フェイトの唐突な攻撃によるアースラの被弾は、乗員に激しい苦境を要求することとなった。

 まず第一撃が機関室付近に直撃した後、電源室付近の構造材まで持っていく形で停止した。これにより、アースラの行動攻撃能力の全てが失われた。これがアースラにとって何を意味するかと言うと、ただ浮いているだけとなってしまった。ついで、艦内通路の一部が破損し、小規模な火災が発生、少なくない乗員が応急修理に費やされることとなる。

 第二撃も更なる被害を産む事になる。この局面での数少ない幸運――リンディが艦橋にいたことにより、直撃こそは避けれたものの、その攻撃は右舷を掠めながら飛び去っていった。しかし、その衝撃が二次災害を発生させた。衝撃によって内側の装甲が剥離――スプリンターが発生、内部に詰めていた人々を薙ぎ倒す結果となった。なお、その人々が詰めていた一室は魔道士待機室と呼ばれている。

 一瞬で混乱した状況にリンディは動揺を必死に抑えながら命令を下し始めた。魔道士に集合が命じられるも、集まったのはクロノ、アリシア、なのは、アルフの四人だけだった。ここにも被弾の波及効果が及んでいた。通常の、という補足が付くような魔道士達は死人こそ出ていないが、全員重傷とも言える傷を負っていた。当然、戦闘不能である

 最後の三人――恭也、ユーノ、リニスは居た場所が拙かった。第一撃が被弾した近くの、訓練室に三人ともいたのだ。訓練室そのもに影響はなかったが、艦内電源が停止したことにより、扉が(自動ドアだったので)開かなくなった。非常電源が作動することによって行動を起こすことはできたが、艦内通路が損傷したことによって即応が完全に阻止されてしまった。三人はアースラの全通路を把握できるほどに歩き回ってはいなかった。三人は正規の乗員ではないのだから、仕方が無いことだった。そして、案内を頼めそうな乗員は応急修理に忙殺されていた。平たく言えば、迷子になってしまった。

 リンディは顔を歪めながら、クロノ、アリシア、なのは、アルフに出撃を命じた。戦力の集中を待っていては、アースラが撃沈されてしまう。戦力の逐次投入は戦闘においては絶対に犯してはならないということは、もちろんリンディも知っていたけれども。

 一連の被害は恭也、ユーノ、リニスの三人が戦闘に参加するまで、六分程度の空白を作り出した。

 アースラの乗員はこれから発生する状況において、自分達の無力を痛感することとなる。

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 

第八話「ファイナルバトル」

 

 

 

「一体、何がどうなってるんでしょうか?」

 艦橋に向かって走りながらユーノが言った。

今、艦橋に全速力で向かっている恭也、ユーノ、リニスは情報過疎とも言える状態となっていた。魔道士の艦橋への集合が放送で告げられた後、放送は沈黙している。(実際は、応急修理の指示でそれどころではなかった)

「事故ではないのなら、攻撃だろうな」

 恭也が答えた。恭也の見立てでは、艦尾の付近に弾薬庫などは設置されていないようだった。艦内の人員の破壊工作――ということも考えられないわけでもないが、今の状況でする意味が無い。

(攻撃か)

 恭也は心の中で呟いた。誰が? まだ登場していない第三勢力? まさか、あるわけがない。ならば決まっている。

「おそらく、フェイトだ」

「それは考えられることですが、しかし」

 いくらジュエルシードでブーストされてると言っても、たった一人の人間が、時空管理局の艦を。

「ジュエルシードなら可能です。それを今フェイトは複数持っているはずですから、単独で攻撃をかけて大損害を与えることも可能なはずです」

 そう言って、リニスは苦り切った顔を作った。

「そして、私のミスです。ジュエルシードがあればそれくらい可能なことは解っていたはずなのに、それをリンディ艦長に進言する義務を怠ってしまいました…」

「心配することはないですよ」

 恭也が務めて明るい口調で言った。

「俺達は集合が遅れてしまいましたが、他の魔道士――なのは達が出撃しているはずです。もしかしたら、もう決着が着いているかもしれませんよ」

 恭也は言いながらも、自分の言っていることを欠片も信じていなかった。自らの言っていることには全て「かも」「はず」「おそらく」「きっと」の推測であって、確かな情報に則っているわけでもない。

 もちろん、推測しているようにカタが付いていれば良いと思っている。しかし。だが、しかし――

「そうなら、いいのですが」

 同じく、信じていないような口調でリニスが答えた。

 

 一方、艦橋は応急修理の指示で絶叫と復唱が飛び交っていた――三十秒程前まで。

 今は冷たく、固く、重い、何かと共に静寂が訪れている。

 艦橋内の人員は前面中央に配置されている大モニターに釘付けとなっていた。皆、眼を見開いて、またたきすらせず、唖然とした表情をしている。

 その中の一人が、漏らすように呟いた。

「そんな、馬鹿な」

 クロノ、アリシア、なのは、アルフ――アースラ残存魔道士隊は、壊滅していた。

 

 三度、海鳴臨海公園を決戦場にして始まった、想定外の状況で始まった想定外の戦いの第一段階は襲撃側――フェイトが戦闘の主導権を掌握した結果、ワンサイドゲームで終結した。

 

 本来のフェイトの戦い方とは

「軽快な機動力で敵を圧倒、隙を突いて大火力の攻撃を叩き付け撃破する」

戦術ではあるが反面

「防御に難があり、一撃でも受けると危機的な状況になる」

というバランスである。(後にワンショットライター・ドクトリンと呼ばれる)

 ならば、防御力を高めれば良いではないか、と思うかもしれないが、完全無欠のバランスなど存在しないものである。何もかもを高めようとすると、必ず中途半端になるのが世の常だ。もしも、機動力、火力を良好に保ったまま、防御力をも高めることができたならば、最強になれるだろう。もし、できるのであれば。

 彼女はそれを達成していた。ロストロギア、ジュエルシードと呼ばれる神話にすら使用されるような伝説の道具をもって。彼女はそんなことを望んでもいなかったが。

 

 その恐るべき性能に四人は成す術が無かった。何の準備もなしに唐突に戦闘をしなければならない状態に放り込まれたのも痛かった。常態ではない四人は翻弄され、チームワークが機能しないまま撃破された。

 最後に残ったのは、なのはだった。

 クロノはデバイスを持ったまま、木に叩き付けられて気を失っていた。

 アリシアはバルディッシュを(コアは無事だった)粉砕されて地面に倒れ、転がっている。

 アルフはアリシアがやられ、逆上して襲い掛かったところで遥か彼方に吹き飛ばされてしまった

 なのははレイジングハートこそ無事だったが、バリアジャケットの第一層を破壊され、傷だらけになっていた。

 なのはは地面に腰を落としている。ダメージで体が動かない、という理由のみならず、目の前の状況に圧倒され、士気(モラル)崩壊(ブレイク)を起こしかけているのだった。彼女はまだ年端もない少女なのだ。

 なのはに向けて、フェイトが足を進める。

 なのはは体をビクッと震わせて、レイジングハートを構える。けれど、それを持つ手は小刻みに震えている。魔法が何も、思い浮かばない。

 彼女は迫る。なのはの持つジュエルシードを奪うために、迫る。

 いやだ。

 迫る。

 誰か…誰か!

 近付いてくる

 ユーノくんクロノくんアリシアちゃん、誰か――!

 足が止まる。

 怖さに目を閉じてしまう。

 フェイトがブローヴァを大きく振りかぶった。

 お兄ちゃん――!

 澄んだ金属音。

 変化はそれだけだった。

 目を恐る恐る開く。黒色が目に飛び込んだ。そのまま見上げる。息を呑む。見間違えるはずなど、なかった。まさしく。

「お兄ちゃん…」

 恭也は、なのはに振り下ろされるはずだった一撃を、柄の方に鞘を打ち付けて止めていた。

「なのは、遅れてごめん」

 なのはの左肩を叩きながら、ユーノが言った。

「遅れてすみません」

 リニスが言葉をかける。

 恭也は言った。

「行くぞフェイト――君を止める」

 この時をもって決戦の第二段階は始まった。

 恭也は常人には感知できない速度で刀を抜き放ち、戦闘を開始させた。最初から二刀である。フェイトは光がない目を動かしながらそれに応じた。

恭也は徹をほぼ全ての斬撃に込めながら攻撃をする。しかし、これまでと同じ様に攻撃は防がれる。今度は速度を上げて返す。射抜の動作。構えたのは一瞬。引き絞られた弦の速さで攻撃をする。跳ね返される。だが、構わない。射抜からの派生で虎切を追撃に行う。弾かれる――フェイトの攻撃。雷の鎌が光の残像を残しながら迫る。受けることはできない。回避する。

恭也はひやりとした。以前戦った時よりも、随分と速度が上がっている。しかも、ジュエルシードのブーストでスタミナと魔力は無限大ときている。ただし、フェイトの体が余りに激しいエネルギーのやりとりに付いていける保証は無い。そして、こっちはこれまでの戦いで神速を使いすぎたせいで少し体にガタが来ている。

連続攻撃を回避しながら、恭也は思った。最後までもってくれよ、俺の体。

フェイトの攻撃の切れ目でカウンターの斬撃。受けずに避けられる。空を飛んで、上に行く。

(逃がすか)

 恭也は躊躇わずにこの日まで練習していた「空を飛ぶ」魔法を唱えた。瞬間、彼の周りに山吹色(サンライトイエロー)の魔方陣が発生した。体が宙に浮く。追いついた。フェイトが振り向く。地上で戦っていた時よりも、早くフェイトが機動する。

しかし、それは恭也も同じだった。神速には及ばないが、全体的には三割増しの速度で恭也も動き始めた。

限りなく地味であったが、これが恭也の「切り札」だった。

 

 「空を飛ぶ」

 ということは初歩的な魔法である。そして、初歩的故に、魔力の消費量は少ない。これを効果的に使えば、相手を翻弄することが実に簡単にできる。けれども、効果的に使う魔道士は少ない。本来、魔道士同士の戦いとは

「集団戦」

が基本なのである。隊列を組み統制射撃をし、集中砲火をする。何故なら、魔力がAAA+を超える魔道士など滅多にいないのが実情なのだ。才能的には平凡な魔道士の方が(当たり前な話だが)多いし、集めやすい。質より数で押したほうが効果的だし、使いやすい。

考えても見れば良い、集団戦で何よりも統制を行わなければならない状況で誰かが早く動き回っても、場が混乱するだけである。(陽動という意味で必要な時もあるかもしれないが)

もちろん、動体視力などの反射神経が付いていけないなどの問題もあるが「空を飛ぶ」の派生である、ダッシュ機能は急加速による回避、という意味合いで使われる場合が多い。

 

恭也はそんな常識を知らなかった。

ただ単に潜在的な魔力が少ない故にその戦法を思い付き、実行していた。物理的な意味合いでの攻撃力は保有していたし、動体視力云々の問題も言うまでも無かった。

全体的な戦力倍増要素を手にした恭也は自分の本来の目的――牽制による時間稼ぎを開始した。もちろん、自分の手でフェイトを倒せるなど思ってもいない。

 

ユーノは早くも最高潮を迎えつつある恭也とフェイトの戦いを見ながら思った。

(早く)

 なんとかしないと――

 ユーノはなのはに言った。

「なのは、よく聞いて。今から君に僕の魔力とリニスさんの魔力を渡す」

 

 高町恭也では、フェイトに勝てない。

 これは既に何度も確認された明確な事実である。それは恭也が「空を飛ぶ」魔法を覚えた現在でも変化は無い。フェイトの魔力、体力が無尽蔵で無ければ、その目はあるが、今はそれを期待できる状況ではない。ならば、負けなければいい。

 

「恭也さんが陽動と牽制をかけて、こっちに対する注意を逸らすと同時に、回復しない程度にフェイトの魔力を減らしてくれる。――その間に残った魔力をなのはに集中させる。そして、上手く隙ができたら」

「私の、魔法で…?」

 ユーノが頷いた。

なのはは目を少し伏せて、考えた。

 怖さはまだ残っていた。左手を見つめる。まだ小刻みに震えている。叫びたくなるほど、怖い。

(でも)

 空で必死に戦っている兄の姿を見る。その相手の少女も。

 ――私が、やらなくちゃ。二人を助けるために。

「…わかったよ、ユーノくん」

 決意を込めて言った。

 

 一方、恭也は冷汗を流しながら剣戟を交えていた。

フェイトの攻撃を遮るので精一杯だった。そこには技術など何も無く、ただ振り回すだけ。ただし、凄まじい速度と破壊力の上に、切れ目が無い。

それでも恭也は瞬転の隙を付くこと、魔法で機動力が増強されたことを味方にして、斬撃を何発か命中させることに成功していた。だが、それだけだった。

どう見ても、攻撃が当たっても、当たったことによる影響が見えなかった。

恭也は繰り出される攻撃を紙一重で回避していく。空に浮かんでいるので神速は使用不可能だ。

(攻撃は)

 当たっているはずだ。ならば、なぜ影響が無いのか? おそらく、回復しているか、痛覚などを麻痺させているか、あるいはそのどちらも。両方である可能性が高いだろうな。

 大振りでわずかな隙。すかさず攻撃。至近で弾かれる。連続攻撃。弾かれる弾かれる命中する。意にも介さず反撃される。回避。距離を取る。体勢を立て直す。三人がいる所をちらりと見る。

 ユーノ、リニスさん、早く。押し切られる。

 フェイトは更なる攻撃動作を見せた。休めるつもりはないようだった。飛針で牽制。叩き落される。向かってくる。

(恭也さん、準備完了しました――いきます)

 リニスからの念話だった。

 終了と同時にフェイトの四肢を緑色と茶色のバインドが絡め取った。ユーノとリニスの最後の魔力である。

下に見える木々の隙間から、膨大なピンク色の光が見えた。

 

 既に、魔力の移管は完了していた。

 両端に控えるユーノとリニスが頷く。彼方に見えるフェイトにはバインドが発生しているはずだった。

「なのは、今だ!」

 ユーノが叫ぶ。

 なのはは意識を集中した。

「レイジングハート…お願い!」

Yes Mastar, Shooting mode setup. Stand by ready!

デバイスが主の願いに応え、レイジングハードの開放部が全て開放された。開放部からピンクの光が翼のようにはためく。

 なのはは、貰った魔力、残っていた魔力、周囲から徴収した魔力残滓、その全てをこの魔法に押し込もうとしている。レイジングハートの前に超巨大な魔法陣。すぐ後ろにピンク色の光の球。膨れ上がり球体になる。叫んだ!

「スターライト…ブレイカーーー!」

 奔流が発生した。

 

 中距離で発射された、必殺のスターライトブレイカーはバインドで防御魔方陣を張れなかったフェイトに完全に直撃した。影響が及ばされない場所まで退避した恭也の目にも結果が激しい光輝となって映った。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 レイジングハートから魔力残滓が排気される。魔力も気力も体力も全て消耗しつくした、なのはは力が抜けて、その場にへたりこんだ。

「なのは、大丈夫?」

 傍らにいたユーノが心配そうに、けれど笑顔で話しかける。

「うん、大丈夫…ちょっと休めば――」

 なのはは言葉を最後まで言い切ることが出来なかった。

 ユーノは横から攻撃を受けて、衝撃で弾き飛び、転がった。

「――え」

 余りの突然に、なのはは対応することもできなかった。思考が痺れる。呆然と、目を巡らせる。そこにはスターライトブレイカーの直撃を受け、バリアジャケットがボロボロになった、フェイトがいた。

 

 結果から言うと、スターライトブレイカーでは、フェイトの魔力を削りきることができなかった。簡単に言うならば、最後の詰めが足りなかった。ギリギリで耐え切ったフェイトは三人のいる方向に向けて、全速で自らを突進させた。

 恭也はその行動を妨害することができなかった。スターライトブレイカーの影響外まで退避した時の、方向が仇となった。なのは達から一番遠い方向に退避してしまったのだ。恭也らしからぬミスだった。恭也もフェイトと刃を交えることで徐々に混乱が拡大していたのかもしれない。警告を行うことぐらいはできたかもしれないが、恭也はまだ「空を飛ぶ」魔法しか覚えていない。

 当然、恭也は全速力で追いつこうとしたが――間に合わなかった。ユーノを守れなかった。そして、今、なのはも。

 

 鎌が振りかぶられる。さっきのように。体が動かない。逃げることもできない。

「あ、あ、あ…」

 意味の無い呟き。恭也は間に合わない。目を閉じることもできず、鎌は、振り下ろされた。

 鈍い音。

 か細い、呻き声が聞こえた。

「リ、ニス…」

 呻き声を出したのはフェイトだった。目に光が戻っている。

 攻撃は、なのはを庇ったリニスに当たった。

「フェイト…どうか…」

 リニスが倒れる。

 フェイトがデバイスを、落とした。膝を付く。自らの体を自らの両手で抱く。

「う、あ、ああぁぁぁぁぁ!」

 叫び声。胸元から青い光。彼女の体を吹き飛ばすような魔力が走る。耐えれられない体が軋みをあげる。フェイトは、それで良いと思った。こんな悲しい世界なんて――

 

恭也ようやく到着したのはその時だった。

 ユーノとリニスが倒れていた。なのはは茫然自失状態だった。更に、恭也は戦闘行動と急激すぎる加速をした影響で、魔力が底を尽きかけている。

 青い光が収まる。最後の決戦が開始された。

 再開された戦いで恭也はこれまでとは違い、完全な劣勢に陥った。体力、魔力が(先も述べたが)尽きかけている。受身になり、翻弄される。

「くっ!」

 刃が服を掠っていく。燕返しに二の太刀、参の太刀、連続連続連続…

 焦燥が恭也の身を焦がす。くそっ、どうする。何か方法はないか。

近くの三人はまともな状態ではない。先に撃破されたクロノを始めとする三人も反応はまだない。

このままでは、ジリ貧だ。

恭也は最後の力を振り絞りながら絶望的な戦闘を続けた。何か、何か無いのか。

避ける。受ける。弾く。鋼糸、飛針など、使えるものは何もかも使う。隙を見つけて反撃もする。影響は無い。効果は無い。何も、起こらない。

諦めるな、方法は、何か、必ずあると心に言い聞かせる。

御神の剣士たるもの、最後の瞬間まで諦めてはならない。

 

その状況を、アースラの面々は憔悴した面持ちで眺めていた。

魔道士達は、皆撃破されてしまった。

アースラの応急修理は何とか成功したものの、兵装はその全てが使用不能になっている。

残る対人戦闘能力を持っているのは、リンディだけだ。リンディは自分が出撃することによって、七人の魔道士達を回収し、撤退しようと考え出していた。残るは、本部から応援を呼び、なんとかするしかない――間に合わない可能性は高いが。

リンディは歯が砕けそうなほど力を入れて噛み締めた。こんなことになるなんて。

変化が起きたのはその時だった。

艦橋にざわ…という音響が響く。今度は何、と思ってリンディが顔を上げた。もう大概のことにリンディは驚かないと思っていたが、更に驚愕した。

戦闘の状況を映しているモニターが山吹色(サンライトイエロー)で満たされていた。

 

恭也は何が起こったのかわからなかった。

突如として、光が湧き上がったのだ。それも、自分の魔方陣の色の。

『…識……、……主』

 恭也の頭の中に声が響いた。

 何なんだ、これは――

驚きつつも、恭也の頭は冷静だった。

 恭也が最後に見たのは、盛大な太陽光の中でも、なお、金色に光り輝いてフェイトに向かう一本の線だった。

 恭也は迷うことなく『八景』をその線に沿って滑らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 ごめんなさい、理屈が多いし、長いし、読みにくいですね…

 こんにちは、向日葵です。ここまで読んでくださった方、有り難う御座います。

 「最後の決戦」編いかがでしたでしょうか? 個人的に気張って戦闘描写をごまかしつつ書いて見ましたが、怪しいところがございましたら、指摘のほどをよろしくお願いします。

 次回最終回です。もし、全てを読んでくださった方がいらっしゃいましたら、最後までお付き合いくださると、作者としてこれに勝る喜びはございません。

 ではまた次回でお会いしましょう。





滅茶苦茶ピンチ!?
美姫 「このまま敗北してしまうのかしら!?」
最後に放った恭也の一撃。
これ次第か!?
一体、どうなるんだ!
美姫 「とっても気になる所で次回!」
次回、次回、次回を待て!
美姫 「て、アンタが偉そうに言うな!」
ぶべらっ!
美姫 「それじゃあ、次回も待ってますね」
ま、待ってます……。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る