ゴールデンウィーク。大型連休。喫茶翠屋の面々+子供達の友人+1匹は例年通り家族旅行に出掛ける事となった。そんな中、高町なのはは気が晴れなかった。先週に出会った謎の魔法少女のことを思って――ではない。ジュエルシードが最近見付かっていない…ことでもない。

「はぁ〜…」

 なのはは車の後部座席に座りながら、ため息をついた。自分達の車のすぐ後ろを走っている車を見た。助手席。兄、高町恭也がそこに座っている。それが彼女の悩みの原因だった。

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 

第ニ話「ワイルドキャット」

 

 

 

 先週のあの少女と遭遇戦を展開した夜、なのはとユーノは恭也に全てを話した。これまでの手伝いのこと。これからどうするかと言う事。そして――魔法の事。

 ユーノの意に反して、恭也は別段魔法のことは驚かなかった。恭也はもう魔法を身をもって体験している。既に信じる信じないの議論は意味が無い。(それに、超能力とかHGSとか霊力とかがあるんだから魔法が存在してもおかしくはないと思っている)

「…で、ユーノはなのはに手伝ってもらっていた、そういうことか」

「はい、そうです」

 恭也、ユーノ、なのはは恭也の自室の中で念話をしていた。恭也は魔力が微塵もないので自分から念話を開始することはできないが、『受信』すれば『返信』という形で会話ができるらしい。

「恭也さん、なのは――いえ、なのはさんを危険なことに巻き込んでしまったのは謝ります。恭也さんが反対するのでしたら、僕は高町家を出て行って、これからは一人で封印をする覚悟です」

「ユーノくんっ!? 一緒にジュエルシードの封印をしようって言ったんじゃ――」

「そうだよ、でも」ユーノは暗い声で言った。「今日みたいな出来事は正直言ってイレギュラーだった。けど、あの女の子と同じ目的――ジュエルシードの封印を続ける限りきっとまた遭遇する。今回は何とか無事に済んだ。だけど!」

 ユーノは叫び、言った

「――だけど、今度もし遭遇したら、今度こそは…」

 今度こそは無事に済まないかもしれない。そして、本当にそれが最悪の結果を呼ぶのであれば、死――

 ユーノは心の中で首を振った。そのようなことを想像するなと自分の心に自分で命令する。なのはも少し背を震わせる。今日、危うく何の知覚もせずに人生が終わるかもしれなかった、という事実に。

「とりあえず、俺の意見を言わせてもらうが、俺はなのはがユーノを今までどおり手伝うという意見に反対はしない」

「恭也さん!?」

「お兄ちゃん!?」

 なのはとユーノは驚いた。二人とも恭也は絶対に反対すると思っていたのだった。ユーノは既に高町家を出る決心をするくらいに、なのは予想されるその恭也の反発を泣いてでも強硬しようと思う程に。なのははともかく、付き合いがほぼ皆無と言って良いユーノすらそのような感情を抱くような男が高町恭也だった。

「そりゃ、ユーノがなのはに無理強いした、とかなら話は別だが」恭也はなのはの目を見て、言った。「なのはが、自分で決めたんだろう?」

 なのははその目を真っ直ぐに見返した。この上なく、真剣に。

「…うん」

「なら、俺に言うことはない。これまで通り、ユーノの手伝いをすれば良いさ」

「恭也さん! この事は危険が――」

 ユーノは緊張した声を出した。ユーノ・スクライアは自分のせいで他人が傷つくのは大嫌いというある意味当然で、真っ当な感情を持った人間だった。

「何、心配するな。俺もやるさ」

「…え? 俺もやるってお兄ちゃん、何をするの?」

「決まってるじゃないか、俺もユーノの手伝いをするんだ」

「え…え、え、えぇぇぇぇぇっー!!」

 恭也は顔をしかめた。

「そんなに驚くことはないだろう」

「でも、お兄ちゃん…魔法は?」

「使えるわけがないだろう。今日初めて聞いたんだぞ」

「ユーノくん…」なのははユーノを見た。

 ユーノは考え込み難しげな声で言った。

「うーん…恭也さんは魔力が無くて、魔法が使えないけど、昼間に見たあれぐらいなら充分以上…」

「昼間?」

「あ、そうだ。まだ言ってなかった。なのはが魔法の衝撃で気絶した後、あの女の子と戦ったのは恭也さんなんだよ」

「……え? あの子を退かせたのはユーノくんじゃないの?」

「僕じゃ、あの子の相手をするのは無理だよ。魔力とか色々――才能面での差がありすぎる」

「嘘…」

 なのはが恭也にこのことをそもそも打ち明ける要因となったのはユーノがなのはに

「恭也さんに僕達と魔法のことがバレた」

と言われただけであったので、なのはは自分の兄が少女と戦ったということを想像してもいなかった。大方、自分とあの子との戦いを影で見られていた、程度だと思っていたのだ。

 なのはは恭也を見つめた。

(いつもトレーニングとか凄いしてたし、剣術をしてるのも知ってたけど)

 お兄ちゃんはそこまで強いなんて

「何なら、なのは。今度、一度やってみるか?」

「え…何を?」

「模擬戦だよ。模擬戦」

 模擬戦は怪我が治り、魔力もきっちり万全に回復する四日後と決まった。

「ねぇ、ユーノくん」なのはは恭也と別れ、自分の部屋に入ったところでユーノに話しかけた。「お兄ちゃんって、そんなに凄かったの?」

「前になのはがいきなりレイジングハートを使いこなして魔法を使ったときも凄く驚いたけど、恭也さんの戦いを見て――それ以上に驚いたよ。あれは…とてもじゃないけど、人間業じゃないね」

 

 

「はぁ〜…」

 なのははまた車の中でため息を付いた。

 その四日後に裏山で行った模擬戦でなのはは練習用の木刀を使っていた恭也に刀を抜かせることも出来なかった。要するに、散々に負けたのだった。なのはは最終的にディバインバスターをも使った全力全開で戦ったが…攻撃を回避され、正面攻撃で首に木刀を突き付けられたこと数知れず。背後に回られ、チェックメイトを宣言されたこと幾数回。ついで、なのはの攻撃は一撃たりと恭也にかすりもしなかった、という事実がその現実に追い討ちをかける。

 そこまで目茶苦茶に負ければ誰だって気は滅入る。そして、なのはは良い意味で『負けず嫌い』という高町家(御神と言うべきかもしれない)の気概を引き継いでいたから尚更だった。

「どうしましたか、なのはちゃん。さっきからため息ばかりついて」

横に座っているなのはの友人月村すずかが心配そうに話しかけてきた。

「あ、いや、ううん。この旅行が終わったらまた学校だなー、と思ったら自然にため息が…」

 なのはは咄嗟に嘘を付いた。流石に『お兄ちゃんと真面目に戦っても勝てないんだけど、どうしたらいいかな?』などとは言えるわけがない。

「なのは、今からそんな話しないでよ。とりあえずは旅行が終わってから言いなさいよね」

すずかの隣に座っているアリサ・バニングスが不機嫌そうな声を上げる。

「あはは…」

 そのまま三人は楽しげに会話を続けた。

(なのは)

 ユーノが念話でなのはに話しかけた。なのははユーノを見る。ユーノは前席の美由希の左肩にちょこんと座っている。

(なのは、旅行ではあまり、重いこと考えないで。ゆっくり息抜きしないと駄目なんだからね)

(わかってる、大丈夫だよ)

 なのはの脳裏にあの女の子がよぎる。

 慌てて首を振る。言ってる側から考えてないで、この二日間は子供らしく楽しまなきゃ!

 

 

 そして、一行が旅館に到着し、まず最初にしたことは温泉に入浴することだった。(桃子と士郎はいずこかへ消えたが)ユーノはなのは他二人に女湯に連れて行かれそうになるのを全力で拒否し、『恭也さんに色々なことを教えてもらうため』という名目上の大義名分の入手によって男湯に入ることとなった。

 なのははかなり不満気だったが――ユーノはホッとしているようである。ともかく、恭也とユーノは男湯へ入った。

(ふう、やっぱりこっちの方が)

落ち着く――と、ユーノは一人ごちた。それにしても、なのはは僕が男の子と解っていて何故一緒に入りたがるのだろう。そうゆう方面での発育がまだなっちゃいないんだろうか?

 ユーノはふと思い付いたことを恭也に聞いてみた。

(恭也さん、恭也さん)

(ん?)

(なのはって、まだ士郎さん――お父さんとまだ一緒にお風呂に入ってるんですか?)

(いや、それはない。昔っから何故かなのはは父さんと風呂に入るのを物凄く嫌がってな。まぁ、父さんは自殺しそうなほど悲しんでたが――と、そんなことはどうでも良い。それがどうかしたか?)

(いえ、ちょっと聞いてみただけです)

 謎が深まっただけだった。

(あ、そうだ。恭也さん以外の家族や知り合いの皆さんがいないので元の姿に戻っておきます)

 ユーノはそう言って、物陰に入った。少し待つとなのはと同じ年かさくらいだろう少年が出てきた。

「ユーノか?」

「はい、そうです。これが僕の元の姿です」

 互いに人型なので、会話は念話ではなく、普通に声を出して交わしている。

「魔法はそんなこともできるのか。出来ることの範囲が広いな」

「ええ、それはもう。ミッドチルダ――僕の生まれた世界では魔法学院っていう魔法の学校があるんですけど、そこの授業なんて余りに魔法が複雑で多岐に渡りすぎるんで頭がこんがらがっちゃいますよ」

「学校はどこの世界も同じ様なものみたいだな」

 喋りながら二人は服を脱ぎ、浴場に入る。室内ではなく、室外の露天風呂である。湯は薄めの褐色をしていた。少し鉄分が混じっている湯らしい。

「ユーノはその魔法学院での成績は良かったほうだったのか?」

「あー、いえ、歴史とか計算とか体を使わない学科での成績はそこそこに良かったんですけど…実技の方は良くて中の下、といったところでしょうか」

「へぇ、俺と真逆だな。俺は体育とかが得意だったけど――」

 それからは湯につかりながら、たわいも無い世間話が続いた。ユーノが色々なこと(例えば、恭也の全身の傷や、あの『技』のこと)を尋ね、恭也がそれに答える。逆の場合もあった。恭也がなのはの魔法の才能について尋ね「紛れも無い、天才です」と言われると恭也が嬉しそうにする場面もあった。

 

 

「あ、お兄ちゃん」

「恭也さん」

 浴場から出て、着替えて出たところで恭也と(既にフェレットに戻っていた)ユーノはなのは、すずか、アリサと鉢合わせした。普段の恭也はもっと風呂から早くあがるのだが、温泉であるということとユーノと話していたと言うことで、少し長風呂になってしまったのだ。

「今からちょっと旅館の中を探検するんだけど、お兄ちゃんとユーノくんも一緒に行かない?」

というなのはの誘いに恭也は保護者的な気分で、ユーノは何となくで参加する事になった。

 そのまま四人と一匹で歩き出す。

 年頃(といっても小学三年生だが)の女の子が三人もいるのは実に騒がしい物である。三人は「温泉に入ったんだから、卓球をしない?」とか「お土産を見に行きたい」とか「こうゆう旅館には良い感じに古ぼけたゲームコーナーがあるのよねー」など言葉を交わしている。ちなみに、最後の言葉はアリサの発言である。

 恭也はその情景を楽しそうに眺めながら歩いている。前から女性が歩いてきた。迷惑にならないように三人に避けるように言う。女性の顔を見る。目が合った。

――!?

恭也の顔に驚愕が走るこの女性は、先週の――

「どうかなされましたか?」

 女性が話しかけてきた、恭也に向けて。

「あ、いえ」恭也は急いで顔を取り繕って言った。「あなたが、知り合いに余りにも似た顔でしたもので…失礼しました」

女性はくす、と笑って恭也を見た。

「あらあら、ナンパの常套手段ですか?」

 その言葉を聞いたアリサとすずかが反応する。

「恭也さん、すずかのお姉さんみたいな美人な彼女がいるのに浮気するなんて…」

「恭也さん、お姉ちゃんは遊びだったんですか…?」

「最低〜」

 最後はなのはの言葉。悪ノリなのに妙に連携のとれているところが恐ろしいことだ。

「……〜っ。悪かった。勘弁してくれよ」恭也は女性の方にも向いて謝った。「すいません、こんな」

「いえいえ、こちらも変にからかってしまったようで。では」

 女性は最後までくすくす笑いながら去っていった。アリサ、すずか、なのははニヤニヤしながら恭也を見ていた。

恭也はため息をついた。

(恭也さん)

(ユーノ、気付いたか?)

 念話で会話をする。どちらも深刻そうな声色だ。

(ええ、気付きました。今の茶色い髪の人は先週、あのの女の子を助けた)

(おそらく、間違いはない)

 恭也は思った。どんな理由で彼女が今ここにいるのか――その理由を考えて、すぐにその理由の合点が行く。

 ジュエルシードだ。そして同時に、十中八九あの女の子もここに来ているだろうな。

 

 

(リニス、聞こえる?)

 リニス、と呼ばれたさっき恭也達と話していた女性は室内の浴室の風呂に座りながら己の主人の念話に応じた。

(聞こえてますよ、フェイト)

(ジュエルシードの位置は大分特定できた。夜には捕捉できると思う)

(そうですか…流石フェイトです。それでこそ私の主人です)

 そう言ったリニスの胸の奥に強い痛みが走る。止めて無くてはいけない、という強い良心の反抗。そんなものを考えるな。という『別の心』の干渉。息が苦しくなる。汗が出てくる。きつく握った右手の拳で胸を押さえる。荒く息を付く。考えるな。考えるな。考えるな。――考えるな!

(どうかしたリニス? 急に黙って)

 心配そうな声色。

(いえ、何でも…ありません。そういえば、この旅館にいましたよ)

(え?)

(あの白い女の子に、黒い剣士が)

(…そう。どうだった?)

(フェイトなら大丈夫ですよ。言った通りに戦えば)

(うん、判ってる…また夜に)

 念話が終了した。さっきのような息苦しさは無くなっていた。自分の主人のことを考える。心配を。

(フェイトにはまだそんなに)

『干渉』がそんなに進んでいないのだろうか? いや、それはあくまでも『まだ』なのだ。このままジュエルシード集めが順調にいけば――順調にいけば。おそらくは。確実に。きっと。

どうすればいいのか、と考える。頭にあの白い女の子と黒い剣士が浮かぶ。奥歯を強く噛み締める。使い魔としては最悪に並ぶ考えがよぎる。――主人のために主人を売る、ということを。頭を振る。もしかしたら、まだ方法があるかもしれない。『そんなこと』をしなくても何とかなるのかもしれないと信じる。信じたそばからそれはただの偶像かもしれないとも思う。何にせよ。

――私はそう遠くない未来、どうしようもない決断を迫られることになるんだろうな。

 

 

(なのは、起きてる?)

(うん、起きてるよ)

 夜、左にアリサ、右にすずか、中央になのはと布団を並べて寝ているところにユーノが話しかけた。

(どうしたの? ユーノくん)

(言うべきか、迷ったんだけど…昼間に、廊下で恭也さんをナンパと勘違いしたあの女の人…)

(それが?)

(多分、先週の女の子の関係者だと思う)

(えっ…! 私はあの時、あの人を見なかった、けど…)

(なのはが気絶して、恭也さんがあの子を何とか追い払った時に出てきたんだ)

(その女の人がいる、ということは)

(…うん、あの子がいる可能性も高いと思う)

(じゃあ、もしかしたらこの辺りにジュエルシードがあるということも――っ!)

 感じた。言った瞬間に感じた。ジュエルシードの反応だった。

(ユーノくん!)

(僕も感じた! 僕は恭也さんを呼んでくるから先に行って!)

(うん!)

 ユーノは隣室にいるはずの大人二人に気付かれないように部屋を飛び出して行った。なのはは寝ているアリサとすずかを起こさないように服を素早く着替え、髪を結び、部屋の窓から飛び降りる。幸いにも部屋は一階だ。少し感じる強い衝撃も魔法で軽減する。

 なのはは走る。感じる方向に全力で。同時にレイジングハートに祈りを込める。(stand by ready set up)の声ともになのはは変身する!

 変身終了と同時に恭也とユーノが追い付いてきた。言葉は要らない。顔を見合わせ頷くだけで三人の意思は三人で了解された。

 しばらく走った後に森を抜ける。観光用に川に架けられた昔の作りの橋の上に、彼女達はいた。少女の右手の指には既にジュエルシードがあった。

「やっぱり、来たか」

 少女が小さく呟いた。側に控えた女性――リニスが少女を庇うように立ち塞がった。

「それを、ジュエルシードを! どうするつもりなんだ! それは危険すぎる物なんだ!」

 ユーノが叫んだ。

「貴方に答える義務はありません」リニスがそれに答え、なのは達を正面に見据え、魔方陣を展開した。「フェイト、予定通りに」

「…本当に大丈夫?」

 心配そうな声を出す彼女の視線の先には先週自分に屈辱を味合わせた(と思っている)黒い剣士がいた。あの男の人だけは、油断できない…!

「大丈夫です。あなたはあなたの役割を」

「…うん」

 ユーノはリニスの魔法に備えて防御魔法を展開――しかし、リニスはそのまま魔法を撃たず、爆発的な機動力で『恭也に』迫った。リニスはまだ正面に魔方陣を展開している。

恭也は『神速』を発動した。これで逃げ切れるはずだった。

「しまった…! これは恭也さんのみを対象とした移動魔法…」

ユーノがそこまで言った瞬間、魔法は起動した。ユーノとなのははその急すぎた予想外の攻撃に何の反応も取ることが出来なかった。

全てを理解した恭也は移動しきる前に叫んだ。

「ユーノ、なのはのサポートを…」

 頼む、と言おうとした瞬間、恭也はもう既に今居た場所ではないどこかに立っていた。目の前には恭也をここまで飛ばした本人が立っている。

 『八景』に手を伸ばす、しかし抜きはしない。出方をうかがう。襲い掛かっては来ない。

「あなた達は一体、何が目的なんですか」

 恭也が話しかけた。彼女が応じる。

「目的なんて、ありはしません」

 彼女は魔方陣を展開した。周囲に光の球が出現する。一つ、二つ、三つ、四つ…まだ増える。五つ、六つ、八つ、九つ…

「どういうことですか、目的がない、とは」

十七十八十九二十…

「そのままの意味です!」

 その声と共に光球から槍状の光が発射される。思った以上に速度が速い。最初の数個は普通に回避する。しかし、十個に達する辺りから槍自体の速度も速くなる。一度に襲い掛かる数も増えてくる。恭也は『神速』を発動。全弾を回避に成功した。

「貴方は、一体、何のために戦っているのですか」

 恭也がまたも聞く。

「私はあの子の――フェイトの使い魔です! 私はあの子のためなら――!」

 また光球からさっきと似たような光の槍が発射される。さっきと似たような情景がまた作り出される。恭也は神速を使って彼女に攻撃することも可能だった。しかし、攻撃はしない。回避回避回避回避、回避…

「本当にそうであるなら、何故、あなたは――!」

 そんなに悲痛な顔をしているのか。と言おうとした瞬間、攻撃が止まった。

「あの白い少女とこちら…フェイトの決着が着きました」彼女は険しい顔で恭也に告げた。「今回もあなた達の負けです」

 恭也は思った。少女――フェイトというのか――となのはにはまだそんな実力の差があるのか。目の前の彼女が魔方陣を展開した。さっきの『飛ばされた』経験からそれは移動魔法だと恭也は解った。

「さよなら、黒い剣士――どうせまたすぐに会うことになるのでしょう」

 刹那、『女性』は消えた。恭也は思い出す

『目的なんて、ありはしません!』

 彼女の言葉。どういう意味を持っているのだろうか? そのままの意味、とは? 恭也は遠くに見える、自分達の旅館だろう光に向けて歩き出した。恐らくは自分の心配を案じているであろう、なのはとユーノの場所に戻らなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

魔法少女リリカルなのは+ 第ニ話をここまで読んでくださった方、有難う御座います。

こんにちは、向日葵です。

まだ二回目ですが、長く読みにくい話が続いています(汗)

このSSが少しでも『面白い』と思ってくださった方、第三話を読んでいただけると幸いです。

では、また次の話で。





リニスの作戦により分断された恭也となのは。
美姫 「どうやら、その策は成功したみたいね」
ああ。それにしても、フェイトには何かあるみたいだな。
美姫 「リニスにも、ね」
いったい、どうなるのか楽しみ。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。



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