この小説はとらハ3とリリカルなのはの世界の設定が混ざっているものです。

それに加えて独自解釈やオリジナル的な人、設定も入っています。

多少のキャラの関係や心情も変化しておりますので。

以上の事を踏まえて読んで下さると幸いです。

 

 

 

 

心の中はどう映し出されるのか。

 

浅く、見えるのは本当の心の中なのか?

 

深く、見えたのは錯覚なのだろうか?

 

宇宙のように広く、

 

掌の中のように狭く、

 

心は其の形を一つ、として成さない。

 

見えたものが真実ではない、

 

見えない部分は偽りでもある、

 

どう見えるかによって其の者の心は形を成し、

 

目を逸らしたことによって其の者の心は形を作り、

 

踏み入れるには何ともあやふやで、

 

覗きこもうと思うには何とも不確実な場所で、

 

 

 

まるでバリケードのように阻み、

 

まるで自動ドアのように招き入れ、

 

心は不安定で心地良く、

 

心は確かで不快に思う。

 

さて・・・問おう。

 

 

―――心とは何か、を。

 

 

リリカルとらハ〜外伝〜

―譲れないものありますか?―

 

 

第3話 協力 共に戦おう

 

タカシの心情にいち早く気づいたのは恭也だった。

 

此処にいる誰よりも知っているが故に気づいた事。

 

そして其れは、あまり見たことも無かった姿でもあった。

 

そう、恭也は過去を思い出す。タカシと初めて会ったあの日を。

 

・・

・・・

 

恭也がまだ3歳の頃。

 

其の当時は御神不破も健在であり、恭也自身も父である不破士郎から剣を教わっていた。

 

剣を教わるのに年齢は関係ない。

其れを体現したものだと今では思う。

そして其れがあったからこそ自分が自分でいられると考えられるのも其の通りだと恭也は思っていた。

 

小太刀サイズの木刀を握り基本的な動き方、動かし方を学んでいた恭也の隣には何時もある少年がいた。

全身黒で統一されていて、どこか恭也とは反対の雰囲気―ここで言う恭也は少し明るかった―を纏わせている少年。

少年は恭也と同じく小太刀サイズの木刀を握り振るっていた。

其の振るい方は実に見事としか言えなかった。

自分がまだまだ木刀に振り回されているように振るっているのにも関わらず同い年の少年は周囲にいる大人たちと遜色ないぐらいに動いている。

 

「・・・」

 

ずっと不思議に思っていた。

彼は誰なのかと。

何時此処にいたのかを。

其れは幼い恭也にとって謎の一つでもあった。

だから聞いてみた。

まずは父である不破士郎に。

 

「父さん」

 

俺たちを見ていた父さんは俺の声を聞き、こちらに近づいてくる。

 

「何だ、恭也」

 

「何時もいるあの子は誰なの?」

 

「ああ〜、あいつな。そうだな、俺の隠し子・・・ってダメか?」

 

「父さん、面白くない冗談は良いから」

 

「くそぅ、騙せると思ったんだが」

 

父さんは唸りながら何か観念したように頭(かぶり)を振って声色を変えて言った。

 

「あいつはな、俺の親友の息子なんだ」

 

「えっと、じゃあ・・・」

 

「ああ、あいつは御神や不破とは関係は無い」

 

そうきっぱり言われて納得と疑問が同時にやってきた。

 

納得は彼が何者かということ。

 

そして疑問はどうして御神や不破に関係ない彼が御神流の修練をしているのか、と。

 

「其の顔はあいつがどうして御神流を習っているかを知りたいんだろう?」

 

コクリと頷く。

尤もな疑問だから。

其れに対して父さんは急に難しい顔をして何かを考えているようだ。

 

どれぐらい時間が経ったのだろうか?

父さんはしゃがみこんで俺の顔を見る。其の瞳には何時もの父さんらしい色は無かった。あったのは真剣。其れだけだ。

 

「まあ名前は知っているだろう?」

 

「確か七夜タカシだったよね」

 

そう、名前は七夜タカシ。

初めて会った時に聞いた名前。其れぐらいは覚えている。

 

「ああ、七夜タカシ。あいつは七夜一族の最後の生き残りなんだ」

 

「え?」

 

七夜一族?

其れは聞いたことも無い事だった。

其れに最後の生き残りって・・・

 

「恭也。お前は知った方が良い事だ。恐らくこの先、恭也はタカシと共に剣の道を進むと思うからな」

 

そう言って俺の頭を少し力強くわしわしと撫でる。

 

「タカシは、剣の道を進むの?」

 

「ああ、進む。絶対にな」

 

「どうして?」

 

「其れはだな・・・」

 

父さんはちらりとタカシの方に首を振り、

 

「あいつの生きる目的がソレだからな」

 

そう言い、真剣な目を向けていた。

 

******

 

あの当時はよく解らなかった。

タカシがどんな想いを以って剣を振るっていたのかを。

そして、其の奥底に闇を抱えていたのかを。

闇は徐々に侵食し始めて、ある時を境に一気に弾けた。

 

そう・・・御神、不破の一族が爆弾によって殆ど殺されたあの日に。

 

―――あの日。

 

御神琴絵さんの結婚式当日。

 

俺と父さんは、父さんの計画性の無さで路銀に困り行くことが出来なかった。

今考えると其れが運命の分岐路だったのだろうと思う。

ただ、父さんは悔やんでいた。もし、俺が間に合っていればと。

 

同じく結婚式に出られなかった人もいた。

御神美沙斗さん。

御神宗家当主御神静馬さんの妻で父さんの妹でもある。

 

美沙斗さんは娘でもある美由希が熱を出して其の看病で行けなかったのだ。

其れがあった為、難を逃れたのだが、最愛の夫を亡くし美沙斗さんは幼い美由希を父さんに預けて自らは修羅の道を歩んだ。

其の結果、襲撃という形で俺と美由希と再会した。

敵として。

 

其の時は美沙斗さんを止めたい気持ちが剣に乗ったのか、美由希が奥義之極みである閃に到達した。

美沙斗さんを止める事に成功し、一先ず事件は解決したのだ。

 

この時点で御神流を扱えるのは、

 

御神流正統継承者である、高町美由希

御神不破流を扱う、御神美沙斗、高町恭也。

 

この三人であった

 

実を言うともう一人いた。

 

其の名前は七夜タカシ。

 

俺と同じく幼少の時から一緒に剣を振るっていた親友でもあった少年だ。

だが、タカシは一時期完全に心を壊していた。

余りにも大きな闇に耐えられなかったのだ。

一度目はタカシがまだ1歳の時。

この時にタカシは全てを失っていた。

 

七夜一族。

其れは古の時代からある剣の一族である。

文献では御神や不破、他の永全不動八門一派が出来る前からあるとされている最古にして最凶の一族。

他の追随を許さない殺戮と狂気に染まった人たち。

主武器は小太刀二本。

この辺は御神流と同じだ。

だが、決定的に違うのは其の血統だ。

七夜一族には不思議な血を受け継ぐ宗家の存在がいて、其の力は霊力妖力とも違う力。

後になって解ったのだが其の力はどちらかと言えば魔法に似ている。

其の力を以って力を誇示してきたかと言えば100%そうとは言えない。

この一族の正式名称はこうなっている。

 

神灯不全護法・七夜魔封流・小太刀二刀術

通称七夜流。

 

小太刀二本扱い戦ってきたのだ。

故にこの流派にも奥義はある。

奥義の中には御神流の【神速】にも匹敵するモノも存在する。

 

そんな敵対すれば絶対なる死が待っているとされている一族にある組織が手を出した。

 

−龍−

 

裏の世界でかなりの規模を持つ凶悪な組織。

色々な場所で様々な襲撃やテロなどを行っている組織。

 

そんな龍が目を付けたのは後々自分達にとって不利・・・いや、組織壊滅の恐れがある者たちを皆殺しにすることだ。

 

其の計画はタカシが1歳になろうかという時に行われた。

一族全てが集まった所に爆弾が無数に置かれたのだ。

いかに狂人の集まりでもある七夜一族であろうと物理的殺傷能力の高い爆弾の前にはどうしようもなかった。

連鎖的に爆発は起こり爆風や熱風、倒壊した建物や砕けた瓦礫などにより殆どの者は命を奪われた。

1歳であるタカシも例外では無かったが、彼の父親―七夜一族の宗家当主が身を挺して彼を救ったのだ。

自分の命が危ういとしても。どうしても助けなければならない事情があるのだ。

1人の親として、そして宗家当主として、守らなければいけないという想いでタカシを助けたのだ。

 

全てが終わり、辺り一面炎に包まれた場所にタカシはただ座っていた。

其の現場に異変を聞きつけた御神・不破の面々が訪れた時に言葉を失った。

あれだけ精強な者達が一度に死したことを。

あれだけ美しかった場所が一瞬にして無残な光景に変わったことを。

 

そして・・・

 

そんな場所で・・・

 

タカシは、自分に寄りかかって死している父親と共に其の光景をずっと見ていた・・・。

 

******

 

二度目はタカシが御神家に引き取られて数年が経った時。

 

御神琴絵さんの結婚式当日にタカシは爆破の際、ある人に庇われたのだ。

其のお陰でタカシは軽傷で済んだのだが、庇った人物は瀕死の状態になり、タカシの目の前で亡くなった。

庇った人物はこの結婚式の主役である琴絵さんだ。

 

またしてもタカシは誰かを犠牲にして生き残ったのだ。

そして動かない人たちを幼き少年はずっと見ていた。

ごうごうと燃える中、少年は涙も流さず声も出さず、ただ其の光景を見ていた。腕の中でどこか幸せそうな顔をしている琴絵さんを抱いて。

 

父さんと俺が駆けつけた時には全てが失われていた。

生き残りがいないか調べていると動くものを見た。

其処に行くと全身を血で染めているタカシと其の腕の中で眠っている琴絵さんを見つけ、父さんは全てを悟った。

 

そうか・・・また、奪われたんだな、と。

 

父さんがタカシに声をかけるが反応が無い。

俺もタカシに声をかけるが反応は無い。

ただ、光の点ってない瞳で燃え盛る光景を見ていた。

 

父さんがタカシの肩に手をかけた瞬間、タカシは糸の切れた操り人形の如く崩れ落ちた。

 

 

その後、タカシは人里離れた場所に養生の目的で置かれた。

無論、最初は父さんも俺も一緒に連れて行くべきだと言った。

しかし、当の本人であるタカシは深く絶望の眼を向けてこう言ったのだ。

 

『また、誰か死んじゃうの?』

 

この言葉にどれだけの意味と重みがあるか解ってしまった父さんはただ一言、そうか、と呟き伝手を使ってタカシを置いていくことを決めた。其れは父さんにとって苦渋の判断だったと後に聞いたのだ。

 

大事な親友の一人息子を護れないという悔しさを―――

 

******

 

話を聞く限り最悪の状況だと理解は出来た。

 

世の中は儘ならないと良く言うけど実際に其の状況に立たされると唸ってしまうな。

どういう方法で切り抜ければ最良なのか。

最善でもあり最良なやり方は存在しないけど、其れに近づく答えを導き出さなければどうしようもない。頭では解っているけど簡単には出来ないのが世の中が上手く出来ていると感じられるところだ。

 

「しかし、どうしてこうなったんだろうか?」

 

恭也が尤もらしい疑問を投げかけてくる。

其れについて俺は答えは無い。寧ろ俺もそこは疑問なんだが。

 

其れに答えたのはやはりと言うか、ガブリエルだった。

 

「簡単に説明しますと・・・弱っているところを発見されて捕まりました」

 

はい?

 

今、何て言った?

 

「弱っているところを発見された、と言ったな」

 

「聞き間違いじゃないんだな」

 

「はい。恥ずかしながら・・・」

 

「弱っていた理由はあるの」

 

「理由? 其の理由は何だ?」

 

弱っていると言うとどの程度弱ったのかによって何をしていたか解る。其れも捕まるというのは余程弱ってないとありえない。まあ、罠とかあったらどうかと思うが・・・。

 

「誰もが強くなりたいと思っていた。強さを必要としていた。でも、其の気持ちが焦りを生み出して無茶な行動を起こし、結果あの子たちでは勝ち得ることが出来ない敵と遭遇して・・・全員が重度のダメージを負いました」

 

「私たちが駆けつけた時には遅かったの。既に終わった後で誰1人としていなかったわ」

 

「其の後、調べたら管理局に囚われているって解ったけど・・・」

 

「今の戦力じゃ救い出すことが出来ないという訳か」

 

恭也がそう言うとガブリエル、ルミエル、ミカエルの3人は揃って頷いた。

恭也もそうかと呟き、ふと俺の顔を見て

 

「原因が何であれ、このまま見過ごすわけにもいかないだろう?」

 

「当たり前だろう? 助け出すって決めたんだからな」

 

「なら、もう問題は無いと思うぞ。理由はある、準備もしてきている、其の為の力もある、其れに何より助けたいという気持ちがあるんだろう?」

 

「すまん、捕まった理由を聞いて少し呆けていたようだ」

 

「確りした方が良い。何せ相手は幾つもの次元世界を管理、維持している大掛かりな組織だ。加えて魔法という力まで持っているし人数も多いからな、覚悟だけは必要だぞ」

 

「・・・・・・ガブリエル」

 

「は、はい!」

 

恭也の言葉を聞いて迷いは一切無くなった。いや、迷いなんて最初から無かったかもしれない。でも、どこか心の中でブレーキをかけていたかもしれない。理由は解らないがらしく無いと自分でも思い、思わず苦笑してしまう。

 

「最初は地上本部で良いんだな?」

 

「はい、まだ本局の方には行けません」

 

「そうか、解った。なら、決行の日時は?」

 

「3日後、時刻は08:00とします」

 

「ああ、解った。なら、準備だけはしておかないとな」

 

もう動き出した歯車は止まらない。だったら突き進むしかない。其れが例え世界に刃向かったとしても俺は大事な、大切な存在を失うわけにはいかない。もう、あの時のような悲劇は繰り返してはいけない。

 

だから、

 

俺は、

 

力を、

 

振るう。

 

自分にとって大事な、大切な存在を護るために―――。

 

 

真剣な目をして俺は前を見る。

そこには親友である恭也がいて同じように俺を見ている。

 

「恭也、頼む俺に力を貸してくれ」

 

頭を下げてお願いをする。

暫しの沈黙が降り、俺は目を閉じる。

そこに力強い言葉が返ってきた。

 

「ああ、勿論だ。俺たちが扱うのは守護の理念を持つ技。なら、友の危機に助けに入らないなど最初から選択肢は無いさ」

 

頭を上げる。

そこには良く知る頼もしい親友の顔があって、

 

「だから行こう、護るために」

 

「ああ、もう失うわけにはいかない」

 

同時に立ち上がり、後ろ腰に挿していた小太刀を横にして握り前に突き出す。

互いが同じ目的で行く時の誓いだ。

之をして俺たちは協力の確認を取る。

 

「「目指すは時空管理局、地上本部」」

 

 

 

ここに、御神流と七夜流の使い手2人が其の刀を抜いた。

 

全ては護るべき者の為に・・・

 

 


あとがき

かなーり時間が空きました。

まずはすみません。色々と考え過ぎて文が纏められなくなったのが一番の原因です。

特にタカシの出生については結構考えました。

どういう経緯で御神家に引き取られたのか詳細は省きますが、付き合いがあった御神・不破と七夜の一族。故に互いに何かがあった時には生き残りを保護するという約束事があったというわけです。

其れが初めてにして最後に為されたのがタカシの引き取りという状態でした。

 

恭也とは其の頃からの付き合いなので、今タカシの事を一番に知っているのは恭也だと言っても過言ではないかと(美沙斗さんは裏にいたので其の間の接点はありませんでした)。

 

さて、次からいよいよ物語は動き出します。

 

地上本部に戦いを仕掛けるタカシたち。

 

助け出す存在たちとタカシの接点とは?

 

そして、どうして恭也は次元世界や管理局のことを知っているのか?

 

謎は多いですが、其れらも含めて次回また会いましょう。

 

 

ではでは・・・




少しだけ過去の話が出てきたな。
美姫 「これで恭也とタカシの関係が分かったわね」
だな。とは言え、まだまだ分からない事は残っているし。
美姫 「捕まっている存在は誰かしらね」
次回も待っています。



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