設定はまったくのオリジナルです。
違うとお思いの方は然るべく。
そうでないお方はお楽しみ?下さい
葉弓さんのシナリオライター
どうすればいいと思う?。どうすれば乗り越える事が出来ると思う?。
重く圧し掛かるように心に響く魂の叫び。
「恭也。あんたシナリオ書いてよ」
ことの発端は桃子かあさんの一言であった。
「母さん、一体何の事だ」
「来月。商店会の感謝セールがあるの。感謝セールの一環に劇でもやろうって事になったのよ」
「それと俺とどう言った関係があるのか分からんが」
「そこで何をするかが議題にあがったのよ。それで剣劇でもって事になったのよ」
「そこまでは分かったが、なぜに俺なんだ」
「あんた、学園祭で赤星君とやったじゃない、牛和丸」
これが悪夢の始まりだ。
ここは駅前のクレープ屋アマンドセーヌ、通称アマンの店内。
「高町、聞いたぞシナリオの件。どう言ったものを考えているんだ?」
赤星勇吾、東商店会の鮨処”つるぎ”の長男で俺の親友でもある男が聞いてくる。
「分からん、何を書いて良いのか分からんのだ」
「お前、文才無いからなあ、でも、桃子さん言ってたぞ、期待してくれって」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「高町、手伝ってやりたいんだが・・・・」
勇吾が言い終わるまでに口を挿んだ者がいた。
「私がお手伝いします」
言い切ったのは葉弓さんだった。
「葉弓さん、お久しぶりです。此方には何時来られたんですか」
「昨日此方に着いたんですよ、お久しぶりですね。此方は確か・・・・」
「紹介します、コイツは赤星勇吾。俺の友人です」
「赤星勇吾と言いますよろしくお願いします」
「ご丁寧に、神咲葉弓と申します、よろしくお願いします」
「此方こそお願いします。で、神咲さんてことは、薫さんや那美さんとは」
「薫ちゃんや那美ちゃんは、従妹になります」
「それよりも葉弓さんがどうして此処に居るんですか」
誰かと待ち合わせかと思い店内を見回す恭也。
「恭也さんたちが入るのが見えたので私も入ったんです」
はっきりとそう言い切る葉弓。
「・・・そうですか」
「ごめん高町。俺先に帰るわ。じゃ葉弓さんこれで失礼します」
勇吾は家の用事があるらしく先にアマンを出た。
「恭也さん。どうして相談してくれなかったんですか?」
どういった風に連絡すればいいんだ、と心の中で突っ込みながら応えた。
「それが相談とかする以前に今朝方聞いたんです。連合商店会の売り出しの
余興に催で劇をするって」
「そうなんですか。じゃ早く演目を決めなきゃいけませんね」
「演目を決めるって?どう言った事でしょう」
「どの様な劇を演じるかです。シナリオでしたら幾らでもあるじゃないですか」
「ありますか?」
「ええ、幾らでも。善は急げと言うし、これから一緒に考えましょう」
と言う事で俺と葉弓さんはアマンを出た。
行く先は俺の家だ。玄関を開けると見知った履物が複数あった。
「ただいま」
「お邪魔します」
この時間だとみんな帰っているだろう。
「どうぞあがってください」
「じゃ失礼します」
リビングへ案内した。リビングのソファにはなのはが座っていた。
「お帰りなさい、お兄ちゃん」
「これは妹のなのはです」
「なのはちゃんて言うの。こんにちは」
「こんにちは、お姉ちゃんはお兄ちゃんの彼女さんですか」
「なのは、此方は神咲葉弓さんといって、那美さんや薫さん親戚の人だ」
「そうなんですか。葉弓おねえちゃん」
「ええ、そうよ。じゃ私はなのはちゃんと呼ぶね、仲良くしましょうね」
そう言いながら、なのはの横に座って髪をなぜる。
「でも、なのはちゃんの髪ってさらでさら気持ちがいい」
葉弓に頭を撫ぜられて気持ちよさそうに眼を細めるなのは。
俺たちの声を聞きつけて美由希や晶、レンがリビングにやって来た。
「おかえり、恭ちゃん」
「「お帰りなさい、師匠」」
「ただいま」
「それと隣の人はどちら様かな」
これまでの経緯を話す。葉弓は黙って聞いていた。
「母さんのやりそうな事ね」
「そうですね、桃子さんらしい」
「葉弓さん、お願いします」
美由希やはのは、晶にレン。彼女らを早速味方に付けた葉弓。
シナリオに託け、頻繁に高町家を訪れるようになった。
今日は昼から葉弓は高町家に来ている。
「恭也さん。これまでの経験を元にシナリオを作る事もできると思うんですけど」
「けどなんでしょうか」
「私思うんですけど、いっその事恋愛物語風に仕上げるのも面白いんじゃないかな」
「恋愛物語風ですか」
「はい、そうです」
「それ良いんじゃない、恭也」
「母さん何時から其処に居たんだ」
気配が感じられなかった。迂闊だ、しかし何時からこんなに気配消しが巧くなったんだ。
美沙斗さんが来てから特に巧くなったような気がする。
「ねえ恭也、あんた恋愛なんかした事ないでしょう。だから擬似恋愛でも経験したら」
「恭也さん恋愛体験がないんですか?」
「ええ、この子ったら変に枯れてるから恋人なんか1人も居ないんですよ」
「そうなんですか。桃子さんも大変ですね」
玄関が開き、なのはの声がした。葉弓さんが迎えに出てくれた。
「あ、葉弓さんだ。いらっしゃい」
「お帰りなさい、なのはちゃん。お邪魔してます」
「葉弓さんなら何時だって大歓迎だよね、お母さん」
葉弓の後ろから桃子が付いて行った。桃子を見つけたなのはがいった。
「そうよ、葉弓ちゃんなら大歓よ。それと、なのはのお八つ何がいい」
「桃子さん、もし宜しければ私に作らせてもらえませんでしょうか」
「わー、葉弓さんが作ってくれるんだ、良いでしょう、お母さん」
「ご迷惑じゃないですか」
「ちっとも迷惑なんかじゃないです。何時もお世話になってますし」
「じゃ、お願いしようかしら」
「任せてください」
「じゃお願いします」
「はい。なのはちゃん、お手伝いしてくれるかな」
「なのは、お手伝いします」
桃子に了解を取るべく視線を送る。頷く桃子。
「じゃ、いこうか、なのはちゃん」
なのはは、”うん”と頷いて葉弓と手を繋いでキッチンへと向かった。
「葉弓さんか、いい子じゃないの、恭也」
「うむ、いい人だと思う」
自分の周りに居る女性たちとほんの少しだけ違う雰囲気を醸し出している大人の女性。
それが葉弓さんだ。何か気になる女性だ。
今仕事暇なのかずっと海鳴に居る、さざなみ荘に厄介になっている。
「それに母さんは気に入っている。あんな人があんたのお嫁さんになってくれたらって思うわ」
「葉弓さんに失礼だろう。おれよか年上だし、あんな綺麗な人なんだから恋人は居ると思うぞ」
キッチンの方から葉弓さんとなのはが話す声が聞こえてくる。
「これはね、なのはちゃん。これはずんだ餅って言うの。枝豆をつぶしてそれで餡を作るのよ」
「枝豆ですか」
「そう、枝豆。枝豆本来の持ち味を生かして、お砂糖は控えめが良いね。恭也さん甘いのだめだし」
「そうなんです。お兄ちゃんは甘いのがだめなんです」
「なのはちゃんは甘いほうがいい?」
「はい、甘いほうがいいです。美由希ねえちゃんや晶ちゃんやレンちゃんも。お母さんも」
「じゃ、恭也さんのだけ別に作っちゃいましょう。じゃ、なのはちゃん、白玉粉をお願いね」
あらかた出来上がった白玉粉をなのはに渡す。
此処までしておけば失敗はないと思った時点でなのはに渡す。
「はーい」
白玉粉の入ったボールを渡されて嬉しそうに手伝っているなのは。
葉弓は、なのはに危険な事はさせていない。それでいて手伝っていると言う実感を持たすやり方をしている。
桃子はそんな気配りのできる葉弓が気に入っていた。なのはも懐いていると言うか甘えきっている。
美由希や晶、レン、彼女たちも葉弓を受け入れている。恭也の恋人としても遜色ない女性として認めている。
肝心のシナリオは恭也と赤星の剣劇になった。一乗寺下り松の場を再現して大人気を博した。
一方、葉弓は高町家に居場所を確立した。家族の一員として、恭也の嫁候補として他を寄せ付けない磐石の
基礎を作り上げた。そして今。
「葉弓ちゃん、恭也の用意いい?海鳴からだと羽田まで結構掛かるから、早めに出たいから恭也お願いね」
「はい、お義母さん」
いま、青森へ行く準備に余念がない高町家全員。神鳴流宗家で行われる婚儀に出席するのだ。
葉弓は引き出しの中から一枚の奉書を取り出した。
「高町恭也獲得成就祈願」
中に書かれていた文字は、
”不落の城はない、大阪城も、小田原城も、天下の名城と言えど斯くの如し”
恭也と言う城も、搦め手から攻めれば脆くも落城した。
「私のシナリオ通りになっちゃった。天神様にお礼参りに行かなくちゃ♪」
したたかな葉弓さんであった。
あとがきのようなもの。
葉弓さんのファンです。見た目ふわっとした感じで、計算する所はきちんと計算する大人の女性。
ちょっと腹黒いかな♪と思える小悪魔的な大人の女性。これが筆者の持つ葉弓さんのイメージなんです。
葉弓さんのお話〜。
美姫 「アンタも葉弓は好きよね」
うんうん、だから、嬉しいかったよ。
美姫 「全ては計算通り」
それもこれも、葉弓さんが素晴らしい女性だからこそ。
美姫 「投稿ありがとうございます」
ました〜。