『SONG TO YOU INFINITY LOVE 前編』
「……シャーリーさん」
「いいのかシャーリー、持ち場を離れて」
「メインオペレートはリィーン曹長がいますから」
「みんなちょっとロビーに集まって、私が説明するから。なのはさんのこと、なのはさんの教導の意味、そして……六課が始まるまで
を」
ロビーにはシグナム、シャマル、シャーリー、スバル、ティアナ、エリオ、キャロが集まる。
「時空管理局の艦船に2番艦が存在しないことを不思議に思ったことは?」
「えっ」
「エリオとキャロは知らないかもしれないけど……スバルはどう?」
「……知りません」
「その二十年位前2番艦エスティアって名前なんだけどね。ある事件で消滅してるの」
「……当時の2番艦艦長、今のクロノ・ハラオウン提督の父親である……クライド・ハラオウン提督と一緒にね」
「「!!」」
全員が驚く。
「2番艦エスティア、闇の書の暴走、止まりません。ブリッジも奪われました……それに、アルカンシェルのコントロールも」
通信先のブリッジに動揺が広がる。
『エスティアからアルカンシェルのチャージ反応』
「…先程、全クルーの避難を確認しました。」
「っ…クライド提督。エスティアは破棄する。君も早く避難を」
クライドは首を横に振る。もうこの方法しか残されていない。
「こちらのアルカンシェルのチャージはあと30秒程度で完了してしま………」
通信が切れた後、ブリッジの床に倒れたクライド。
「……ごめんな」
家族の写真を持ったクライドの頬に涙が流れた瞬間。その映像は途切れた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
はやては、涙を流すしかなかった。目はすでに焦点が合っていないし、瞳に輝きも……なかった。
「う…ぁ…」
「ぁ……」
椅子から転げ落ちて、地面にへたり込むはやて。
グリフィスがはやての側のメインモニターを覗く、ロビーで映し出されている映像が、その横に表示された二つのモニターには、は
やての心が壊れていく様が映し出されていた。
はやてが次第に追い詰められていく様子は、管理局本局に待機していた、クロノにも届いていた。
今から駆けつけたとしても間に合わない。―――はやては壊れる。そんな事実に、クロノは分かっていても走り出す。わずかな希望
を抱き、はやての所に駆け付けたいのを我慢しながら。
握りしめた拳から、血が流れ落ち、唇は固く結ばれる。クロノは全力で走りながらデュランダルを起動。
S2Uが使えなくても問題ないように、広域型氷結魔法に特化したOSを、S2Uにリモートリンクしクロノが戦闘で使う魔法用に
最適化を行う。最適化終了と同時にシステムチェック、再起動。同時にリモートリンクが切れ次第、S2Uをフォーマットし一つの魔
法をインストールする。
『Start up』『Song To ?????? set up』
「よし。デュランダル。S2U、またあれを使わないといけないんだ。力を貸してくれ!!」
『Ok Boss』『…………』
「……ハラオウン提督」
六課のロビーに到着したクロノを待っていたのは、スバルの覇気のない声、みんなの顔がすべてを物語っていた。
「シャーリー……君は今何をやったのか分かっているのか?」
「何って、六課が立ち上がるまでをみんなに見せたんですよ」
「セキュリティレベルSSの記録映像を管理局全土に流して何がしたいんだ」
「!!」
この映像は、提督クラスの人物しか閲覧できないように厳重なプロテクトが掛っている。それを一般局員が見ようものならおのずと
不正を働くのは分かってしまう。
そして、この映像は、闇の書の被害者の心を抉り、復讐心を再び滾らせてしまう危険な行為である。もう、六課はお終いだろう。
「これくらいで壊れるようなら六課も大したことはないってことですよ。」
「っつ!!」
「あっ、やっぱり怒ります?」
「……シャリオ・フィニーノ、セキュリティレベルSSの情報漏洩及び情報乱用により、この場で処罰する」
愛称ではなく、本名を言ったクロノの足元には、溢れ出す涙がしたたり落ちていた。
「もし、9話で流れた映像がクライドが死んだシーンからだったら」こんな風な展開があるのではないのかと思い書いてみました。
シグナムとシャマルは、はやてが主になる以前のことは忘れたままです。
9話のお話らしいけれど。
美姫 「アンタはTV見てないのよね」
まあな。見れないんだよ〜。
美姫 「単に早く寝すぎなのよ」
……え、えっと、それじゃあ、また〜。
美姫 「って、強引な誤魔化し方ね」