前書き

 

これは原作の設定とは違い、オリジナルの要素が含まれています。

そういった類のものが嫌いな方、許せない方はこれ以上先を読まないでください。本当に。

稚拙な文章ですがそれでも良いという方だけお読みになって下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったね!クロノくん。なのはたちで《全てを凍てつかせる、時を壊す災害》を食い止められたんだよね」

 

「・・・・」

 

「クロノくん? どうしたの?」

 

「いや、《全てを凍てつかせる、時を壊す災害》を僕となのはだけで本当に食い止められたんだなって」

 

「もぅ、『二人なら大丈夫』って言ったじゃない」

 

「ごめん、ごめん」

 

「じゃぁ、帰ろっか」

 

「あぁ。帰ろう」

 

(・・・・・なんだろう・・・胸騒ぎがする)

 

 

 

 

 

何も無いただ白く染まった空間。そこにただ無気質な声だけが響く

 

 

『――――検索中検索中検索中検索中検索中検索中・・・・・・エラーエラーエラーエラーエラーエラー・・・再検索開始・・・・検索中検索中検索中検索中検索中・・・・・エラーエラーエラーエラーエラー・・・再検索開始・・・検索中検索中検索中検索中・・・・エラーエラーエラーエラー・・・再検索開始・・・・検索中検索中検索中・・・エラーエラーエラー・・・再検索開始・・・・検索中検索中・・エラーエラー検索終了・・・・補足開始・・これより―――』

 

 

 

 

 

 

全てはただ歪んでいく

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは 

〜 PRAYER AND WISHER 〜

 

第一節「分かれた日」

 

 

 

 

 

 

 

黄昏はとうに過ぎ、夜天は雲に覆われ、夜明けを迎えるにはまだ遠い

 

 

 

 

 

 

 

 

海と山に囲まれた美しい街、海鳴。

その街のコンサートホールで今、CSS――クリステラソングスクール――によるチャリティーコンサートが行われている。

そんな舞台の裏で、激しい戦いが繰り広げられていた。

 

 

 

モノクロの世界、ぶつかり合う二つのモノ。

 

 

小太刀二刀・御神流・奥義之陸 薙旋

小太刀二刀・御神流・奥義之参・裏 射抜

 

 

二つのモノはゼリーの中を動くような感覚の中で打ち合う。青年は刺突を一段目の薙ぎで払う。

しかし、その刺突の真髄は派生にこそある。派生した二段目の刺突のため二段目の薙ぎを払う。

すかさず三段目の薙ぎを放つと同時に背後に回り込み、そして、四段目の薙ぎ。

 

「―――はああっ!」

 

斬撃の直後にモノクロの世界に色が戻り、青年――高町恭也は手ごたえを感じ、一瞬硬直する。だがその硬直が、一瞬の隙に繋がった。

女性――御神美沙斗は躊躇なく恭也の背を切り裂く。

 

「ぐっ!」

 

恭也は痛みを無視して踏み出し美沙斗から距離をとる。

そのスピードは先ほどと比べて格段に落ちていたが美沙斗から追撃は来ない。

恭也は斬られた背中から血が溢れ、激しい痛みに眩暈が生じ、気を抜けばすぐにでも意識が飛びそうになる。

 

「まだ、立っていられるのかい?」

 

美沙斗は少し驚きの混じった声で言う。

確かに恭也の一撃が決まったはずなのに、美沙斗は何も無かったかのように、しかし、背中から夥しい血を流しながら立っていた。

恭也は足に力が入らず膝をつく。徐々に力が抜けていき、目は霞む。

それでも恭也は倒れるわけには行かなかった。

 

「・・・やめにしませんか、復讐なんて」

 

口を開く余裕すらないはずなのに、恭也の口からは言葉が零れる。

 

「大切だった人たち、自分の全てだった人」

 

美沙斗は悲しみの色で染まった瞳を虚空に向けて語る。

この世の理不尽を、不条理を、ただ憎む。

似ていると恭也は思う。

 

「奴らは平然と大切なもの奪う。目的の為なら嘲り笑いながら人を平気で踏みにじる」

 

深い哀しみと激しい怒りを灯した瞳を向けてくる。

彼女は理不尽に怒っているのだ、彼女の子供と同じように・・・

 

「君ならわかるだろ?そんな奴らをこの手で八つ裂きにしないと気がすまないはずがないだろ?そして、やつらに復讐するだけの力が私たちにはある・・・」

 

恭也は答えない。それが理解できてしまうから。美沙斗の独白も止まらない。

 

「大切な、愛したひとたちは奪われた。もう、何もかも失った。・・・私は目的を果たせるなら、命も愛もいらない」

 

それでも彼は彼女を止めなくてはならない・・

 

 

 

「目的のために他人を犠牲にする、それではあなたの大切な人たちを奪った奴らと何も変わらない。」

 

何もかも失ったというならば・・・だから、今止めなくてはもう二度と・・

 

「大切な人たちを守っていたかったのに、未来のために命を使った人」

 

恭也の目標であった、彼の父親のような

 

「残り少ないはずの命を使って・・・想いと心を先へと伝えていこうとする人」

 

今、最後の舞台に立つあの人のように

 

「それぞれが選んだ道で、一生懸命に想いを受け継いで、進んでいこうとしている人たち」

 

恭也の弟子でもある妹と姉のような存在である人

 

「今生きている、命よりも大切かもしれない人・・・大事な娘を悲しませてまでも復讐なんてしなければならないんですか!!何故わからないんですか!?あなたはまだ全てを失ってなどいないはずです!!」

 

今、止めなくては――きっともう笑えなくなる。ただそう思う。

 

「そんなことを皆、静馬さんや琴絵さんたちが本当に望むと思っているんですか」

 

恭也は動かない体に鞭をうち、ゆっくりと立ち上がり、そして剣を構える。

美沙斗は哀しそうに微笑み、涙を落とす。

 

「わかっていたんだ、そんなこと・・・・・美由希を見た時どれほど涙を堪えるのに必死だったと思う!!どんなにあの子を抱きしめたかったか・・・母親らしいことをしてやれたらと!!」

 

それは美沙斗の心からの気持ち。

 

「今からでもできますよ、いくらでも!!堪える必要などない!!」

 

それでも・・・美沙斗は再び刺突の構えをとる。

 

「止まれないんだ、もう死ぬまでは。今止まってしまったら私の10数年とこの手で傷つけた人たちが浮かばれない」

 

恭也は残った力で小太刀の柄を握り締める。

 

「この仕事が終われば、やっとあの人に・・あの人たちに花をささげられる」

 

二人の周りの空気が凍りつく。

 

「今すぐにでもささげられる、美由希は花が好きだから、育てるのが上手いから」

 

恭也は小太刀を鞘に収め抜刀の構えをとる。

届いてくれと剣を構える。

 

「美由希がきっと奇麗な花を選んでくれる!!」

 

 

 

二人は再び神速によりモノクロの世界に入る。

二人の間は縮まっていく。

恭也の身体は碌に動かない。美沙斗の刺突が恭也の目の前に迫った。

避ける事は出来ない、防ぐ事も出来ない。

 

(動け!!)

 

そして、恭也には全ての時が停まったように見えた。

その停まった世界で幾筋もの光跡が見えた気がした。

 

 

 

 

勢いなどなく・・ただ、その軌跡をなぞる様に、恭也は小太刀を抜き放った。

恭也の意識はそこで消える。

消える意識のなかで彼は妹の声を聞いた気がした。

 

 

 

 

幾ばくか過ぎた。

恭也は、自分の意識がゆっくりと浮かび上がるのが解った。

恭也は瞼を上げ、周りの気配を感じてみると、人の気配が二つ感じられた。

雰囲気からすると、争ってはいない。ただ、時折すすり泣くような、そんな声が聞こえた。その声だけで、何となく察せられた。きっと、あの二人はちゃんと解り合えたのだろうことに。

声と気配のする方へと向かう。

 

二人の姿が見えた。

一つの大きな出来事が完全にその道を分かってしまった一組の母親と娘が、涙で頬を濡らしながら抱き合っていた。

ただお互いその姿が最後に見たときよりボロボロなのは、解り合うまでに壮絶な親子喧嘩があったからだろう。

そう結論し、安堵し、もう一度意識を手放しそうになった。

 

―――瞬間

 

初めに気づいたのは恭也。次に美沙斗が気付いた。

開け放たれた扉から男が見えていた。

 

「貴様!!」

 

美沙斗がそう言うと男は醜悪な笑みを浮かべてドアの入り口にとん、と小さな箱を置いた。

恭也は既に其れにむかって走り始めている。

恭也はその箱を確認することなく拾いあげ、また走り始める。

 

 

其れは・・・爆弾・・・威力がどれ程かは解からない・・・だが、それは彼らにとって忌むべき象徴・・・かつて、彼らの一族を全滅させ、恭也の父を殺したもの。

 

「恭也!?」

 

「恭ちゃん!?」

 

後ろから二人の驚きの声が聞こえて、恭也は一度だけ二人の方に振り向き、その場から全速力で走っていく。

この爆弾の威力がどれ程かは解からないが、なんとしてもこの場での爆発は阻止しなければならない。

美沙斗は自分の過ちに気が付いた・・・・そして、今ホールで歌う人達のためにも・・・これは防がねばならない・・・例え代償が恭也自身の命であってさえも・・・

 

 

窓から飛び出した恭也は懐に爆弾を深く抱え込む・・・自分の身体でどれだけ弱められるかなどたかが知れている・・・だが、それでもこうすれば、被害は少し減る。

空には雲に覆われながらも僅かに月が姿を現していた。

それを見上げながら、恭也は自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

(・・・・・・父さん)

 

少なくとも後悔はない・・・

自分の弟子はもう自分の助けは要らない・・・母親がいる・・・そして・・・家族がいる・・

きっと自分の代わりに家族を守るだろう。壊れかけの自分よりよほどいい。

 

 

 

 

「・・・俺は誰かを幸せに出来たのかな?」

 

 

―――――――――――

 

 

頭に音が響く。眼を見開く恭也。

だが、それを理解するより早く、爆弾が閃光を発し、それと同時に青年を白い閃光が包みこむ。

驚く間もなく爆発の熱が感覚を襲い、それと同時に温かい感覚に包まれた。

爆発した恭也の身体ごと、白い閃光が覆い・・・次の瞬間、恭也の姿はもう存在していなかった・・・・・

 

 

 

 

 

 

大地に折れた小太刀が彼の墓標のように刺さり、其処だけを照らすように月光が降り注いでいた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの世界で起こったこと

 

樹の枝のように

 

世界は分かれ、変容し始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さあ、急げ―――

 

―――舞台の幕はとうに上がっている―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 

ここまで読んでくださった方ありがとうございます。初めまして、ディスです。

これが初投稿になります。稚拙な文章ですがよろしくお願いします。

 

 

 

 


投稿ありがとうございます。
美姫 「リリカルはアニメじゃなくて、ゲームの方のリリカルなのかしら」
さあ、どっちかな。いきなり恭也が……、って所で続く!
美姫 「どんなお話になっていくのか楽しみね」
うんうん。次回も待っていますね。
美姫 「待ってますね〜」



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