――1997年1月5日、午後9時37分

 

 

 

雪が降っていた。

正月休も終盤に差し掛かり、帰宅ラッシュのせいか街はそれなりの賑わいを見せている。

下界にはただでさえ綺麗なイルミネーションが輝いているのに、雪の相乗効果によって幻想的といった感じすらしている。

新雪の降り積もるビルの屋上で、2人の若い男が向かい合っていた。

2人とも15歳前後の少年である。しかし、その双眸から放たれる『何か』は、2人に少年という形容詞を当て嵌まらせない。かといって、青年というには若すぎる。

あえて言うならば、『男』という表現がぴったりくる、そんな2人であった。

2人の片方……長身の男が、懐から家庭用救急箱ほどの大きさの、プラスチック製の箱を取り出した。

雪が待っていたが、もう1人の、ロングコートを羽織った男の動物的な嗅覚は、その中からかすかに漂う油紙特有の臭気を嗅ぎ取っていた。

長身の男がプラスチックの箱をロングコートの男に投げ渡す。

ロングコートの男は箱を受け取ると、少し迷って箱を開けた。

箱の蓋を開けると、油紙に包まれた三角形の物体が出てくる。ロングコートの男はそれをしげしげと眺めて、手に取ってみる。

質感から、それが金属製の物体であることが判った。

油紙の包みをゆっくりとほどいていく。

降り積もる雪と同じ白い油紙に包まれて出てきたのは、対照的に黒光りする1挺の拳銃であった。男の目が、一瞬険しくなる。

「ベレッタ・ダブルアクションM92……」

ロングコートの男が、長身の男の顔を見ながら低く呟いた。

長身の男が、感嘆の声を上げる。

「一目で見ぬくとはな……流石、わずか15歳で俺と同じく『百獣』に上り詰めた天才だけのことはある」

「……これは?」

「退職金代わりさ」

長身の男が言った。

ロングコートの男が、日本では滅多に見ることのない高性能自動拳銃を前にして、顔を顰める。

ベレッタ・ダブルアクションM92は、ドイツのワルサー拳銃と並んで、世界最高水準の性能を誇る、イタリア製の15連発自動拳銃であった。

武装過激派〈赤い旅団〉の残虐な行動に翻弄されるイタリア警察の要請によって、ピエロト・ベレッタ社が心血を注いで開発した複列式多弾倉の拳銃である。

速射性の高い、ダブルアクション射撃を可能とし、イタリアのモロ前首相が、〈赤い旅団〉に奇襲された際、射殺された首相警護官はこのM92で、刺客のサブマシンガンと対決したのである。

「……出来ることなら、それが使うような事態が起きないことを祈ってる」

「ああ、それは俺だって思ってるいるよ、信一(しんいち)

長身の男……信一と呼ばれた彼は、悲哀に満ちた表情を浮かべる。

ロングコートの男が、それを見て微笑を浮かべた。

「…心配するな。俺は俺なりに生きていくさ」

「だが、俺達は仮にも若くして『組織』の『天地双翼』とまで言われてしまった『鷹』と『燕』だ。いつ、刺客が来るか……」

「自分で言ってて恥ずかしくないか?」

「茶化すんじゃねぇ、和人!」

信一が声を荒げる。はっとして、慌てて口を閉ざすももう襲い。

ロングコートの男……(かのう)和人(かずと)は、ふっと微笑んで、

「……覚悟なら『組織』に入ったときからしてる。……まったく、わずか9歳のガキがいつ死ぬかも判らない覚悟なんてな」

「因果な商売だぜ」

信一は吐き捨てるようにして言った。

和人が踵を返す。

「行くのか?」

「ああ」

「達者でな、『燕』」

「お前もな、『鷹』」

そう言って、2人の距離は少しずつ離れていった。

雪が降っていた。

風に吹かれ、粉雪が舞っていた。

人間によって作られたアスファルトよりも、雪は付近の木々に降り積もる。

まるで、到来する春の芽吹きを阻害するかのように、悲しい雪だった。

 

 

 

第一章「灰色の力」

 

 

 

――2000年12月31日、午後11時43分

 

 

 

“ぷあーん!”

『紅白歌合戦』も『蛍の光』の大合唱に差し掛かり、終われば『ゆく年くる年』が始まろうという時間帯、初詣に行こうとする大勢の客を乗せて、海沿いの線路を走り抜ける電車の影があった。

ガタゴトと揺れる車内には、老若男女問わず、人で溢れかえっている。

電車が“ガタン”と大きく揺れて、次の駅への到着を知らせるアナウンスが車内に響き渡った。

『次は……鈴鐘寺(りんしょうじ)……鈴鐘寺。お降りの方はお手荷物をお忘れにならないよう、ご注意ください』

機械的なアナウンスが流れる。

当然ながら、みなの目的は神社なので、誰も降りるような気配は見られない。

……否、ただ1人、扉を身を預けるようにして立っていた青年が、ゆっくりと扉から身を離して、向き直る。

組んでいた両手を解き、ボンネットの上に置いた紙袋を取る。

紙袋の中にはワインボトルの入っていると思わしき木箱が覗いており、一緒に輪菊をメインに、全体的に落ち着いたトーンの花束が奇妙な彩りを与えている。

“ガシャァン!”と、盛大な音を立てて、電車が止まる。

ゆっくりと開く扉を潜って、叶和人は電車の外に出た。

頬を冬の風が撫で、176センチの体がぶるっと震える。

端正な顔立ちが少しだけ険しい表情を見せるも、すぐに気を取り直すと、彼はプラットホームを跡にした。

 

 

 

うっすらと辺りを照らす街灯だけが、和人を(いざな)う道しるべだった。

アスファルトで舗装された坂道を上る。かなりの距離を歩いたというのに、冬の寒さのせいなのか、汗はあまり流れてこない。

やっと一筋の汗が額に滲んだとき、周囲の風景に少しずつ変化が現れた。

一歩、一歩と……暗がりの道を進むたび、街灯の数も減り、やがて辺りは鬱蒼と茂った木々と草木の姿が目立つようになっていた。そして、時を同じくして訪れる闇……。

闇の中を何の苦もなく進みながら、目的地へと向う。

やがて、和人の足が止まった。

そこは墓地だった。

小高い丘を切り開いて作られた斜面に、数多の石が群をなして並んでいる。綺麗に磨かれたもの、古くなって打ち捨てられたもの……そんな墓石達が、広い斜面一面を占めている。

和人はペコリと一礼して、奥へと進んだ。

小高い丘の、奥のほうまで進んでいった和人は、まだ新しい、少なくとも、建てられて2・3年の墓石へと、紙袋に入っていた花束を供えた。

墓石には『鈴風(すずかぜ)静流(しずる)』と、女の名前が刻まれていた。

和人がその場にしゃがみこみ、慈愛に満ちた表情で墓石を眺める。

「久しぶりだな、静流……」

その響きには、深い悲しみと同時に、深い慈愛が篭められていた。

「元気に…って、言い方もおかしいか……。こっちはそれなりに上手くやってるよ。お前はどうだ?ちゃんと元気にやってるか?」

当然ながら、墓石から答えが返ってくることはない。

墓地には静寂しかない。

和人は左腕に巻かれた腕時計を見た。

――時刻は11時58分。

「……もうすぐ年が明けるな。お前と出会って、これでもう5回目か。早いもんだ」

ちょうど時計があと59分のところを指し、カウントダウンが始める。

「今年もいろんなことがあったぞ。最近じゃ、毎日が楽しいことで一杯だ。…こんな人生、もう二度と楽しめないなって、思ってたんだけどな」

50秒……

「風の便りで信一も元気にやってるらしい。あ、勿論加菜(かな)ちゃんもな。……お前に会った人達は、みんな幸せな人生を送ってる」

40秒……

「俺か?俺は幸せだよ。最近じゃ『力』との折り合いもそこそこ上手くいってる」

30秒……

「もうすぐだな、静流。もうすぐ、2000年も終わる。21世紀の到来だ。……あまり、実感はないけどな」

20秒……

「……寒いな、静流」

10秒……

「9……8……7……6……5……」

4秒……3秒……2秒……1秒……

「明けましておめでとう、静流。……それから――」

和人はふっと微笑を浮かべ、墓石へと顔を近づける。

「――今年もよろしくな、静流」

そっと、冷たい墓石に唇を寄せた。

 

 

 

――2001年1月1日、午前0時7分

 

 

 

不意に、遠くに人の気配を感じて、和人は振り向いた。

気配の正体は3人の外国人。

ロシア人だな、と和人は確信した。体つき、目鼻立ち、髪の色などは明かにロシア人特有のものであった。

3人の外国人を視界に捉えて、和人は立ち上がる。

外国人の足取りはいたって落ち着いていた。和人の黒い瞳が、鋭く光る。怪しい燐光を放つ。

3人の男が、和人と6・7メートルほどの距離を隔てて立ち止まった。全身からジワリと殺気を放っている。

「ここは死者の眠る静かなる場所だ……どうしても争うのなら、死体が増えるぞ」

和人が、流暢なロシア語で言った。

端正な顔立ちが見る者をぞっとさせるような修羅の形相に変わり、全身から殺気が放たれる。

3人の男……それも体格差で勝るロシア人を前にして、和人の戦意は微塵も揺るがなかった。

「叶和人だな……」

3人の中で、一番小柄な男が一歩進み出て訊ねた。慣れた感じのロシア語である。和人はやはり、と思った。

小柄とはいうものの、あとの2人が巨漢のために小さく見えるだけで、身長は和人と同じ175センチ前後はあった。

和人はさりげなく一歩前に出て頷いた。さらに闇に紛れて二歩前に出る。小柄な男との距離が、3・4メートルほどまでに縮まった。

()れッ」

小柄な男が語気鋭く言った刹那、和人の体が大地を蹴って『燕』の如く宙に踊った。

怪鳥のような裂帛した気合が和人の口からほとばしり、左右の足刀が唸りを上げて巨漢のひとりの頭部を二連打した。

頭蓋骨が割れ、脳が血を撒き散らして飛び散る。

断末魔の悲鳴を上げる暇もなく、ぐらっとよろめく巨漢の横面に、着地した和人の懐から、『何か』が飛び出し、唸りを上げて襲いかかった。

――アメリカのナイフメーカー……クリスリーブ社のシャドウVである。

夜の闇に紛れて繰り出された、漆黒の刃の一撃は巨漢の顔面を醜く変形させ、仰向けに倒れさせる。

鍛造カーボンスティールの太い金属棒から、ブレード部分を削り出すというインテグラル製法によってフルタング以上の堅固さを有するブレードに、目立った変形は見られない。

一秒とかからぬ閃光のような和人の攻撃に、残った2人の敵がサッと退がった。距離をとるつもりである。

そうはさせじと、小柄な男を狙って和人が迫る。

しかし同時に、懐に手を伸ばして和人はベレッタ・ダブルアクションM92を抜くと、反対側で逃げる巨漢に向って轟然とトリガーを引き絞った。

コンマ数秒とかからない、恐るべきスピードの高速射撃に、巨漢がドサリと倒れる。

小柄な男が、振り返えって息を呑んだ。人の命を奪うことに躊躇いを持たない、その一連の動作は明かに訓練された兵士の動きである。

距離をとろうとして、小柄な男は逃げた。懸命に逃げた。

和人が猛然と追う。オリンピック選手並みのスピードだった。

2人の差は見る見るうちに縮み、ついに和人が男を己の射程に捉える。

シャドウVの、A2スペシャルスチール製のブレードが嘶き、小柄な男の背中に裂傷を負わせる。

――浅い!

和人は舌打ちした。一撃はあたえたものの、致命傷ではない。

男はくわっと目を見開いて転がった。

「はあああああッ!」

和人が咆哮した。烈火の如し咆哮であった。

起き上がって身構えた男を、和人の流星のような鉄拳が襲う。

敵が蹴り上げた。

喉仏を狙った一撃を躱し、和人の拳が敵の腹を打った。

“ドスドスッ”と肉を打つ鈍い音。男が吹っ飛ばされる。

和人のベレッタが火を噴いた。

銃口から離れた9mmパラベラム弾が、男の眉間を貫く。

明かに即死だった。しかし、和人は油断せずに周囲の気配をうかがう。

刹那、空を切り裂く嫌な音がして、和人は飛び退いた。

和人の今いた場所に、“ドスッドスッ”と弾丸がめり込む。その拍子に枯れ葉が舞った。

闇の中でも、和人の眼にははっきりと直径20mmほどの穴が穿たれているのが判った。

通常のピストル弾やライフル弾ではないのは明かだった。

「ダーツ弾か……」

20mm口径の弾丸といえば、M61バルカン砲の20mm弾か、特殊ライフルから放たれる20mm口径のダーツ弾ぐらいのものである。

バルカン砲の大きさや重量を考えると、この場にバルカン砲を持ち込むナンセンスだ。木々が邪魔になる。

和人は弾丸の飛んできた方向にジグザクに駆け抜けた。

その間も、ダーツ弾が容赦なく和人を襲う。和人はそれらをすべて、紙一重のところで躱した。

和人は敵を、訓練されたプロの兵隊だと思った。

7・80メートルほど走って、和人は敵の姿を捉えた。先刻と同じく、3人のロシア人が、ライフルを抱えて、和人に銃口を向けている。

ダーツ弾を撃っているのは真ん中の男のようで、あとの2人のライフルは突撃銃だった。

和人が両手でベレッタを連射した。

射ち手によってはサブ・マシンガンとも互角に渡り合える自動拳銃が、突撃銃を持った2人を狙う。

1人が躱し、1人が倒れた。

躱した男の突撃銃が、轟然と火を噴く。ダーツ弾を発射する特殊ライフルを持った男が、ナイフを逆手に持って襲いかかる。

和人は左手でシャドウVを抜いて斬撃を受け止め、右手のベレッタで突撃銃に反撃した。

2発の高速弾が、和人の肩を掠る。シャドウVとの攻防に打ち勝ち、敵のナイフが和人の脇腹を切り裂く。

和人が蹴りを放ち、ナイフを持った男を蹴り飛ばした。追撃の弾丸を避けるべく、跳躍する。

「たいした傷じゃないな……」

切り傷は普通、致命傷にはならないし、ショック症状も起こさない。銃弾の傷は深かったが、出血はそれほどのものではなかった。

男が、再び特殊ライフルを構える。

和人は、自分のおかれた状況を冷静に分析した。

ベレッタの残弾は乏しく、マガジン交換の時間を与えてくれるとは思えない。

いかに頑丈なシャドウVでも、限界はあるし、自身も傷を負っているので動きは鈍っている。

2人のライフルが同時に火を噴き、和人を襲った。

「……これしかないか」

呟いて、和人はダラリと構えを解き、左手の掌を翳して、襲いかかる弾丸の嵐と対面する。

正気の沙汰とは思えない行動に、2人の男がギョッと身を強張らせた。

しかし瞬間、ありえない現象が起こった。

「なにッ!?」

驚愕のあまり、男が驚嘆の叫びを上げる。

ダーツ弾が、ライフル弾が、和人の掌に吸い込まれるように急激に速度を落とし、ついには速度は0になって地面にポトリ、ポトリと落ちた。

「馬鹿なッ」

たしかに、馬鹿げた現象だった。

男達と和人との距離は10メートルにも満たない。そのような距離で、ライフル弾が減速して地面に落ちるなど、ありえない現象なのだ。

100歩譲って、距離の問題に目を瞑ったとしても、緩やかな減速ではなく、瞬間的に減速した現象に関しては、放っておけるものではない。

2人は再びライフルを構えて、和人を見た。

「――ッ!」

今度こそ、驚愕に値する事態だった。

和人の――

和人の翳した左手が――

左手が、灰色の光を放っている!

否、よく見ると掌だけではない。和人の凛とした細い双眸までもが、灰色の光を放っている。

比喩ではない。本当に、光を放っているのだ。

和人が駆け出す。

一瞬遅れて、2人がライフルを連射する。

だがまたしても、和人が左手を翳すやいなや、弾丸の速度は急速に衰え、それに反比例して和人の左手の輝きが増した。

あっという間に距離を詰め、和人は特殊ライフルを持った男に掌底を放った。

刹那、恐ろしいまでの衝撃が男の全身を駆け巡った。

「ッ!?」

男の巨体が、一気に何十メートルも吹っ飛ばされる。

明かに、異常な現象だった。

しかし、実際にそれは起きている。

兵士が求めるのは常識に縛られた『理論』ではない。今、目の前に起きている『真実』なのだ。

男はライフルを捨てて肉弾戦を挑んだ。

不思議なことに、和人の左手の発光は収まっていた。

男が鋭く拳を放つ。

和人はそれを屈んで躱し、懐からシャドウVを滑らせるように抜いた。

……一瞬、まさに一瞬の攻防だった。

ギャッと叫ぶところへ、二本貫手で和人は敵の眼球をはさんだまま、グイッと振り向いた。

一際甲高い悲鳴を上げて、男がドサリと倒れた。

戦いは終わった……。

 

 

 

――2001年1月1日、午前0時21分

 

 

 

しばらくその場に佇んで、和人はゆっくりと腰を上げた。

墓地に戻る気にはなれない。

第一、こんな血まみれで行くのは死者達への礼儀に反する。

血は、生命のなによりの証拠なのだから……。

修羅の形相を納め、和人は仮面を被った。

仮面の名は、笑顔……。

作り物の笑顔が、和人の端正な顔立ちとよく似合っていた。

 

 

 

――2001年1月1日、午前0時11分

 

 

 

和人が6人の刺客に止め刺した瞬間を、茫然と立ち竦んで見る者がいた。

刺客と同じく、巨漢のロシア人である。

彼は和人から200メートルばかり離れた大木の陰に潜みながら、双眼鏡を思わず落とした。

彼は見たのだ。和人の壮絶なパワーを。その異なる能力を。

叶和人という青年の、温和な表情に隠された本性を。

「凄い……」

彼は生唾を飲み込んで呟くと、身を翻して走り出した。

逃げたのではない。間近で見た和人の恐るべき強さを、しかるべき上層部へ緊急に報告するためである。

和人の背後で、壮絶な陰謀が渦を巻き、牙を剥こうとしていた。

 

 


章末武器解説

 

――Beretta M92F――

 


  

タイプ

オートマチック・ピストル

口径

9mm×19

全長

217mm

銃身

125mm

重量

975g

装弾数

15+1発

ライフリング

6条右回り

初速

352m/秒

開発

伊国、P・ベレッタ社

  

和人「作者よ、何故俺がこんなことをしなければならないんだ?」

タハ乱暴「HAHAHAHA!気にするな。さぁ、文句を言わずにさっさとやろうぜ」

和人「……対戦車ライフルを構えながら言うなッ!」

タハ乱暴「出番減らすぞ(ボソッ)?」

和人「喜んでやらせていただきます」

タハ乱暴「それじゃぁ、GO!」

和人「俺の愛銃ベレッタM92F。本編にもあるように、武装過激派〈赤い旅団〉を筆頭とした都市ゲリラに対抗すべくイタリア警察の要請で開発された拳銃で、米国の空軍トライアルJSSAPや、再トライアルXM10テストでも勝利した、ドイツ屈指の名銃……ワルサーP38と並ぶ、世界最高水準の性能を誇る高性能自動拳銃だ。

特徴はスチール製のスライドとバレルをアルミニウム合金製のフレームで包むことによって、当時としては驚異的な軽量化を図っていること。また、ダブル・カーラム・マガジン(弾丸を直列ではなく2列に並べ、より多くの弾丸を装填できるようにしたマガジン)を採用しているため、それまで10発あれば物凄いと言われていた装弾数を15発まで増やすことに成功していることなどが上げられる。

しかし、なにより凄いのはこの拳銃がダブル・アクション射撃を可能としている点だ。

ダブル・アクション射撃というのは、トリガーを引けば自動的に撃鉄が引き起こされると言う画期的なシステムで、それまで射撃のたびに撃鉄を引き起こす必要性のあったシングル・アクション射撃よりも格段に速射性が上がり、連続射撃も可能となっている。前述したダブル・カーラム・マガジンと、重量の軽量化によって向上した命中精度、そしてこのダブル・アクション射撃が組み合わさることによって、射手によってはサブ・マシンガンを相手に互角に戦うことができるほどの性能を有している。

また、M92シリーズはバリエーションが豊富で、同口径タイプだけでも20種類近くある。その他のコピー品も含めればゆうに50種類は越えるだろう。

唯一の欠点は20センチ以上の全長とその華麗すぎるデザイン。常時警官が腰から下げているならばともかく、密かに携帯するには大きすぎるし、重過ぎる……。大型拳銃だから、と言ってしまえばそれまでだが、デザインがよすぎるため相手に一目でベレッタだと看破され、奪われてしまうとかなり厄介な拳銃でもある。

もっとも、そのデザインのよさを買われて名作『ダイハード』シリーズや数々の映画、出版物に登場し、宣伝としては申し分ないのだがな……これでいいか?」

タハ乱暴「上出来、上出来」

和人「では、早速こいつの性能を実演してみせよう(ベレッタのスライドを引く)」

タハ乱暴「HAHAHAHA!和人君、何故、俺に銃口を向けてるんだい?んん?」

和人「その『んん?』が、無性に不愉快なんだが(ベレッタの銃口を向ける)」

タハ乱暴「笑止!貴様のベレッタでこの対戦車ライフルに勝てるはずが……」

和人「こんな至近距離で対戦車ライフルもなにもないだろうが」

“パンッ!”

タハ乱暴「ぐぁはっ!!(どっかで見たようなポーズで倒れる)」

和人「任務完了。それからコイツはこんな駄文を掲載させてもらっている浩さん……の、アシスタントの美姫さんにプレゼントだ。それじゃ、また」

タハ乱暴「ぐふっ……親に向ってなんたる仕打ち……」

和人「む、まだ弾が残っているな」

タハ乱暴「ごめんなさい。もう言いません。だから許して……って、うぎゃあああぁぁぁぁぁぁ………!!」

 


投稿ありがと〜。
美姫 「プレゼントありがと〜」
……だぁー!
美姫 「あっ!何するのよ」
こんな危険な物!モグモグモグモグ。…………ゴックン(泣)
はぁー、はぁー。こうして、(俺の)安全は守られた!
美姫 「……アンタ、たまに物凄い事して見せるわね」
そんなに褒めるなよ〜。
美姫 「褒めてないって。単に馬鹿にしただけ」
そうかぁ〜。って、馬鹿にしてたのか!
美姫 「うん♪」
そんなにあっさりと……。
美姫 「まあまあ。それよりも、やっと主人公の名前が登場したわね」
うん。それにしても、武器に関する表現がとても細かいね。
美姫 「そうね。浩には無理な事よね」
……いや〜、それにしても、あのロシア人たちは一体。
美姫 「ごまかしかたも馬鹿よね」
散々な言いようだな…。
そんな事言うと…。
美姫 「どうするつもりかしら?」
こうだ!ぐにょ〜。
美姫 「ああ!浩の手から、さっき食べた銃がぁ!」
ふはははは。
美姫 「段々、人間離れしていくわね」
何とでも言え!そして、喰らえ!……って、あれ?
美姫 「やっぱり完全に再生は出来ないみたいね」
あ、あはははは。これ何だろう?
美姫 「そうね。ただの鉄の塊かしら」
やっぱり、そう見えるよね。
美姫 「うん♪で、私をどうするんだっけ?」
俺、何か言いましたか?
美姫 「くすくす」
何で笑顔で鉄の塊を拾うのかな?
美姫 「……」
そして、ソレを無言で振りかぶって…。ああ。
俺の頭にそのまま打ち下ろす……うぎゃぁっ!
ピクピク……。
美姫 「くすくす。それじゃあ、次回作を待ってますね〜」





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