『選ばれし黒衣の救世主』










「あらあら、もうかくれんぼはおしまい?」

 大河たちが通常空間……先程の封印の間に戻ると、案の定イムニティは笑いながら待ち構えていた。
だが、そんなイムニティに向かって、大河たち三人は不敵に笑う。それは、あの未亜でさえも。

「はい、おしまいです」

 未亜が答えると、イムニティは笑みを消す。

「じゃあ、あなたたちの命も終わりにしましょう」
「はっ、そう簡単にやられるかよ」

大河はトレイターを構えて鼻を鳴らす。
 それにリコも頷いた。

「そんなことはさせません。大河さんも、未亜さんも、私が守ります」

 頼もしく宣言するリコに、イムニティはどこか訝しげな視線を送る。

「あなた何か変わった?」
「さあ、それはご自分で確かめてください」
「いいわ、じゃあ、確かめてあげる」

そうして、再び戦いは始まる。





赤の主・大河編

 第十六章 別れた道





「もう……この学園にはいられないな」
「そうだね」

恭也が、窓から見える学園の景色を眺めながら言うと、知佳もどこか寂しそうに同意した。

「え、でも、大河さんたちに本当のことを話せばきっと……」
「駄目だ」
「ダメだよ」

なのはが不思議そうに聞くと、恭也と知佳は揃ってその意見を却下する。

「ど、どうして?」
「レティアの話だと、すでに白の主は決まっている。主もそうだが、主を得た書の精霊はとんでもない力を持っていると言っていただろう? 少なくとも、前に俺が戦ったリコ以上だということだ」
「うん」

 恭也でさえ苦戦どころか、切り札を見せた上で、ギリギリの勝利だった。そのリコがさらに強くなったようなもの。それがどれだけ洒落にならないことなのかは、なのはにもわかるだろう。
ただ、今は恭也の力もわかった。それを使えば勝てる可能性もある。だがレティアが説明した恭也の力は、ある意味最強でありながらも、親しい者相手には最弱であり、恭也がその力をリコに向けられるか……いや発動できても、あまり効果がないものにもなりかねない。
 ある意味、能力と使い所が矛盾してしまうのだ。

「ということは、リコちゃんもそれに対抗するために、すでに大河君か未亜ちゃんを主に選んでる可能性もあるんだよ」

 レティアは、大河たちが白の精と戦っていると言っていた。ならば、その可能性は大きい。

「そうか、俺たち……というか、恭也君の存在は、その二人とも敵対しかねない理由を持ってる」

耕介の言うとおり、恭也は彼女たちからしてみれば、自分の親の宿敵であり、その在り方を否定する者のようなものだ。
 彼女たちが心の中でどう思っているかはわからないが、用心しなければならない。

「で、でもリコさんなら話せばきっと……」
「かもしれない……だがな、救世主候補たちのみんなは、多かれ少なかれ、救世主を拠り所にしている。それを信じてくれるかどうかはわからない」

 はっきり言ってしまえば、恭也たちとて、まだ信じられないところがある。それを話して、彼女たちが信じてくれるという可能性はそれほど大きくない。
それに信用してもらえたとしても、もしかしたら赤の主となった者とリコを孤立させてしまう結果になるかもしれない。
 恭也たちとしても、赤の主とリコに死んでもらうわけにはいかない。赤の主とリコを守る仲間として、彼女らには、二人のそばにいてもらわなければならないのだ。ならば、まだ真実は教えるべきではない。

「それだけではない、あのレティアという者が明かした真実は、ある意味絶望の未来だ。救世主を拠り所にしているのは、何も救世主候補たちだけではない。多くの民衆も同じなのだ。あの真実だけは、まだ多くの者に伝えてはならぬもの」

クレアもどこか辛そうに、ため息をつきながら言う。

「下手をすればパニックだね。もっとも、それを信じるかによるけど」
「それに、もしかしたら大河たちの身すら危うくなる可能性がある」

安直に、大河たちを殺せばいいなどという答えが出される可能性は大きい。
パニックに陥った民衆ほど歯止めの効かないものはない。その民意が救世主の排除に向かってしまえば、救世主クラスの者たち全員が危険になる。
 それは避けなくてはならない。
別に恭也は、大河たちと敵対したいわけではないし、戦いたい訳でもない。それどころか、できるならばちゃんと守ってやりたいと思っている。ただ、目的のために彼らのそばに……仲間でいられなくなっただけなのだ。

「間違いなくなにかしらの弊害がでてきますね」

すでに先程の世界で、クレアにその正体を告げていた十六夜が、見えない目にどこか寂しさを秘めながらも呟く。

「真実を知れば幸福……などということはないのだ」

クレアは、まるで自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「そっか」

なのはもそれらの説明で納得したのだろう、小さく頷いた。だが、そこには幾らかの安堵も存在していたことに、他の者たちは気づかない。

「だけど、これからどうするんだい?」

 耕介がもっともなことを聞く。
 真実を知った以上、学園に居続けるのは得策ではない。無論、選択肢としてこの学園に残り、動くというのもあるが、それでは行動しづらくなる。全てを知ってしまった以上、自分たちは赤と白の中立でいたい。赤の主も白の主も死なせる訳にはいかないのだから。
 かと言って、この世界で何の後ろ盾もない恭也たちは、この学園以外に居所がない。

「どうしたものか」

 恭也も軽くため息をつく。

「ならば私のところに来るか?」

 と、いきなりクレアが腰に手を当て、不敵な表情を見せながら言ってくる。
それに恭也は目を瞬かせたが、すぐにそれを苦笑へと変えた。

「いや、流石にこの人数では迷惑だろう」

 十六夜や久遠はともかく、耕介たちを含めて四人。普通の家庭に転がり込むには少々多い。高町家などならば、まだ何とかなりそうな気もするが。
だが、クレアは表情を変えない。

「そういえばちゃんと自己紹介をしておらなんだな。私はクレシーダ・バーンフリートと言う」

その名を聞き、知佳となのはが驚きに目を見開くが、恭也は逆に軽く目を細めた。

「何やら舌を噛みそうな名前だな」
「私の先祖のアルストロメリア・バーンフリートよりかはマシだと思うが?」
「それはフルネームで言うと、さらに舌を噛みそうだね」

 耕介もどこか苦笑気味に言う。
だが知佳たちはそうではない。

「バーンフリートって」
「もしかして……」

 ようやく二人の様子に気づいたのか、恭也が首を傾ける。

「どうしたんだ、なのは? 知佳さんも」
「お、おにーちゃん! 本当にわかってないの!?」
「何がだ?」
「どうかしたのかい?」

 恭也だけでなく、耕介もわかっていないらしい。

「クレシーダ様……確かこの世界の王女様のお名前では?」
「って、何で十六夜さんが知ってるの?」
「あらあら、どうしてでしょう?」
「くぅん?」

 おっとりと首を傾げる十六夜と、その隣にいた久遠が同じくマネをするかのように首を傾ける。
 なのはと知佳は、耕介や十六夜たちは知らなくても無理はないと思っていた。彼らは授業などに出ているわけでもないし、知佳のように色々な情報を集めていたわけでもないのだから。
 実際、耕介はわからなかったようである。だが、なぜか十六夜は知っていたらしい。本当に不思議な人(?)である。

「というよりも、どうして十六夜さんが知っていて、おにーちゃんが知らないんですか? ちゃんと授業で習ったのに」

「む、そ、それはだな」

腰に両手を当てて問うてくるなのはに、恭也は思わず怯む。

「授業は真面目に受けなくちゃいけません!」
「そ、そうだな」

 授業について、歳の離れた妹に諭される兄。何とも情けない場面である。
 それを見て、全員が苦笑する。

「とにかく、何となく言ってることがおかしいと思ってたけど、クレアちゃんが王女様だっていうなら納得だよ」

 レティアとの話の前に現れた時、知佳は色々と疑問があったのだが、彼女の正体を聞いてそれも解決した。

「まあ、そういうことだ。
 それでどうだ。王宮に来るつもりはないか?」
「いいのか?」
「かまわぬ。いや、あんな話を聞いたあとでは、むしろ来てもらわねば困る。たまにミュリエルも来ることがあるから、その場合には隠れてもらうことになるが」

 確かにここは王立の学園。さらに普通とは違う趣旨の学園であることからも、その学園長であるミュリエルが、王宮に訪れるのはおかしくないだろう。

「どうせ賢人議会議員の連中は、救世主候補たちの顔と名前などろくに覚えてはいないだろうからな。恭也たちが元救世主クラスの者たちだとバレはしないだろうし、顔を見せなければよい。
 騎士団にはこの学園の卒業者も多いが、現在の学園の中身を知っている者はほとんどいない。他の者たちにも学園の情報はそれほど下りてこないからの、恭也たちが何者であるのかをわざわざ調べる者はいなかろう」

 賢人議会議員というのが何であるのか、恭也にはわからないが、おそらくはこの世界の政治家のようなものであるのだろう。
 恭也はとりあえず他の者たちにも意見求めるように視線を送る。するとなのはたちは頷いてみせた。

「クレア、その話受けさせてもってもいいか?」
「うむ。私も真実を知った仲間なのだ。協力させてもらうぞ」
「頼む」

 恭也が頭を下げると、クレアは先程と同じく不敵に笑い、大きく頷いた。




「だぁぁぁぁぁぁ!」

 大河がトレイターをランスに変えて、イムニティへと突撃する。
 それをイムニティは、背後より出現させた爪で払おうとするが、その爪に向かって、未亜が放った矢がいくつも直撃し、あらぬ方向へと向かう。

「っ!」

 その間にランスが風を切り裂きながら、イムニティへと吸い込まれていく。
 だがイムニティは、なんとか身体を捻りながらかわそうとする。しかし完全にはかわせず、脇腹をかすめた。

「こっの!」

 イムニティは、身体を捻った力でそのまま回転し、裏拳を大河の胸に叩き込む。

「ぐっ!」

 大河は後ろへと跳び、威力は弱めたものの、うめき声を上げて、そのまま下がった。
 追撃をしかけようとするイムニティに、リコが召喚したスライムが邪魔をする。
さらに未亜が矢を放っている間に、リコは呪文の詠唱を始めた。
 それに気づいたイムニティはスライムを切り裂き、未亜の矢を弾くと、横へと飛んで障壁を張った。
それと同時に、リコの呪文は完成する。
そして、雷がイムニティに降り注ぎ、それは彼女の障壁を突き破った。

「ば、馬鹿な……リコ……あなた……」

 雷撃を受け、イムニティは掠れた声で言った。そして、信じられないという表情で、後ろにいる大河と未亜を見つめた。

「……いったい、どっちを選んだのかしら……」
「さあ、どちらでしょう?」

未亜は少しだけ笑って言う。
 あの次元の狭間で、大河が赤の主を名乗ると言っていたのだが、未亜がそれをさせなかった。バカ正直に言ってしまう必要はない、と。
無論、いつかはばれるだろうが、隠せるうちは隠しておいた方がいい、と未亜は主張したのだ。自分が狙われてしまう可能性もあるのに。
大河とリコは反対したのだが、未亜は頑として、これだけは譲らなかった。
 結局、本当に強くなった、と大河は呟き、渋々ながらも未亜の案に乗った。

「どちらにしろ、前回と前々回の再現をしようっていうつもりでしょう」

イムニティはゆっくりと立ち上がる。

「いいわ、今日の所は私が引いてあげる」

イムニティは傷を癒しながら笑う。

「今度会うときは、お互いのマスターを加えて会いましょう。
 それではごきげんよう、リコ・リス」

リコは頷きもせずに口を開く。

「ごきげんよう……イムニティ」

イムニティは、それを聞いたあとに、その場から姿を消した。
しばらくしてから大河は息をつく。

「未亜、本当によかったのか?」
「いいの。お兄ちゃんだって別に白の主を倒すつもりはないんでしょ?」
「それはそうだけど、未亜も狙われることになるんだぞ」
「救世主候補なんだから、結局戦うことになるよ」
「むう」

大河としては、未亜を危険な目に合わせたくないのだが、彼女は精神的にかなり強くなってしまっている。
 今もなぜか笑ってるし。

「でも次は……」

未亜が笑顔を消して呟くと、リコが頷いた。

「白の主との戦いになりますね」
「まあ、難しい事は後で考えるとして、今は書を持って地上に帰ろうぜ」
「はい。ですが、それ……もう何の意味もないと思いますよ」
「え? どうしてですか」

リコの言葉に、未亜は首を傾げて聞いた。

「上に行けばわかります」

それに、なぜかリコは悪戯っぽく笑って答えた。




 導きの書を片手に持ちながら歩く自らのマスターと、やはりその横で笑っている未亜を眺めながらも、リコはこれからどうなるのかを思案していた。
何となく、恭也と会いにくい。
自分がマスターを決めてしまったというのもあるが、それ以上に彼が召喚器を呼びだしたことを、他の人に何と説明すればいいのか。もしかしたら、すでに他の人たちには自身で説明しているかもしれないが。
 白の主のこと、導きの書のこと。
 考えることは色々とあるのだが、今目の前で口笛を吹いて軽い様子でいる大河を見ていると、そんなことは後でもいいか、とも思えてしまう。
 この人をマスターにしたことに、後悔はないはずだから。
そうして地上に戻り、校舎の方に向かっていくと、他の仲間たちとミュリエルの姿が見えた。ただ、そこに恭也となのはの姿はない。
そこで、未亜が不思議そうな顔を見せた。

「何かあったのかな? みんなそわそわしてるけど」

 そう、未亜の言うとおりで、全員がどこか落ち着きがなく、暗がりながらも何となく顔色が悪いように見えた。

「俺たちのことが心配だったか、もしくはまだ恭也の目が覚めてないんじゃないか?」
「恭也さん、大丈夫かな」
「怪我はそれほどひどくありませんでしたし、大丈夫だと思います」
「まあ、あいつがあれぐらいでまいるとは思えねぇしな」

 未亜とリコは、大河の言いように苦笑するが、ほとんど同意見であった。
 大河が大きく手を振ると、全員が気づいたらしく駆け寄ってくる。
 大河が胸を張って導きの書を掲げようとしたのだが、その前にリリィが焦ったように口を開いた。

「大河! 恭也を見なかった!?」
「は?」
「は、じゃないわよ! 地下から戻って来る途中でもなんでもいいから、恭也を見なかったか聞いてるのよ!」

リリィは大河の襟を掴んで、何度も揺さぶりながら聞く。
 彼女の言葉は突然ではあったが、揺さぶられながらも大河はなんとか首を振った。
 さらにリリィは未亜とリコに視線を向ける。だが、二人も首を振って答えた。
 そこで未亜がある事に気づき、口を開く。

「も、もしかして逆召喚が失敗して、他の場所に?」

 リコはそんなわけがないと心の中で呟いた。時間をかけて行ったのだから、ちゃんとあの時の逆召喚は成功しているはずだ。
だが、もし失敗していたなら……
 
「いえ、恭也さんとなのはさんはちゃんと戻って来ました。恭也さんは気絶していましたが」

ベリオが首を振って答えた。
それにホッとした表情を見せるリコと未亜。

「じゃあ……」
「それが、姿を消してしまったでござるよ」
「それって……どういうことだよ」

 まだ三人は、彼女らの言うことが理解できない。

「わからないわよ! 私たちが恭也の部屋にお見舞いに行ったら、誰もいなかったのよ! 恭也もなのはもコックの人も、あの知佳って人も!」

リリィは、後ろに束ねた髪を振り乱して叫ぶ。
 その様子に大河は一瞬押し黙るが、すぐに口を開けた。

「な、なら、知佳さんたちの部屋に」
「それも探したわよ!」

なぜこんなにリリィは取り乱しているだろうか?
それが三人にはわからないのだ。
 
(まさ……か……)

 ある予感がよぎり、リコは自分でも気づかないうちに震えた。
 まさか……そんなバカな……

「それだけではありません、あの四人の荷物が……なくなっていたのです」

 今まで黙っていたミュリエルが、どこか沈痛な面もちで言う。
 荷物がなくなっていた。
 元々この世界の住人でない彼らは、それほど荷物は多くないだろう。だが、その少ない荷物でもわざわざ持っていく……その意味は。

「なんで……恭也さんたちが……」

 未亜は大きく目を見開いて呟くが、それは誰もが聞きたいことだろう。

「導きの書は持ってこれましたか?」
「あ、ああ」

 大河は動揺を隠せないままに頷き、導きの書をミュリエルへと渡した。

「白紙……ですか」

 ミュリエルは、まるで予想がついていたかのように言った。
そう、赤と白の主が決まったのだから導きの書は白紙……何も書かれていない。

(まさか……)

 リコは脳裏を過ぎる、ある予測……

「リリィたちにはもう言いましたが、恭也さんたちが破滅に与するものであった可能性があります」
 
ミュリエルはため息混じりで呟く。
 それはリコと同じ予測……だが、絶対に信じたくない予測。

「ちょ、ちょっと待てよ、学園長! 恭也たちが破滅側なわけないだろう!?」

 大河がミュリエルに食ってかかる。
いや、大河だけではない、リコ以外の全員がミュリエルに何かを言っている。
 それは当然だった。
 なぜなら、彼ら全員が恭也を信じていたから。
 あの兄妹をずっと見てきたのだ。それを見てきて、あの二人が破滅などではないということを理解しているのだ。

「ですが、彼らがこの世界に来た方法はほとんど不明。さらに召喚の塔が爆破された日に姿を消す……不自然ではありませんか?」
「そ、それは……」

ミュリエルは言わなかったが、導きの書が白紙である意味。
 それはもしかしたら、すでに偵察を終えたから帰って行ったという可能性と、白の主が決まったからいなくなった可能性、もしくはリコとイムニティが共に主を選んだからという可能性があることをリコも理解していた。
 いや、それどころか……

(恭也さんは……召喚器を持っている……)

 誰がイムニティと契約した?
自分やイムニティが契約できるのは、召喚器を持つ者だけ。
もしかしたら恭也が白の主で、それを自分に気づかせないために今まで隠していたのだとしたら?

(白の主……恭也さんが……?)

そんなわけがない、と心の中で叫ぶ。
 しかし、状況的にはありえない予測ではなかった。
いや、むしろそういう予測の方がたてやすい状況である。

(そ……んな……)

だが彼は支配など望むような人ではない。
 しかし、それすら隠していたのなら?
あの人たちが……あの人が見せていた表情、感情、心が偽物であったのなら?
 
 リコの脳裏にグルグルと、イヤな考えばかりが浮かぶ。
自分は大河と共に、恭也と戦うのか?
自分はそんなものを望んでいないが、恭也はどうなのだ。

「リコ……おい、リコ!」
「え、あ、マスター……」

突然肩を揺すられ、顔を上げると、目の前には自分の主がいた。

「お前まで恭也が破滅側だって思ってるのかよ!?」
「ち、ちがい……ます」

 いや、思っていた。
 正確には白側だと。

「恭也が俺たちと敵対するわけねぇだろ!」

大河はリコの肩から手を離し、ミュリエルを睨み付けるようにして叫ぶが、それはどこか自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
 他の者たちも大河に頷くものの、その顔色は悪い。
 信じたい……だが、状況がその想いを挫けさせようとしている。
あの人たちの見せていた姿は偽りではない、と全員が信じたいのに。

「とにかく恭也さんたちのことは、まだ他言してはなりません」

ミュリエルがそう告げるが、その言葉をちゃんと聞いている者がいたのか。
 その後も、ミュリエルが導きの書などのことで指示をだしたりもしたが、全員がほとんど放心していたり、耳に入っていない様子で、最後にはミュリエルはため息をついて、解散を言い渡したのだった。



こうして恭也たちは学園から離れた。
 恭也は気づいていなかったのだ。
 自分が……自分たちが、どれだけ救世主クラスの者たちに信頼されていたのかを。
 それは重大な真実を聞き、見落としていたこと。
それが今後どう影響するのか……







 あとがき

というわけで、今回は大河編を……
エリス「このアホォォォォォ! 滅却!」
 グボバッ!
エリス「恭也編二十五章のあとがきでもうできてるとか言ってたくせに、なんでこんな遅いの!?」
 ご、ごめんなさい、恭也編の二十六、七章と一緒に送るはずだったんですが、ネカフェに行ってから、この話がUSBメモリーに入っていないこと気づいて。
エリス「ちゃんと確認してから行きなさい!」
 は、はいです。
エリス「まったく」
 しかし、今回は戦闘が不完全燃焼な気が。
エリス「そう思うならちゃんと書きなよ」
 いや、最初は書いたんだよ、これよりもかなり長く。だけど、そうすると後の話が次回に持ち越しになるから、今回は縮めた。
エリス「それにしても、学園側、かなり歪んだ答えにいきついてるね」
 いや、あの状況じゃそう考えるでしょ。
エリス「さて、今後恭也たちはどう動くのか、そして救世主候補たちは」
 続きは執筆中でございます。
エリス「さっささと書かせますので、また次回に」
 それではー。










学園を去った恭也たちは王宮へ。
美姫 「どんな真実を語られたのかはまだ分からないけれど、よっぽどの事だったのかしらね」
守るために離れるという選択が正しかったのか、間違いだったのか。
美姫 「今の時点では分からないわね」
一体、どうなるんだー!
美姫 「大河編の次回も気になってしまうわ」
次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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