不破特断ファイル〜信じ続ける勇気を下さい〜 番外編9
特断ブレッツエリスターとは、
平和を願い、平穏を守り続ける『不破』恭也の願いを叶えようとしたエリスが、過剰とも言うべき行為から設立した........
『法務省特別断罪隊』を示すものである。
いつもいつまでも惑星(ほし)に見守られ 『世界を守護する者達ですら』
君を追い求めていたい 『叶わぬ想い』
過去を頼って今 『逆行と異端を繰り返し』
君を羽ばたかせるのさ 『見えない翼を羽ばたかせる』
記憶と未来(あした)は瓜二つ 『過程は変われど結果は同じ』
恐怖抱えて戦え 『心が痙攣を起こす』
夢と妄想(きおく)が入れ替わり 『現実と夢幻は同じで異なり』
震えながら周りを視る 『触れ合うのに躊躇する』
誰かに見られているのに 『親しい人はもういないのに』
もう誰もいない 『似ていても違うよ』
殺された悲しみと奪われる恐怖を 『やめてくれ』
救った君ですら失う恐怖から 『もうたくさんだ』
どうか、どうか救えますように 『願はいつ届くのか?』
忘れかけた灼熱を胸に 『体が心についていかないし』
現実という壁を写し出す世界を壊せ! 『何度も壊せなかった』
叶えたい夢を願ったのは何故? 『あの少女はどうなる』
何を願ったの? 『あの時何を願っただろうか?』
どうしてこの道を目指したの? 『もう覚えていない願を胸に』
此処に来たのは何故? 『誰か助けてくれ!』
言葉にしようとして気付いた 『これは一面でしかない』
すべては夢と還ってくる 『このディバイスに込めたのは』
鏡に写し出された胸に輝く剣は小さいようで大きい 『想いを貫く為の刃』
LOVE FOR YOU 『憎悪と狂愛を込めた刃』
十字架に刻まれた愛と想いは 『明日を切り開く刃』
何を叶える為に 『ただ、失わないために』
【リバースエンバーミング】
それは、遺体をあたかも生き返ったかのようにする技術のことである。
エンバーミングは、歴代の管理局の英雄やトップに施されてきた。特に有名なのは、聖王教会の聖王をまるで生き返ったかのように
した技術、世界の安定を保つ為に行われたとされるリバースエンバーミング。代々引き継がれるとされるその技術を使う者の事を広く
はリバースエンバーマーと、聖王教会では信愛の騎士との称号で呼ぶ。
これは、世界で唯一のリバースエンバーマー、信愛の騎士、節黎氷の物語である。
「カリム、君に役職の引き継ぎにおいて、話しておかないといけないことがある」
「実際に、君には立ち会ってもらうことになるが」
とある場所で、一人の女性の通夜が行われていた。
「クイント...」
「お...母さん、いやぁー」
「お母さん、ねぇ、目あけてよ」
その女性は、見た目亡くなるには早過ぎる。20代前半に見えた。
白いワンピースで棺の中、多くの花に囲まれ、安らかに眠っている。
その棺の周りで泣き崩れているのは、一人の老けた40代前半に見える男性と、それぞれ五歳、三歳位に見える少女達だった。
「....」
「....」
三人の側に、カリムと神父は無言で立っていた。
「ゲンヤ様、こちらへ」
少女達を置いて、ゲンヤは妻と別離した。
「お話があります」
「....」
カリムは軽くゲンヤにお辞儀をする。
「お子様達は、ご夫妻に似て強い心をお持ちです。ですが、心の傷は、深く根付いてしまうかもしれません」
「はい」
「お子様に、最期の別れをさせてあげませんか?」
神父は、ゲンヤに書類を見せた。
「リバースエンバーミング?」
「エンバーミングは、あなたの先祖が住んでいた世界の技術が発祥と言われています」
「今、魔法で奥様のご遺体の腐敗等を防いで、亡くなられた直後の状態で時を止めていますが、薬品を使い腐敗を防ぎあたかも眠って
いるように見せる技術のことを言います」
「リバースエンバーミングは、遺体をあたかも生き返ったかのようにする技術のことです。」
「御賛同いただけるなら、記入をお願いします」
【エンバーミングをご存知ですか?】
【リバースエンバーミングをご存知ですか?】
【関係は?】
【家族、またそれに類する家族は?】
【上記項目該当との関係は?】
【着せたい衣装、装飾品等はありますか?】
【何日間過ごしたいですか?】
リバースエンバーミングは、善悪の関係はありません。
あなたがこんな人ではなかったと思えばそこまでです。
対象者を本当に生き還せるわけではないのです。
期間終了後、機密保持の為にご遺体は処分させていただきます。
人の夢は儚く脆い、ですが、愛だけは信じ続けてください。
聖王教会【信愛の騎士】
魔導師要請学校に、瞳の死んだ一人の少年がいた。
「....はぁ〜」
ため息をついてぐったりしている。
そんな時に笑って少年の方へと向かってくる二人の生徒がいた。
「あそこの教会って結婚式やってた?」
「さぁ?」
「教会なんだからやってるんじゃない? 結婚行進曲なんか流してるんだから」
「バインドマスター? どうした」
「今日は、資格取得の講義あったんだった。後、頼む」
「はぁ?」
「わかった」
「まあ頑張れや、資格ゲッター」
「ああ、夢幻の時間を作ってくる」
「もう代替わりしたのか?」
「ああ、親父は死んだからな」
「そうか、こちらも代替わりだ」
「カリムです。」
「氷」
シートを被せてある遺体の側に、衣服が置いてある。その服を見る限り女性のようだと氷は思った。
「クイントさん、ウソだろ?」
遺体の生前の写真を見て、氷は名前通り凍りついた。
「クイント、貴女の娘達に一時の安らぎを」
【リバースエンバーミング中】
人間の肉体は死後、体内にある自己融解酵素及び体の内外に棲息する微生物などによって、細胞レベルで急速に分解が始まる。
遺体そのものへの接触および遺体から浸出した体液などの汚染によって、病原菌に感染することもあるので、全身の消毒処理及び洗
浄を行う。
遺体の表情を整え、遺体に少切開を施し、動脈より体内に防腐剤を注入。同時に静脈より血液を排出する。
腹部に穴を開け、そこから鋼管を刺し胸腔・腹腔部に残った体液や、腐敗を起こしやすい消化器官内の残存物を吸引し除去する。
また同時にそれらの部分にも防腐剤を注入する。
サイコメトリーと魔法の併用で、遺体の生前の持ちえた記憶をすべて専用のディバイスに書き込む。
事故などで損傷箇所がある場合はその部分の修復を行う。
数時間遺体を馴染ませた後、静脈より防腐剤を排出、同時に魔力に反応する特殊な薬剤を注入する。
再度全身・毛髪を洗浄し、遺族より依頼のあった衣装を着せ、表情を整え直す。
遺体の記憶が入ったディバイスを脳へ、そして、疑似リンカーコアを心臓へと埋め込み、遺族が気付かないうちに住処へ送り届ける。
【リバースエンバーミング完了】
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「ギンガ、スバル、ご飯よ」
「お母さん?」
「母さん」
「信愛の騎士が、あなた達にちゃんとお別れを済ましてきなさいって、怒られちゃったわ」
死者蘇生……とはまた違うのかな。
美姫 「ギンガとスバルはどうするのかしらね」
行き成り生き返ったってのも普通は驚きだからな。
美姫 「そうね。……と、それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。