「さっきも言った通り、私はこれから御主人様……高町様に付いていこうと思ってるんだけど。ねねちゃんはどうする?」

 高町軍は現在、一足先に楽成城から逃げ出した袁紹軍を追撃すべく、新たな戦力となる黄忠軍の兵を再編成している最中。
 そんな中で、恭也の元へと降った黄忠──紫苑は、自分の元に身を寄せていた客将の陳宮のこれからの身の振り方を尋ねていた。

「私としては、これからも璃々のお友達でいて欲しいのだけど……でも、あなたにもやることがあるし……」

 紫苑の希望としては、これからも陳宮には自分の元にいて欲しいのだが、強く引き留めることが出来ない。紫苑は陳宮が人を捜していることを知っているし、その人物が……生きていない可能性が高いことも理解しているからだ。

(しかも、よりによって……噂が本当なら、ねねちゃんが探してる人と高町軍には因縁があるはずだし。それを考えると、ここに残れと言うのは残酷なのかも知れないけど)

 陳宮の捜している人物は、先の洛陽での戦において生死不明とされている。しかも、その人物の率いた軍と高町軍は直接ぶつかり、高町軍が勝利したという噂がまことしやかに流れているのだ。
 つまり紫苑が今、身を寄せている高町軍は、陳宮が捜し求めている人物の仇なのかもしれないのである。
 しかし、

「お気遣い、感謝です紫苑。ですが、逆にこの出会いを好機と思うのですよ。噂の真偽はともかく、高町殿なら、“あの方”があの戦の後にどうなったのかを知ってるかも……ですから」

 陳宮にはすでに、ある程度の覚悟は出来ていた。
 自分の捜している人物が、どのような末路を辿ったのかを知る覚悟を。
 そして──

「ねえ、ねねちゃん? もし、よ? もし……あなたが捜してるひとを……高町様が殺めていた場合、あなたはどうするの?」
「決まってるです……その時は、この陳公台の名にかけて……高町恭也を倒すだけです」
「……そう」

 ──いざとなれば、紫苑すら敵に回すことになる覚悟すらも。
 そんな陳宮の覚悟を知った紫苑は、あえて彼女を止めようとはしない。それほどまでに陳宮の覚悟は固い事を見て取れたから。

「なら……早速聞きに行きましょうか。高町様は、今はそれほどお忙しくもないでしょうから」
「……うん」






















『恋姫†無双異聞 〜高町恭也伝〜』
 第四十九章






















 現在、高町軍は追撃準備の真っ最中。
 だが、紫苑は先ほど陳宮に言った──恭也は今はさほど忙しくない、と。
 それは何故か?
 理由は簡単。
 愛紗と朱里に、何もするなと“厳命”されているからである。
 黄忠親子を救う際に見せた神速の重ね掛けは、案の定恭也の右膝に深刻なダメージを与えていた。恭也としてはそんな素振りを見せず、やせ我慢をしていたのだが、愛紗と朱里には通用せず。どす黒く変色した右膝を見られてしまったのである。愛紗は烈火のごとく怒り、朱里には泣きつかれ、恭也は二人の言うがままに行動を自粛することとなったのだった。
 そんな恭也が今、本陣内ですることと言えば──

「ね? ごしゅじんさま、おひざいたいの?」
「ん? 今はもう平気だ。心配ない」
「……うそついてない?」
「……どうしてだ?」
「だって、朱里ちゃんが言ってたもん。ごしゅじんさまはうそつきだから、いたくないっていうのはうそだから、って」
「…………」

 ──膝に負担をかけないように、と座ったままで、紫苑の一人娘である璃々の相手をすることくらいである。



 紫苑が高町軍に降った後、恭也としては楽成城の統治権を移譲されたとはいえ、とりあえず今回は紫苑には楽成城に残ってもらい、自分たちは袁紹軍への追撃を続けるつもりだったのだが、紫苑はそれを拒否し、袁紹軍への追撃戦に自分も参加すると言い出したのだ。

「袁紹には今回の恨みもありますし。それに何より、御主人様の今の膝の状態では今度の追撃戦では戦えませんでしょう? 御主人様が膝を痛めたのは私たちのせいですし、ならば私が御主人様の穴を埋めるべきでしょう?」
「しかし……娘さんはどうするんだ? よもや戦場に連れてはいけないだろう? それに今回の誘拐の件もある。娘さんのことを考えれば、出来る限り傍にいてあげた方が……」

 恭也としては、もちろん黄忠という武将が軍に参加してくれるのは多いに助かると思っている。黄忠軍の兵が高町軍に再編成されたとしても、それでもなお袁紹軍の方が兵力は上。となれば、後は士気と将の質を上げることで戦力差を埋めていかねばならない。そのうえで、紫苑の参加は大きいのだが、恭也は首を縦に振ることが出来なかった。
 せっかく母と子が元通りの形におさまったのだから、今はせめて璃々のためにも、二人には穏やかな時間を過ごしてほしいと思ったからである。それに、次の戦いは確実に総力戦となる。幼い少女に殺し合いを見せたくないという気持ちもあった。
 しかし、

「おかーさんがいくなら璃々もいく! おかーさんといっしょなら、どこだってへいきだもん!」

 そんな恭也の気遣いを無用と主張したのは、璃々だった。
 璃々は、恭也と共に戦いに赴くことを希望している母の気持ちを幼いながらに理解し、母のためなら怖い戦場に足を向けることだって厭わないという気持ちを持っていたのである。
 ただ、それだけでもなく、

「だがな……戦場は危ないところなんだぞ?」
「へいき! だってまたごしゅじんさまがまもってくれるもん! 璃々もごしゅじんさまといっしょがいい!」
「あらあら……璃々ったら」
「…………」

 どうやら璃々も恭也のことがお気に入りらしかった。
 幼子の無垢な信頼の瞳を向けられてしまっては、もう恭也には説得の言葉もなく。
 黄忠親子の追撃戦参加が軍議の中で認められてしまったのである。



 で、今回の追撃戦において戦力外扱いを受けてしまった恭也が、璃々の相手をしているのである。
 そこに、

「御主人様……少しよろしいですか?」

 陳宮を連れた紫苑が姿を見せた。

「あ、おかーさんにねねちゃんだ♪」
「璃々、御主人様にご迷惑かけてない?」
「そんなことしてないもん!」

 璃々はそう主張するが実際のところはどうなんでしょうか、と視線だけで恭也に問いかける紫苑。それに恭也は小さな笑みを浮かべて返す。

「璃々ちゃんはいい子だよ。迷惑なんてとんでもない」
「ほらーっ」
「それならいいのですが……」
「で、何か用事があるんだよな?」
「あ、はい。実は……彼女が御主人様に聞きたいことがあるというので」

 そう言って紫苑はそれまで背後に隠れるように立っていた少女を自分の前に出した。
 紫苑の前に出てきた小柄な少女を見て、恭也はすぐに思い出す。

「君は……確か、今回の救出作戦で鈴々たちに手を貸してくれた」
「陳宮です」
「陳宮さん……確か紫苑のところの客将だったという」
「はいです」
「そうか……っと、自己紹介がまだだったな。俺は高町恭也だ。今回は鈴々たちに手を貸してくれてありがとう。君抜きでは今回の救出作戦の成功はなかったと星から聞いてる」

 恭也はまず、今回の璃々救出作戦での陳宮の手柄への感謝の気持ちを口にした。その恭也の言葉が意外だったのか、陳宮は頬を赤く染めて目を逸らしてしまう。

「た、大したことはしてないのです。それに、あなたに感謝される言われもないのです。私はただ、友達を助けたかっただけですから」

 友達、とはもちろん璃々のことだ。
 あらためて陳宮に友達と言われたのが嬉しかったのか、璃々は恭也の横でにこーっと笑っている。小さな二人の友情を目の当たりにして微笑ましい気持ちになる恭也だったが、先ほどの紫苑の言葉を思い出し、表情を引き締めた。

「で? 話は変わるが、俺に聞きたいことがあるんだろう?」
「……はい。実は、紫苑の元でお世話になるまで、私は“ある方”を捜して旅をしてたのです」
「人捜し……か。ということは、俺に聞きたいのは、その捜してる相手の情報を持ってるかどうか、というところか?」
「話が早くて助かるです」
「なるほど……だが、俺がその人物のことを知っているといいのだが……」
「それなら、心配無用です」
「む?」

 不意に、陳宮が恭也に向ける視線が鋭くなる。その変化に恭也は敏感に反応した。何故なら、その陳宮の視線にはわずかながらな……敵意に似たモノを感じたからだ。
 恭也はあらためて居住まいを正し、陳宮の言葉を待つ。
 そして、

「私が捜し求めている方の名は、呂布。元董卓軍の武将にして最強の武人、呂奉先様なのです」
「呂……布……だって?」
「はいです。知らないとは言わないですよね? 反董卓連合に参加し、呂布様と直接戦ったという噂のあなたならば」
「…………」

 彼女の口から出た名は、恭也にとっては随分と意外な人物の名前だった──。























 程なくして軍の再編成も終わり、高町軍は進軍を開始した。
 黄忠軍を加えた高町軍の兵数は約二万まで膨れあがり、打倒袁紹の意志が末端の兵士にまで浸透しているほどに士気は高く。
 片や袁紹軍はと言うと、兵数は減り続け、しかも格下と見下していた高町軍に追い立てられ士気は下がる一方。それでも兵数は高町軍よりも多い三万。
 兵力こそ袁紹軍に後れを取る恭也たちではあるが、それを不利と思い気負う者は皆無だった。
 高町軍の誰もがわかっているからである。すでに袁紹の元には二枚看板と呼ばれた猛将もなく、無能な大将を補佐する人間も不在と言うことを。
 それに比べて高町軍には、これでもかというくらいに人材が揃っていた。
 いずれ劣らぬ一騎当千の勇将たち。
 常に必勝の策を用意出来る名軍師。
 その人材を信頼し、活用出来る大将。
 高町軍の兵士たちは、彼らの力を自分たちの目で見て理解しているからこそ、自分たちよりも兵数が多い袁紹に恐れを成すことがないのである。
 その信頼が、連戦で疲れがあるはずの兵士たちを奮い立たせ、進軍する足はより前へと進ませた。進軍前に、大将──高町恭也が言ったから。

「みんなには、苦労をかけている……疲れも限界だろうとは思う。だが、袁紹を逃すわけには行かないんだ。アイツがいる限り、啄県に──いや、幽州に平和は来ない。だからこそ、次が最後だ。次の戦いで袁紹とはケリを付ける。そのために……最後の力を俺に貸して欲しい!」

 次が最後。
 この長かった戦いも次で終わる。
 あの、寡黙だが誠実な大将が言ったのだ。
 彼は兵士たちを欺くことはしない。それは兵士たちの、恭也への信頼だった。
 だからこそ、兵士たちは最後の力を振り絞り、進軍を続ける。
 当然、この両軍の進軍速度の差は歴然で、距離は縮まる一方。
 そして──




「前方に多くの人影と……旗を発見! 旗には……袁の文字です!」





 ──ついに、高町軍は袁紹軍を捉える!























「結局追いつかれましたのね……まったく」

 その呆れるような嘆息は、自軍の兵士たちの進軍速度の遅さを責めるかのよう。
 彼女は最後までそれが自業自得とは気づかないまま。

「全軍を反転させなさい! こうなればもう正面から迎え撃ってあげますわ!」

 袁紹軍の大将、袁本初は凛とした声で命令を下し、追ってくる高町軍と正面から向き合うよう、軍を反転させた。
 彼女の周囲には、袁紹を常に守り通すべく存在する黄金の鎧に身を包んだ近衛部隊。その部隊長が袁紹に指示を促す。

「して、いかなる陣で、どのような策を?」

 しかし、その質問は無意味。

「陣も策も必要ありませんわ。相手は所詮小物……正面から威風堂々蹴散らしなさい!」

 それはもはや策でもなんでもなく、闇雲な特攻を意味していた。
 しかし、その場にいるのは、

「はっ! ご随意に」

 袁紹の命令ならば疑問を挟むことなく頷く者ばかり。
 袁紹を理屈でしっかりと窘める者も。
 袁紹の考えなしの命令に躊躇する者も。
 今はもう、袁紹の傍には誰もいないのだから。

「ほーっほっほっ! 今度こそ……この袁本初自らの手で地獄に叩き落としてあげますわ!」

 袁紹の甲高い笑い声も、今では虚しく響くだけだった。





















 一方の高町軍。

「それでは皆さん、前回の軍議通りでお願いします。まずは突撃してくる敵の先頭には……紫苑さん」
「任せてちょうだい。弓兵部隊の指揮なら、お手の物ですからね」

 軍師、諸葛亮──朱里がテキパキと指示を与えている。

「紫苑さんの弓矢の攻撃で敵の出足が鈍ったところで、今度は正面から……愛紗さん、翠さん、流夏さん」
「今度こそ袁紹を叩き潰してくれる!」
「あたしもまだ暴れ足りないからな。錦馬超、ここにありってところを見せてやるぜ!」
「ようやく、私も戦えるな。とはいえ、この二人ほどは人間をやめてないから、私なりにやらせてもらうよ」
「「どーゆー意味だ!?」」

 すでに、大まかな作戦は進軍前の軍議で決まっていた。

「そして、敵が正面の三部隊に足止めされたところで、左翼からの奇襲を鈴々ちゃん」
「任せろなのだー。でも、璃々を助けた時に戦った奴らは弱っちかったから、今回も手応えはなさそうなのが面白くなさそうだけどねー」

 朱里は先の軍議ですでに、敵軍がむやみに突撃してくる事を予測していたのである。

「右翼からの奇襲は、星さん」
「これでようやく、晴れて主の下で働けるのだ。高町軍に趙子龍あり、と見せつけねばな」

 それに対する朱里の策は実に単純なモノだった。
 まず、突撃してくる敵の鼻先には紫苑が率いる弓兵部隊の弓矢で先制攻撃。敵の出足が鈍ったところで、一気にこちらの主力部隊をぶつけて、戦線を維持。敵軍の意識を主力にのみ向けさせておきながら、そこで敵軍の横っ腹を突く奇襲攻撃で混乱させて、後は殲滅。
 策と呼ぶにはあまりに稚拙な作戦だったが、朱里曰く、

「相手は“あの”袁紹さんですから。ヘタに凝った策を弄するよりも、コレくらい単純な方が効果はあるはずですから」

 とのこと。
 これまでの袁紹の無能っぷりを見てきた高町軍の面々は、その朱里の言葉に納得した。
 ちなみに、恭也は今回ばかりは朱里や璃々と一緒に後方に留まることに。
 黄忠たちを神速の重ね掛けで助けたことによる膝のダメージはかなり深刻らしい。もっとも、恭也自身はそれほど深刻だという考えはなく、

「……多少動きは鈍るかもしれないが、それでも戦えないほどでは──」

 軍議の際にもこんな事を言っていたのだが、

「「ぜっっっっっっっっっっっっっっっっったいにダメです!!」」

 愛紗と朱里の反対にあい、

「お兄ちゃんは後ろで見ていればいいのだ。鈴々たちが袁紹を倒してくるから!」
「そうだそうだ。あたしらだけで平気だって。袁紹程度はさ」
「そろそろ大将としての自覚を持った方がいいぞ、高町」
「少しはご自分の体を大切になさった方がよろしいですよ。御主人様の抜けた穴は、私と……」
「この趙子龍で埋めてみせよう。それとも、我らでは不満かな?」

 残る面々にも止められてしまっては、恭也も無理を言えなかった。

「わかった……後は、頼んだ」











 こうして……高町軍と袁紹軍の、最後の戦いが幕を開けた。



















「ギリギリまで敵を引き付けて! 届かない矢なんて何の効果もないんですからね!」

 紫苑は敵との距離を測りつつ、矢の発射のタイミングを見定めている。大陸屈指の弓使いとして名を馳せている黄漢升の、鷹の目とも称される得物を決して逃さない眼力は、敵兵との距離を正確に測る能力に長けていた。
 今回の軍の再編成で、紫苑はその弓使いとしての特性を買われ、弓兵部隊を任された。しかもその部隊の大半は元黄忠軍の兵士たちで構成され、紫苑が指揮しやすいようにとの配慮でもある。
 ちなみに、弓兵部隊の指揮を任すことを進言したのは朱里だったが、その編成を元黄忠軍で固めるように指示したのは恭也だった。軍師としての朱里としては、紫苑を信用していないわけではないが、それでも降ったばかりの武将である彼女の部隊には万が一のことを考慮して高町軍生え抜きの兵士で構成したいと思うのは、ごく当然のことと言えるし、それは紫苑自身も納得出来る。しかし、恭也はそれに反対した。



「紫苑が部隊を指揮する以上、紫苑と馴染みのある黄忠軍出身者で固めた方がいいだろう。紫苑も指揮しやすいだろうし、兵士たちも慕っている武将に率いられた方がいいに決まってる」
「ですが……」
「……結局戦うのは兵たちなんだ。ならば、少しでも戦いやすい環境を整え、生き残る確率を増やすのが俺たちのすべき事だろう?」
「それは……」



 戦う兵士たちが生き残る確率を上げるため、効率のいい編成をする──それは合理的でわかりやすい理由だ。しかし、その言葉の裏にあるのは、恭也の紫苑への信頼である。
 高町軍にとって新参者である紫苑に対して、恭也は強固な信頼の意を示したのだ。それは実際に刃を交えたこともそうだし、黄忠軍の将兵たちが彼女を慕っている姿を見ていて、彼女が人格面でも優れていることを見て取ったからである。
 その、恭也の信頼を受けた紫苑は、

(入ったばかりの私に、ここまでの信頼を向けてくださった御主人様……彼のために、この弓を振るってみせる)

 冷静に、しかし誰よりも昂っていたのだった。
 そして──

「一斉射! うてーーーーーーーーーーーっっ!」

 ──紫苑の声と共に放たれる無数の矢。
 それが高町軍の攻撃の始まりだった。























「ふむ……さすがは黄漢升と言ったところか。敵は完全に出鼻を挫かれたみたいだな」
「くっそー。紫苑のヤツ、張り切ってるなー。あたしも早く槍を振るいたいぜーっ」
「……少しは落ち着けよ翠。焦らなくても、出番はもう来るって」

 紫苑の先制攻撃を見ていた本隊の三人──愛紗、翠、流夏は紫苑の部隊の攻撃を見ながら突撃のタイミングを計っていた。
 愛紗が唸るほどに、弓兵部隊の一斉射は見事に袁紹軍の先頭の足を止めさせている。今回編成された弓兵部隊はほとんどが元黄忠軍の兵士たちである。そのせいもあってか、紫苑は我が手足のように兵たちを統率していた。
 第一斉射で袁紹軍の出足を鈍らせ、続く第二斉射で完全に敵の足を止めさせてしまった。その見事さは流夏も目を見張るほどである。

「はー、アレは確かに凄いな。さすがは弓の名手と、それに鍛えられた黄忠軍と言ったところか。まあ、入ったばかりの紫苑の部隊に元黄忠軍の兵士を入れるという高町の案には躊躇したけど……始まってみればそれが当たったということか」
「ふっ、まあな。我らが御主人様の慧眼をもってすれば、これくらいは造作もない」
「……って、なんで愛紗が威張ってんだよ? 愛紗は反対してたじゃんか」
「う……っ」

 翠のツッコミ通り、実は愛紗も紫苑の部隊の編成には反対していた。だが、最終的には恭也には逆らえず、愛紗の意見は却下されたのである。なのに、今になってのこの掌の返しようを見れば、翠でなくともツッコミたくなるというモノだ。
 その的確なツッコミに、言葉を詰まらせてしまう愛紗だったが、そこに救いの手が。

「そう言ってやるなよ、翠。本来は愛紗の言ってることの方が正しいんだから」
「る、流夏……」

 と、フォローするのは元太守である流夏だった。その流夏の言葉に安堵する愛紗。しかし、それは甘かった。

「それに、愛紗とすれば新参者の紫苑が“愛しの御主人様”の信頼を得ていることが悔しかったんだろうさ」
「なっっっ!? 何を言い出すのだ流夏!? 私はそんな私情で……というか、そもそも私は御主人様にそんな感情は……っ!」

 続いて流夏の口から出てきたのはフォローどころか愛紗をからかう気たっぷりの言葉。裏切られた形になった愛紗は慌てて否定しようとするが、

「ああ、なるほどね。そーゆーことか」
「翠もそこで納得するなーっ!」

 もう後の祭りだった。
 突撃待ちの部隊を率いる武将達とは思えないくらいに緊張感のないやりとりの中、紫苑たちの部隊から今度は第三斉射が放たれる。三度飛来する正確無比な矢の雨に、袁紹軍の先頭は完全に怯みきって戦線を下げ始めた。
 その瞬間、三人の将たちの表情が一変する。
 弓兵部隊の攻撃で敵が下がった時が、本隊突撃のタイミングだったのである。そして、そのタイミングをこの三人は見逃さなかった。
 年相応の少女から、武将の顔に戻った三人は、従えていた本隊の兵士たちを鼓舞し、

「敵が怯みきった今こそが絶好機! 我ら高町軍の力を見せつけるのだ! 突撃ーっ!」
「手柄が欲しいヤツはあたしについて来な! 暴れまくれーっ!」
「編隊を崩さないように注意しろ! 袁紹軍を駆逐するぞ!」

 軍の先頭に立って、袁紹軍目がけ突撃を開始する。
 高町軍の青龍刀──関雲長。
 西涼一の槍使い──錦馬超。
 かつての北の勇者──公孫賛。
 この三人の英傑がいてくれれば、兵たちに怖いモノなど何一つなかった。
 高町軍の本隊は、その勢いのままに袁紹軍へと殺到するのだった。























「うーっ、まだかなまだかな?」

 袁紹軍発見の後、即座に自らの部隊を率いて、袁紹軍に気づかれないように気配を殺しつつ袁紹軍の左手の森に潜んだ鈴々は、本陣からの合図を今か今かと待ちわびていた。

「やっぱり愛紗たちと一緒に本隊にいた方が良かったかな? ここは退屈なのだー」

 すでに戦いが始まってるのがわかってるだけに、鈴々はいまだに自分だけが矛を振るえないこの状況に飽き始めていたのである。
 しかし、

「でも……合図もないまま動いてお兄ちゃんに怒られるのはイヤだから、我慢するしかないのだ……」

 鈴々は恭也の顔を思い出すことで、何とか我慢した。
 高町軍の武将の中では、あまり自制が効く方ではない鈴々だったが、それでも恭也のことを考えれば自分を抑えることが出来るのである。
 鈴々は恭也に褒められるのが──特に頭を撫でてもらうことが──大好きだった。恭也に褒めてもらえるのならいくらでも頑張れるくらいである。事実、先の楽成城での救出作戦でしっかりと役割を果たした鈴々は、恭也に褒めてもらい、頭を撫でてもらえた時が彼女にとっての至福の時だった。
 逆に、鈴々は恭也に怒られる事を何よりも恐れている。もっとも、恭也が鈴々を怒ることなどは滅多にない。何故なら恭也が怒る前に愛紗が鈴々を窘めることが多いからだ。しかし、以前に一度だけ鈴々は恭也に叱られたことがある。それは鈴々がワガママな振る舞いをしたことで、他の人間に迷惑をかけた時だった。恭也は愛紗のように怒鳴りはしないモノの、静かに説教をする恭也の声色には怒気が孕んでおり、しかも鈴々を見据える瞳も鋭く怖いくらい。いつもは自分に優しい瞳を向けてくれる恭也のそんな瞳は二度と見たくないと鈴々は心から思ったのだ。
 そんなことがあったからこそ、今も鈴々は我慢が出来る。

「それに……ちゃんと作戦通りにやれば、またお兄ちゃんにナデナデしてもらるのだ♪」

 恭也の手のひらは長年の剣術修行で硬くなっているのだが、それが何故か鈴々には心地よいらしい。
 その感触を思い出すだけでも幸せな気持ちになれる鈴々は、今も恭也に撫でられた時のことを思い出し、ぼへーっと締まりのない顔になっていた。
 そんな時だった──























「よし、ここで待機。あとは軍師殿からの合図を待つ!」

 趙雲──星は率いてきた部隊に待機命令を出した。
 朱里の作戦通り、現在星は任された奇襲部隊を連れて袁紹軍の右手にある岩山の陰に隠れている。ここで朱里からの銅鑼の音が聞こえたら、左の森に潜む鈴々と同時に挟撃をかけ、袁紹軍にダメージを与えるのが、今回の星の役割となっていた。

「ふぅ……これが、主の下での初陣だ。今度こそは役に立たねばな」

 最初こそ、恭也のことを冗談交じりで“御主人様”などと呼んでいた星だったが、今は“主(あるじ)”と呼ぶことが定着している。恭也的には「それもどうかと」という呼び方だったが。

「あの方には、情けないところばかり見られている……そろそろ汚名返上といきたいところだが」

 そこで星は自らの焦りを感知し、己を戒める。

「……落ち着かねばな。ここでまた我を出し過ぎてしまっては意味がない。武人として、ではなく将としての私を見せねば」

 かつての黄巾党討伐においての失態は、今も彼女の胸に教訓として刻み込まれている。恭也から受けた平手打ちの“痛み”と、その時の星を叱咤する恭也の辛そうな表情が。
 恭也の元で槍働きをする以上、二度と恭也にあんな顔をさせてはならない。そして彼に認めてもらうこと──それが今の星の目標となっていた。
 今でも武人としての自分を高めたいという願望はあるし、それを捨てる気はさらさらない。だが、高町恭也が求める星の理想型は、武人としても、そして将としても超一流であって欲しいというモノ。ハードルとしてはかなり高いモノだったが、それでも恭也は彼女なら出来ると信じている。そしてその信頼っぷり今回の作戦でも窺えるからこそ、星自身はやりがいを感じていた。

「かつて、あれほどの失態を見せた私をこれほどまでに信頼してくれたのだ……期待に応えないわけにはいくまい」

 今回の策で、左側からの奇襲を担当する鈴々は聞かされてはいない、ある任務を星は受けている。
 それは……袁紹捕縛の任だった。
 星は、今回の奇襲による挟撃で混乱するであろう袁紹軍の中枢へと攻め上がり、敵の大将──袁紹を捕らえて欲しい、と恭也から直々に頼まれているのである。敵将の頸を取って欲しい、ではなく、敵将を捕縛して欲しいという恭也の言葉に疑問を感じたが、「これに関しては、ちょっと俺に考えがあってな」との事だったので、星は言及を避けた。
 そしてこの特別任務は当然危険がつきまとうため、恭也は星が指揮する部隊を精鋭で固めてくれたのである。
 高町軍は、大将である恭也が常に前線でその剣腕を振るうため、朱里が陣取る本陣が手薄になりがちになる。そのため恭也は軍の編成の際、本陣を固める守護部隊を兵士たちの中でも特に戦闘能力の高い精鋭で固めるようにしていた。だが、恭也はいつもは本陣に配置する精鋭部隊を今回限りは星に与え、指揮させているのである。
 星のみへの特別任務と、精鋭部隊の指揮権。
 それこそが恭也から星への信頼の形だった。

「……やってやろうではないか。主の信頼は重いが……心地よいからな」

 彼女らしい不敵な笑みが、知らず知らずのうちに出ている星。
 恭也からの信頼が、プレッシャーにもなり、同時に嬉しくもあるという心境の中で、彼女の心は程良い緊張感で引き締まっていた。
 そして──























「今のところは順調に推移しています。戦況は明らかに私たちに有利みたいですね」

 逐一届く各部隊からの戦況報告と、本陣から見える戦場の様子から、朱里は自らの策がしっかりと機能しているのが見て取れるらしく、満足そうに頷いていた。
 そんな朱里の隣には、今回ばかりは右膝のダメージのために前線に出られなかった恭也が、璃々と一緒に陣取っている。

「こうして後方から戦いを見るというのは、新鮮ではあるが……落ち着かないな」

 普段は最前線で味方を鼓舞するように小太刀を振るっている恭也にとっては見慣れぬ光景なのだろう。まあ、本来は大将とは常にこの位置で戦を見ているべきなのだが。
 朱里も、恭也の台詞があまりに大将らしからぬモノだったので、思わず苦笑が漏れた。

「言っておきますけど……何があっても御主人様は戦ってはいけませんからね?」
「ああ……わかってる。それに、今回は大丈夫だろう? 紫苑と星という二人の一騎当千の武将が新戦力として頑張ってくれるだろうし。それに、朱里の策も順調みたいだからな」
「そうですね……愛紗さんや鈴々ちゃんのおかげで軍全体の錬度も上がってますし。以前よりも兵士のみなさんの動きに無駄がありません」

 戦線から離れたこの位置からだと、確かに高町軍の各部隊が無駄なく指示通りに動いているのが見て取れる。それはひとえに、兵士たちに訓練を施した愛紗たちの努力の表れと言えよう。それは恭也も認めるところだが、恭也が感心するのはそれだけじゃなかった。

「それも見事なんだが……あらためて凄さを感じるな」
「凄さ、ですか?」
「ああ……双方合わせて五万の人間の動きが、こうも朱里の戦前の予測通り動いているという光景は圧巻だな、と。この視点から見ることで、あらためて軍師・諸葛亮の凄さを実感出来る」
「はぅっ……そ、そんなことないですよ〜」

 しみじみと軍師としての見事すぎる手腕を褒め称える恭也の言葉に、照れて赤面してしまう朱里。
 戦前の軍議において、朱里は敵の動きを斥候からの情報を元に予測し、それに対応する策を前線で戦う武将たちに授けていた。実際に前線で戦う武将達は、最終的な勝利を手に掴んだ時でないと策の成功は実感出来ないが、後方からの全体の様子を見ることで恭也は初めて朱里の能力の凄まじさを垣間見たのである。
 恭也はあらためて、隣にいる小柄な軍師に目を向けた。

「はわわ……」

 朱里は恭也の素直な賞賛の言葉に、いまだに照れていたが、それでも遠くに見える戦場の様子から目を離すことはない。そんな微笑ましい姿もどこか頼もしかった。
 そして戦場に目を移せば、愛紗たちが戦線を維持しているのが見て取れる。それぞれが目を見張るほどの実力者ばかりだ。
 あえて傍観する立場になった恭也は、仲間達の優秀さを目の当たりにして、しみじみと思う。

「俺は……仲間に恵まれているんだな」
「……御主人様?」
「いや、今更ながら痛感したよ。愛紗も鈴々も翠も流夏も紫苑も星も……そしてもちろん朱里も、みんな本当に凄いんだなって。それに比べて俺は……まだまだだな、と」
「…………」

 周囲の人間の有能さが見えることで、恭也は逆に自分の不甲斐なさを実感していた。
 仲間達はそれぞれ、人には負けない長所を持ち、それを遺憾なく発揮している。
 こと武においては、総合力の愛紗。天性のパワーと勘の良さを併せ持つ鈴々。戦闘センスの塊とも言える翠。槍捌き、体捌きの速さは随一の星。弓では右に並ぶモノがいない紫苑。
 そして、知略戦略においては朱里の独壇場だ。
 さらに、今回初めて前線で指揮を振るう流夏は、剣の腕では愛紗たちに劣るモノの、それを補ってあまりある統率力を見せている。荒れる前線の中で冷静に戦況を見極め、戦線が崩れることがないように目を光らせ、兵士たちの動きをまとめていた。それは彼女の大将としての資質でもある。

(それに比べ、俺は……武では愛紗たちには劣るし、策略では朱里に敵うはずもなく、統率力においては流夏の方が優秀だ。こんな俺が形だけでも主君として存在していいんだろうか?)

 自分の中では“突出したモノがなにもない”と思っている恭也は、なんとも申し訳ない気持ちになっていた。しかし、

「御主人様」
「ん?」

 そんな恭也の考えを見透かした朱里は、諭すように恭也に言う。

「御主人様は勘違いしちゃってます」
「かん、ちがい?」
「はい。御主人様はみんなのことを凄いと仰いましたけど、それは御主人様あってのことなんですよ」
「は……?」

 朱里の言葉の意図が読めず、恭也は首を傾げた。そんな恭也の仕草を朱里は年下ながら、可愛いと心の中で思いながら、苦笑混じりに言葉を続ける。

「御主人様は、顔良さんと文醜さんは大したことがない武将さんだと思いましたか?」
「はい? どうしてここであの二人が……」
「いいから答えてください。どうでしたか?」
「いや、立派な武将だと思ったぞ?」
「ですよね? 私もそう思いました。あの二人がもし、その力量を遺憾なく発揮していたら、あの最初の戦いで大打撃を受けていたと思います」

 朱里の言葉に恭也は頷くしかない。あの時の顔良たちは恭也から見てもどこか焦ってるように見えていた。何があったのかは知らないが、少なくともあれが彼女らの実力とは思っていない。

「どうして、顔良さんたちが力を発揮出来なかったのか……細かい理由は知りません。でも、わかることもあります」
「わかる……こと?」
「それは、敵の大将が袁紹さんだからです。どんなに凄い家臣団がいたとしても、それを信頼し、力を振るえる環境を作ることが出来ない主君の元では宝の持ち腐れなんです」
「…………」

 そこでようやく、朱里の言いたいことが恭也にも理解出来た。
 つまりは、今恭也が褒め称えた面々が活躍出来るのは、主君である恭也の力だと朱里は主張しているのである。しかし、恭也はそれに素直には頷けない。

「朱里の言いたいことはわからなくはないが……それでも、みんなが力を振るえる環境を作るのは朱里で……」
「違います」

 朱里にしては珍しい、恭也の言葉をハッキリと否定する強気の断言に恭也は目を丸くした。

「大事なのは、信頼なんです。その信頼こそが、愛紗さん達の力をより引き出すんですよ」
「……それは、当たり前のことだろう? 仲間を信頼する事なんて、それこそ誰だって……」
「それを当たり前と言える貴方だからこそ、私たちはお慕いし、貴方のために常に全力を振るえるんですよ」

 幼い顔立ちからは想像も出来ないほどに大人びた微笑みを見せる朱里。
 それは、思わず恭也ですらどきっとさせられるくらいに綺麗な笑みだった。

「御主人様が自信をなくすのは、わからなくもないですけど……大将という人間に必要なのは、誰にも負けない武力でも、劣勢を逆転させるほどの知力でもありません」
「じゃあ……何が必要なんだ?」
「武力も知力も……私たち家臣が補えますから。でも、それでも補えない“何か”を御主人様は持っているんです。そしてそれこそが……真の英雄には必要不可欠なんだと、私は思います」

 補えない“何か”──それは恭也にとっては想像もつかない。
 まるで禅問答でもしているような物言いに、恭也はすぐに参ったをして答えを問う。

「……その“何か”とは?」
「教えません。だって、それは意識する必要がないモノですし、御主人様はすでに持っているモノですから♪」

 それに対する返答は、朱里にしては珍しい、悪戯っぽい笑みだった。























「……補えないモノ、ですか」

 先ほどの恭也と朱里のやりとりをじゃれる璃々の相手をしつつ聞いていた陳宮は、彼女なりに興味を示していた。
 陳宮は現在、形だけは客将という肩書きで高町軍に随行している。だが、同じ客将でも流夏や翠とは違って、積極的に戦いに参加する意志はなく、あくまでも随行するだけなのだが。
 どうして彼女が随行しているのか?
 それは、進軍前のやりとりにある。





「呂布の情報……か。何故それを君は知りたい?」
「呂布様こそが、私が仕える唯一の主君だからです」
「君は……呂布の部下だったのか?」
「はいです。もっとも……呂布様が私をそう思ってくれていたかどうかはわからないですけど……」
「…………。仮に、君が呂布を見つけたとする。その後はどうするつもりなんだ?」
「それは……どうするかは主君が決めることで、私が決めることではないです」
「そう…………ですか。しかし……どうすればいいのか」
「……なにが、ですか?」
「ハッキリと言おう。俺は君が知りたい情報を知っている」
「っ!!」
「だが、それを今、君に教えることは出来ない」
「何故です!?」
「俺はまだ、君のことを知らな過ぎる。そんな君に、呂布の……恋の情報をおいそれと渡す事は出来ない」
「っ!?」
「だから……出来ればこの戦いの後、俺たちの拠点である啄県まで来てもらえないだろうか? そこで君が信用に足る人物かどうかを見極めたい」
「…………」





 そんなやりとりがあって、今は陳宮も随行しているのだが。
 そのやりとりの中で、陳宮は確信していた。
 間違いなく、呂布は高町恭也の元にいる。だとすれば、恭也が情報を出さない理由も見えてくる。呂布は先の董卓征伐においての第一級の戦犯だ。その呂布が生きていることが公に知られれば、その呂布をかくまった国が討伐の対象となるだろう。
 しかし、恭也はそのリスクを背負ってでも、呂布を手元に置いている。
 それが何故なのか……そこが陳宮には分からなかった。
 そんな時に、二人のあのやりとりを聞いたのだ。

「補えないモノ……ですか。それがわかれば、この答えも分かる気がするです」

 それは、理屈ではない。はっきり言ってしまえば勘だ。
 理屈で物事を追及する陳宮らしからぬ考えだったが、今は何故か、その勘に頼る事が正しい気がしていた。






















 程なくして、

「朱里……あれは」
「はい! 袁紹さんが前線に戦力を追加しました。これで袁紹さんの周囲は手薄になります。狙い通りです!」

 戦局は大きく動き始める。

「兵士の皆さんっ、銅鑼を鳴らしてください! 鈴々ちゃんと星さんに合図を!」

 直後、鳴り響く銅鑼の音は……袁紹軍の終焉を告げるモノとなる──。






あとがき

 ……今になって2話分くらい書いてることに気づいてしまった(汗
 未熟SS書きの仁野純弥です。
 とりあえず全てのキャラにスポットライトを当てようとしたらとんでもない文章量になってしまいました。嗚呼、長かった(爆
 ま、袁紹とのラストバトルなんてさほど緊張感がなくても勝てるというのが本音なので、ここではあえてそれぞれの表情を見てもらう形を取ったのですが……思った以上に長引いてしまいました。
 さて、次回で対袁紹の戦いも終結し、戦後処理となるのですが……皆さんが気になっているのは、やはり顔良さんがどうなるか、でしょうか?
 そのあたりは最近になってようやく僕も決断をしまして。最初は顔良をどうするかで悩みましたが、やっとこさ答えを出しました。彼女が今後どうなるのかも楽しみにしてもらえたら嬉しい限りです。
 では最後に、ここまでこのお話を読んでくださってる読者の皆様と、SS公開の場をくださった氷瀬さんに最大級の感謝を。
 では〜。



紫苑や星が仲間になって、戦力的には大幅にアップだな。
美姫 「そうね。紫苑の手並みは存分に発揮されているわね」
次回は袁紹といよいよ決着みたいだけれど、ここは星が活躍かな。
美姫 「もう続きが待ち遠しいわね」
うんうん。顔良や陳宮がどうなるのかも気になるし。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます!



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る