『とらいあんぐるハート〜猛き剣の閃記〜』




プロローグ




「おか〜さん。おとーさんって、どんな人だったの?」

「そーねえ〜。『強くて、やさしくて、とってもカッコ良い人』だったわ!
 あと、すっごい甘いものが好きでね。おかーさんの作ったお菓子がきっかけで知り合ったのよ〜♪」

「ふ〜ん、そーなんだ〜」

リビングでは、母さんとなのはの会話があった。

「そうか……なのはは、父さんのことを知らないからな」

俺たちの父親である、高町士郎は、なのはが生まれる前に死んでしまった。
父さんの仕事はボディーガードで、その仕事中に護衛対象を守って、帰らぬ人になったのだ。
そのことに対して、悲しくないと言えば嘘になるが、最後まで『守る』ことに殉じた父を、自分は誇りに思う。
父のように、『みんなを守れる』ようになることが、自分の目標なのだから。

「ふむ……久しぶりに物置を整理して、父さんの写真やらを引っぱり出すか」

確か物置には、父さんの写真や思い出の品が幾つかあるはずだ。
父さんの写真や、思い出の品を見せて、思い出話をするぐらいしか自分にはできないからな。




「とは言ったものの……なんだ、この量は。
 この中の物の思い出話を語っていたら、一年経っても終わらないぞ」

物置の中を見た俺は、愕然とした。大量の物、物、物。大小併せて数千もの物が、俺を出迎えた。
確かに、父さんは仕事柄、様々な場所に行き仕事をしてきた。
しかし、それと同じぐらいの土産があったとは思わなかった。

「考えててみれば、すぐに分かることだったな。あの人は、何もかもが常識の範囲外だったからな」

ちゃんぽんが食べたくなったら長崎に行き、その五分後に「札幌ラーメンが食べたくなった」と言って、
札幌に行くことになるなんて、普通はありえない。というか、あってはならない。
そんな人間は、世界中を探しても、父さんしかいなかっただろう。
だがそのおかげで、各地に知り合いがいた。

「どのみち、いつかは整理しなくてはならないんだ。なら、今日のうちに可能な限り整理してしまおう」

そう自分に言い聞かせ、整理を始めた。




「んっ?何だこれは?」

整理を始めてから何時間か過ぎた時、埃をかぶった一冊のノートが目についた。


「 月 日 
 
 明日から、アルバートの護衛だ。
 正直、身重の桃子の側を離れたくないが、アルの方も今はかなりやばいらしい。
 この仕事が終われば、しばらくは仕事は入れていない。ようやく家族の側にいることができる。
 もうすぐ家族が増えるし、そろそろ護衛は引退して、後任の育成に力を注ぐようにしたいと思う。 」


「そうか、これは父さんの日記か。
 しかし、普段はふざけていたのに、こういう物はきちんと書いていたんだな」

何気なくページをめくり、日記を読み進めていく。
そして、最初の一ページ目の内容を見終わった時、俺は戦慄した。


「 月 日

 今日は、○○県に、塔馬六介という剣の達人を訪ねた。
 色々あったが、意気投合し、二人で飲みに行った。
 その帰りで妙な女に会った。

 その女は、黒い着物を着ていて、赤ん坊を抱えていた。
 そして、自分は死に行く身体なので、その赤ん坊を頼むと言った。
 最初は怪しんだが、その女の必死な態度に、俺はその子を引き取ることにした。

 俺が女の手からその赤ん坊を抱いた瞬間、女は空気に溶けるように消えてしまった。
 かなり奇妙な出来事だったが、約束どおり、自分の息子として育てることにした。
 俺は、その赤ん坊の名前を『恭也』と名付けた。  」 


――ドサッ――

ノートの落ちる音がした。しかし、今の俺にはどうでも良かった。
自分の産みの母親は知らなかったが、父さんはいつも側にいてくれた。
そして、自分はこの人の息子なんだと実感していた。
だが、それすらも違ったとは……

「……それでも、自分の息子として、ずっと育ててくれた父さんに感謝だな」

そうだ。おれはあの人の息子だ。それは間違いない。ただ血が繋がっていないだけ。
母さんとだってそうだ。血は繋がっていないが、今は立派な『家族』だ。

「……本当に……本当に二人には感謝だな……」

俺は『高町恭也』だ……今までも、そしてこれからも……

そう思う反面、自分の出生の謎を探りたいと思うの心もある。
考えこむこと数瞬、ふとノートから手紙が出ているとに気づいた。
それは、『恭也へ』と書かれていた。


「恭也へ

 お前がこの手紙を読んでいるということは、俺が直接伝えられない状態、死んだということだろう。
 俺の日記を読んだなら分かると思うが、俺はお前の本当の親ではない。
 日記に書かれているように、黒い着物を着た女性から託されたのだ。

 だが、そんなことはどうでも良い。

 父親らしいことは、何一つしてやれなかったが、俺はお前の父親だ。
 血の繋がりはないが、それ以上にお前の父親であり、家族だ。
 桃子も、美由希も、そしてまだ見ぬ子供もそうだ。

 お前のことだ、きっと自分の出生が気になりつつも、家族を『守る』ことを優先するだろう。
 だが、それによってお前がしたいことができなくなってしまうことが、親としては一番辛いことだ。
 もし、この手紙を見つけたなら、お前は自分の出生を探しに行け。
 お前はいつも家族を大事にしてきた。だから、今回は家族に甘えろ。

 辛いことが待っているかもしれないが、その時は『家族』を思い出せ。
 これから、お前がどこに行くかは分からないが、俺たちはいつまでも『家族』だ。
 そのことを忘れるな。

  士郎   」


読み終えた俺は、不覚にも涙が出そうになった。父さんが死んでから、流したことがない涙を。
しかし、思い留まった。涙を流すのは、全てが終わってから。つまり嬉し涙としてだ。
そう決心したところで、ふと手紙に続きがあることに気づいた。


「追伸

 出生を探すのなら、「塔馬六介」という人物を訪ねてみろ。
 お前を託された時、その場にいたし、そこは彼の住んでいる土地だ。
 もしかしたら、何か分かるかもしれない。 
 それに、彼は剣の達人だ。このことがなくても、会ってみて損はない。
 電話番号と住所を記しておくから、行ってみろ。 」


「塔馬六介」さんか……善は急げというし、早速連絡を取ってみるか。
しかし。父さんをして達人と言わしめる人か……
一体、どんな人物なのだろうか?

そんなこと考えながら、電話を手にする自分がいた。











あとがき

はじめまして、サツキと言います。

初めての作品はいかがだったでしょうか?

このサイトの皆さんの作品に触発されて、私もSSを書いてみたくなり、無謀にも挑戦してみました。


一応サブタイトルに『〜猛き剣の閃記〜』がついていますが、PC版の『IZUMO2』とのクロスなので、
アニメの方の話は入らない予定です。

まだまだ未熟なところが多いと思いますが、よろしくお願いします。
                     


サツキさん、投稿ありがとうございます。
美姫 「ございます」
自分の出生を知るために掛けた電話…。
美姫 「これが後にどんな展開を恭也にもたらすのか!?」
早くも続きが気になる。
美姫 「一体、どんな物語が紡がれていくのかしらね」
次回も楽しみにしています。
美姫 「待ってます〜」
ではでは。



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