貴様などすぐに八つ裂きにしてやる!」

 父さんは脇腹の怪我に苦しみながら、叫んだ。

「くっくっくっくっく……、口だけは達者なようだな」

 化け物は、自分の長く鋭利な爪を舐めると、腰を低く屈めた。

「いいだろう、その度胸に免じて一撃であの世におくってやる」

 化け物はトドメとばかしに、爪を大きく振りかぶっている。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 俺は叫んで、力一杯に化け物めがけて剣を一振りした。

 すると振り下ろした剣から、衝撃波が発せられた。

「何っ!」 

 突然のことに、化け物は一瞬、反応に遅れた。それが致命傷となり、衝撃波の直撃をくらい消滅した。

「はあ、はあ、はあ…………」

 俺は荒い息を整えながら、父さんの所へ駆け寄った。

「父さん、大丈夫?」

 父さんは、何が起こったのか解らず茫然としていた。

「あ、ああ、なんとかな」

「よかった、じゃあ他の人達を助けなきゃ」

 俺は、安堵して家を駆け出そうとしたとき。

「待つんだ祐介、お前に話がある」

 と言って、呼び止めた。

「何?早くしないと皆やられちゃうよ!」

「その必要はないだろう、今の奴が本体だったからな。他の奴等は、分身にすぎんからすでに、消えているだろう」

 俺は家の外に出て、化け物が残っていないか確認した。確かに化け物は、跡形もなく消え去っていた。どうやら父さんの言ったことは本当のようだ。俺はホッとして、家の中に戻った。

 父さんは母さんから手当てしてもらっているところだった。

「それで、話って何?」

 タイミングを見計らって俺は話しかけた。

「お前がさっき使った剣についてだ。お前に“闇との戦い”については話したな?」

「うん、大昔に俺達の一族と“光の巫女”って人が、さっき襲ってきた化け物みたいなのと、戦ったんでしょ?」

「ああ、そうだ。じゃあ“龍王剣”のことも解るな?」

「うん、悪い奴を倒すときに使った剣だよね?」

「ああ、それがお前がさっき使った剣だ」

「………えっ?」

 俺は最初、意味が解らなかった。

「龍王剣にはな、意思があるんだ。そして誰もが、龍王剣を手にすることができるわけじゃないだ」

「どうして?」

 父さんの話が本当なら、俺は龍王剣を使ったことになる。でも頭に響いてきた声は自分の中に眠っている力だと言っていた。

「それは龍王剣に宿る意思が、誰が一番相応しいかを選ぶからだ。そして選ばれたのがお前だ、祐介」

「でもさっき俺に話しかけてきた奴は俺の仲に眠る力だって言ってたよ?」

 すると父さんは少し考えてから口を開いた。

「それはな、人は誰しも龍王剣の意思の欠片を宿しているからだ。自分の主に相応しい者を見極めるには、効率的だからな」

「それじゃあ、父さんもさっきの声が聞こえるの?」

 俺はあの腹に響く声を思い出しながら尋ねる。

 しかし父さんは首を横に振った。

「いや、声が聞こえるのは信じる心が強い者でなければならないんだ」

「へえー、そうなんだ」

 いまいち理解はできなかったが、俺が龍王剣に選ばれたということは解かった。

「しかし、龍王剣が現れたということは、この先何かが起きるということか………」

 父さんは難しい顔をして唸っていた。

 俺は今思えばずいぶんと間抜けなことを訊いていた。

「何で?」

「忘れたのか?この剣は“何か”が起こった時の為に作られたんだ。そして、その何かと立ち向かっていくのは、お前の役目だ。お前にそれを成し遂げるだけの勇気はあるか?」

 父さんは俺の心を見透かすような眼で見てきた。

 俺はそんな眼に負けることなく答えた。

「さっきみたいな化け物と戦うのは怖いし、不安だけど、大丈夫だよ。何故だか解らないけど、そう思うんだ。それにこれは俺の役目なんでしょ?それに俺だって龍人族なんだ。力を持て余していたら、俺を選んでくれた龍王剣に失礼だから」

「そうか……お前も強くなったな」

 そう言った父さんの眼は、何だか寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?

 

 それから俺の戦いは始まった。

 


 あとがき

 

 はじめまして、堀江 紀衣です。

 初めて小説を書きました。まだまだ未熟者ですがよろしくおねがいします。

 本作は転生を繰り返す主人公とその仲間達が過去から続いている、因縁を断ち切り未来を切り開く、というお話です。(最初だけではさっぱり解からないので、最後までお付き合いしていただければうれしいです。)

 あとがきでは毎回ゲストさんをお呼びしてお話を伺っていこうと思います。

 さて今回は記念すべき第一回目なので、特別ゲストとして本作の主人公、高橋祐介さんにおこしいただきました。(パチパチ)

祐介「どうも、はじめまして」

紀衣「今回は祐介さんの幼少期のエピソードですが」

祐介「自分の過去を暴かれるのは、恥ずかしいことです。だけど人のことを隅から隅まで調べ上げるどこぞの、変態ストーカーよりはマシです(はあ〜)」

紀衣「なにやら深いため息を吐いていらっしゃるようですが、何故ですか?それに変態ストーカーって……」

祐介「あいつのことは深く語らせないでください。思い出すだけでも身の毛がよだつ」

 その時、どこからともなく謎の男、出現。

「呼びましたか?」

 続いて謎の手出現。

「誰もあんたのことなんて、呼んでないからさっさと実験の続きするわよ。変態」

「まっ、まだ続けるんですか?いたいけなわたしを使って、あんなえげつない実験をっ……!」

「つべこべ言わずにさっさと行くわよ」

「ゆっ、祐介〜。助けてください――――――――!!

 辺りにこだます断末魔の悲鳴。そしてしばしの沈黙。

紀衣「いっ、今のはいったい……」

祐介「……気にしないでください」

紀衣「は、はあ。それでは気を取り直して読者さんにメッセージをお願いします」

祐介「この作品はとても個性的なキャラがだくさん登場します。シリアスもギャグもあります。俺達がこれからどうなっていくか温かく見守っていただければとおもっています。これからどうぞよろしくおねがいします」

紀衣「ありがとうございました」

 それでは今回はこのへんで、またお会いしましょう。

 

 

 




プロローグという事で、まだ物語りの序盤も序盤。
美姫 「果たして、これからどんなお話が繰り広げられるのか」
そして、どんな仲間たちが登場するのか。
美姫 「今から楽しみね」
うんうん。早く本編を読みたいな。
美姫 「続きを待ってますね」
ではでは。



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