「はぁ……」
顔良の足取りは重かった。
それはもちろん、高町軍にこんな無茶な命令を伝えなければならないからである。
本来ならばそんな命令を高町軍に伝えるのは伝令兵に任せておけばよいのだが、顔良の生真面目で優しい性格が災いしていた。
こんな自殺行為を強要するような命令……それこそ大将が自ら伝えて、命令を受けた相手からの非難を浴びるべきだと顔良は考えている。しかし悲しいかな、顔良の主はそんな責任の存在すら知らないのだった。これではあまりに命令を受ける立場の人間達が哀れではないか。そこで顔良がせめて自分が、本当ならば主君が背負う責任を肩代わりする事で、命令を受ける側──今回の高町軍──の非難の的になろうと思ったのである。
……なんとも損な性格だった。
「まったく……姫も、それに文ちゃんも。無責任すぎるんだよぉ……文ちゃんがあんな事言わなければいいのに。それに姫も考えなさ過ぎるし」
そんな愚痴をこぼしながらも高町軍の陣に到着した顔良は、陣内を見渡し、どこかに将らしき人が居ないかどうかを見回してみる。すると、
「あ、あれってそうかな? あの見慣れない白い服を着た男の人と、小柄な女の子……」
明らかに一般の兵士たちとは違う姿の二人組を見つけた。
『恋姫†無双異聞 〜高町恭也伝〜』
第十六章
「すみませーん」
顔良が声を掛けると、二人は同時に振り返り、顔良の方へと歩み寄ってくる。
(わ……っ)
その二人の顔を見た顔良は、心の中で声を上げた。
それは純粋な驚きの他に……感嘆の意味合いも含まれている。
小柄な少女の方は、まだ幼さを残している可愛らしい少女で、ふわふわの砂糖菓子を想起させるような雰囲気を持っていた。
そして、黒髪の青年の方はと言うと、
(……凄い美形さん。それに、服がキラキラと光ってる。あれってもしかして……)
思わず顔良が見とれてしまうほどの凛々しい美青年だったのである。
「はーい?」
「我が軍に何か用事でも?」
少女と青年が顔良の元までやってきて、用事を伺う。
そこでそれまでぼーっと青年の顔に見とれていた顔良は、すぐに我に返った。
「あ、そのえっと……間違っていたらごめんなさい。高町恭也殿、でしょうか? 私は袁紹軍の顔良といいます」
顔良が名を名乗ると、青年と少女は互いに顔を見合わせ驚いている。そして、
「……はい。俺が高町恭也です」
「えっと……高町軍軍師の諸葛亮です〜」
二人は再び顔良と向かい合って、名乗り上げてくれた。
この小柄な少女が高町軍の軍師と名乗った事には驚いた顔良だったが、それでも彼女の意識はまだ青年──恭也に対しての方が強い。
(姫ってば……『天の御遣い? ああ、いましたわね、そんなのが。まあ、多少は見所はあるかもしれませんが、大したことはありませんでしたわ』なんて言ってたけど……凄い格好いいじゃないですかぁ〜)
諸侯たちとの軍議が終わった後に、それとなく聞いていた天の御遣いの真なる姿を前にして、顔良は思わず心の中で主君に文句をつけていた。
そんな彼女の心の中などわかるはずもない恭也は、
「で、袁紹軍の顔良将軍が、わざわざ俺たちの陣にまで足を運んでくれたのは……一体、どういった御用向きで?」
とりあえず顔良がここに来た理由を問いかけてくる。
どうやら今の口振りからして、高町軍にも“袁家の二枚看板”である顔良の名は知られているようだった。
顔良はその恭也の声で再び前の二人に意識を戻してから、重々しく、それでもはっきりと用件を伝える。
「……我が主君、袁紹からの通達です。高町軍はこれより、城門突破の任についている魏呉両軍を助けるために、速やかに前進を始めてください、と」
それを聞いた恭也は端整な顔立ちに陰を落とし、諸葛亮は驚きで目を見開いていた。
「……この状況で、前進、ですか……」
「現在、前曲は乱戦状態なのに、この中を今すぐに、ですか? それはかなり危険じゃないかと……」
恭也も諸葛亮も、当然それくらいは理解している。
それは顔良からしてみれば当たり前だ。彼らは先ほどの華雄の奇襲攻撃を受けた時も、五千の兵力で敵一万八千を迎撃し、見事撃退しているのだから。その軍の大将と軍師が無能なはずもなく、だからこそこんな命令に驚くのも無理はなかった。
だから、顔良は二人に頭を下げる。
「ごめんなさい……私も必死に説得はしたんですけど。でも、うちの姫……じゃなかった、袁紹さまは一度決めた事を曲げようとはしないんです。こんな無茶な命令……誰が考えたって状況が好転するはずがないってわかっているのに……っ」
頭を下げたまま、顔良は自分の力量不足を嘆いていた。自分にもっと袁紹に対する信頼があれば、こんなことを高町軍にさせずに済んだのではないかという悔恨。そして、こんな命令を下された高町軍への罪悪感が彼女にのしかかっていた。
しかし、
「……頭を上げてください、顔良さん」
そんな彼女に声を掛けてきた恭也の声は、どこまでも優しくて。顔良は思わず顔を上げてしまう。その瞳に悔し涙を滲ませたままで。
そして上げた先にあった恭也の顔には怒りなど欠片もなく、まるで顔良を思いやってくれているかのように、微笑んでいたのである。
「あ……」
その、あまりの笑顔に顔良の胸は締め付けられた。
「あなたが悪く思う事はありませんよ。あなたは俺たちの事を考えて、止めてくださったんでしょう?」
「で、ですけど……結局それも出来ず……」
「それに、こんな命令を伝えるなんてツライ役目、それこそ伝令兵に任せたっていいのに、わざわざこうして将であるあなたが出向いてくださった。そんな顔良さんの誠意はしっかりと伝わりましたから」
「……高町さん……」
恭也は彼女が自らここへ来た意図すらもしっかりと理解して。これから死地に向かうにもかかわらず、顔良を元気づけてくれたのである。
この青年の、見た目の凛々しさだけではない、人間としての魅力を前に、顔良は尊敬の思いとはまた別の“何か”が胸の中に生まれるのを感じた。
「朱里。すぐに愛紗たちにこのことを伝えてくれ。軍の編成をすぐに始めるように」
「はっ、はいっ! 分かりましたっ!」
恭也は笑みを再び封印し、諸葛亮にきびきびと命を下す。それに諸葛亮もしっかりと応え、陣の奧へと走り出していく。その後ろ姿を見送った恭也は、再び顔良と向かい合った。
そこにあるのは、先ほどの優しい青年の顔ではなく、一軍を率いる大将の顔になっている。
「では顔良将軍。高町軍はこれよりご命令通り前進しますと、袁紹殿にお伝え願えますでしょうか?」
となれば、顔良も表情を引き締めた。袁家の将軍としての顔を取り戻し、
「了解いたしました。高町殿、そして貴公の軍の武運をお祈りいたします」
「かたじけない」
「では、私はこれで」
「ご苦労様です」
しっかりとけじめをつけたやりとりでその場を締めた。
顔良は恭也に背を向け。
恭也も顔良に背を向け。
これでこの邂逅は終わる……はずだったのだが。
「あのっ!」
「え……?」
数歩歩いたところで振り返った顔良が、最後に“少女としての自分”の言葉を残す。
「なんとかしますからっ! 私に出来る事なんて少ないかもしれませんけど、それでもなんとかして、高町軍を助けますからっ! だから、その……頑張って生き延びてくださいねっ!」
それは、袁家の将軍としてはあるまじき行為と言えた。しかし、彼女の声に振り返った恭也は、素直に彼女の言葉が嬉しくて、再び笑みを見せてくれる。
「約束しますよ。必ず生き延びますから。ですから、顔良さんも無理はしないで下さいね」
「はいっ♪」
再び触れる事が出来た恭也の優しさに、顔良もまた笑みを返すのだった。
「……朱里から話は聞きました。しかし、袁紹も一体何を考えているのか……」
「何も考えてないに肉まん二つ賭けてもいいのだ!」
顔良を見送った後、愛紗達の元に戻った俺は、眉間にしわを寄せた愛紗と、やっぱりまだ呑気な鈴々に迎え入れられた。
「まあ、おおむね鈴々の言う通りだが……それにしても厄介だな。これがよりによって“総大将の下した命令”なのだから」
「ええ……」
「これだからバカが味方にいると困るのだー」
「…………」
この命令に従わないわけにはいかない。ここでもし逆らうような真似をすれば、一気に「翻意あり」と見なされ、突然連合全体を敵に回さなければならなくなるからだ。
とはいえ、ただ前進したって痛い目を見るのは俺たちなのである。ここは朱里に上手い方策を教えてもらおうと思い彼女に目を向けると、
「つーん」
……何故か朱里は拗ねていた。
もしかして、俺が戻ってくるまでの間に何かあったのだろうか?
疑問に思って、横にいる愛紗に耳打ちする。
「(もしかして、俺が居ない間に朱里と何かあったのか?)」
「(いえ、何も……ただ、朱里が先ほどの袁紹の命令を我らに伝えた時から機嫌が悪そうでしたが?)」
……ということは、何が原因なんだ?
俺も愛紗もそれがわからず、首を傾げるばかりだ。
そこへ、
「で、なんで朱里はさっきからほっぺ膨らませて怒ってるのだ?」
怖いモノ知らずと言うべきか、鈴々があっさりその謎に迫ってくれる。
しかし、朱里は指摘通りに頬を膨らませたまま、鈴々の言葉を否定した。
「別に……私は何も怒っていませんもんっ」
いや、確実に怒ってるだろうに……。
言葉に出さず呆れていた俺だが、
「別にぃ〜。御主人様が、袁紹軍の顔良将軍と仲良さそうにしていた事なんて、全っ然関係ありませんからっ!」
朱里の口から出たその一言で、
「ほぉ……」
「うにゃ? 顔良?」
「ふんっだ」
呆れている余裕は微塵もなくなってしまう。
というか、明らかにそれが原因なのは朱里の口調で理解出来るが、なんでそれで怒られるのかがわからんぞ!?
「……御主人様……あなたという方は」
「あ、愛紗? なんでそんなに冷たい目で俺を見るんだ……?」
「……お兄ちゃんは懲りないのだ」
「こ、懲りないって何がだ鈴々っ!?」
「ふん、ふんっ、ふーーーーーんっだ!」
「しゅ、朱里ぃぃ……」
愛紗は見るモノ全てを凍てつかせるような眼差しを俺に向け。
鈴々はどうしようもないモノを見るような、呆れた眼差しを。
朱里に限っては、目を合わせようともしてくれない。
「ちょっ、ちょっと待て! なんで三人ともそんななんだ? そもそも、俺は顔良将軍と仲良くなんてしないぞ!」
「落ち込んでいた顔良さんに、優しい言葉を掛けて微笑みかけてました」
しらばっくれるな、と言わんばかりの朱里のぼそっという一言。
「そ、それは……彼女も俺たちの事を気遣ってくれていたのだし。そんな人が落ち込んでいたら、声を掛けるのは普通だろう?」
そんな俺の言葉など聞く耳持たないとばかりに、愛紗が朱里に問いかけた。
「……朱里。その時の顔良将軍の反応は?」
「頬を赤くしてました……」
「……なるほど。御主人様は敵に情けをかけた、と」
「ちょっと待てーっ!?」
愛紗の言ってる事は支離滅裂じゃないかっ! そもそも、顔良さんは連合軍の袁紹の配下。すなわち敵ではないだろうに。
しかし、
「そうですね……顔良さんは敵です」
「ああ……」
朱里と愛紗はまったく聞いてくれなかった。
結局この後、何に腹を立てているのか分からない二人に、俺は必死に現状の危うさを謝り倒しながら語りかけ、なんとかまともな軍議が出来るように説得する。俺たちは早く軍を進めなければならなく、さらにはただ前進させても危険が増大するだけという厳しい状況なのだから。
そして、十分後。
ようやく話を聞いてくれるようになった朱里から案が出た。
それは、現在の前線の様子をしっかりと把握した上で軍を進め、もっとも混乱の少ない場所へ進む事で、混乱を与える事を避けるというモノ。今更曹操や孫権に援護などは必要ないだろうし、ここは「前に出た」という事実だけを袁紹に見せておけばいいという判断だ。
愛紗はその案に、微妙な顔をしていた──戦いを避けるという行為に抵抗があるらしい──が、ここは自軍の戦力を守るための方策と言う事で納得してもらった。
こうしてまだ火種がくすぶったままの軍議は終わり、俺はようやく刺々しい視線から解放されたのである。
ただ、軍議を解散してそれぞれの部隊へ向かう途中に、
「……お兄ちゃんはもうちっと“オンナゴコロ”を勉強した方がいいのだ」
そう鈴々に言われた。
その言葉は奇しくも、元の世界で母や末妹に言われていたモノと同じだったので、驚くと同時に苦笑するしかなかった。
「……まだ突破出来ないの?」
前曲で指揮を執る曹操孟徳は、わずかばかりの苛立ちを言葉に含ませ、副官である夏侯惇に声を掛けた。
「ええ。秋蘭の指揮する部隊が城門に取りついていますが、敵の抵抗が激しくて思うように攻める事が出来ないようです」
「そう……呉軍の様子は?」
「……同じく手こずっているようですね」
曹操の問いかけに淀みなく答えた。だが、その表情にはやはり苛立ちが含まれている。
「孫仲謀でさえ手こずる、か……全く、あのお馬鹿な袁紹のおかげで、無駄に兵を損ずるわね」
もし袁紹が聞いていたら、頭から湯気を出して怒り出しそうな言葉だ。だが、それは真実である。ゆえに夏侯惇も同意する。
「全くです。城塞に向かって突撃などと……無策にも程がある」
しかし、ここでこのまま袁紹のバカに付き合って兵を減らされるのを黙ってみている曹操ではなかった。
「そうね。さて……荀ケ。何か策は?」
曹操は、自らの後方に控えていた少女に声を掛ける。
すると少女はすっと前に出てきて、
「甲羅の中に頸を引っ込めている亀を殺す手段はありません。頸を外に出させるのが肝要です」
少女らしいソプラノヴォイスに威厳を乗せて、語り始めた。
曹操と同じほどの背丈の、栗色の髪の少女である。見た目だけならば良家の箱入り娘と言った雰囲気の容姿だが、何故か動物の耳を連想させるような形をしたフードを頭に被っている。
彼女の名は、荀ケ文若。
この曹操軍の軍師である。
「ですが頸を出させるには餌が必要でしょう……幸いにして高町軍が動き出しています。これを利用するのが良いかと」
荀ケの策に、曹操は口の端を軽く上げるようにして笑った。
「なるほどね……アイツを囮にする、と。ふふっ、それは楽しそうね」
曹操は思い出していた。
高町の陣でのやりとりを。
自分に向かって「仲間を守るためならば、天さえ斬り裂こう」と宣言したあの青年の言葉を。
「はい。我が部隊は高町軍の前進に併せ、左右に分かれて素早く後退します」
「なにっ! 先陣を奴らに譲れと言うのか!」
その策の内容に、武人である夏侯惇がいきり立った。しかし荀ケは冷静である。
「そうよ。ここは無形の誉れよりも実益を取るわ。高町軍に華雄を排除させたあと、その機を逃さずに邁進して城門を突破するの」
確かに効果的な策だった。しかし、それがわかっていても武人である夏侯惇は納得出来ない。
「そのような卑怯な策を弄せずとも、もう少し待てば秋蘭が必ず城門を撃ち破る!」
「それが待てないから策を練ったのでしょう?」
全くこれだから武人というのは、とでも言いたげに肩をすくめる荀ケ。
そんな彼女に更に噛みつこうとする夏侯惇だったが、
「春蘭。今は桂花(けいふぁ)に従いなさい」
「しかし華琳さまっ!」
「春蘭……私の言う事が聞けないの?」
曹操による鶴の声と、どんな恫喝にも勝る彼女の睨みが夏侯惇の怒りを完全に静めてしまった。
「……いえ、分かりました。荀ケの指示に従います……」
夏侯惇は意気消沈した様子で、今の策を秋蘭の部隊に伝えるべく伝令兵の準備に入る。
荀ケは自分の策が曹操に気に入って貰えた事で上機嫌だ。
そして曹操はと言うと、
「ふふっ……見せてもらうわよ高町恭也。あの時の言葉が単なるハッタリなのか、それとも……」
残忍な笑みすら浮かべ、高町軍の行く末を想像するのであった。
一方同じ頃。呉の陣内にて。
「孫権様! 曹操の軍勢が後退していきます!」
呉軍随一の勇将、甘寧将軍が共に前線で奮闘する曹操軍の動きを報告した。その報告に孫権は眉をひそめる。
「なに……? どういうことだ?」
曹操軍の意図が読めずにいた孫権。だが、側に控える眼鏡をかけた知的な女性から、
「……なるほど。なかなかあくどいことをする」
言葉こそは褒めてはいないが、半ば感心するような声が上がった。
「あくどい?」
「そーですよー♪」
眼鏡の女性に問いかけたのだが、それに答えたのは別の人物──日焼けした肌の人間が多い南方の民の中では目立つ、白い肌をした巨乳のぽんやりした少女である。
「孫権様、あちらをごらんになってくださいー」
間延びした声で後方を指差す彼女に釣られ、そちらを見た孫権はようやく絡繰りが見え始めた。
「ん? ほぉ……後曲にいる高町軍が動いているのか」
「そうみたいです。多分袁紹さんが前に出ろーって言っちゃったんでしょうねぇ」
困ったモノです、と言わんばかりに苦笑する巨乳少女。
袁紹の無能ぶりはイヤと言うほど見せられた孫権もそれには同意した。
「だろうな。となると、曹操が下がったのは……餌か?」
確信が持てない予測に、控えていた眼鏡の女性が頷く。
「おそらく、は。前に出てきた寡兵の高町軍をそのまま前面に出せば、華雄をおびき寄せる事が出来ると見たのでしょう。ただでさえ華雄は先ほどの奇襲で高町軍に辛酸を舐めさせられたという因縁もありますので」
「なるほどな……巣穴に籠もった熊の前で兎を遊ばせてみせるのか」
「そういうことです♪ さすが蓮華さま♪」
曹操軍の策を言い当てた孫権に、教え子を見守る家庭教師のような物言いで褒める巨乳少女。
だが、それとは対照的に眼鏡の女性は笑み一つ見せずに孫権へと問いかけた。
「……我が軍はどうします?」
その問いかけに、孫権はあえて答えを示すように、軍を統率する甘寧将軍に命令を下す。
「……興覇。軍を下げろ」
「御意!」
孫権に絶対の忠誠を誓う少女──甘寧は、孫権の命に即座に頷き、全軍へ号令を発した。
その様子を見ていた孫権は、隣に控える眼鏡の女性に、
「……これで良いのだろう? 公謹」
どこか挑戦的な物言いで確認を取る。それに眼鏡の女性──周瑜公謹は不敵とも言える笑みを浮かべながら頷いた。
「ふっ……まずは合格でしょう」
その物言いは、主に対してとは思えないほどの不遜な態度。しかし孫権はそれを咎めるでもなく、周瑜とは目を合わせようともしない。
そしてゆっくりとその場から退席し、
「ならばあとは任せる。うまくやってみせろ」
この場での軍の指揮権を周瑜に委ねた。
疲れたとばかりに天幕に戻る孫権の後ろ姿を見送りながら、
「王の命とあらば……」
やはり周瑜は含みを持った笑みを浮かべていたのだった──。
あとがき
……またしても展開は牛歩のごとく(汗
未熟SS書きの仁野純弥です。
今回の注目は顔良さんでしょうか。こーゆーのをフラグ立て、と言って良いのかどうかは微妙ですが。文章に書き起こしてみて、袁紹がきっついキャラになってましたので、その分顔良さんはゲームよりもいいひとっぽくなっちゃいました。
今回は戦いの間の中休みですが、次回は再び戦いがメインとなると思うので。
では最後に、ここまでこのお話を読んでくださってる読者の皆様と、SS公開の場をくださった氷瀬さんに最大級の感謝を。
では〜。
顔良さんはかなり苦労した人ですからね。
美姫 「これぐらいのご褒美はあっても良いわよね」
うんうん。今回の事で顔良も仲間になったりしないかな〜。
美姫 「どうなるのか、楽しみにしてますね」
次回も待ってます!