リリとらのアトリエ

 

 

 

 

〜はやてのある一日〜

 

 

 

 

 

 

 

「んん〜」

 

 少し重いまぶたをこすりながら、あたしは習慣となった時間に目を覚まします。

 すぐ隣ではヴィータがぬいぐるみを抱きしめながら、ツヴァイはシーツに包まってすやすやと眠っています。

 ヴィータとツヴァイを起こさへんようにして、部屋を出ます。

 

 

 あたしの名前は八神はやて。

 アカデミーの二年生や。

 ずっと小さいときに両親をなくしてしまったけど、めげずに生きてきました。

 そんなあたしも、今では自分を含めた八人家族の中心人物になりました。

 

 

 まずは朝ごはんの準備と言うことでキッチンに向かいます。

 その途中、鍛錬組と出会いました。

 

「おはようございます、主はやて」

 

「おはようございます、主」

 

「シグナムにザフィーラ、おはようや。

 これから鍛錬?」

 

「はい、毎日鍛錬しなければ体がなまってしまいますので」

 

「そうか。あんまり無茶せんで、適度に、気をつけてやってきてな」

 

「「了解です」」

 

 そう言って出て行く二人。

 実はこの二人、あたしが作り出したホムンクルスです。

 

 シグナムはあたしが初めて作り出したホムンクルス。

 始めから何人か作る予定だったので、そのリーダー格として作りました。

 その通り優秀なリーダーとしてできたんやけど…もうちょい融通利かせてもよかったんかもと思うこのごろ。

 いや、今のシグナムに問題があるわけちゃうんけどな。

 

 ザフィーラは採集や調合でよく家を空けるあたしの代わりに、家を守ってもらうために作りだしたホムンクルス。

 やっぱり強そうでなければと言うことで、獣人族の男性をイメージして作りました。

 …ちなみに獣人族にした理由に“番犬”が思いついたと言うのは秘密や。

 作ったときは固そうと思ってしまったけど、何気に家での唯一の彼女持ちだったり。

 

 

 

 

「主、おはようございます」

 

「おはよう、リィン。先に準備しとってもらって悪いなぁ」

 

「いえ、私が好きでしていることですから」

 

「ん〜、リィンはいい子やね〜。おおきにや」

 

 リィンの本当の名前はリィンフォース。

 ずーっと昔に作られたホムンクルスで、どう言う訳かあたしが生まれる前から家に居たらしいんやけど、

動きはじめたのはついこの間…一年半くらい前なんや。

 あたしの意識と連動してるみたいで、錬金術に興味を持ったことがきっかけだったとか。

 ただこの連動の仕組み、ロストテクノロジーらしくて解明不明やって。

 あたしが生きているうちに解明するのが目標や!!

 ちなみに作ったホムンクルス達はリィンの知識と体が元やから、お母さんと言っても差し支えはないね。

 ちなみにリィンは家事から戦闘までなんでもこなす、ミス・パーフェクトなんよ。

 

 

 二人で準備をしていると、我が家の家事担当三番手が起きてきました。

 

「はやてちゃんにリィン、おはよ〜う。

 ごめんなさ〜い、少し寝坊しちゃいました〜」

 

「おはよう、シャマル。まぁ気にするな」

 

「おはようや、シャマル。

 そうやで〜、食事でシャマルができることは多くないんやから」

 

「は、はやてちゃ〜ん、それは酷いですよ〜」

 

 シャマルは二番目に作ったホムンクルス。

 内務担当として作っただけあって、調合はすばらしいもんや。

 ただ、なぜか家事全般は安定しないのは不思議や。

 特に料理が上達せえへん。なんでやろ?

 ほわわんとした、いい雰囲気を持っているのが特徴かな。

 

 

 三人で準備をしているとちびっ子組が起きてきました。

 二人ともまだ眠いらしく目をこすっています。

 

「おはよう、ヴィータにツヴァイ」

 

「あー、おはようはやて…」

 

「…おはようございます、はやてちゃん…」

 

 ヴィータは四番目に作ったホムンクルス。

 末っ子のつもりで作ったから一番子供っぽいんや。

 でも冒険者としての実力は折り紙つきで、ウチではシグナムと二枚看板なんやで。

 反面ちまちまと作業する調合は苦手なんやけどな。

 

 ツヴァイは本当はリィンフォース=ツヴァイって言うんや。

 リィンをほとんどそのまんま私が作ったホムンクルス。

 作るか迷ったんやけど、ヴィータも自分より年下が欲しいって言うから作ったんや。

 外見は子供やけど、リィンを基礎にしただけあって調合は得意。

 皆のマスコット的存在やね。

 

  さて、鍛錬組も帰ってきて皆で朝食の時間や。

 

『いただきます』

 

「すまん、醤油を取ってくれないか」

 

「シグナムにはやらん」

 

「こらヴィータ、あかんよそんなこと言っちゃ」

 

「ほら」

 

「すまんな、ザフィーラ。

 シャマル、使うか?」

 

「いえ、私はソースなので」

 

「シャマルー、リィンにもソース貸して欲しいです」

 

「はい、ツヴァイ」

 

「ありがとうなのです」

 

 今日もにぎやかな我が家の食卓です。

 とと、和むのも良いけど準備してもらわなあかんかった。

 

「ヴィータ、シグナム。予定通り午後から採集に出かけるからよろしくな。

 それでちょう悪いんやけど、あたしは午前中アカデミーに行って来るから、準備しといてくれへん?」

 

「おうはやて、まかせといて」

 

「すまないヴィータ、やっておいてもらえないか?

 私は城の訓練に顔を出す予定なのだ」

 

「あ、そーか、今日か。

 ま、あたしが行かねーからな。やっといてやるよ」

 

「助かる」

 

「しっかしたまには休んだっていーじゃねーか。

 ほんっとバトルマニアだよなー」

 

「ヴィータちゃん、それだけじゃないわよ」

 

「あ?」

 

 なーるほど、そう言うことかぁ。

 本当に策士やなぁ、シャマル。いじれる時はみのがさへんもんな。

 それならあたしも。

 

「そうやよヴィータ。

 なんたってお城の訓練には愛しの彼が来るんやもんな、シグナム」

 

「シャマル!! それに主まで!!」

 

「恋する乙女だな、シグナム」

 

「がんばってくださいです、シグナム。

 リィンは応援してるですよ」

 

「リィン達まで何を!!」

 

「照れるな、シグナム」

 

「ザフィーラ、お前もか…。…もういい」

 

 そう言って一気にごはんを食べ終えるシグナム。

 

「行ってきます」

 

 あらら、行ってもうた。

 ちょいからかいすぎたか?

 とは言ってもシグナムは恭也さんを前にしたときは本当に乙女さんや。

 ただ剣士としても認めているらしく、鍛錬のときなんかは意識を切り替えとるみたいやけど。

 もう少しちゃんと愛情表現せな負けてしまうのに…。

 

 

 

「それじゃ、行って来るな」

 

「気をつけて行って来てね」

 

 シャマルに見送られて家を出発。

 ん〜いい天気や。

 去年の今頃はこんな風に生活しとるなんて思いもしなかったなぁ。

 

 そんなことをぼんやりと考えていると後ろから声をかけられました。

 

「おはよー、はやてちゃん」

 

「あ、なのはちゃん、おはよう」

 

「はやてちゃんも特別講義聴きに行くの?」

 

「うん。ちょい興味のある内容だったしなぁ」

 

 声をかけてきてくれたのは、高町なのはちゃん。

 最初に友達になったすずかちゃんの親友で、今ではあたしの親友でもあるんよ。

 いつも明るくて笑顔のまぶしい素敵な子。

 ウチのヴィータとも仲良くしてもらっててほんとにできた子やね。

 

 そのまま二人で世間話をしながらアカデミーに向かいました。

 講義を受ける教室に到着し、着席するとすぐに声をかけられました。

 

「なのはにはやて、おはよう」

 

「おはようフェイトちゃん」

 

「おはようや」

 

 彼女はフェイトちゃん。本名はフェイト=T=ハラオウンって言うんよ。

 フェイトちゃんとなのはちゃんとあたしでアカデミー二年生仲良し三人組や。

 あたしが出会ったときは明るかったけど昔は違ったらしいで。

 なんでもなのはちゃんのおかげだとか。

 ウチのメンバーではシグナムと気が合うみたいで、仲良しさんや。

 同じ人が好きなだけはあるな、とか思ったり。

 

 昨日のこととか話していると先生が入ってきました。

 

「はーい、皆さんオハヨー♪」

 

 先生の名前は月村忍さん。

 すずかちゃんの実のお姉さん。

 ただ、すずかちゃんとはノリが違って一瞬疑ったのは内緒や。

 でもあのノリはたのしいで〜。

 あたしとしては楽しいお姉さんって感じやね。

 

 

 

 忍さんの興味深い授業を聞いた後、あたし達三人はこれからのことを話してました。

 

「フェイトちゃんとはやてちゃんはこれからどうするの?

 私はおとーさんのお店に行くんだけど」

 

「あたしはこれから採集に行く予定やからここでお別れやね」

 

「そっか、フェイトちゃんは?」

 

「私は特に決めてなかったから…。

 なのはさえ良ければ一緒に行っていい?」

 

「うん、それじゃ一緒に行こう」

 

 そう言うことであたしは二人と別れました。

 それにしても二人はやっぱり仲いいなぁ。ちょう妬けてしまう。

 

 

 アカデミーから出たところで見慣れた後姿を発見しました。

 

「あれ、グリフィスくん」

 

「あ、はやて。講義を聴きに来たのかい?」

 

「そうや」

 

「そっか。面白かったね。

 そう言えば母さんの課題は終わった?」

 

「今日その材料を採りに行くんよ」

 

「そうなんだ、気をつけて」

 

「シグナム達に付いて来てもらうから大丈夫や。おおきにな」

 

 彼はあたしの受け持ちの先生、レティ先生の息子さんで同じ生徒でもあるグリフィス=ロウランくん。

 まじめで人当たりもいいし、優秀な印象を受ける子やね。

 よくあたしと仲がいいからいい関係と勘違いする人が多いんやけど、あたしはこれっぽちもそんなこと思っとらん。

 

 

 用があると言う彼とそのまま別れ、あたしは一人帰路につきます。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりー」

 

「あれ? アルフやんか」

 

「あはは、お邪魔してまーす」

 

 彼女はハラオウン家にお世話になってる獣人族の女性、アルフ。

 ザフィーラの彼女さんでよく家に遊びに来ます。

 ウチのメンバーともすっかり仲良しさんですが、ヴィータと一緒になって暴れるのは勘弁な。

 

 

 食堂へ行くとリィンとシャマルが昼食の準備をしてくれてました。

 

「おかえりなさい、主」

 

「はやてちゃん、おかえりなさい」

 

「ただいま、リィン、シャマル。お昼の準備おおきにな」

 

「いえ、私達の仕事ですから」

 

「そうですよ〜、はやてちゃんはもっと甘えてくれていいんですよ」

 

 う〜ん、いい子達やなぁ。

 

「はやて、お帰り」

 

「ヴィータただいま。準備してくれてたんやな、ありがとう」

 

「当然だよ、はやてと一緒にお出かけだからな」

 

 あー、照れるヴィータもかわいいなぁ。

 

「ただいま戻りました」

 

「おおシグナム、お帰り」

 

 シグナムも鍛錬を終えて帰ってきたみたいです。

 

「あれ? ツヴァイは?」

 

「今日は孤児院の方に呼ばれて子供達の相手をしに行ってます。

 お昼もそっちでご馳走になるみたいです」

 

「ああ、そうなんや」

 

 リィンは小さいこともあって時々槙原さんの開いている孤児院に呼ばれています。

 子供達の相手をしてもらえるのは助かるとか。

 槙原さんは料理の達人で、実は餌付けされてると言う噂もありますが。

 

 

 

 アルフを加えた七人で昼食をとった後、あたし達は採集へと出かけます。

 

「それじゃ行ってきます。

 ザフィーラ、留守をよろしくな」

 

「お任せください」

 

「主、お気をつけて。

 調合の準備をして待っています」

 

「ありがとうな、リィン。じゃ、行くで」

 

「おー!!」

 

 ヴィータの元気な声と共に出発。

 ヴィータは元気よくあたしの隣に。

 その後ろにシグナムが何か言いたそうな表情で。

 荷物の大半はシグナムが持ってくれています。

 

 

 

 

 

 歩くこと六時間。

 採集場所の月守台に到着しました。

 

「とうちゃーく」

 

「あーあ、モンスターも出なかったしちょっとつまんなかった」

 

「ヴィータ、何事もないのが一番だろう」

 

「へーへー、悪かったよ」

 

「さ、キャンプの準備や。

 ヴィータは薪をよろしくな。シグナムは水をお願い」

 

「おう」「はい」

 

 今日はこのまま休んで、採集自体は明日です。

 

 

 

 

『いただきまーす』

 

 キャンプの準備から一時間、食事の準備も終わり皆で夕食です。

 

「んー、外で食べるはやての料理はまた一段とギガうまだぜ」

 

「そう言ってもらうと作った甲斐があるよ」

 

 

 そうして食事も終わり、後は就寝です。

 早くないかって?

 今回の採集目的は朝早くに咲く花なので早く寝ます。

 

「それじゃあ寝よか。結界張ったし大丈夫やろ」

 

「心配ならば見張りをしますが」

 

「心使いは嬉しいけど、結界に踏み込まれたら音出るし大丈夫。

 シグナムも休まな」

 

「ありがとうございます」

 

「よし。それじゃおやすみ」

 

「おやすみ、はやて」

 

「おやすみなさい、主」

 

 仲良くテントの中で川の字になって寝ます。

 …一本だけ長くて変な感じやけど。

 

 うん、おなかも一杯だしすぐにでも寝れそうや。

 明日は早いし、それじゃ、おやすみやで。

 

 

 

 


あとがき

 

 どうも船貴です。

 リリとら第三弾は八神一家でした。

 デバイスが人型なのに違和感を覚えたと言う感想もありましたし、

ヴォルケンリッターの使うデバイスまで人型化してしまうと人数が多すぎる事になるので、

彼らは武器にそう言う名前をつけていると言う設定にしました。…出てきてませんが。

 

 とりあえずこれで主役級三人娘が書き終わりましたので、次回は世界観についての授業みたいなものになります。

 設定集でいいような気もしましたが、それだと味気がないので。

 

 ではまた次回、お会いしましょう。

 

                                 08/1/13 船貴





はやての登場〜。
美姫 「大家族だからかしら、楽しそうね」
うんうん。主な人物は出てきたのかな。
次は世界観のお話らしいけれど。
美姫 「どんなお話になるのかしらね」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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