登場する団体、人名は全て本編とは無関係です。

 宗教に関しては中庸ですし、サイト管理者様のご好意で掲載

 させて頂いているものであり、作者様の意識とは無関係です。

 作者個人の意見であり、第三者の意見ではありません。
 
 読者の歴史観に整合しないと判断された場合は然るべく。

 整合すると判断を下された方は継続されますように。

                             作者敬白

 

 帰去来


 第二部 兆し








 突如和音が立ち上がり鹿児島へ帰ると言った時それは起った。

 『和音、それは早計じゃ。汝が逸る気持ち解らぬでは無い。されど時は未だ熟しては居らぬ。

 それに薫、那美、葉弓、楓、この者達の不安を消してやる事が先決じゃとは思わんか』

 和音の頭に、いや心に染み入るような声が聞こえた。他の先代たちにも染み込んできた。

 『これは・・・』

 和音は一度聞いた事のある声だが、椛、菜弓の二人は始めて聞く声だ。

 二人を見ると訝しげな表情を浮かべている。

 『おぬしの考えている事は、おぬしが焦らずとも時が至れば必ず成就するでな』

 「あなた様は一体・・・」

 『我は蘇るもの、汝らが上に災いが降りかからんとすれば我は必ず蘇る』

 「龍神さまなのですか。あの伝承の」

 『そうじゃ、汝らが災いを拭い去る者なり』

 「お尋ね致しますが宜しいでしょうか」

 『構わぬ、聞くが良い。』

 「自ら結界を張る小太刀が二振りここに存在いたしますが、この小太刀は如何なる存在なの

 でしょうか」

 『それは我らが想いじゃ、我らの想いを、受継ぐ唯一の者が現れるのを待たんが為也』

 「それが恭也君なのでしょうか」

 『然り。彼の者こそが我らの想いを受け継ぐ唯一の存在也』

 「神咲三派の当代たちの不安とは一体・・・」

 『四人とも彼の者を慕うておる事は承知して居ろうが。彼の者も1人を選べぬなれば四人を娶れば

 済む事とは思わなんだのかや。もしも彼の者が1人を選ぶなれば神咲は崩壊する。その事に気付いた

 は良いがその先を考慮出来なんだが汝らが恨みよ』

 その言葉が消える前に先代たちの前に二人の女性が現れた。

 ひとりは緋色の天女のような衣を纏ている。もうひとりは黒色の天女の様な衣を纏っている。

 和音、椛、菜弓の三人はひれ伏した。今神咲の守護神が姿を現したのだ。しかも二柱の神様が。

 「その様に畏まる事は無い。わが名は焔玲、この者は妹の玄玲」

 「我らとて今日の来たりしを知るなればこその事。汝らが知る由も有るまいか」

 「そのためにお姿を現されたのですか。確かに今神咲は危機に瀕しております。まさかこの様な事が

 起ろうとは思いも寄りませんでした。ありがたく仰せの通りに致します」

 和音が震える声で応えた。

 「そのことに考えが及ばなんだは我らが失態。四人を娶ればそれで済む、そうじゃろう椛、菜弓」

 「和音の言う通り我らが失態じゃ」 

 こうして恭也の知らない間に薫、那美、葉弓、楓の四人を娶る事になっていた。

 それは三人の先代達の揺るがぬ想いでもあった。




 無妙寺


 その頃道場では恭也が新規入門の退魔師たちに稽古を付けていた。

 恭也は大学へは進学せず、ここ無妙寺で門下生に稽古をつける事に明け暮れていた。

 こうして稽古をつけて居る内に5年と半年が過ぎていた。今年で恭也は22歳になっていた。

 今の門下生は今年入ったばかしの人達、それでも神咲一灯流の免許皆伝の人たちだ。

 俺よりも若い人は居ない。しかし真摯な態度で稽古に励んでいる。

 地味な稽古であるがこれが履修出来ないと先には進めない。これはある意味無灯流の奥義なの

 かも知れないと恭也は感じていた。基本こそが奥義とは誰しもが思いも付かない事だ。

 「眞行僧正、そろそろ昼になりますから朝の稽古はこの辺りで終わります」

 京都神咲の梶茂手眞行は無灯流次席師範代になった時点で権小僧正になっていた。

 同じく良犀は大僧都として無灯流師範代参席になっていた。

 「稽古止め、宿坊に食事が用意されているから頂くように。午後の稽古は13:30から始める」

 道場に眞行の声が響き渡る。眞行さんは砕きを使える程の腕前に成っている。

 この砕きを使えるのは眞行さんの他には桐園さんと良犀さんの三人しか居ない。

 この三人は天性の才も然る事ながら、無灯衆の血が他の誰よりも濃いのではないかと恭也は

 考えていた。でなければ6年弱で会得できる筈が無い。

 「ありがとうございました」

 8人の門下生達の声も響き渡る。午後の稽古も終えて恭也は自室で考えていた。

 恭也が自分の公室に戻ると長俊僧正が来た。

 「長俊だが入っても良いかね」

 「どうぞお入りください」
 
 中から恭也の声がした。 

 長俊僧正が部屋に入ってきた。

 「君と少し話がしたくなったんだ」

 「どの様なお話でしょう」

 「実は薫嬢、那美嬢、葉弓嬢、楓嬢、彩嬢に関してなんだがね、うちの家内が心配しているんだよ。

 君が誰を想っているのか解らないって。正直言って彩嬢なら問題ないと思う。しかし、神咲の誰かを

 選ぶと為ると話は別だ。神咲にしこりが残る。悪くすると崩壊するかも知れない」

 恭也は応えられなかった。

 「すいません。選べないんです。誰かひとりを選べないんです。優柔不断だとは解っているんです、

 でも選べないんです」

 「どうだろう、本当の気持ちを聞かせては貰えないだろうか」 

 「すいません今は何もいえないんです」

 「解ったよ恭也君。こんなことを聞いた事許して欲しい。家内は本気で心配しているんだ。

 みんな自分の娘のように可愛がっている。できればあの子達すべて幸せにしてやって欲しい。

 すまないねこんなこと聞いて」

 「気にしないで下さい、悪いのは俺なんですから。長俊さんの気持ちが嬉しいんです」

 恭也の部屋を辞して自分の部屋に戻った途端、突如長俊の頭の中に男の声が響いた。

 『長俊僧正、汝が心配は杞憂に終わる』
 
 『あなた様は一体』、長俊は声には出さず心の中で問いかけた。

 『我は秋霜、すべてを破壊する者。恭也が守護神なり』

 恭也君の守護神。驚きのあまり声がでない。ひれ伏すだけの長俊に再び声がかけられた。

 『秋霜の言う通りじゃ。汝だけではない。汝の妻女の心配も杞憂じゃ』

 今度はちがう声がした

 「あなた様も恭也君の・・・」

 『そうじゃ。わが名は八景。すべてを護る者。秋霜と同じく恭也の守護神じゃ』

 声が消えると気配も消えた。

 長俊は金縛りから解き放たれたように肩で息をすると傍らの電話に手を掛けた。



 鹿児島神咲宗家



 「どうした今時分電話など掛けて」

 受話器から父長英の声が聞こえてきた。

 「お父さん!。いま恭也君の守護神さまが現れたんだ!。しかも二柱も!」

 「落ち着け長俊。落ち着いてゆっくりと話せ」

 そうは言っては見た物の長英も興奮していた。守護神様が二柱も現れるとは異常だ。

 「すいません。あまりに突然だったもので気が昂ってしまいました」

 「それでどの様な神様であった」

 父長英に促されて長俊はすべてを語った。

 「そうか。すべてを護る者、すべてを破壊する者。そう申されたのじゃな」

 「はい。確かにその様に申されました」

 「そしてすべて杞憂じゃとも」

 長英は恭也の血を神咲宗家に入れたいとかねてから願っていた。

 しかし、京都、青森の当代たちも恭也を慕っている事に気が付いた。
 
 これは大変な事になったと心底困ったと思っていた。

 『杞憂に終わるとは・・・恭也君がほかの女性と結ばれると言う事なのだろうか』

 「長俊、若し何か変わったことが起ったならば連絡せよ」

 そう言うと電話を切った。時計は夜の11時を指していた。長英は和音の部屋に向かった。


 部屋の前まで来ると気を鎮めて声を掛けた。

 「先代様。長英にございます」

 「長英か、構わぬ入れ」

 「どうした、この様な時間に、何か変事でも起ったのじゃな。妖魔か」

 「いえ、そうではございません。実は無妙寺にて変事が起りました。と申しますのも恭也

 君に関してで御座います。実は先ほど長俊から電話が有りました。

 長俊の申すには恭也君に誰が好きなのか質問したその後に恭也くんの守護神様が現れたそう

 です。しかも二柱の守護神さまです」

 「二柱の守護神さまじゃとな。これは稀有な事じゃ。通常守護神といえば一柱、それが二柱

 とはな。してどの様な守護神様じゃった」

 和音は興奮を抑えるために一息飲み込んだ。

 「はい、長俊の申すにはすべてを護る者、そして、すべてを破壊する者。この様に申された

 そうに御座います。それと長俊夫婦の心配は杞憂に終わるとも申されたそうで御座います」

 「御名はなんと申された」

 「すべてを護る者と申された一柱は八景様。すべてを破壊する者と申されたのは秋霜様」

 ここで長英は気付いた。

 「先代様。この名前は恭也君が使っている小太刀の銘です!」

 「そうじゃ。恭也君の使う小太刀の銘じゃよ。そうか小太刀が守護神様なのか!長英それじゃ!

 菜弓が申しておった。恭也は阿修羅さまと大日様を背負っているとな!!」

 和音は思い出していた。

 そこの嬢ちゃんは龍を背負っている。うちのく恭也は阿修羅さまと大日様を背負っている、

 菜弓が言ったこの言葉が蘇る。

 「長英、先ほど神咲の守護神様が御姿を表わされた。焔玲様と玄玲様の二柱の龍神様じゃ」

 長英は言葉が出なかった。 

 ここにきて四柱の神様が出現するのはただ事ではない。神咲の浮沈に関わる重大な出来事が

 起るに違いない。長英は背中に冷や汗が流れるのを感じていた。

 「長英。今、神咲にとって、神咲の崩壊も含めた危機が出来している。それは薫達のことじゃ。

 恭也が神咲の誰かを選んでもしこりが残る。しかも腕に覚えのある連中じゃ。惚れた男を他の

 女に渡すほど潔くはない。女とはそう言うものじゃ」

 和音のこの言葉ですべてを察した。恭也を巡って力づくの奪い合いが始まるだろう。

 「だから龍神様たちがお姿を示されたのじゃ。薫、那美、葉弓、楓の四人を恭也の妻にすれば

 問題ないとな」

 和音は長英に顛末を説明した。長英は話を聞いている内に安堵していた。

 「それとやはりと申すべきか、恭也こそ龍神様達の想いを受け継ぐ者とも申された」




 
 無妙寺


 「長、先ほどの長俊僧正の件ですが、長は本当のところ神咲の四人と彩と月村忍、

 フィリスと申す女性達すべてを愛して居るのではないか思えるのじゃが」

 「そうじゃ、我もそう思う。なら七人とも娶れば済む事じゃ」

 「しかし、そう言う訳には行かないだろう。確かに俺は7人を女性として見ている。

 みんなを愛している。だからひとりを選べないんだ」

 「なら七人とも娶ればよかろう」

 聞きなれた女性の声が聞こえてきた。そして部屋の空気が揺れた瞬間二人の女性が現れた。

 「あなた方は一体?」

 「我らは神咲に危機が及ぶ事態に為ればその危機を拭い去る者」

 「神咲の危機とは?」

 「その責めは汝自身の不甲斐無さが原因じゃ」

 「俺の不甲斐無さと言われても」

 「玄玲、良いではないか。その不甲斐無さの御蔭で神咲が崩壊せずに済んだのじゃから」

 「確かに居得ておる」

 「神咲の女達が汝に惚れてしまった。女は誰でもじゃが惚れた男をそう簡単に譲る者ではない。

 みな腕に覚えのある連中じゃ。どの様な結末になるか一目瞭然じゃろう」

 「そして御神不破の守護神でもある」
 
 その一言が恭也の禁忌に触れた。

 「ならば何故一族は壊滅したんだ!父さんは何故殺されたんだ!

 守護神なら・・・「やめておけ、長」」

 「すまない八景。興奮してしまった、俺には無縁のことです。俺を護ってくれるのは八景に秋霜。

 それ以外には居ませんから、お引きとり下さい」

 「長。それは言い過ぎじゃ。我らとて一族を護りきれなんだ。秋霜は神々に縛られていた。我は

 秋霜が有ってこそ実態が表わせる」

 「恭也。彼の者達全てが転生しており、やがて汝が下に集合する。そして無灯衆が復活する」

 玄玲と呼ばれた漆黒の装束を纏った一柱がそう言った。

 「過去幾度となく繰り返されてきた事じゃ。御神不破と無灯衆はな。御神不破、無灯衆は同一じゃ。

 故に一族全体に危機が迫れば我らは蘇る」

 「俺の大切な人達に危機が!」

 「そうではない。汝と美由希、美沙斗は我らが護った。護る必要があったからのう。それと士郎や

 静馬たち、あの時死んだものたちはあの後直ぐに転生している。御神不破は消える必要が在ったのじゃ。

 無灯衆誕生の為にな」

 「そうじゃぞ恭也。それと既に汝は士郎を超えている、それは静馬とて同じ事じゃ」

 焔の様な緋色の装束を纏った女性がそう言った。

 「和音は娘たちの想いに気付き、準備をしようとしたが我らが止めた。必ず実現するからと諌めたのじゃ」

 その場の空気が揺れた。其処には和音が居た。

 「ここは?恭也くんではないか。どうしたと云う事じゃ」

 「汝を呼び寄せたは我なり。汝が気付いた通り神咲の娘たちを恭也が娶ることで無灯衆の復活が始

 まったのじゃ」

 『やはりそうじゃたのか。御神不破を滅ぼしてまでの遠大な計画が始まったのか』

 「恭也、汝は7人の女を娶れ、7人全てを愛しているのじゃろうが。これはかねてよりの約束事じゃ」

 「約束事と言われても、急に言われてもどうすれば良いのか。確かに俺は7人の女性を愛しています。

 だからひとりを選べと言われても出来ないんです。それに彼女らの気持ちを考えてあげないと・・・」
 
 「神咲和音。汝ら先代たちで神咲の娘達の気持ちを確かめてみるが良い。みな賛成するじゃろうがな。

 娘達に取ってもその方が幸せじゃろうし」

 そう言うと和音の姿が消えた。



 「汝には辛い思いをさせたが今言った通り、御神不破に連なる一族全員が転生しておる」

 「それでは・・・」

 「そうじゃ。御神不破は神咲三派とさざなみ寮にな。あの時滅んだ全員が各地の神咲に転生しておる」

 『そう言えば耕介さんって静馬さんに似ている。北斗君は一臣叔父さんに、和真さんは・・!

  あのいい加減な性格は父さんに似ている。真雪さんは琴江お姉さんに、桐園さんは御影さんの

 弟一成さんに、・・・そうか、そう言うことか』

 「お二人には失礼なことを申しました。御赦し下さい」
 
 そう言うと恭也は二柱の神に不破流の作法通りに膝まづいてそう言った。
 
 「良い、汝が苦労すべて承知しておる。辛かったじゃろう」

 焔鈴の言葉に恭也は生まれて初めての涙を流した。

 『みんな戻って来たんだ』

 そんな恭也をやさしく見守る二柱の神々。

 恭也の心が温かさに満たされたころ鹿児島では先代たちが連絡を取り合っていた。


 鹿児島神咲


 「みんなに集まってもらったのは一度海鳴りに行かねばならんと思うんじゃ」

 「恭也君のことか」

 「そうじゃ椛」

 「わしのところは、葉弓が申して居ったが其れでも良いらしい。男の取り合いを覚悟していたと

  申しておった。他の女を皆殺しにしても恭也を渡さん心算じゃとな。あの葉弓がと思うと

  女の性の激しさを今更ながら感じたわ」

 「わしの処も同じじゃ、楓が申すには誰にも渡さんとな。もし負けたら恭也を殺して自分も死ぬ

  とまで申して居った」

 「やはり龍神様の申された通り、恭也君のお陰かも知れん、あの優柔不断さが四人の平衡を保っ

  ていたんじゃな」

 「和音の言う通りじゃとわしも思う」

 「其処で相談じゃ、これ以上女が現れんように直にでも結婚させる事じゃ」

 「賛成じゃ、菜弓はどうじゃ」

 「わしも賛成じゃ。これ以上恭也に惚れる女は増やしとうはない」

 「しかし、無妙寺に置いていては・・・」

 「それはそうじゃが恭也がうんと言うかな。今は無灯衆の再編を行っているし」

 新しく建てられた、海鳴りからひと駅のところにある無妙寺の敷地内にある道場であった。

 そこで恭也は全国から集まってくる退魔僧たちの鍛錬を行っている。

 場所的にも日本列島の中間に位置するここが一番都合がいい。



 「稽古やめ!」

 眞行の声が響く。稽古終了を告げる眞行の声が道場に響いた。

 汗を流すため温泉につかる彼ら、そんな彼らの疲れを温泉が疲れを癒す。

 温泉から上がると夜食の用意がされている。いつもと同じ情景だ。

 薫や那美、そして楓や葉弓が運んできてくれたものが食卓に並んでいる

 食事を終えると眞行が言った。。 

 「食事を終えたから、皆に恭也様がお茶を点て下さる」

 そう言うとお茶の道具が運ばれてきた。これが何時ものことであった。

 今日は日曜日。遠方からここ無妙寺に稽古に来る退魔僧達への心配りであった。

 恭也の点てた茶は彼らの疲れを癒やし、元気が漲ってくるのであった。

 「師範のお点前は不思議じゃ。疲れが取れて行くのがわかる、しかも爽快じゃ」

 京都から来ている退魔僧がそう呟く。恭也の点てる茶には彼の心が籠っていた。

 『せめて元気に帰ってほしい。せめて心も身体も元気で帰ってほしい』

 夜行列車の椅子に座った彼らの姿が思い浮かぶ。

 『彼らの家族の笑顔を俺は守る!』

 この思いを籠めて点てた茶であった。そうして彼らは家族の待つ家に帰って行った。

 杉下重蔵が鹿児島の自宅に帰り玄関を開けると娘の弥生が飛びついて来た。

 妻も後ろに立っていた。おなかも目立ってきた。

 「ただいま」

 重蔵の頬が緩む。

 このような光景が日本各地で行われていた。

 本来、長俊預かりに成る筈であったが妻女の妊娠が発覚し和音が押しとめたのだ。

 「今が一番大事な時じゃ。よいか重蔵。妻女や娘の心を守れずして何が神咲の退魔僧か」

 そんな事があって、長俊預かりの退魔僧一家たちの住む家が無妙寺に建てられた。

 「おはようございます、師範」

 道場へ向う恭也に杉下が声を掛けてきた。

 声に振り替えると妻女や弥生も恭也の傍まで来て挨拶してきた。

 『俺はこの人たちの笑顔を守る』

 新たな決意が湧き出てくる。

 「奥さん、弥生ちゃん、おはようございます」

 「杉下さん、今日は少し早いんじゃないですか」

 「そう言われる師範も早いですね」

 「俺はいつもこれくらいですが」

 「実は師範にお聞きしたいことがありまして」

 「それでは道すがらお話を伺います」

 恭也と重蔵は道場へ向かう。

 「それでお話とは?」

 「眞行さんのことなんですが」

 「眞行さんですか?彼がどうしたんです?」

 「この頃何か悩んでいるような気がしたんです」

 「眞行さんがですか」

 「はい」

 「やはり重蔵さんも気が付かれましたか」

 「師範もお気づきでしたか」

 「皆さん仲間思いですね」

 恭也が嬉しそうな顔をして重蔵に言った。

 「皆さんと申されますと?」
 
 「長俊さんもそう仰っておられました。」


 今、眞行は恭也と師範室にいる。

 

 第二部 終了



何か起こるんだろうか。
美姫 「どうなのかしらね。それにしても、転生ね」
しかも、御神は滅ぶ必要があったって。
美姫 「どうなっていくのかしらね」
うんうん。それでは、この辺りで。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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