リリとらのアトリエ

 

 

 

〜フェイトのある一日〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 なんとなく寝苦しくなって目を開けると、いつもの起床時間よりも十五分ほど早い時間でした。

 まだちょっと眠い気もしますが二度寝するほど時間はありません。素直に起きることにします。

 

 私の名前はフェイト=T=ハラオウン。

 アカデミーに通う二年生です。

 入学したときはテスタロッサ姓だったのですが、二年に上がると同時にハラオウン家の養子になりました。 

 今は工房を兼ねているこの家で一緒に生活しています。

 

 着替えてリビングへ行くとお母さんが朝食の準備をしていました。

 

「あら、おはようフェイト。

 今日は少し早いのね」

 

「おはよう、お母さん。

 うん、たまたま早く目が覚めちゃって」

 

 お母さんの名前はリンディ=ハラオウン。

 私を養子に迎えてくれることを決めてくれた人でもあり、アカデミーでの受け持ちの先生だったりします。

 優しくありながら厳しくもあり、すばらしい人だと思います。

 

 

 しばらくお母さんと談笑しているとクロノとバルディッシュが入ってきました。

 

「母さん、フェイト、おはよう」

 

「マスター、母様、おはようございます」

 

「はい、おはよう」

 

「二人ともおはよう。

 玄関の方から来た気がするけど、なにかやってたの?」

 

「ああ、バルディッシュに体術の訓練に付き合ってもらっていたんだ」

 

「その通りです」

 

 クロノはハラオウン家の一人息子さん。つまり私の義兄に当たります。

 現在はアカデミーのマイスタークラス二年生。

 得意科目がないけど苦手科目もない。さらには体術もできます。

 典型的な万能型で、特に自慢することもないとは本人談です。

 私からしてみるとそんなことないと思うのですが…。

 一応今年でアカデミーが卒業になります。来年はどうするのかな?

 

 

 バルディッシュって言うのは、お母さん―プレシア母さん―の助手だったリニスが私の為に作ってくれたホムンクルスです。

 金の髪に金の瞳。体格が良くて寡黙。護衛としても優秀だし、調合の助手としても優秀です。

 ただ、なんで筋骨隆々の男性に作ったのかがわかりません。

 ……リニスの趣味だったら嫌だな……。

 

「ふぁ〜あぁ。

 あれー、もう皆起きてたの〜、おはよー」

 

「アルフ、おはよう」

 

 最後にリビングにやって来たのは、私が小さいときに助けた獣人族の女の子、アルフです。

 女の子と言っても獣人族なので、もうすでに私よりも大人の女性に見えるのですが。

 私がハラオウン家の養子になると決めたときも付いて来てくれた、気心知れた仲です。

 

 私を含めたこの五人が現在ハラオウン家で生活しています。

 リンディ母さんが中心となってまとまっていて、とてもいい関係が築けていると思っています。

 …本当に養子になってよかったです。

 

 

 全員がそろったところで朝食となりました。

 そして恒例の今日の予定について話します。

 

「フェイトは今日の予定どうするんだい?」

 

「私は忍先生の特別講義を聞きに行く予定だよ。

 その後は―なのは達と動くかな、たぶん」

 

「あら、忍さんの授業聴きに行くのね。

 クロノは? 聴きに行くの?」

 

「いや、僕はその関係の話を個人的に聴きに行ったことがあるから。

 今日は図書館で調べ物かな。余裕があれば調合もするだろうけど。

 それでフェイト、今日なんだけどバルディッシュを連れて行ってもいいかな?」

 

「私はかまわないよ。

 バルディッシュはどう?」

 

「問題ありません」

 

「ありがとう。

 それじゃあ今日はよろしく、バルディッシュ」

 

「了解」

 

「私はいつも通りアカデミーで仕事だけど、アルフは?」

 

「アタシはどうしようかな〜。

 皆ウチにはいないみたいだし―そのへんぶらぶらしてるよ」

 

「それで最終的にはザフィーラのところ?」

 

「ちょっ、フェイト!!」

 

「なんだ、図星かアルフ」

 

「クロノまで〜」

 

「あらいいじゃないアルフ。

 若いのは特権なんだから〜」

 

「うぅ〜」

 

「お母さんだってまだ若いのに」

 

「ありがとう、フェイト」

 

「フェイト、無理してお世辞を言わなくてもいいぞ」

 

「あらクロノ、どう言うことかしら?」

 

「なんでもないよ」

 

 こんな居心地の良い空気がずっと続いたらいいなと思います。

 

 それでえーっと、今日の予定は―

 お母さんは学校で仕事。

 クロノは図書館で調べ物。

 バルディッシュはその手伝い。

 それでアルフは…ザフィーラのところかな?

 あ、アルフははやてちゃんのところのザフィーラと恋仲みたいです。

 

 そんなこんなでそれぞれの予定を把握した私達は、世間話をしながら食事を終えました。

 

 

 

「それじゃアルフ、出かけるときは戸締りよろしく」

 

「はーい、皆気をつけてねー」

 

「「「いってきます」」」

 

「いってらっしゃーい。

 …バルディッシュも出かけるときくらいしゃべりなよ」

 

「…行って来る」

 

 方向が同じな私達四人は一緒にアカデミーに向かいます。

 

 

 家からアカデミーはそんなに遠くないのですぐに到着します。

 

「それじゃあクロノもフェイトも勉強頑張ってね」

 

 お母さんがそう言って教員部屋へ。

 

「じゃあ、フェイトも頑張って」

 

「…では」

 

 クロノとバルディッシュは図書館へ。

 残った私は講義が開かれる教室へと向かいます。

 

 

 教室に入るとおなじみの二人が席に座るところでした。

 もちろん私は声を掛けます。

 

「なのはにはやて、おはよう」

 

「おはようフェイトちゃん」

 

「おはようや」

 

 この二人は私の親友です。

 

 栗色の髪を左右に結っているのが高町なのは。

 人と関わるのを嫌っていた私にずっと話しかけてくれた優しい子です。

 なのはが居てくれたから、今の私が居ると言っても過言ではありません。

 親友ですが、それ以上に大切な人でもあります。

 

 もう一人が八神はやて。

 去年の終わりごろに仲良くなった子。

 すずかと前から知り合いだった子で、紹介してもらったら同じアカデミーの生徒だったと言う訳で仲良くしてます。

 ちなみにアルフの恋人・ザフィーラは、はやてが作成した獣人族のホムンクルスです。

 

 

 三人で談笑していると忍先生が入ってきました。

 

「はーい、皆さんオハヨー♪」

 

 忍先生はアカデミーの講師の一人です。

 お母さんの同僚にあたります。

 ちなみに私とは…ライバルでもあります!!

 でも…スタイルも錬金術も…負けてるよね……ふぅ〜…。

 

 

 

 

 

 

 

 忍先生の授業が終わって、私達三人はこの後のことを話していました。

 

 

「フェイトちゃんとはやてちゃんはこれからどうするの?

 私はおとーさんのお店に行くんだけど」

 

「あたしはこれから採集に行く予定やからここでお別れやね」

 

「そっか、フェイトちゃんは?」

 

「私は特に決めてなかったから…。

 なのはさえ良ければ一緒に行っていい?」

 

「うん、それじゃ一緒に行こう」

 

 特に予定を入れていた訳ではなかった私は、なのはと一緒に翠亭に行くことにしました。

 『翠亭』はなのはの実家です。

 一年のときはリニス、アルフと一緒によくお世話になっていました。

 最近は仕事を探しに行ったり、その…恭也さんに…会いに…行ったり…です。

 

 

 

 なのはと話しながら向かっている途中、お母さん―この場合はリンディ先生と言うべきかも―から課題を出されていることを思い出しました。

 レシピは分かっているのですが、材料が足りなかったはずです。

 せっかくなので恭也さんに採集に付いて来てもらえるか、頼んでみようと思います。

 来てくれたらその間はずっと一緒に居られるけど…断られたら…ショックだなぁ…。

 やっぱりやめようかなぁ…。

 

 悶々としながらも足は進み、いつの間にか着いてしまいました。

 

 

 カランカラーン

 

「いらっしゃいませー」

 

「おう、なのはにフェイトちゃんじゃないか。今日はどうしたんだ?」

 

「えーっとね、何かお仕事ない?」

 

 突然用件を尋ねられた私はとっさに答えてしまいました。

 

「私は恭也さんにお願いが…」

 

「フェイトちゃんは恭也だな…フィアッセー、恭也は?」

 

「恭也はお城の稽古に出て行ってるよー。

 お昼までだから、もうすぐ帰ってくると思うよー」

 

「…と言うことだからもう少し待ってね」

 

「はい」

 

 と言うかなのはのお父さん、どうして恭也さんの予定をフィアッセさんに聞くのでしょうか。

 複雑な心境のなかフィアッセさんを見てみると、表情には「恭也のことは把握してるのよ」と言うような余裕の笑顔が浮かんでいました。

 …なんだかとっても悔しいです…。

 ………私ってこんなに嫉妬深かったんだ………。

 

「で、なのはは仕事と……なのは〜、そんなことしなくても父さんに言えばお金くらい出すぞ〜」

 

「おとーさん、いつも言うけど一人前になったときの予行練習も兼ねてるんだから。

 だからお仕事お願い」

 

「まあ、なのはがそう言うんだったらいいけどな」

 

「あ、おとーさん。また採集のみとかはやめてね」

 

「うっ…。…わかった…」

 

 一方なのははお父さんの過保護ぶりに少々ご機嫌斜めの様子です。

 心配してくれてるのだから、悪いことではないと思うのですが…。

 リンディ母さんはいい意味で放任だし、プレシア母さんはかまってくれなかったし…。

 そんな心境になったことがないので、少しうらやましかったりします。

 

 

 

 

 なのはがもらった仕事表を一緒に見ていると、しばらくして恭也さんが帰ってきました。

 

「おう恭也、おかえり。フェイトちゃんがお前に用があるってよ」

 

「恭也さん、こんにちわ」

 

「ああ、元気そうで何よりだ。それで用と言うのは?」

 

「あの、えっと、その……また採集に付き合ってもらってもいいでしょうか?」

 

 断られたときのことを思って、少し言いよどんでしまいました。

 でもそんなことを気にしないで、恭也さんはすぐに答えてくれました。

 

「ああ、そんなことか。

 フェイトに頼まれたのなら断るわけがないだろう。

 怪我でもされたら悲しいからな」

 

 え!!

 えと、それって―私のことが大切ってことでしょうか?

 んと、その、すっごく嬉しいんですけど、あの、どー言う意味で大切なのかな?

 その、別に今は女性と見てくれてなくてもいいんだけど、あ、でも、そのうち見てくれると嬉しくて…。

 あ〜う〜、自分がなに考えてるかわかんないよ〜。

 

「あうぅ…」

 

 ちょっとオーバーヒート気味の私はうつむいてしまいました。

 きっと今顔真っ赤なんだろうな。

 

 ふわっ

 

 えっ!!

 あ、恭也さんの手。

 ちらりと様子を伺うと―優しく微笑んでくれています。

 恭也さんの手つき、とっても優しい。

 それにすごくあったかい。

 あぁ、幸せ〜。

 

 

 

 

 恭也さんが撫でるのを止めるのと同時に私は我に返りました。

 あわてて周りを見回してみると、なのはが苦笑してこちらを見ています。

 さらには痛い視線が二つ。

 うぅ、フィアッセさん、エリスさん、表情は笑っていますけど視線が笑っていません…。

 

 

 気を取り直して恭也さんと採集の打ち合わせに入ります。

 

「それで、今回はどこに行く予定なんだ?」

 

「今回は稲神山の鍾乳洞まで行きたいんですが…」

 

「そうか。ちなみに二人で行くのか?」

 

「いえ、バルディッシュも一緒に連れて行こうかと」

 

「そうか」

 

 そう答えて嬉しそうな恭也さん。

 なんだか恭也さんとバルディッシュはウマが合うみたいです。

 確かにあまり表情を出さないところとか似ていたりしますが。

 …それにしても、その嬉しそうな表情を私と二人きりと言うところで出してくれると嬉しいです…。

 

 

 その後なのはを加えた三人で昼食をとり、解散となりました。

 

 

 

 家に帰るとすでにお母さんとアルフが夕食の準備をしていました。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、フェイト」

 

「おかえりー、フェイト」

 

「なんだかアルフ、嬉しそうだね」

 

「え? そうかい?」

 

「ふふ、アルフったら明日デートなんですって」

 

「あー、お母さん!!」

 

「よかったね、アルフ」

 

 嬉しそうなアルフを見ていると、こちらまで嬉しくなってきます。

 しかしそんな私を見てお母さんが尋ねてきます。

 

「あら、なんだかフェイトもずいぶん嬉しそうね。

 なに? 恭也さんとデートの約束でもとってきたの?」

 

「え!!

 で、デートじゃないよ。ただ採集に一緒についてきてもらうってだけで…」

 

「ふふっ、それでもいいじゃないの。

 明日はアルフにフェイトまでデートなのねぇ。

 ああ、若いっていいわねぇ」

 

「「お母さん!!」」

 

 うぅ、それにしてもそんなに表情に出てたかなぁ。

 もっと引き締めないと…。

 でも一緒に出かけることを思うと…どうしても表情がゆるくなっちゃうよー。

 

「ただいま…って何そんなに騒いでるんだ?」

 

「わわっ、く、クロノ、お帰り…」

 

「あ、ああ…????」

 

 

 

 皆がそろったので、少しして夕食となりました。

 結局私とアルフのことをお母さんがばらしてしまい、クロノにも知られてしまいました。

 そしてからかわれる私…。

 はぅ……。

 

 その後、明日の採集の準備をして、お風呂に入って、就寝の時間です。

 明日は寝坊する訳にはいきません。

 しっかりと寝なくちゃ。

 

 それでは、おやすみなさい。

 

 

 

 


あとがき

 

どーも、船貴です。

なのは編に続いて、今回はフェイト編をお届けしました。

 

どうも書いているうちに恋する乙女編になってしまいました。

う〜む、上手く書けてるといいんだけど…。

 

次回ははやて編の予定です。

そしていつになるかは分かりませんが、三人(フェイト・バル・恭也)の採集風景も書こうかなと思ってます。

 

それでは今回はこのあたりで。では〜。





今回は前回と同じ日のフェイト側。
美姫 「フェイトが可愛いわ」
うんうん。本当に恋する乙女って感じだな。
美姫 「今の所は街での一日ね」
採集がどうなるのか楽しみだな。
美姫 「次回のはやて編もね」
次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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