不破特断ファイル〜信じ続ける勇気を下さい〜

番外編2









この番外編は初代ブレッツコードとそれを取り巻くちょっとした物語である。










 (………そろそろ移動手段が欲しい。)

 魔法で空を飛んだ方が早く現場に着けて楽なのに、現実は、提督権限くらい持っていないと、事件が起きる度に飛行申請をしなくて
はならなくて、よっぽどの事態にならないと申請許可は難しい。





 少し喉が渇いたフェイトは本局の自動販売機に向かって歩き出した。

「あ、恭也さん」

 ちょうど出くわした恭也に聞いてみることにする。フェイトは、男性は特に乗り物に詳しいという認識をなのはから植えつけられて
いるのです。






「何か用かフェイト」

「車を買おうと思うんですけど、何処か良い店知りませんか?」

「ああ、バルディッシュに位置情報転送しておく」

「じゃ、バルディッシュ、行こうか」





 そんな理由で陸上での移動手段である自動車を買いにフェイトは向かった。














「エリス」

「何だ、恭也」

「もう、ブレッツコードの修理は完了したんだよな?」

「ああ」

「魔導師用にデチューン頼む」

「了解」

 数日前にこんなやり取りがあったことを、フェイトはこの時点では知らなかった。















 フェイトは恭也に進められた中古車販売店に到着した。

 そこには何十台かの車が並んでいた。

「あれって」

 そこにある一台の車に惹き付けられる。

 フェイトも憧れている、恭也の愛車に似ているからだ。






「いらっしゃいませ」

「えっ、ノエルさん? どうしてここで中古車販売店なんて……」

 なぜかいつものメイド服で、フェイトとバルディッシュに気づかれることもなく背後から挨拶をするノエル。

「……実施調査です。私も機動六課に配属になるので詳しい状況を入手するためのものですよ」

「そうだったんですか」

 フェイトはそのままノエルの言葉を信じた。中古車販売店でもメイド服は違和感があるのではないかとは思うのだが、そのことは疑
問に思わないのであった。

「それで、今回フェイト様はどのような車をお探しですか?」

「えっと…………」

 実は車が欲しいというだけで何も考えていなかったフェイトは、次の言葉が浮かばない。

「バルディッシュさんはどうですか?」

【最速で目的地に到着できるものが良い】

「そうですね、バルディッシュさんの条件だと、この車がよろしいのではないかと思いますがどうでしょうか?」

 そこには、旧型のシボレーが置いてありました。

「この車って、なんだか恭也さんの乗っていたブレッツコードによく似ていますね」

「ええ、地球の同車種がモデルになってます」

「これ下さい!」

「この車をご購入なされますか? では、念のためこの車の詳細な説明を致します。気が変わったらお気軽にお声をお掛けください」

「はい」






「中古車ですが、新車二台分のお値段なので余りオススメしません」

 そういえば、これを見ただけで欲しいと思ったが、値段なんて一つも見ていなかったフェイト。

「……0が7つ……っ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「大丈夫でしょうか」

 フェイトの目の前に手をかざしてみるノエル。

「大丈夫です。凄い値段だったので……」

 回りを見ても5桁程の値段の中古車しかないのにこれだけトップに躍り出ている。本当に新車二台分くらいの値段かどうか疑う。

「どうしてこんなに高額かと言いますと、この車、忍様が改造して、管制人格に恭也様の思考パターンを取り込んだ最新型のAIを搭載
していたり、他にも私が存じ上げない装備がある為、準備段階でかなりの資金がかかりました。その金額は膨大で、家が担保に取られ
てしまって」

 フェイトは既にこの車以外は目に入らないようだ。目付きが怖い。

「この車ディバイスなんですか?」

「そうですよ。実は、このディバイスなんですが、masterもまだ見つからなく、この場所を離れようともしないんです。管理局に許可
取るの大変だったんですよ」

「ならどうして手放さないんですか?」

(……ディバイスマスターなら買ってくれるんじゃないのかな。シャーリーなんてすぐ買っちゃいそうだけど)

「この車のmasterに会ってみたいのが一番の理由ですね」

 そう言って、ほほ笑むノエルにフェイトは顔が赤くなった。










 この車の馴れ初めを聞いている時に通信が入る。

『市街地で大規模な交通事故が発生した。現場まで急行してくれ』

「了解、飛行可能エリアまで10分掛かります」

『ちょっと待ってくれ、念話が来た。』

『何っ、ちょっとまずい? ロストロギア使っていい? あほかっ!? わかった。ハラオウン執務官を回すからそれまで持ちこたえ
ろ!!』

「提督」

 とても任務中とは思えない念話の片方のやり取りを聞いて、フェイトは茫然とするがいち早く立ち直った。

『任務変更、ポイントA-8で任務続行中の節黎執務官と武装局員2名の助っ人に向かってほしい』

「節黎執務官?」

 執務官は、人数も少ないので、現場にいる執務官は全員の名前を覚えているフェイトだが、聞いたことのない名前に疑問を抱く。

『今日、管理局に5年ぶりに復帰した人だから聞いたことないだろうが、実力はちゃんとある。頼むぞ』

「了解」






「ぶるん、ぶー、ぶるん」

「!?」

【Let's go master】

「どうやら、フェイト様がmasterに決まったようです」

「お代は後で構いませんよ。早く向かってください」

「はいっ!!」

【現場に急行します。バリアジャケットを装着してください】

「?了解」

【着化用ディバイスです。】

「まさか」

【masterは、私に以前乗車したことがあるはず、】

「まさか、あのブ、ブレッツコード」

【はい。魔導師用にデチューンされここにいます。】

「じゃ、バトルジャケットも装着できるの?」

【いいえ、私はmasterの戦闘支援がメインです。細かい話は後で、現場に急行します】

「着化」

【着化】

 フェイトの魔力色と同じ金色の車となったブレッツコード、そのドアにはブレッツエリスターのエンブレムではなく、管理局のエン
ブレムが浮かび上がっている。


 ブレッツコードは、新たなmasterと共に犯罪に立ち向かった。






【節黎執務官、他武装局員2名の任務内容は、ロストロギアの密輸取引現場の摘発です】

(……そんな、いくらなんでも無茶だよ)

【いえ、少数過ぎるとは思いますが、節黎執務官は幻術魔法の使い手でもありますので、奇襲作戦で一気に鎮圧させることが可能です】

(でも、予想外っ)

ブレッツコードの出す速度とGにフェイトのバリアジャケットは防護性能があまり高いとは言えないので上手く衝撃が緩和できないよ
うだ。

【そう、予想外の事態に遭遇した場合は、すぐに戦力を潰されます】

(急いでください!)

【了解】





「はぁ、はぁ、くっ」

『再就職して初日の仕事がなんでこんなにハードなんだよ』

『それだけ人材不足なんだ』

『クロノまだか。ブランクが長すぎて、接近戦での反応が鈍すぎ、魔力は余裕があっても流石に体力が』

『もうすぐ来る。それまで持ちこたえてくれ』

 密輸取引現場で魔法を使い姿を消していた3人だったが、敵がかなり優秀だったらしく、発見されてそのまま戦闘になってしまって
いる。

 敵魔導師のレベルはAランク8人、大しこちらは、遠中距離を得意とする魔導師、一般的ミッドチルダの武装局員、陸戦Bランクの2
人と空戦AA+ランクの執務官1人。

 執務官は、二人の武装局員のブーストアップと幻術魔法でサポートをしながら、敵魔導師を倒してきてはいるが、残り5人となった
時に集中力が切れたのか、スフィア系の攻撃をまともに食らってしまった。

「っつ!!しまっ があっ」

(魔法でスフィアの姿を消しただと!!)

「………」

 殺傷設定の刃が迫るが、執務官はスフィアの攻撃をまともに食らって動けない。

【氷!!】

「ぐわっ」

 吹っ飛ばされる犯人を見ながら、回復魔法をかける。

「大丈夫ですか?」

【Are you OK?】

「ああ、ってか、ひき逃げ犯で逮捕する」

「えっ、死んじゃったんですか? どうしよう……お母さん、お兄ちゃん、等々わたし、犯罪者になっちゃった」

【節黎執務官、冗談はやめてください。マスター結構本気にしますから】

「ハラオウン執務官」

「あっ、えっと、うん、跡形もなく死体を焼いて、逃走の為の戸籍とかはお母さんに頼んでおけば………」

 結構本格的に危ない方向で考えているフェイト。言っていることは、実現できるので怖い。

「ハラオウン執務官!!」

「っつ!! はい」

「あの人死んでませんから、後よろしく」

「わかりました」






『ブランクのつけでかいな』

『君の配属先どうしよう』


「「はあ〜」」

 氷は、すぐそばで雷撃を食らい悲鳴を上げている犯罪者の声を聞きながら、自分の訓練メニューを明日からやること、クロノは、氷
の配属先の選抜を考え、同時にため息をついた。




















おまけ 犯人の悪あがきにより







「「「「「「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」」」」」」

「「「「があああああああああああああ」」」」

「きゅるるぃ〜」





 なんかやけにかわいい鳴き声が聞こえたが、無視する。

「「はぁ〜」」

 溜息がシンクロする二人。

「こんなときに召喚魔法なんて使いやがって」

「Aランク以上の魔法生物の強制召喚!こんなに!」

『環境に対応できないものから暴れだしている』

「もう、空戦陸戦問わず武装局員レベルじゃ対応できない」

「周辺住民の避難を」

「ですが、貴方だけでは」

「ブレッツコード」

【what's】

「緊急コード 99」

【all right】

「コール アタックバード ヒールバード」

「はぁ、他人に指示するの精神的に堪える」

「ブレッツコードは、消火と避難経路の確保、局員は民間人と一緒に避難、ハラオウン執務官は上空から戦闘サポートを頼む」

「「了解」」

「「節黎執務官、ハラオウン執務官。局員全員帰りをお待ちしています」」

「ああ」

「はい」










※フェイトが支払った金額は日本円で数千万円だったらしい。

※この時の氷は、一様本局執務官扱いなので、クロノが配属先を考えている。

※開発コード「アタックバード」多目的戦闘補助ツール

※開発コード「ヒールバード」多目的救急補助ツール

※ヒールバードの本格的登場は9話#5以降を予定。






車がデバイスとは。
美姫 「伝説のひき逃げアタックが!?」
はいはい。
連続投稿ありがとうございま〜す。
美姫 「この続きはこのあとすぐ!」



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