この小説はとらハ3とリリカルなのはの世界の設定が混ざっているものです。

それに加えて独自解釈やオリジナル的な人、設定も入っています。

多少のキャラの関係や心情も変化しておりますので。

以上の事を踏まえて読んで下さると幸いです。

 

 

 

 

誰もが気づかないところで運命の女神は其の者の運命を決定付ける。

 

人は其の運命から逃れられない。

 

変えることも厭わない。

 

ただ受け入れるだけか?

 

其れとも抗うか?

 

賽の目は投げられた。

 

後はどう転ぶか誰にも解らない。

 

―――そう、投げた本人でさえ・・・

 

 

 

第1話 到着 ミッドチルダ

 

??? AM 7:00

 

ピピピッ、ピピピッ、ピピッ・・・

 

時計の音が鳴り、朝を迎えた。

 

「ん〜・・・」

 

手探りで目覚まし時計を探し当てて止める。

 

「ふわぁ〜〜〜」

 

起き上がり大きく伸びる。

 

また、何だか久々な夢を見たな。

 

あの時の少女は今何をしているのだろうか・・・

 

そう思うも、まあ考えてもしょうがないか、と納得してベッドから出る。

 

さっさと着替えて朝飯を食わないとな。

 

着替えが終わり、リビングへと向かう。

 

誰も居ない家。

 

そこに俺は1歳の頃から住んでいる。

 

別に不自由はしてない。

 

莫大な遺産を持っているし、時々仕事をしているので収入には困らない。

 

それに、父親や母親の記憶は無い。

 

そもそも、どんな環境なのかを考えれば問題はないのだから。

 

まあ、偶に寂しいと思う時もあるのだが。

 

「おっそいね〜、お兄ちゃんは」

 

そんな事を考えていると声が聴こえた。

 

誰も居ない家から、だ。

 

「煩い。昨日は夜更かししただけだ」

 

とりあえず適当に返しておく。

 

「夜更かしって・・・またアレをしていたの?」

 

声は更に質問をしてきた。

 

「ああ、アレだ。解ったなら朝食をくれ。腹へってしまって」

 

「は〜い。待っててね、今、持ってくるから」

 

とてとてとカルガモのような足音を残して声の主は台所消える。

 

「さて、と・・・」

 

椅子に座り、朝食を待つ。

 

「お待たせ。今日の朝食は、ご飯、お味噌汁、海苔、納豆、卵焼き、焼き魚、だよ。一杯食べてね」

 

腰まで伸ばした黒い髪を持つ幼い少女がお盆を手に乗せてやって来た。

 

テーブルに並べられるのは純和食の朝食。俺が好む朝食だ。

 

「ああ、じゃあ、頂きます」

 

「はい、召し上がれ♪」

 

嬉しそうにする声の主。

 

こいつは何が嬉しいんだろうな?

 

ふと、そう考えてしまう。

 

「どうしたの? お兄ちゃん」

 

「いや、何でもない」

 

「ふーん、変なの」

 

「・・・そういや、彼女はどうしている?」

 

「あの娘なら何時も通り。今日はいい日だから跳べるんじゃない?」

 

「そうか、解った」

 

その答えに俺は短く返事して朝食を食べ続ける。

 

「あ、でも・・・」

 

ふと漏らした言葉に反応し、

 

「どうした?」

 

「****さんがあそこに行っているから会えるんじゃない?あの娘次第では」

 

「**が? はて、何の用事だろうか・・・」

 

「会えば解るかもよ〜。あ、でも、私は直接顕現はしないからね〜」

 

「別に良いが、出たくない理由は?」

 

「だって、私って******だもん。絶対、囚われるもん」

 

「そうだったな。でも、俺が絶対護るから」

 

「うーわー恥ずかしいな〜。面と向かって言われると大した破壊力だよ」

 

意味が解りません。破壊力って何でしょうか?

 

「大丈夫だ、ナイトには指一本触れさせない」

 

「うん、ありがと、お兄ち―――私の君主(マイロード)

 

少女―ナイトは嬉しそうにはにかむのだった。

 

******

 

朝食を食べ終えて俺は家の敷地内にある古びた納屋にいた。

 

「けほっ、うーむ、少し掃除をしないとな」

 

ところどころに埃が溜まっていたのでそう思った。

 

「お兄ちゃん。だから週に1回ぐらいは掃除しようと言ったのに」

 

声は俺の腰から聴こえた。

 

「面倒くさい」

 

その一言で斬り捨てる。

 

「はぁー。お兄ちゃんの七夜継承者ならちゃんとしないと」

 

「煩いな。俺は好きで七夜の継承者になったつもりはない。血を受け継いだだけだ」

 

そう、俺はこの家―――七夜一族の最終血統者なのだ。

 

「私がいる理由も一つに考えられない?」

 

「ナイト。お前が居る分はいい。だが、強制されるのは嫌いだ」

 

ナイトは押し黙る。よほど負い目を感じているんだろう。

 

歩いているうちに奥、一際暗い場所にソレはあった。

 

「・・・なるほど、今日は本当にいい日なんだな」

 

青白く光り輝いている、本。台座の上に置いてある、魔導書。

 

「ようやく来ましたか、七夜タカシ様」

 

本から声が聴こえた。

 

氷のような冷たい声。何人たりとも寄せ付けない声だった。

 

「ああ、半年振りだな、ツクヨ

 

ツクヨと呼ばれた魔導書から一人の美少女が顕現した。

 

「半年振りです、タカシ様」

 

淡い雪のような様子とも凍てつく吹雪を感じさせるような全身が水色で統一されたツクヨがスカートの端を抓んで、ぺこりとお辞儀する。

 

「半年の間、強くなられましたか?」

 

冷たい視線を向けてくる。やはり、こいつには嫌われているのか?と思うぐらいにだ。

 

「どうだろう? 強くなったという実感はないな。何せ、相手がいないんだから」

 

おどけてみせる。まあ、言った事は事実なんだが。

 

「お兄ち―――私の君主(マイロード)は、半年前と比べて、当社比1.3倍強くなったよ」

 

ナイトが勝手なことをぬかしている。というか、当社比って何だ。

 

「ナイトがそこまで言うのであれば事実なんでしょうね。解りました、半年間遊んでなかったということが解れば良いです」

 

「遊んでいる暇はない。日々是精進。それが教えだからな」

 

まあ、ちゃっかり七夜の教えは受け継がれているのだが。

 

「では、転移を開始します。今回も天啓によって決まった場所です」

 

「やれやれ、今度はまともな場所が良いな。せめて、あの悪魔どもの居ない場所がいい」

 

毒づく。あの世界は行く気が起きない。というか、行ったら即行で帰還してやる。

 

「私の君主(マイロード)、おふざけは無しだよ?」

 

「ったく、解っている。って、ナイト、着いてくる気か?」

 

「うーん、今回はツクヨちゃんと待っているよ〜。あ、でもでも、私の力が必要になったらいつでも言ってね。すぐ駆けつけるから」

 

「そうか、解った」

 

そう言って、腰に提げていた、漆黒の剣を魔導書の隣に置く。

 

そこから、一人の幼き少女―全身黒尽くめ―が顕現する。

 

「まあ、留守の間は任せる。彼女達が来たら適当に説明しておいてくれ」

 

「りょーかい。夫を待つ妻ってこんな感じかな〜」

 

「何を言っているんだ、お前は」

 

「にゃはは〜、ちょっとしたお茶目だよ〜」

 

その言葉に不機嫌になったツクヨは気にしない方が良いんだろうな。間違いなく、俺に何かしらしてきそうだし。

 

「では、転移を開始します。タカシ様、武器の確認は宜しいですか?」

 

「ん? ああ、そうだな・・・」

 

と言って、後ろ腰にある二振りの小太刀、上着の裏ポケットにある鋼糸、上着の左右のポケットや両袖の下にある飛針を確認。

そして、右腕に付けている腕輪(ブレスレット)、首に提げているペンダント、左中指に嵌めている指輪と確認し終わって、

 

「大丈夫だ、揃っている」

 

「了解しました。では、始めます」

 

光が漏れる。これから俺は転移する。何処に行くのかは解らないが、重大な場所に行くのは確かだ。

 

「行ってらっしゃませ、タカシ様。ご武運をお祈りしてます」

 

ツクヨの声を聞いて、そして俺は光に包まれ、消えた。

 

・・

・・・

 

タカシ達が消えた後、

 

「教えなくて良かったの?」

 

ナイトはツクヨを見上げて問いかける。

 

「全て、天啓によって決まったもの。教えるわけには行きません。それに・・・」

 

「それに?」

 

「タカシ様なら、乗り越えてみせるでしょう」

 

「あはは、ツクヨちゃん、お兄ちゃんのこと、大好きなんだね」

 

ボンッ!と音を立てて、ツクヨは顔を赤らめ、

 

「な、なななな・・・」

 

「うろたえなくても、解っているから」

 

「卑怯ですよ、ナイト。私は常に冷静になっていなければならない存在。それを覆す事は許されない」

 

「ツクヨちゃんが固すぎるんだよ。ライバルは多いし、それに・・・あの場所にいる少女達も惹かれるんじゃないかな〜」

 

「そ、そんなこと、は・・・」

 

段々声が小さくなっていく。

 

「ま、でも、お兄ちゃん次第だし」

 

「そ、そうですよ。タカシ様が気付く事はありません。世紀の鈍感王なのですから」

 

「にゃはは、お兄ちゃんの鈍感っぷりも凄いもんね」

 

「ですから、言わなかったのです。あの場所に行くと解れば、タカシ様は行かないでしょう。でも、今回は彼女達が助けを求めに来たのですから。何が何でも行かせないと」

 

「うん・・・はぁ〜、*****を敵に回すんだね。大丈夫かな?」

 

「タカシ様が負けるとでも?」

 

「でも、数に屈する可能性もあるんだよ?」

 

「大丈夫です。彼もいるのですから」

 

「え? ああ、そっか。****さんもいたんだったね。失念していたよ」

 

「はい、お二方がいれば、もはや敵はいません」

 

「強いもんね、*****と*****の使い手。唯一の生き残り。現代最強の一族の二人だもんね」

 

「ですから、安心はしていますが、もしもに備えて、私や貴女も行く準備だけはしておきましょう」

 

「うん。でも、あんまり関わりたくないのが率直な意見かな〜」

 

「私だって関わりたくありません。ですが、貴女にとっての私の君主(マイロード)の為でしょう?」

 

「解っている。とにかく、いつでも行けるように、準備しておこっか」

 

そう言い残し、ナイトは納屋を出て行く。

 

「・・・頑張ってください、タカシ様」

 

ツクヨもまた、準備するため、魔導書へと戻っていった。

 

******

 

某所 PM 8:30

 

「・・・・・・」

 

一人の青年が佇んでいた。

 

手には一振りの小太刀が握られている。

 

全身黒尽くめの男。

 

闇に溶け込むその姿は視認することが難しい。

 

青年はただ、ある場所を見ていた。

 

大きな建物。

 

悠然とそこにあるソレは彼にとって全く関係の無いものでもなく、

 

「・・・・・・」

 

だからと言って気軽に入れるものでもなかった。

 

「・・・助けに行く、それしかないか」

 

小さく呟く。

 

建物へと侵入しようとするが、様々なところで彼に向かって魔法が飛んでくる。

 

「ちっ・・・!」

 

紙一重で躱していく。

 

だが、躱すだけだ。

 

魔法は遠距離から来るもので、接近しようにも障壁が展開されているためなかなか近づけない。

 

「不味いな、このままではジリ損か」

 

いっそのこと強引に突破するか?そう考えたところに、

 

「待ってください」

 

少女の声が耳に聴こえた。

 

「ん、誰だ?」

 

青年は問いかける。

 

自分自身でも気配を察知出来ない存在に僅かに警戒心を持ちながら。

 

「お願いです。今は、待ってもらえないでしょうか?」

 

少女は制止の言葉をこちらに言ってくる。

 

「理由は?」

 

「・・・***が、こちらに来るそうなので」

 

その言葉に、

 

「そうか。解った、じゃあ引こう」

 

小太刀を後ろ腰に挿して、回れ右する。

 

「ありがとうございます、恭也さん」

 

「いや、性急過ぎたようだ。なら君達が居る場所に案内してもらいたいんだが」

 

「解りました。では、こちらにどうぞ」

 

青年―恭也の前方に一人の少女―天使の姿をした―が降り立って、促す。

 

「ああ、行こうか、ガブリエルさん」

 

恭也は天使の少女―ガブリエルの下へと向かう。

 

「はい、恭也さん。皆も待っていますので」

 

ガブリエルはそのまま歩き出す。次いで恭也もその後を追う。

 

*****

 

某所 PM 9:00

 

とある建物の中。

 

ある一室に何人かの人影がある。

 

一人は青年。

 

残りは少女達だ。

 

「それで、あいつは何時来るんだ?」

 

青年が口を開く。

 

「はい、先ほど家の方を出たという報告を貰いましたので、もうしばらくで来ると思います」

 

少女達の中の一人、一番年上である銀髪ロングヘアーの少女ガブリエルがそう答えた。

 

その言葉に一番反応したのは金髪ロングヘアーの少女ミカエルだった。

 

「やっと来るんだ〜♪」

 

傍目から見ても浮かれているのが良く解る。

 

そんなミカエルを見て溜息をつくのが茶髪ロングヘアーの少女ルミエルだった。

 

「ミカエル、少しは落ち着いて。今は恭也さんに現状を伝えるのが先よ」

 

姉として、また、姉妹の中でも長女であるガブリエルを除いてはこういった話し合いの場を纏めるものとして注意しなければならない。

 

「姉さん、嬉しくないの?」

 

「嬉しいに決まっています。でも今は恭也さんにお話しすることがあるでしょう?」

 

そうなのだ。

今の状況を説明しておかないといけない。

 

「では、改めて説明しておきます。今、私たちがいるのは次元世界ミッドチルダです」

 

その言葉に恭也は小さく頷く。

 

「此処には次元世界の管理・維持をする機関、時空管理局の2大勢力の1つ、地上部隊の本拠地である首都中央地上本部があります。そして、其処が私たちの目的の場所です」

 

本局の方じゃないのか?」

 

本局とは時空管理局の2大勢力の1つ次元航空部隊の本拠地である。

都市クラスの施設を内包する艦であり、此処には数多の魔導師たちが存在している。

 

「本局の方にはまだ手が出せません。ですので、まずは強固な障壁がありますが手が出せない訳ではない地上本部を先に叩きます」

 

「そして、あちらから何かしらのアプローチがあったら行くの。焦っても良いことは無いって教えられたから」

 

ガブリエルの説明にルミエルが続けて言う。

 

その言葉に恭也はしばし考え込む。

確かに急ぎ過ぎて見誤ったら何もかもおしまいになる。

例え上手くいっても何かしらの代償が出てしまうだろう。

それに、まだあいつが着てないのに動いてミスをしてしまえばどう責任を取るか。それを考えると今は動くべきじゃないと結論付けた。

 

「ああ、解った。じゃあ、あいつが着てから動くんだな?」

 

「はい、もう到着しても良いはずなんですけど・・・」

 

首肯して頬に手を当てて言うガブリエルを見て恭也は視線を上に向けた。

 

 

 

―――ピシリ。

 

 

 

何かが裂けたような音が聴こえた。

 

次いで何も無い空中に楕円状の隙間が生まれ。

 

そこから一人の青年が落ちてきた。

 

「・・・っと」

 

青年は片足で着地して顔を上げ、

 

「此処は何処なんだろう・・・」

 

そして、見上げた先には一人の青年がいて、

 

「恭也!」

 

「タカシ!」

 

互いに互いの名前を叫び、

 

「「久しぶりだな」」

 

懐かしき再会を果たした。

 

 


あとがき

初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。

第1話。

色々とキャラが出ていて「?」と思われますが今後の話の流れ上、必要なので出させてもらいました。

一応、このSSの主人公は2人います。

1人は恭也。

もう1人は七夜タカシというオリジナルキャラです。

この2人を中心に話は進んでいきます。

2人は知り合いのようですが、どういった知り合いなのかは話が進んでいくと同時に解ると思います(まあ、途中に色々解りやすいヒントが出てましたので皆様なら解ると思われます)。

 

それでは、第2話でお会いしましょう。

 

ではでは・・・




恭也が何故ミッドチルダに居るのか。
美姫 「しかも、襲撃する気みたいなんだけれど」
天使とかも出てきているし。
美姫 「これらはもう一人の主人公であるタカシとの関係も含めて徐々に明らかになっていくのかしら」
気になる所です。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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