『選ばれし黒衣の救世主』











斬る。
斬り続ける。

斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬り捨てていく。

後に残るのは、血の川と死体の稜線。
その中央に、闇色の光を宿した瞳。
その手に赤い液体を滴らせた銀の光を持つ闇。

それを恭也は見ていた。
自分の自我を持って見ていた。
それを体験した。
だが、それは自分がしでかしたことではなかったとわかる。

「お前は不破がどんな存在かなど、本当の意味では理解していない。体験していない」

血の川と死体の稜線の上に立つ闇はそう言った。

「これがもしかしたらのお前だ」

闇は死体の上を歩きながら、恭也に淡々と言ってくる。

「もし俺が生まれていたなら、もし不破が今も存在していたなら、もし、もし、もし……そんな世界がなかったとしても、俺はこうして存在する」

闇はゆっくりと、本当にゆっくりと恭也へと近づいてくる。

「いや、お前が存在している以上、俺という存在自体が虚偽の存在(モノ)になるのか」

何の感情も籠もらない声。
感情と心を殺した声。
それが当然となった声。

「俺は……」

闇の顔が見えた。
その顔は……

「あり得たはずのお前だ」

それはもう一人の……恭也。

「お前が……に選ばれ、全ての因果から解放された……の救世主だというのなら、俺はすでに消え、それでも『もし』というありえなかった時間を与えられ、無理矢理存在を定義された……の代行者」

そう言って闇は……恭也と同じ顔を持つ黒衣の男は、その手に握る剣を恭也に向けて振り下ろした。





赤の主・大河編

第二十九章 それぞれの自分勝手な想い






「…………」

目を開けば、石造りの天井。
ここがどこなのかはそれだけでわかった。今見上げている天井は、この所起きるときにはよく見るものだ。
どうして眠っていたのかもわかっている。そして、夢の内容も恭也は覚えていた。

「……あれは、何だ」

人を斬り刻み、血の雨を降らせ、血の川を作り、死体の稜線の上に立ち、それでも狂うことなく、さらに斬り刻み、血の雨を降らせ、血の川を作り、死体の山を築いていく自分自身……高町恭也。
それはまるで本当に現実であったことのように、未だ恭也のその手に感触が残っていた。途中より、その自分から分離し、斬られた感触もまた残っていた。
夢だ。夢だとわかりながら、それでもなお夢ではないと思わせるほどの現実感。
そこまで考えて、今考えるべきことはそんなことではないと恭也は思い出す。

「あのあとどうなったんだ?」

林へと逃げ、途中で意識を失ったのは恭也も覚えている。そして気付けば王宮で与えられた自室。そのことを考えれば、耕介たちがここまで運んでくれたのだろうが。
恭也は上半身を起こすと、

「なのは、知佳さん、久遠」

その部屋に、自分以外の存在がいたことに今更ながら気付いた。いくら目覚めたばかりだと言っても、気付かなかったかった自分が情けなく、恭也はため息を吐く。
それから三人を眺める。三人とも目覚めた恭也に気付くこともなく眠っていた。
なのはは恭也が眠るベッドの端に頭を乗せ、知佳は少し離れた所にある椅子に座ったまま、久遠は知佳の膝の上で丸くなって、それぞれ眠っている。
おそらく看病をしてくれていたのだろう。
恭也は、三人を起こさないように身体を確認してみると、外見上は怪我が治っている。なのはの治癒魔法ではここまではできない。おそらくクレアが治癒魔法を得意とする魔導士たちを呼び集めて癒してくれたのだろう。
だが外見上だけで、身体の虚脱感や節々の痛みまでは消えていない。やはり魔法とて万能ではないのだ。
恭也は霊力を自身の治療に回しながら、再びベッドに横になった。あの後の状況を聞きたい所だが、三人を起こすのは忍びなかった。

「ふう」

天井を見上げながら、深々とため息を吐く。
本当に心配をかけてしまった。この三人だけではなく、おそらくここにはいない耕介、十六夜、そしてクレアにも。

「やはり、俺はどこか壊れているのだろうな」

まるで自嘲するかのように笑い、恭也は呟いた。
あの時、大河と戦っていた時、他の誰のことも考えていなかった。死んでもいいと思っていた。自らの死で、大河が守ってくれるなら、結果的にそれで自分が守りたい人を守れるならそれでいいと。
恭也は知っている。残される者の悲しみを、傷を、孤独を、絶望を。
士郎を失った時、それを見た。それを体験した。
なのに、再び親しい人たちにそれを押しつけようとしていた。
今この時は死ぬ気などないし、死にたいとも思わない。あんな思いをもう二度と家族たちに味わってほしくないと思う。なのに戦闘になるとそれを忘れてしまう。守る者があると忘れなければならない。
自分の命で大切な人たちを救えるなら、それを何も考えず捧げてしまう。
別に自己犠牲のつもりはない。生き残る意思もある。それでも死への恐怖が希薄すぎる。それでも死に慣れすぎた。

「エゴ……だな」

なんて自分本位。
失う悲しみを知りながら、それを押しつけようとする。
守るのは難しい。命だけ守れても意味はなく、心が死ねばやはりそれは死と同じ。そしてそれはきっと自分が死んだとしても、家族に、友人に、大切な人たちに降りかかるものだ。それがわかっていながら、死を受け入れてしまう自分は壊れている。
本当に自分勝手だ。

「父さん……」

それを初めて家族に体験させた人を思い出す。
だが死んだ人間は何も語らない。もう悲しまない。もう教えてはくれない。二度と出会うことはない。
自身が守り、殺す者であるからこそ、恭也は誰よりもそれを理解できる。それを受け止めなくてはいけない。
それでも、

「父さんはどうだった?」

聞きたい。
士郎はきっと死ぬ気などなかっただろう。きっと恭也と同じで、ほとんど身体が勝手に動いてしまったようなもの。後のことを何も考えず、その場にいた守れる人、大切な人だけのことを考えた。
だが、それは恭也の予想でしかない。
だからこそ聞きたかった。
あなたはそれで良かったのか、何の未練もなかったのか、残される者たちを考えることはできたのか、生き残る意思はあったのか……誰に恨まれても、それでもなお自分の道に疑問を覚えることはなかったのか。
何の迷いもなく進むことができたのか。

「リリィ……」

思い出すのは彼女の涙。気丈な彼女が流した涙。自分が流させた涙。
大切な人たちの笑顔を守りたいと、笑顔を見ていたいと思いながら、結局泣かせた。どの道を選んでも、最終的には誰かを泣かせる道しかなかった。その中から彼女たちを泣かせる道をとった。もちろん、最初はここまでとは思っていなかったが。
この道が正しいとは思っていない。だがこの道を……彼女たちと敵対するかもしれない道を選んだことに後悔はない。迷いはない。
だが、それは結局は同じ事。
死んではいないが、それでも同じ事を……誰かがいなくなる悲しみを、傷を、孤独を、絶望を、それらをまとめて彼女たちに叩きつけたのだ。
これでは本当に守れてるなどとは言えない。

そう考えて、恭也はため息を吐き、自らの顔を手の平で覆った。

「弱いな、俺は」

それは誰にも聞かせられない弱音だった。
それから苦笑する。
所詮恭也は人間。そして剣だけで大それたことができないとわかっているのに。
大それたことをしたいわけでも、英雄になりたいわけでも、救世主になりたいわけでもないのに。
ただ彼の願いは大切な人たちを守ることだけ。

あのわけのわからない夢のせいで、どうも妙なことを考えてしまっている。
あの自分は確かに『不破』としての理想だった。
完全に心を殺していた自分。何にも揺らがない自分。完全なる不破の『剣』と化した自分であったから。
だからそんな自分と比較して、そんな妙なことを考えてしまうのだろう。弱気になるのだろう。

だから恭也は気付かなかった。
傷ついた身体と色々な感情で、観察力と感覚が働かず、なのはの肩が僅かに揺れていたことに……彼女が目覚めていたことに。




息を潜めろ。
身体を震わせるな。
バレてしまう。
気付かれてはいけない。

今までの独り言を聞いていたことに、兄に気付かれてはいけない。

「っ……」

泣きたかった。
そんなことないと言いたかった。
あなたは壊れてなどいないと、弱くなどないと。

「……ぅ……」

悲しかった。
ただ唯一出てきた名前が彼女の名であったことが。
それがただ悲しくて、もし、もし、自分があちら側であったなら、そこに出てきた名前は自分であったのか聞きたかった。

だが、気付かれてはいけない。
言ってはいけない、聞いてはいけない。
だって、そんなこと兄は望んでいない。

なのはだって知っている。彼が色々なものを背負わせされてしまったということを。
とうてい自分では背負えないものを、兄は背負わされたということを。
自分なら逃げ出している。
それでも、恭也は進んでいる。
こんなふうに弱音を吐きながらも、それでもそれを誰にも漏らさずに。
兄はこんな弱音を聞いてほしいなんて思っていない。
恭也が何を考え、自分が壊れていると、自分を弱いと言ったのか、彼女の名を呟いたのかはなのはにはわからない。だが、それは確かに弱音だった。なのはには弱音だとわかった。
それがわかるから涙が出てくる。
別に弱音を吐く恭也が情けないからなんて理由ではない。むしろ強すぎるから。誰にも弱音を吐かない恭也が、実は一人で弱音を吐いていたのを聞いてしまったから。一人で悩んでいることを知ってしまったから。それをあの時のように直接聞くことができないから。

だからなのはは、声を押し殺して、震えを止めて、ただ目から涙を零すことしかできなかった。




ミュリエルは学長室の机に肘を付き、深々と、本当に深々と息を吐いた。
昨日、任務から救世主候補たちが帰ってきた。そしてすぐにその結果の報告を受けた。
救出任務としては失敗。救世主候補たちが到着する前……もしくは任務を受けたころには村人たちはすで殺されていたらしい。
ミュリエル個人としてはそれに憤りを感じるものの、学園長としてはそう悪い結果ではない。もし仮に村人たちが生きていたとして、その救出に失敗していた場合が一番悪い結果。今回の場合は、むしろ王宮側の動きが遅すぎたに過ぎない。救世主クラスの者たちに責はない。
だが問題はその後だ。救世主候補たちが到着した時には、すでにその村を襲ったモンスターたちは倒されていたという。
この学園から失踪した高町恭也と、その仲間たちによって。
このことは、ミュリエルは自分までで止めてある。上、つまりはクレアや賢人議会の者たちには通していない。人質たちはすでに死んでいて、救世主候補たちが到着した時にはすでにモンスターたちもいなかったらしいと報告しておいた。
その時の……恭也たちについての報告をしていた時の救世主候補たちの表情を思い出し、ミュリエルはもう一度深く息を吐く。
はっきり言って、大河を抜かした全員が沈んでいた……所ではなかった。諦め、失望、恐怖、他にも様々な感情を乗せていた。それらの感情が恭也たちに向けられていたのか、自分たちに向けられていたのかはミュリエルにはわからない。だがしばらくはまともに授業など受けられそうもないので、救世主クラスの者たちにはしばらくの休養を与えた。
今は彼女たちの、そして義娘の表情も脳裏から追い出す。
救世主候補たちは恭也たちと戦ったという。彼女たちが言うには、彼らが学園を去った理由を聞くために。
その結果は……。

「引き分け……」

詳しく聞いてみたが、結果的には引き分けのようなものだったという。
引き分けなどという結果は、本来戦いの場ではそう簡単に起こり得るものではない。だが実際にそうなった。
あの様子を見るに、急に現れた恭也たちによって救世主候補たちは精神的に追い込まれていたはずだ。その状態で引き分けならば、とも思う。

「けれど、救世主候補並の実力を持っているのは確か」

精神的に退けていたとしても、彼らは救世主候補だ。普通の人間たちを大きく越える力を持つ彼らと同等の力。もしくはその力の差を覆してしまえるほどの能力などを持つのは確かなのだ。
ミュリエルも、今現在の救世主候補たちにならば、勝利することは可能だ。それでもおそらく五分五分と言った所だろう。
それなのに恭也に至っては、大河とカエデを同時に相手をして退けたという。他の恭也の仲間たちとて、確かに相当な実力者。召喚器を持たずに、救世主候補たちと同等に戦う存在。
正直、恭也に関してはミュリエルも勝てるかどうかわからない。経験ではミュリエルの方が勝っているだろうが、彼はそれだけの男ではない。
召喚器もなく、救世主候補たちと渡り合う存在。
それは何よりミュリエルが求めていた者たちだ。その彼らが立場的に信用における者たちではなかった。そして今では、ミュリエルから離れた場所に行ってしまっているというのは本当に皮肉な話だ。
そして何より、

「『救世主が誕生されては困る』」

恭也は確かにそう言ったらしい。
聞きようによっては、自身が破滅の一味だと言っているようにも聞こえる。しかしそれはこの学園の食堂でコックをしていた耕介が否定したという。
ならばなぜ救世主に誕生されては困るのか。
もちろん耕介の言葉が嘘であるという可能性もある。だがミュリエルも何も今まで彼らを自由に動かしていたわけではない。いくらか監視もしていた。彼らが破滅に与するとは思えないのだ。その性格などさえも演技でなければだが。
全てを知ったと言う彼ら。救世主が誕生されては困るという彼ら。理由を話さず救世主候補たちと戦った彼ら。
それは……

「…………」

もし、もし彼らが本当に全てを知ったというのなら。
それは……自分にとっての敵なのか、それとも味方なのか。
自分が求める未来のための敵なのか、味方なのか。
自分の目的のために……彼らをどう扱えばいいのか。
ミュリエルは、そう考えもう三度目のため息を吐いた。




そこは恭也に与えられた部屋の隣、耕介の部屋。
王女の客人として扱われている耕介の部屋も、やはり無駄に豪華な内装で、見ただけで高価だとわかるような調度品や家具がいくつも置かれている。
クレアはその小柄な身体を、やはり高価そうな大きなソファーの背もたれにあずけて、大きくため息を吐いた。

「すまなかった」

そして目の前にいる……やはり大きなソファーに、その大柄な身体をあずけている耕介に言った。

「クレアちゃんが謝る理由がよくわからないんだけど」

いきなりの謝罪に、耕介は首を傾げようとするのだが、すぐに顔を顰めて止めた。それに変わるように、隣にいた十六夜が首を傾げている。

「いや、救世主候補たちの精神状態を『正確』に伝えなかったのは私の落ち度だ」
「それはクレア様が私たちや恭也様のことを考えてのことではありませんか?」
「そうなのだが」

あの任務を救世主候補たちに持っていった時、クレアは直に彼らを見た。そのために彼らの精神状態が酷く危ういことに気付いていた。だがそれを恭也たちには正確に告げず、控えめに……本当に控えめに伝えたのだ。
それは十六夜の言う通り、恭也たちを思って……何より恭也にこれ以上余計なものを背負わせたくなかったためだった。

「だが私が正確に伝えていたならば」

救世主候補たちの精神状態を正確に伝えていたなら、もしかしたらもっと他の結果があったかもしれない。
例えば、その精神状態を考慮して接することや、もっと早くモンスターを片づけて、絶対に救世主候補たちに会わないように去るといったこともできたかもしれないのだ。

「たぶん、遅かれ早かれの問題だったはずだよ」
「そうか?」
「恭也様ならば、おそらく」
「いずれは、出会うことになってただろうしね」

クレアも二人や知佳たちからだいたいのあらましは聞いている。
つまり、恭也が救世主候補たちを突き放したこと。彼らと戦ったこと。そして、恭也が大河に伝えたこと。

「大河君たちには……とくに大河君には精神的にも強くなってもらわないといけない。そういう意味では、今回恭也君がとった方法は間違ってはいないと思う。もちろん正しいとも言えないし、どう受け止めるかは大河君たち次第だけど」
「恭也様の考えはそれだけではないのでしょうが」

結局、恭也は重傷を負った。
恭也が気絶したあと、耕介が彼を背負い、さらになのはが回復魔法を使いながら走るという荒技で王宮へと戻ってきた。そして、クレアが手配した回復系の魔法が使える数人の魔導士たちによって、恭也の傷は癒されたのだ。

「それで救世主候補たちはこれからどうすると思う?」

クレアの質問に、耕介と十六夜は深く考え込む。
少なくともかなり追いつめられているだろうというのは三人とも予想できる。
だが、

「たぶん、大河君がまとめると思うよ」
「そうでなければ、恭也様があそこまで……命をかけてまで戦った意味がなくなってしまいます」

恭也は大河に託した。
もしかしたら殺してしまうかもしれない者に、守りたい者たちのその一部を。
それを自覚させた。
それは押しつけのようなものかもしれないが、それでもきっと大河はそれを受け入れるだろう。

「けど、同時に次に会うときは完全に敵として見られるかもしれないけどね」

今回のような迷いがなく、最初から倒す気でこられたなら耕介たちも次はどうなるかわからない。
いや、それ以上に……。

「破滅との戦争の時にそれが足かせになる、か」
「はい」

いつか遠くないうちに来るであろうと破滅との戦争。救世主が誕生する時、それは贄の一部として絶対に訪れる。そのとき恭也たちとてそれに参戦する。無論、彼らは王宮側としてだ。そしてそのとき救世主候補たちも出てくることになるだろう。
その戦争中に出会ってしまったならばどうなるか予想がつかない。

「本当に三つ巴になるかもしれぬな」

恭也たちと救世主候補たち、そして破滅。見ようによっては恭也と赤の主である大河、そして正体の知れない白の主。
そんな三つに分かれる。そしてそう分かれたなら、誰が一番のリスクを負うことになるか。
それは恭也以外にありえない。王宮いると言っても、クレアしか味方がいない状態では、戦闘という面では後ろ盾も少なく、直接の味方は知佳たちしかいないのだ。
対して救世主候補たちは学園の後ろ盾を充分に活かせ、他の科に仲間もいるだろう。破滅とてやはり似たようなもの。
そこまで考えて、クレアは表情を真剣なものへと変えた。それはクレアとしての顔では王女としての顔。

「もしもの時は、私は全ての真実を国民に伝える」
「ちょっと待った、クレアちゃんそれは……」
「それでは救世主候補の方々や当真様が」

なぜ恭也たちがクレアの助力を借りて、この王宮に身を寄せたのか。
この三人は本当の所を理解していた。恭也が大河を殺してしまうかもしれないからだということに気がついていた。
だが、全ての真実を話さないのは、救世主候補たちが救世主という存在を拠り所にしているということ、おとぎ話のような話であれ、民衆たちとて心のどこかではそれを信じているところがあるから、全てを話せば大河たちが……何より赤の主である大河が狙われることになるかもしれないから、というのも何も建前だったわけではない。
それはありえるかもしれない話なのだ。
だから恭也たちは、あまりそのジョーカーとも言える真実を知られず、だが自由に動けるだけの学園以外の後ろ盾がほしかった。
それらの全てが、恭也たちがこの王宮に身を寄せた理由でもあるのだ。

「真実を伝えれば、それだけではなく学園自体が危ういかもしれぬ。だが、それでもだ」
「クレアちゃん……」

それがわかっていても、クレアは揺らがなかった。

「私は救世主『が』今の世界を滅ぼすと伝えるぞ」

もし恭也たちが真実を流布して回っても、それを信じる者は少ないかもしれない。だが、この世界唯一の王女がそれを伝えたならば……もちろんそれを証明するためには色々と用意しなければならないこともあるのだが……きっとそれは真実として伝わる。
そのとき、救世主候補たちは破滅と同じく世界の敵となるだろう。
だが、それは同時に恭也の味方が増えるということだった。

「わかっておるよ。こんなこと恭也が望んでいないことは。だが、私にはこれぐらいしかしてやれぬ。救世主候補たちに恨まれること、学園の者たちに恨まれること、もしもの時に私が恭也にしてやれるのは、そのぐらいなのだ。そしてそれは民のためにもなる」
「クレア様……」
「それとて恭也が背負わされてしまったものに比べれば軽すぎる。恭也が背負ったと思っておらずとも、な。そのぐらいのことであれ、それは私だけにできることだ。私は恭也を守るためなら、誰に恨まれようが……恭也に恨まれようがそれをやるぞ」

どこまでも真剣に、王女としてこの世界を守るという威厳に満ちた態度と、そしてクレア個人の感情を混ぜた言葉。
耕介はそれを見て、十六夜はそれを感じて、何も言うことはできない。大河たちのために賛成もできないが、恭也の味方として反対もできない。
そんな二人の反応を見て、真剣さと、態度と、感情を戻し、クレアは苦笑する。

「あくまでもしもの時だ。この世界とは何の関係もないのに戦わせられている大河たちのためにも、同じく恭也のためにも、私とてそんなことはしたくない」

大河たちはあくまでこの世界を救うために、何の関係もないはずの世界に来て『もらった』のだ。そんな彼らをこの世界の敵にはしたくないというのも、やはりクレアの本音だ。
そして、恭也のためにもそんなことはしたくない。

恭也は望まない。こんなことで自身が有名になってしまうことを。
全ての真実を話せば、恭也のことも話さなくてはならない。もちろんある程度ではあるが。
なぜなら恐怖の真実だけを伝えても、それは最悪の予言でしかない。民衆が欲するのは希望だ。だから光も伝えなくてはならないのだ。
だが、そのとき恭也は間違いなく新たなる……そして真の救世主として祭り上げられる。それは避けたい。
それは絶対に彼は望まないから。

クレアは、恭也がこの王宮に身を寄せるようになってから、彼から、彼自身のこと、その考え方を色々と聞いた。それは本当に色々なこと。

例えば、もしこの世界が破滅との戦争によって危機に陥っていたとしても、それが自分の大切な人たちに何の影響もなかったら、何もしなかったということ。少なくとも、この世界に大切な人ができるか、自分が直接巻き込まれることがなければ、決して介入しなかったと言っていた。
これが自分の世界でも同じだっただろうとも言っていた。つまり恭也が別の国に行っている間に、その訪れた国で戦争が起こったとしても何もしないと。
理由は簡単だ。恭也には戦争を動かすような力はない。彼には大きな力はない。大きな権力はない。特別な力などない。あるのはその両の手にある剣だけだ。ただ普通の人より強いというだけの個人。
そんなあくまで個人でしかない彼にできることは守ることだけなのだ。
恭也がしたいのは、あくまでそれだけだ。
戦争に介入することなどできない。

目の前で危機に陥っている人を見れば、きっと恭也は動く。だが、本当に大切だと思った人か、守ると決めた人以外の、何の関係もない人物が危険だと聞いても動くことはないだろう。
別に恭也は全ての人を守りたいと思っているわけではないから。
恭也はそこまで優しくもなければ甘くもないし、正義感に溢れてはいない。守るために……物理的な意味ではなく……切り捨てなければならないものは冷酷に、容赦なく切り捨てるだろう。
もし大切な人が戦争に巻き込まれて、恭也が介入しなくてはならなくなった時、彼にできることはたった二つ。
大切な人の傍にいて、ただ守ること。
もしくは全ての兵を無視し、戦争の原因となる人物たち『だけ』を殺すこと。
一兵卒にも、将校にもなれはしない。
恭也が戦争でできることは、守ることと、裏で動くことだけ。決して表に出る者ではない。

もちろんそれらは恭也が言っていたことで、クレアの見解は違う。
恭也は確かに甘くはない。だが大切な人が戦争に巻き込まれれば何でもやるだろう。それこそ敵を全て皆殺しにすることさえ辞さないだろうし、大切な人を助けるためなら裏から表にだって回るし、大切な人を救うためなら単身で戦場のど真ん中にだって乗り込む。
だがそれでもきっと彼は大きな勢力にはなることは望まない。彼個人か、極少数の味方だけが共に動くだけで、個人の領域からは越えないと思う。戦争の結果に介入したいとは思っていない。
彼は自分が、戦争の結果に介入できるような大きな力になることを望んでいないのだ。

(己の自分勝手、己の幸せのために、守ること以外のことはできない、か)

恭也はそう言った。
恭也の剣は、ただ自分が守りたいから守る、守りたいから殺すという自分勝手なものでしかないと。
あくまで自分のためにで、それに誰かを巻き込む気はない。

なぜ恭也はそれを強調するのか、クレアにもよくわかってる。

(だがそれは口実にも、言い訳にもならない、恭也……)

守ることは突き詰めれば殺すことになる。
傍で直接守るにせよ、原因を排除するためにせよ、物理的に守るためにはいつかは殺す。
だが、その殺された者の死は誰が背負う?
誰かの為には、誰かの所為にならないか?
確かに、殺した者が背負うべきなのだろう。だが、守られた者が自分の責任だと、そう思ってしまう者もきっといる。

だから、恭也は口実を用意した。
守れた者が関係ないと言える口実を……
だから、恭也は言い訳を用意した。
全ては恭也の所為にできる言い訳を……

恭也の自分勝手と、恭也の幸せの所為だと。
自分の所為だと。

それは本当に、本当に……

(それは不器用な優しいだ)

そんなことを言える者は、恭也の傍には誰一人としていないというのに。

恭也は自分の剣は守る者の為にと言っているが、それでもその時になれば、きっとその言葉のニュアンスを変える。
守られた者が相手の死について考えた時、その混乱している時に言うのだろう。これは自分のせいだと、自らの自分勝手さと、自らの幸せというエゴの為に起きたことで、お前はいっさい関係ないと。

守る為というのは、お前の為ではない、自分の為なのだと。

そう思いこませようとするのだろう。
他人の死という恐怖の間にそれを刷り込ませようとするのだろう。
それは本当に不器用な優しさであり、その押しつけが本当に自分勝手なことだ。
しかし、きっとそんな押しつけさえも、恭也は自分勝手の中に入れているのだろう。

だからこそ、恭也は自身が有名になるのを望まない。戦争に介入することを、英雄になることを、救世主になることを望まない。免罪符を望まない。戦争だから人を殺すという、英雄だから人を殺すという、救世主だから人を殺すなんて権利を、許しを、決して欲していない。

(すまない、恭也)

クレアは恭也の不器用な優しさを、ひどい自分勝手な押しつけを否定しない。否定できない。否定できる立場にいない。
それでもクレアは強いるかもしれない。
免罪符を手に入れさせることを。
裏ではなく、表に引きずり出すことを。
今ですら、恭也の考えを無視して戦争に介入させてしまっているというのに。守りたい者に刃を向けるという恭也にとって最悪のことをさせたというのに。
それはクレアだけの所為ではないだろう。状況や、恭也自身がそうさせたというのもある。しかしそれはクレアの所為でもあった。
だがそれでもクレアは真実を伝えるだろう。
恭也と民を守るためならば。
恭也の不器用な優しさと自分勝手な想いを取り上げてでも。

この世界と恭也を守りたいというクレア自身の『自分勝手』な想いのために。
だがそれは……

「ここまで自分の無力さを呪ったのは初めてだ。そんなことしかできないのだからな」

今まで何度となく『王女』として無力だと思ったことはあった。だが、ここまで自分という『存在』が無力だと突きつけられたのは初めてだと、クレアは自嘲気味に笑った。

「それはないよ」
「ええ。クレア様は無力ではありません」

だが耕介と十六夜はすぐさまそれを否定した。

「クレアちゃんがいなかったら、俺たちは今頃こうしていない。まだ学園にいたのか、それとも何の後ろ盾もなく、何の力もなく戦っていたのかはわからないけど。いや、たぶん何もできなかっただろうな」
「今回のことに関しても、クレア様がいなくては、恭也様がどうなっていたかわかりません」

何の慰めにもならない言葉かもしれない。それはたぶん言った二人にもわかっている。
クレアもそう思っているだろう。
それでもそれはクレアにとっては救いの言葉だ。

「ありがとう」

そのクレアの礼の言葉に二人はただ苦笑した。
今の話は……クレアの宣言も、謝罪、この三人の胸の中に閉まっておく。宣言に関してはいつ表に出てくるかはわからないが、その日が来ないことを、クレアも含めて今は祈るだけだ。

次の話に移ろう……と、思ったのだが、クレアは一つだけ聞きたいことがあった。それはずっと疑問に思っていたことなのだが、どうにも聞く機会を逸していた。
いい機会だし、今のうち聞いておく。

「耕介」
「なんだい?」
「なぜそなたは昨日からほとんど動こうとしないのだ?」

そう、耕介は帰ってきてからほとんど動いていない。何とか恭也をベッドに寝かして、その治療を見届けたあと、この部屋のソファーの上からまったく動いていない。それこそ口しか動かさない。クレアからするとトイレに行っているのかすら疑問だ。
何度か動こうとしていたようだが、すぐに顔を顰めてやめるのである。いや、動作だけではなく、それこそ僅かな仕草ですらしないようにしている。

「今俺、地獄の筋肉中の最中だから、動いたら……死ぬ」

耕介は本当に真面目な顔でそう答えた。
霊力は使いすぎると、その後とんでもない筋肉痛になる。それも全身が。ちょうどこのソファーに座ったさいに、それになってしまい動くに動けなくなったとのこと。
指一本でも動かそうとすると、痛みが次々に全身へと伝わっていく地獄だと耕介は真面目な顔で語る。
まあ、ある意味名誉の負傷である。

それを聞いて、クレアは心の中でニンマリと笑う。
耕介はその目の前で、首を下げられないので目線だけ下げて大きくため息を吐いていた。

「耕介、耕介」
「ん、なんだい?」

クレアに呼びかけられ、耕介が目線を上げた瞬間……

一瞬だけ時が止まり、そして……

「あ、あはははははははは! ってぎゃゃゃゃああぁぁぁぁ! 腹が! 腕が! 胸がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

耕介はいきなり笑いだし、だがそのせいで腹の筋肉がよじれ、痛みに絶叫。さらに身体を崩し、全身が筋肉痛で痛み出す。

「こ、耕介様!?」

目が見えない十六夜には何があったのかわからず、オロオロと耕介がいる方向を向いた。

「ク、クレアちゃん! 痛い痛い! 君が美緒やリスティや真雪みたいな真似をするなんて! ぐば! 裏切ったな!? 俺を裏切ったな!? いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

そんなことを叫びながら、ゴロゴロと転がる耕介。だが転がるからこそ筋肉痛の痛みは止まらないという悪循環になっている。

「ク、クレア様、一体何を?」

どうやら耕介がこうなったのはクレアのせいであるということに気づき、十六夜は彼女に聞いた。

「変な顔というのをやってみたのだが、思いの外効き目抜群で、笑いをとれしまったようだ。しかし私が思っていた以上の地獄だったようだのぉ」

のたうち回る耕介を見て、さすがに悪いと思ったのか、クレアは手を合わせて合掌した。
しかし彼女にできるのはそれだけである。悪戯が成功して少し嬉しかったりもしているのだ。少し恭也の影響を受けているのかもしれない。
十六夜は、耕介の絶叫を聞きながら、あらあらまあまあと結構落ち着いてる。

「ちなみにクレア様、一体どのようなお顔を?」
「秘密だ」

十六夜の質問にクレアは意地悪く笑う。
耕介がのたうち回る目の前で、ほのぼのとそんな会話をする金髪美女と王女様だった。
ちなみにこの耕介の絶叫で、隣室で眠っていたはずの知佳と久遠が目覚めたり、なのはが驚きで飛び上がったりしていた。







そこはどこなのかもわからない暗い場所。
そこに座って目を瞑っていた彼は、唐突にそれを開いた。

「……虚偽の存在も夢を見るものなのか」

偽りの記憶の整理をして何になる。
そう無感情な声で呟き、彼は立ち上がった。
彼は、あまり興味はなかったのだが、ありえない夢を見たためか、珍しく自分から口を開いた。

「何のようだ」

元々彼の眠りは浅い。だからこそ最初から気付いていた。ここに現れた少女に。

「監視……じゃないわね、観察かしら」

いつのまにかそこにいた少女……白の精・イムニティは、彼をじっと眺めながら呟いた。




彼はイムニティの言葉にも特に何の感情も見せない。イムニティがわざとらしく監視という単語をちらつかせたのにも関わらずに。

「俺が怪しいのはわかっている。だが、無駄なことだ」

彼は感情の籠もらない声と、感情のない顔をイムニティに向けた。
それにイムニティはわざとらしく肩を竦める。

「あなたの言葉は一応信じているし、あなたを敵になんて回したくないわよ。だけど……そんなことがありえるのか……いえ、いくら私の創り主でも、そんなことが可能なのか疑問なだけ」
「そのあたりは、俺は知らない」
「あなたの存在が関わっているのに?」
「俺の存在などただの虚偽の塊だ。そもそも俺は俺自身に興味がない」

彼はそう言いながら、手を握ったり開いたりを繰り返す。
そして彼は、自らの手を闇色の瞳で見つめながら話題を変えた。

「今、本当の『俺』の夢を見たが、あれが本当の『俺』というのなら、感情豊かなことだ」
「あれで? 私も一度会ったことあるけど、あなたと同じぐらい無表情だったわよ?」

イムニティは呆れたように言うが、彼の表情を変わらず無表情。

「少なくとも俺にはない」

彼はやはり無表情、無感情にもっともと続け、

「同時に俺には理解できない」

そう言い切った。
しばらくの沈黙が続く。
そもそも彼が自分から口を開いたり、話題を出したりするのも珍しい。少なくともイムニティは、ここまで彼が喋っているところを見たのは、初めて出会った時だけだ。それすらもただ説明のためだけだった。

「あなたはいつ動くの?」
「まだ先だ」
「あなたなら書の主以外の救世主候補たちを皆殺しにするのも簡単でしょう?」

彼は強い。いや、強すぎる。
単純な能力で言えば、彼は奥の手を使わなければ、救世主候補たちには敵わない。だが、彼に勝てる者はいない。殺せる者はいない。
相手が何人いようと、彼はそれらを全て皆殺しにするだろう。
奥の手を使わずに、だ。

完全なる殺す者。
殺すこと以外ができないモノ。

「言ったはずだ。俺は俺の創り主の意図も興味がない。ただそれが与えられた目的だから遂行するだけだ。俺に与えられた目的は救世主を誕生させるために殺すこと」
「それなら私のマスター以外は邪魔じゃない」
「主と言っても、まだお前は接触すらしていない。殺すとしても、お前の主が自らの意思で動き始めてからだ。今から赤の主を殺したとしても、やはり存在力が足りない」
「それはそうだけど……」
「それに……『俺』がどう動いてくるかがわからない。救世主誕生以上に重要なのは、俺が『俺』を排除することだ」

彼はそう言って、傍らに立てかけられていた剣を二つ腰へと差した。

「俺のことを知っているのはお前だけだが、救世主は別に白の主でなくてもいい」
「それは脅し?」
「いや、脅しなどするなら、その前に殺している」
「そう」

殺すと平然と言ってくる彼に、イムニティはただ静かに返した。それは事実を淡々と言っているだけだとわかるから。
そして、イムニティは決して彼と敵対する気はない。彼と敵対するぐらいなら、赤と破滅を同時に敵に回した方がまだマシだ。彼と敵対したその時点で自らの死が決定し、救世主が赤の主になってしまう。それは避けなくてはならない。
話はそれで終わりと判断したのか、彼はゆっくりと歩き始める。
だがイムニティにはまだ聞きたいことがある。

「あなたは、高町恭也をどうするの?」

イムニティのその言葉に、彼はピタリと足を止めた。

「いつも通りに殺すだけだ」

だが、やはりその言葉に感情の色はなく、そして表情も変えない。
イムニティはその答えに何も言わず、今度こそ彼は歩き去っていった。

「あなたがたぶん今回の救世主戦争のジョーカーなんでしょうね」

イムニティはどこか疲れた表情で呟き、小さくなっていく彼の背中を眺める。
本当に惜しい。彼と出会ったのが、自分がマスターを見つける前であるならば……マスターに失礼だと思うが、それでも……と思わずにはいられない。
なぜなら、彼は完全なる白。
白の理だけを持つ者なのだから。赤の心など介在しない、ありえない者なのだから。
本当に真っ白な存在。
すでに膨大な存在力を有している存在。
それだけの存在を消してきたモノ。
その全てが虚偽であっても、同時にそれは真実として管理されている。
その存在は……

「不破恭也……」

イムニティは、本人さえ気にしていない……記号としか思っていない彼の名前を、そっと言葉にした。
だが、そのときにはすでに、彼の黒き背中は、暗い闇の中へと完全に消えてしまっていた。








あとがき

とりあえず戦闘後のそれぞれ、救世主候補たち以外。
エリス「みんなそれぞれ思う所があるんだね。恭也もちょっと弱音吐いてるし」
それはそうでしょ。あとうちの恭也君は、戦闘中以外はそれなりに悩む。普通に人間としてね。精神的に弱いわけではないけど、無茶苦茶強いわけでもないから。っていうか、みなさんまとめて自分勝手になりはじめてるけど。
エリス「恭也とクレアは確定だね」
あとこの恭也は本当にどこかが危機に陥っていたとしても、直接関係がなければ協力してくれとか言われても間違いなく断ります。別にどうでもいいと思っているわけではなく、考え方の問題で。ただしクレアが言っていたとおり、目の前で危機に陥っている人とか見たら勝手に動きます。あと助けてとか、その間誰々を守ってくれとか言われたり、恭也が現れた場所がいきなり危機的状況だったりしたら介入するかもって感じです。
エリス「そういう意味はデュエルの設定だと説得簡単だね。大切な人巻き込まれるし。実際簡単だったし」
それは話の流れとしてね。まあ、とにかくこの恭也は誰でもかんでも助けようとしません。自分にできること、できいことはちゃんと自覚しているので。
エリス「っていうかそんなのはいいとして、冒頭と最後の部分はいったい」
あー、内緒。ただ言っておくと、恭也編とはまったく違う方向になる。とりあえず大河編の本当の始まりはここからかな。
エリス「ふーん、中盤差し掛かってやっとって感じだね」
ただこれからどうしよう。
エリス「何が?」
大河編はここから原作の流れは結構無視……所謂オリジナルになるんだけど、その分展開が早くなるっていうかかなり端折る。すぐに恭也編を追い抜きそうなんだよね。たぶん作中の時間の流れで言うなら、後三話か四話ぐらいで、今現在の恭也編を抜く。
エリス「恭也編はやたら時間がかかってるしねぇ」
どちらにしても、まだ両方とも伏線をまったく回収してないって言うのに、大河編が恭也編を抜くのはまずいんだよなぁ。一番重要で、両方の作品に跨る過去の複線は恭也編が先に回収してくれないと。そこまでいけばほとんどの複線回収できるんだけど、恭也編はいつ到達できるか。
エリス「じゃあさっさとそっちを進める」
はい。
エリス「それでは今回はこのへんで」
ではでは。






いや、本当に冒頭と最後の部分がとっても気になります!
美姫 「これは何を意味しているのかしら」
気になる、気になる、気になる〜。
美姫 「今回のお話は戦闘後のお話だけれど」
いや、これだけ見てたら耕介が一番可哀想に思えてきたな。
美姫 「実際は、恭也の方が重傷だったし、救世主候補たちは精神的にまいってるんだけれどね」
まあ、たかが筋肉痛とあなどれないし。
美姫 「全身筋肉痛というのは辛そうね」
だよな。ともあれ、次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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