『とらいあんぐるハート 〜猛き剣の閃記〜』




「(……朱塗りの社。ということは、ココは朱雀の社か……)」

 現状確認を試みる。
 現在位置はネノクニの朱雀の社。
 そして目の前には高校生仕様……もとい、高校時代の倉島渚。

「(……問題は、今が【いつ】かということだが……)」

 渚たち、つまり先代アシハラノクニの戦士たちがココを訪れたのは過去に二度。
 最初は朱雀を開放する為。そして二度目は朱雀の試練を受ける為だ。
 前者なら問題ないが、後者なら色々と面倒なことになる。

 もし朱雀の試練の最中ならば、ヨモツオオカミが倒されるまでは、ネノクニは閉ざされた空間となっているのだ。
 どんな方法で帰るにせよ、閉ざされたフィールドから抜け出すことは出来ない。
 そして前者ならば、この後渚たちは反魂の術を使って、アシハラノクニへ帰ることになる。

「(……とりあえず、今やらなければならないことは……)」

 いつの間にか。渚の声を聞きつけたのか、アマテラスが恭也の後ろに存在していた。
 前門の渚。後門のアマテラス。しかもアマテラスは、恭也の知る落ち着いた大人の女性ではなかった。
 血気盛んで、悪霊と見れば退治したがるお年頃の、昔のアマテラス。

「(……よりにもよって、何故一番話し合いが通じそうにない面子が……。一番説得が面倒な人材が……)」

 先代アシハラノクニの戦士たちの中でも、一番説得がし難い。というよりも、説得が不可能に近い二人。
 コレは何かの試練なのか。それとも、神の嫌がらせだとでも言うのだろうか。
 だとすれば、コレは未来のアマテラスから間接的に出された試練だということになるだろう。

「(……現実逃避はコレ位にしておこう。でないと、本当に悪霊と勘違いして襲ってきそうだしな……)」

 そう遠くない世界の話だろう。
 ソレが現実の話になるのは。
 恭也の予想がリアルなモノになるのは時間の問題だ。

 さっさと誤解を解かない限り、かなり面倒くさいことになる。
 いや、この時点で既に手遅れのような気もするが。
 ソレはまるで処刑台に登る死刑囚のような気分だった。

 出来ることなら逃げだしてしまいたい。
 それこそ神速を用いてでも。
 だがソレは叶わぬ夢。

 もしソレをしようものなら、強制的に眼前の二人との戦闘に発展し、誤解を解くのに更なる時間が必要とされるだろう。
 二対一でも遅れを取るとは思っていないが、要らぬ遺恨を残すのは出来る限り避けたい。
 もしもアマテラスが帰還の方法を知っていたのなら、その後の展開は推して知るべし。

「(だからと言って……何処から切り出したら良いのやら……)」

 普通に切り出してもオツムの弱い人間の話として。
 少しマシな状況でも、妄想癖のある結構危ない人間として認識されてしまうだろう。
 ソレだけ今恭也が置かれている状況は現実離れしたモノであり、そう易々と信じては貰えないモノなのだ。

 だからと言って、ソレ以外にどう攻めろというのだろうか。
 ハッキリ言って無理だ。
 目の前にいるのが別の人間であっても、そう――例えば七海であってもそう変わらないだろう。

「(……作戦だ。この戦局を突破するには、戦略を考えねば……!)」

 周囲を見渡す。
 ココには朱雀の祭壇は無い。
 ということは、現在位置はソレ以外ということになる。

「(ココを突破して、彼女たちよりも先に別の人間を探す……殆ど奇跡に近いな……)」

 そんなこと不可能だ。
 仮に目の前の少女たちを振り切ることが出来たとしても、次に会った人間を説得する時間があるだろうか。
 答えを否。そんなことをしているうちに、渚かアマテラスが追い付いてくるだろう。

 行くも地獄。退くも地獄。
 まさに退路なし。
 闘えば負けない御神流師範代の進退は極まった。

「(どうする……?どうする……!)」

 逡巡。
 そして運命は、そんな彼を哀れに思ったのだろうか。
 迷える子羊を救済する為に、救いの女神を遣わした。

「あら?コレってどういう状況……なのかしら〜?」

 運命は悪戯が大好きなようだ。
 今回彼の窮地を救ったのは、かつて彼に間接的に小太刀を与えた御方だった。
 噂の【美人保健教諭】のご登場である。
















 第四十二話 第五章 こうして歴史は創られた
















「なるほどねぇ?つまり貴方は、未来の私たちの世界――アシハラノクニから来た……ってことで良いのよね〜?」
「はい。ソレで間違いありません。補足するのなら、貴女方と同じようにネノクニから帰還しようとして、事故で飛ばされてしまった……ということ位ですかね……」

 やはり年長者を味方に付けたのは成功だった。
 あの後、遅れてやって来た残りの面子も交えての恭也の状況説明会。
 渚とアマテラスの血気盛ん組は完全に納得していないようだったが、それ以外は概ね納得してくれたらしい。

 特にヒカルからの、予想外の援護があったのも大きいだろう。
 パーティ状況が似通っていることもあったのだろう、どちらかというと同情的というか、同類を援護しているかのようだった。
 彼も結構……いや、相当苦労したのだろう。その背中は微妙に煤けていた。

「……やっぱり信じられないわ!未来から来たなんて……!!」
「……そう言われましても……」

 渚の当然の反応。
 恭也だって、自分の発言が如何に現実離れしたモノかは理解出来ている。
 ソレに証明出来る材料が無いのも痛い。

 彼が知っているのは、未来の情報。
 コレから起こる【かも】しれないことなのだ。
 嘘だと一笑されても仕方ない。

「(……とは言っても、ソレが証明出来ないと信頼を勝ち得られないのもまた事実……。どうしたら良いモノか……)」

 恭也はもう一度自分の持っている情報を整理し始めた。
 たった一つで良いのだ。
 この過去の世界よりも前に起きたことを。ヒカルたちしか知りえない過去の情報があれば。

 ヒカルたちがこの世界――ネノクニに来てからのことでも良い。
 出雲学園の地下室。いや、コレでは弱い。未来から来たことの証明には弱いのだ。
 ならば悪霊と闘っていることは。少し弱い。ソコから何かに繋げられないだろうか。

 ――キラッ!

 一瞬。ほんの一瞬だったが、恭也の腰に刺した小太刀の宝玉が、【楓】の勾玉が光った。
 まるで何かを訴えるように。
 何かのサインを発するかのように。

「(【楓】……そうかっ!その手があったか……っ!!)」

 恭也の脳裏に蘇る、カグツチと猛の遣り取り。
 僅かに口元が歪む。
 カグツチとの仕合は、最終的には流れてしまったのだ。

 ならばその代りに、カグツチの過去の姿であるヒカルに、その責任を取って貰っても問題ないハズだ。
 この場に突っ込み役が居ないのを良いことに、恭也の悪戯心を加速していった。
 行くぞ未来の炎の神よ。懺悔の準備は十分か。そんな呟きが聞こえてきそうだった。

「……ヒカルさん。【楓】や【桃花】との契約は…………どうでしたか……?」

 ――カッシャーンッ!!

 何かが落ちる音が木霊した。
 ソレはヒカルの手の中から落ちたモノだった。
 彼の持つ太刀が、恭也の発言によってその手から離れたのだ。

「…………ナンノコトダ?オレニハサッパリ、ワカラナイナァ……?」

 明らかな動揺している。ソレは誰の目から見ても明らかだった。
 絵に描いたような、正しい動揺の見本。まさにそんな感じだった。
 ついでに言うとアマテラスの視線は、そんなヒカルを鋭く貫いていた。

「……黒い着物。袴姿……」
「ギクッ!ギクッ!!」

 恭也からの言葉の一つ一つが、鋭利な刃となってヒカルに突き刺さる。
 後ろめたいことがあるだけに、ヒカルはサンドバックになるしかなかった。
 成程。このやり取りが、後に猛に伝達するのか。つまり諸悪の根源は、恭也だったのだ。

「……赤い鉢巻。湖の畔……」
「ノォォォォォッ!!」
「…………ヒカル先輩?ソレって一体……?」

 明らかにおかしいヒカルの様子。
 そんな彼に想いを寄せる少女である七海は、ただならぬ様子を見せている本人に、思い切って訊ねてみた。
 だがソレは、その想い人を更に崖っぷちに追いやってしまうモノだった。

「な、何でもないんだよ!?…………オイ、アンタッ!!ちょっとコッチに来いっ!!」

 引っ張られて行く恭也。
 彼は少し後悔した。思春期の少年を心を破壊したことにではない。
 後で女性陣に、どう説明するかを考えていなかったからである。

「……ドコまで知ってるんだ……?」

 女性陣たちから少し離れた所まで来ると、ヒカルは声を潜めて恭也に訊ねてきた。
 
「……大体全部、把握していると思いますが……」

 隠していてもしょうがないので、恭也は素直に答えるにした。
 その回答を聞いた少年は、未来では偉大なる神になるハズの男は、頭を垂れた。
 ソレは無条件降伏を意味していた。

「……分かった。俺はみんなに、アンタが未来から来たことが本当だって説得する。だからアンタは……」
「……話がはやくて助かります。俺は代わりに、先ほどの件には触れないようにして、いざとなったら誤魔化します……」

 契約は成立した。
 両者の利害が噛み合った為に。
 世間では脅迫という名の契約が。
















 †

 取引が成立し、恭也の存在が漸くアマテラスと渚にも納得して貰えた後、恭也は今がどの時間軸の出来事かを理解した。
 現在はツクヨミを退け、朱雀を解放し終わった所だった。
 故にヒカルたちは一旦アマテラスの村へ帰還する前だったのだ。

「(なるほど。最悪の事態は回避出来そうだな……後は未来へ帰還する手段が分かれば……)」

 恭也は内心でホッと溜息を吐いた。
 もし今が朱雀の試練を受けている最中ならば、以後暫くはこの世界に閉じ込められてしまうことになるからだ。
 ヨモツオオカミの力によって閉じ込められる前。だからこそ、ヒカルたちはこれからアシハラノクニへ帰還出来るのだ。

「(いや、そもそも存在するのだろうか?元々事故で飛ばされてきたんだ。帰る方法が存在しない可能性も……)」

 恭也がココへ来てしまったのは、あくまで事故のせいだ。
 正規の術法で過去へ遡れるモノがあるかは不明だ。
 ならば同じように、未来へ行く方法も確立されていない可能性が高い。

 というか、時間移動はどの世界においても確立されていない技術なのだ。
 だからこそヒトは、ソレに挑み続けているのだ。
 幾らココが異世界だからと言っても、そんなに簡単に存在するだろうか。

「……アマテラスさん。この世界に、未来へ移動する術は存在しますか……?」

 答えは否だ。恐らく想像通りの答えが、アマテラスから返ってくるだろう。
 ソレは容易に想像出来る。だが一応確かめなければならない。
 何かの間違いである可能性だって、ない訳ではないのだから。

「……あります。確かにそれと同様の効果をもたらすかもしれない術は、存在します……」
「……!?ソレは本当ですか!」

 予想外の返し。良い方に期待を裏切った科白。
 恭也はこの時、神に祈りを捧げたい気分だった。
 ……先程未来の神を脅迫したことを、スッカリ無かったことにして。

「……ですがコレは、術として確立したモノではありません。偶然を味方に付けたモノにしか出来ないのです……」
「……ということは、【反魂の術】の暴走……ですか?」

 偶然出来る術。否、術とも呼べないモノ。
 つまりソレは、恭也がこの過去の世界に来てしまったことを、もう一度やるということ。
 アマテラスはまだそう言っていないが、恐らくそういうことだろう。

「暴走……というのとは少し違います。反魂の術自身は、普通に執り行います。ただ強く想う部分が違うのです……」

 反魂の術は通常、術の影響下の人間が強く想った世界へ移動する術だ。
 ヒカルや猛たちの場合、本来自分のいた世界――アシハラノクニへ帰るのに使用した為、その際に必要だったのは自分たちの世界を想うことだった。
 恭也がもしこの時代で反魂の術を使用しようとした場合、彼には未来のアシハラノクニの情報しかない。当然過去のアシハラノクニへ移動することは無理だ。

 では恭也は、一体何処へ飛ばされるのだろうか。
 ここで運の有無が出てくる。
 規格外の使い方をした術は、通常通りなら暴走するしかない。
 
 だが運が良ければ、結果として暴走かもしれないが、偶然未来へ帰還出来るかもしれない。
 思い描くイメージは未来なのだ。
 可能性はある。かなり低い確率になってしまうが。

「…………そう、ですか……」
「申し訳ありませんが、私にはソレ位しか……」

 運頼みの方法。しかもその確率は低い。
 だがソレ以外に方法が無いことも事実。
 例えこの後どれ程待ったとしても、コレ以外の方法が出てくるとは思えない。

「もしも貴方が【夢を紡ぐ力】を持っていたのなら、話は変わるのですが……」
「【夢を紡ぐ力】……流石にソレは……」

 【夢を紡ぐ力】とは、アマテラスたちが備えている力だ。
 ソレが反魂の術を、現実のモノへとしているのだ。
 本来はアマテラスたち、ネノクニの限られた一族の巫女にしか伝わっていない。

 例外として、スサノオ。そしてヒカルがこの力を備えているが、この時点では判明していないハズだ。
 どちらにせよ、恭也にそのレアスキルが備わっているとは思えない。
 彼本人はそう思っている。だからこの話は無かったことと同義だ。

「……ですが、ソレしか方法が無いんですよね……?」
「…………はい。そういうことになります……」

 元よりこの世界の住人ではないのだ。
 ココに居続けることには無理がある。
 結論は最初から決まっているのだ。

 挑むしかないのだ。
 ソレが例えどんなに低い確率の話であっても。
 未来に帰る手段は他には存在しないのだから。

「俺に……その運試し、挑ませて貰えませんか……?」
『……!?』

 その場にいる恭也とアマテラス以外の面子の、誰もが息を呑んだ。
 話の流れから予想は出来ていた。だが実際にその選択肢を選ぶ人間が、こんなにも簡単に選ぶことが出来るヒトがいるとは思わなかった。
 否、いるとは考えもつかなかった。

「オイ、アンタ!?アンタは……本当にソレで良いのかよっ!?」
「そ、そうですよ!?そんな無茶をしたら……っ!?」

 ヒカル、そして七海が、めいめいに思ったことを叫ぶ。
 その先はあえて言うまでもないだろう。
 自らの命をチップにする賭け。

 古来よりソレの結果は、大抵決まっている。
 選ばれし者ならば運命を掴み取り、ソレ以外の大半の存在は賭けに敗れる。
 だからこそ彼らは止めようとするのだ。運命に挑もうとする恭也を。

「……ダメよ、ヒカルちゃん。男の子がこう言い出す時って、誰が止めてムダなのよ?」
「…………その通りです。良くご存じですね……?」
「う〜ん、まぁね?ヒカルちゃんだって、そういう感じだし……」
「……確かに。ヒカルって、モロそんな感じよね〜?」

 長年ヒカルを傍から見て来たお姉さんと同級生は、今の恭也はソレに通じるモノがあることを感じ取っていた。
 だから止めることはしなかった。その代りに、恭也の背中を押した。
 彼が無事に未来へ帰れることを祈りながら。

「……覚悟している、ということなのですね……?」
「…………はい」

 交錯するアマテラスと恭也の瞳。
 強い意志を秘めた剣士の眼差しは、確固たる信念によって形成されていた。
 ソコには何者にも邪魔出来ない、強固なモノが存在した。彼女は理解した、この男を止めること出来ないと。

「…………分りました。それでは明日、ヒカルさんたちをアシハラノクニへお送する時に、貴方も一緒に……」
「…………ありがとう、ございます……」

 男の行く手を遮ることは不可能だった。
 だから巫女の方が折れた。
 いや折れたというよりは、彼の運命を信じてみたくなったのだろう。

「……残念です。もしかしたら貴方こそが救世主様、もしくはその従者だったのかもしれなかったのですが……」

 この時点のアマテラスは、ヒカルこそが件の救世主であり、その従者たちもこの場にいることも知らない。
 故にこういった発言が出てくるのも、当然の反応と言えた。
 だがソレは、彼女の頬が微妙に紅く染まっていなければの話だ。

 現実問題として、彼女の頬はやや紅みを帯びている。
 そこの御神の剣士よ。君は歴史を変える気か。
 後に様々な問題を醸し出しそうな事態は、頼むから避けてくれ。

「……俺は救世主なんて御大層なモノではありませんよ……」

 彼はこの物語の結末を知っている。
 だから分る。自分がソレではないことを。
 故に少しだけ未来を話す。

「……大丈夫です。救世主は必ず現れます。ですから、希望は絶対に捨てないで下さいね……」
「…………はい」

 周りを置いてけぼりにした事態。
 渦中の二人を、茫然と見ることしか出来ない、先代アシハラノクニの戦士たち。
 何か違う。コレは違うだろう。こんなので本当に、歴史通りに事は進むのだろうか。

「……綾香さん」
「エッ?私……?」

 茫然と恭也たちを眺めていた綾香だった。
 だがその恭也に唐突に呼ばれ、ただ驚くことしか出来なかった。
 今までの会話から、彼が自分に用があるとは思えない、だから呼ばれた理由がサッパリ理解出来なかった。

「貴女に二つ程、お願いがあるんです……」
「?な、何かしら……?」

 想像が付かない。
 この男は何を言い出すつもりなのだろうか。
 一体どんな【お願い】が飛び出してくるというのだ。

「……そんなに難しいことではありません。だからそう、身構えないで下さい……」
「えっ?そ、そう!?ごめんなさいね!?」

 まるで心を読まれたようだった。
 だから狼狽した。
 そして少し安堵した。

「一つめはコレです……」
「コレって……確か小太刀って言うのよね……?」
「はい。もしも貴女が今後、コレと同じモノを……そして彼の持っているような、太刀を手に入れることがあったら……」

 自分の持つ小太刀と、ヒカルの持つ太刀を指す恭也。
 彼は歴史通りに物事が起こるように、保険を掛けておくつもりだった。
 だから依頼する。未来で起こったことのキーアイテムの配置を。

「出雲学園の理事長室と保健室に……それぞれ隠しておいても頂きたいのです……」
「……?ソレって、未来で私がソレをしたってことかしら……?」
「……俺の口からは、申し訳ありませんが言えません……」
「……そっか。未来が変わっちゃうかもしれないものねぇ〜?」

 無言で肯く恭也。
 未来が変わってしまうのは、彼の本意ではない。
 もしろ、絶対に阻止しなければならない。

「……良いわ。何でかは聞かないでおいてあげる」
「……助かります」

 こういう時、察しの良い大人と会話するのは、非常に楽で助かる。
 普段はポケポケしている綾香も、こういう時はキチンと大人なのだ。
 一つ目の課題が片付いたところで、恭也はすかさず次の話に移る。

「それで、二つ目のお願いなのですが……」

 コレもキーアイテムの配置には違いない。だがコレは、どちらかと言うと配置ではなく製造作業だ。
 しかしコレがないと、困ったことになるのも事実。
 だから彼は、大変な作業になるということは承知の上で、話を続ける。

「……今回の旅の記録を物語形式にして、書物にまとめておいて欲しいのです……」
「?また良く分からないお願いだけど……」
「……お願いします」

 恭也は真剣だった。
 攻略本がないと困るから。
 彼がネノクニのことなどを素早く理解出来たのは、【出雲物語】のおかげだったから。

「わ、わかったから!だからそんなに見つめないで!?」
「し、失礼しました!!」

 あまりに真剣に頼んでいたせいだろうか、恭也の瞳は綾香の心を掴みかけていた。
 普通だったらコレでノックアウトだが、流石は年長者様。何とか回避したようだ。
 対する恭也はというと、また例の如く『……やはり自分の顔は怖いらしいな。気を付けなければ……』とか考えていた。

「……ヒカル。私たちって……」
「……何も言うな。やっぱ頭の良さが必要な場面もあるんだ……ってことにしておこうぜ……?」

 会話にこそ参加しない七海だったが、時折頷いてところを見ると、話を理解出来ているようだった。
 だから理解出来ていないのは、自分たちのみ。
 ヒカルと渚は密かに、コレからは少しだけ勉強も頑張ろうと決意した。





あははは〜。ヒカルと渚は置いてけぼり。
美姫 「救世主とかの部分は仕方ないかもしれないけれどね」
まあな。しかし、歴史が変わらなくて良かった。
美姫 「変わったら変わったでどうなるのかという楽しみはあるけれどね」
おお、確かに。でも、かなり危険だと思うけれどな。過去がかなり変わる事になるんだから。
美姫 「まあね。さーて、早く続きを読みたいそこの君!」
続きはこの後すぐ!



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