小さく、無垢な剣士と穢れを知らない?乙女たちのデートは一体どうなるのか?

さあ、今回も色々な意味で暴れていただきましょうか

でわでわ〜

 

薔薇に愛されしもの

 

『恭也とデート前編』

 

その日、駅ビルのとある衣服売り場では、日頃では少々お目にかかれない光景が披露されていた。

数人の少女たちが小さな男の子のことを囲み、なにやら楽しそうなことをしている。

 

引っ張り出されてきた服のいくつかを胸元に当ててあれでもないこれでもないと、言いあっている姿ははたから見て中の良い姉弟が、可愛い弟のためにあれこれと世話を焼いているように見える……だが。

 

「恭也君にはこれなんか似合うと思う!!」

 

「え、えっと……由乃さん。恭也君男の子なんだからさ、もう少しこぅ、なんて言うか…。」

 

そう、囲まれていた小さな男の子とはすなわち、恭也のこと。

そして、そんな彼のことを囲むのはもちろん山百合会のお姉さま方。

今しがた恭也の前に出されているのは、白く薄いレースのつくりが鮮やかな服であった。

 

「由乃ちゃん、流石にそれはちょっとどうかと思うわ。それより、こっちのほうが似合うと思わない?」

 

黄薔薇様こと江利子は、真っ白なフカフカとした如何にもさわり心地のよさそうなジャンバーを持ってきて恭也の前に合わせてみた。よく見てみると、それには可愛らしいフードがついており、ウサギの耳のようなものが揺れている。

 

「こ、これ……!?」

 

「あら、令はこれがお気に入りみたいね。」

 

頬を赤らめて明らかに興奮しているのが丸分かりな妹の様子にクスリと小さく笑みをこぼしながら江利子はからかっていた……もちろんそんな彼女の様子を見ていて面白くないのは、言わずと知れた由乃である。

まあ、彼女のファッションセンスが少々奇抜すぎたと言うのもあるのだが。

 

「あ、あの……。」

 

目の色が明らかにおかしいのに気が付いたのか、少々腰が引けた状態で恭也がいると、いつの間にか令は小さな体を取り押さえるべく後ろに回りこんでおり、そして……

 

「良いわ、令。そのまま抑えていてね。」

 

「お姉さま、お願いします。」

 

表面的には極上の天使の微笑を浮かべつつも、内心では少々脅えている恭也の表情を楽しみつつ、一歩一歩と恭也のことを追い詰めていく。

 

「さあ、観念してね〜恭也君。」

 

「あにゅ〜。」

 

甘いささやきを耳元にて呟きつつ、肩に手を回してゆっくりと上着を着せてゆく。

少々体を強張らせながら、顔を赤くし、俯きながら着せられていく恭也の姿を見ていると周りに居た少女たちは心の中でときめくものを感じていた……。

 

そう、人なら誰しもが持つであろう好きなものをなんとなく苛めてしまうあの気持ち…。

顔を赤くしながら俯く恭也の姿はまさに被虐心をあおるだけで、思わずこの光景を切り取っていつまでも眺めていたいと言う気持ちが彼女たちの中に芽生えていた。

 

「さあ、これで良いわ……一回転してみてくれる?」

 

ジッパーを首まで上げて満足げな表情でいる江利子はしたから恭也の表情を覗き込むようにしてお願いしてみる……。すると、少々気恥ずかしいながらも恭也は小さくコクリと頷きクルリとその場でターンして見せた。

 

可愛らしい一羽のウサギを見ていて、この場にいる少女たちはもちろん虜になってはいた。

だが、この場にいる綺麗な狼さんはそういうわけでもなく……

 

「いや〜このままお持ち帰りしたいね。」

 

とホクホク顔で見詰めながらそんなことを言っていた。

 

「白薔薇様はもう、恭也君と一緒にお過ごしになったはずです。」

 

プウと頬を膨らませて抗議を始めだした祐巳をよそに、やっぱりもって聖の視線は恭也に釘付けなわけで……。

 

「いや、祐巳ちゃん想像してみてよ。こんな可愛い弟が一緒に居たら君ならどう思う?

独占の一つや二つしたくなるもんでしょうが。」

 

「ですがお姉さま……。」

 

控えめながらに妹の志摩子が、姉のことを抑えていると蓉子がポンポンと祐巳の頭をしながら宥めていた。

 

「祐巳ちゃん……恭也君と楽しいひと時が過ごせるのは今だけなんだから余りそうカリカリしないの。ほら、祥子と一緒に恭也君のところへ行ってきなさい。」

 

………

 

祐巳はチラリと視線を姉の祥子に向けた後、おずおずと何かを話しかけるていた。

祥子は小さく苦笑したから祐巳の手を取り、黄薔薇姉妹の下で困り果てている恭也の元へと行く。

 

「あらあらまあまあ……いつもながらと言うかなんと言うか。蓉子の手のひらでおどろされちゃうね〜私と祐巳ちゃんはさ。」

 

「まあ、人聞きの悪い。恭也君と楽しい時間を過ごして欲しいだけよ、私は。」

 

切なげに目を細めながら恭也のことを見詰めている姉の聖の様子を見ていると志摩子は思わず訪ねずに入られなかった。

 

「お姉さまは恭也君のことをどうお思いなんですか?」

 

「ん〜?そりゃ、可愛くって食べちゃいたいくらいの男の子だと思ってるけど。」

 

はぐらかすかのような聖の答えに些か、毒を抜かれるような思いであったが、少々質問の仕方を変えて再度問いただすことにする。

 

「恭也君のお父様が現れた時、お姉さまは恭也君とは……。」

 

「素直に別れられるかってこと?

……まあ、そのあたりのことは実際になってみないとなんとも言えないけど、でもね、羽ばたこうとするあの子のことを無理に引き止めることだけは出来ないかな。」

 

「そうですか……。」

 

姉の言葉に満足したのか,志摩子の表情には満ち足りた微笑で頷いていた。

ひとまず話が終わると、聖はなにやら蓉子にボソボソと耳打ちをし始めた。

初めのうちは驚いたような表情をしていた蓉子ではあったが、次第に口元には笑みを浮かべて二,三頷いていた。

 

「それじゃあ蓉子、お願いね。」

 

「ええ、あなたは恭也君を連れて……。」

 

なにやら内緒話をしている自身の姉と紅薔薇様のことを、首を傾げつつ志摩子が見ていると、唐突に聖は志摩子の手を握り恭也の元へと歩き出す。

 

「あ、あのお姉さま!!」

 

驚きの余り悲鳴のような声を上げつつ姉の顔を覗き見るが、その表情には悪戯っぽい笑みしか浮かんでおらず志摩子にはどうする事もなくあっという間に恭也の元へとたどり着いてしまう。

 

「さあ、恭也君。あっちにいこうか。」

 

「あの、あっち?」

 

着せられていたジャンバーを手馴れた様子で脱がすと、小さな手をギュッと握り締めて聖はずんずんと歩き出してしまう。

いきなり横から現れて持っていかれた恭也のことを見ていた江利子は、ヒステリックな悲鳴を上げそうになったが、いつの間にか近くに居た蓉子の耳打ちを聞いているうちに納得したのか何度か頷き手にしていたジャンバーを手渡す。

 

「それじゃあ、お願いね蓉子。」

 

「ええ、お金のほうは後から皆から徴収でもするわ。」

 

微笑を浮かべつつも二人とも思うところは恭也のことをどのように驚かそうかというものであった。

そんなことを考えているとは分かるわけもなく、祥子と令、それに由乃と祐巳は江利子に引っ張られるようにして聖たちの後を追いかけるのであった。

 

「ふふっ……でも本当にこれ、恭也君に良く似合うわね。」

 

 

 

「ねえねえ、恭也君はどっちが似合うと思う?」

 

「あぅ〜。」

 

ジリジリとまるで追い詰められるようにして質問をされている恭也は顔を赤くして、余り聖のほうへと視線が行かないようになにやら努力をしている。

それに対して聖はと言うと、苛めてオーラを発している恭也のことを挑発的な視線と共に一歩また一歩と追い詰めて行く。

 

「お、お姉さま。恭也君も困っていますし……。」

 

「そんなこと言うの?ただ恭也君に聞きたいだけなのに〜。」

 

別に趣味、嗜好についてあれこれと聞くのはおかしくはないだろう。

だが、彼女の手に握られているものが問題であるのだ。

フワフワとしたレースの物や、純白に漆黒といった色合い……そう、彼女の手に握られているのは

 

「ですからお姉さま、恭也君だって男の子なんです。ですから下着のことについて聞いたらかわいそうです。」

 

少々頬を紅潮させて怒っている妹を横目にしながらも、なお自分の前に下着を合わせてみる聖は一人ごちる。

 

「う〜ん、恭也君の好きな色合いは黒なんだよね〜でも下着としてはちょっと派手って言うか、色っぽ過ぎるって言うか。」

 

「ぁぅにゃ〜」

 

「ロ、白薔薇様!!なんてことなさっているんですか!!」

 

ズイッと恭也と聖の間にはいるようにして祥子が金切り声を上げる。

耳にきたのか、少々足取りが覚束なくなったかと思われる聖の元から祥子は恭也のことを強奪すると、祐巳、令と由乃、それに志摩子で囲むようにして遠ざけようとする。

 

「なによ〜そんな悪者扱いしてくれちゃってさ〜。好きな子の趣味、嗜好はとても大切なことなんだぞ。」

 

「でもちょ〜ッとやり過ぎといえるわね、聖。」

 

江利子がやんわりとした口調で言うとプウと頬を膨らませながら不満げな表情で噛み付き始める白薔薇様。

 

「サドっ気のある江利子にいわれたくない!!」

 

それをきっかけにヤンヤヤンヤとあれこれと言い合いをはじめる薔薇様方。

もちろんこんな事態になると、流石に外聞が悪いのか祥子たちは止めに入ろうとするが、次第に雲行きが怪しくなっていく……。

 

「恭也君と一緒にお風呂に入れば、下着どころか全部見られるんだからこのぐらい良いじゃない!!」

 

「わ、私はそのような破廉恥なことなどいたしません!!」

 

聖の言い放った言葉にものの見事なまでの過敏な反応を示した祥子は論戦へと参加を始め

一方では…

 

「でも、令はする気満々でしょう?剣のお稽古とかした後で一緒にお風呂場で……。」

 

「お、お姉さま!!」

 

「令ちゃん、その慌て具合だとする気満々だったんだね〜。」

 

江利子の一言が、令のちょっとした心の隙を付き動揺させ、その動揺のせいで妹の由乃から白い目で見られてしまっていた。

 

「あのあの〜どうしたら良いんだろう〜こういう場合。」

 

祐巳はテンパって居たので……まあ、放っておこう。

さて、残る人物だが……

 

「恭也君、行ってはいけませんからね……またお姉さまにとんでもないことをされたらどうしましょう。」

 

「はい……。えっと、志摩子お姉さんは何かお買い物するものないんですか??」

 

(えっ!?あの…そのね……私も実は下着を買わないといけないかなって思っていたけど。でもね、恭也君とお出かけしてるんですもの。そんなこと言えるはずないわ。)

 

内心では物凄く慌てながらも一言たりとも漏らすことなく、静かに自分の膝元で恭也のことを抱きかかえながら、戦場と化していた下着売り場の一部を眺めていた。

 

「あら、どうしたの恭也君、それに志摩子も……」

 

天の助けとはまさにこのこと。

恭也も志摩子も、蓉子の背中に天子のような羽根を見たのではないだろうか?

無言のままとあるところを指し示す恭也と、そのことに関する備考を伝えている志摩子によって、蓉子の頭の中では手に取るようにこうなった経緯が分かってしまうのであった。

 

「はぁ……やれやれ。」

 

うんざりとした表情で手を叩き出し、嵐を巻き起こしているもの達に、こちらのほうへと意識を向けさせることに成功すると蓉子は至極まっとうな事実を述べだした。

 

「あのね、言い合いをするのは構わないけれど場所をわきまえて頂戴。」

 

ふと我に帰った少女たちは、周りを見回してみると……まさに注目の的であった。

不幸中の幸いといえるのが、この場所が女性の下着売り場であったおかげで男性が居なかったことと、リリアン女学生にこの場を見られていないことだろうか?

 

とにかく彼女達は急いでその場を後にした。

何故か、白薔薇様は自身の手にしている下着をちゃっかりと購入して。

 

 

 

「まったくもう、恥ずかしいわね。」

 

やれやれといった感じで首を振りつつそう蓉子が告げていると、妹でありその更に妹である祥子と祐巳は肩身を小さくしていた。

一方この事態を引き起こしたであろう首謀者である聖は、我関せずといった感じで恭也に抱きつき始め、そんな彼女と取り合いを始めてそっちのけにする江利子嬢が居た。

 

「令ちゃん、次どこに行くか知ってる?」

 

「ああ……えっと〜。」

 

視線を泳がせていると何も思い浮かんでこなかったので、計画の発案者である白薔薇様に聞くしか無くなり、彼女の答えの意味が分からない人間がこの場に二人だけ居た。

 

 

「そりゃ、この人数で遊びに行くって行ったらカラオケは外せないでしょ。」

 

意気揚々といった感じで語りだす彼女とは対照的に、祥子は首を捻っていた。

曰く、と言うかなんと言うか……

 

「ねえ、祐巳。カラオケと言う場所は恭也君の話では交際している男女が入る場所なんでしょう?どうして私たちで行くのが外せないわけ?」

 

「えっと、あれは、ですね……。」

 

恭也が間違っていたと素直に言う事も出来ず、かと言ってどのように祥子に教えて良いのかわからなくなってきた祐巳はパニックを起こしていた。

 

(恭也君の言ってたことは間違いだと言ったら恭也君が泣いちゃうし、かと言ってこのままお姉さまが間違ったままなのは……!?)

 

「祥子お姉さん、一緒にお歌を歌いましょう?」

 

クイクイと祥子のロングスカートの裾を引っ張りながら恭也は見上げるようにして話しかけた。もちろん、祥子はこの誘いを無碍にすることはないのだが……。

 

「でもね、恭也君……。」

 

「僕、祥子お姉さんの子と好きです。だから一緒に歌いましょう。」

 

疑問を聞こうとした祥子の心を溶かすかのような恭也の無邪気で、でも確かな好意を寄せる言葉に祥子の中で答えなどどうでも良くなっていた。

 

「そうね、私も恭也君のこと好きよ。一緒に歌いましょうね。」

 

そっと差し出されている小さな手を握り優しい笑顔を浮かべながら一緒に二人は歩き出した。

 

「あぅ……お姉さま。」

 

「何々〜祥子のこと取られたような顔して〜。」

 

「プギャ!!」

 

寂しげな横顔を無防備にさらしている祐巳は突然の襲撃に襲われた。

もちろん、やった人は一人しかいない。

 

「今のうちだけなんだからさ、お姉さんとして恭也君に祥子のこと貸してあげなって。」

 

「お姉さまは物ではありません!」

 

至極まっとうのようで、でもそうでないような言葉で祐巳を惑わせている聖と、自身の姉のことを物扱いする言葉に反発を覚える祐巳。

 

「ん〜、じゃあ祥子に恭也君のことを貸してあげなって。」

 

「そういうことじゃなくて……白薔薇様!!」

 

さらりと言葉を残すと、祥子と恭也の元へと駆け出してしまう聖。

そんな聖のことを、目を白黒させながら祐巳は怒鳴りつけながら見ていた。

 

「ホント、祐巳ちゃんと聖は仲が良いわ。」

 

「あれを仲が良いって言うの?」

 

和気藹々といった感じで、江利子と蓉子はことを見守っていると、目的地であるカラオケにはたどり着いてしまっていた。

恭也と、祥子は店内を興味津々といった表情で眺めており、聖はころころと表情の変わる恭也のことを楽しげに見詰めていた。

 

「はぁ……計画を発案したんなら最後までやって欲しいものね。」

 

「こういったことをするのは蓉子の役割でしょ?」

 

蓉子は渋々といった感じで店員にあれこれと話して十人ぐらい入れる部屋をあるかどうかなどを確認していて、それを江利子はただ眺めていると言ういつも通りの状態になっていた。

 

……結局、何とか入れる部屋はあったのだが、少々狭い状況となっていた。

年頃の、そう蓉子たちと同じ年齢の少年がもし、この部屋に一人いたとしたらそれは天国と同時に地獄が見れるだろう。

 

だが、生憎とここにいるのは小さな恭也だけ。

 

「あの、蓉子お姉さん。どんなお歌でもあるんですか?」

 

「ええ、あるはずよ。恭也君何か歌いたいのがあるの?」

 

蓉子が訪ねると、恭也はふにゃんとした笑顔をたたえながら何度も頷いていた。

可愛らしいその笑みに惹かれるようにそっと頭をなでていると

 

「お姉さんにぜひ聞かせて欲しいな〜恭也君の歌。」

 

恭也のすぐ隣に座っていた由乃が、恭也の体を軽く抱き上げて自分の膝へと導く。

突然現れた由乃のことに対して、蓉子は苦笑しながら見守った。

 

「えっと、自信はないんですけど……。」

 

「恭也君、ここはね楽しむのが目的だから上手に歌おうとか思わなくて良いんだよ。」

 

フワリとした柔らかな恭也の髪に自身の頭を埋めながら、由乃は囁いてあげた。

 

「よ、由乃!?ずるい。」

 

「なによ令ちゃん。今日、恭也君にあんなことやそんなことするつもりなんでしょう?

じゃあ、ちょっと位我慢してよ!!」

 

がるるる、とまるで唸り声を上げる野獣のごとく、恭也のことを放さない由乃を横目にしながら、令はイジイジと壁を弄っているしかなかった。

 

「あら令、あんなことやそんなことって、とっても気になるわね〜。

お姉さまにお話しましょうね。」

 

「お、お姉さま……。」

 

……どうやら令には安住の地と言うものは存在しないらしい。

面白いこと大好きな江利子が、こんな機会を逃すはずも無く苛めに掛かる。

 

「それじゃあ、トップバッターは恭也君だ!!」

 

コードを捜して恭也が入力すると、聖ははやし立てるようにして恭也コールを始める。

照れ笑いを浮かべながら恭也は立ち上がり、タイトルをマイクに伝えた。

 

「曲名は、『ラブピース』です。」

 

静かな旋律で流れ出した音楽に、皆は耳を傾ける。

そんな中で、恭也は静かに歌詞を紡ぎだした。

英語でかかれている歌詞の内容は分からないが、それでも一生懸命に歌う姿は愛しく、ところどころ発音を間違えながらも歌う姿は可愛らしかった。

 

「これ、ティオレクリステラの曲よね……。」

 

「そうね、後ひとつのピースが埋まらない……そんな恋を描いた曲だったよね。」

 

ボソボソと祥子と令は、話しながらも恭也の歌い上げている姿を見ていた。

そして、最後に響かせる高音の音に皆は満足げな表情で拍手した。

 

「綺麗な歌だったよ、恭也君。」

 

「とても上手だったわ……私歌うのが恥ずかしくなっちゃう。」

 

ペコリペコリと頭を下げながらこちらへとやってくる恭也の頭を祐巳と志摩子は愛しげになでながら迎えてあげた。すると、気恥ずかしそうに微笑をこぼしつつも満ち足りた表情でチョコンと席に着いた。

 

「よ〜し、それじゃあ次、言ってみようか。

と言うわけで、私が『ロストバタフライ』歌わせてもらいま〜す。」

 

高々と手を上げながら聖はマイク片手に立ち上がる。

 

 

しっとりとした女性の持つ歌声で歌われる歌に恭也は虜になっていた。

歌詞の最後の最後まで確りと噛み締めるように歌うと、みなの迎えてくれる拍手の中真っ直ぐに恭也の元へ言ってしまう。

 

「どうだった?お姉さんの歌は。」

 

「すごい綺麗でした!!聖お姉さんの温かいのを感じました。」

 

「う〜ん、恭也君は天然の女殺しだね〜。」

 

感想を言われた聖は、恭也の余りの褒め方に頬を染めながらもポンポンと頭を撫でた後、席に戻る前に頬に軽いキスをしていった。

 

「うにゃ〜。」

 

♪♪♪♪♪〜♪〜♪〜オレ!

 

顔を真っ赤にして悶えている恭也のことを無視するようにして流れ出す軽快なリズム

そして、最後に力強く上げられた声に皆いっせいに笑い出した。

 

「だ、誰。マツケンサンバ入れたの。」

 

笑いすぎたのか、江利子は目頭に大粒の涙を溜めながら誰となし聞いた。

すると、小さく上げられた手の先の人物は。

 

「し、志摩子!?」

 

「で、ですから、私余り歌を知りませんし、それにこういった場で何を歌ったら良いかも分かりませんので……テレビとかでよく流れてましたし……。」

 

顔を真っ赤にしながらだんだん小さくなっていく志摩子の声に皆内心では笑いすぎたかなと思っていたが、すぐさまその考えが否定される。

 

「僕、この曲知ってます。一緒に歌いましょう。」

 

混んでいる室内でただ一人恭也だけはするすると間を縫うようにして志摩子の元へとたどり着くと、ニパッと浮かべた笑顔と差し出された手に志摩子はしがみ付くようにして頷く。

 

「うん、一緒に歌いましょうね。」

 

自身の膝元へと恭也の小さな体を抱き寄せながら歌い始める。

軽快で陽気な歌のはずなのに,恭也と志摩子の二人が歌いだすととても可愛らしい曲に聞こえるから不思議である。

だが、皆歌のことなどどうでも良かった。

 

(ああ言う歌い方も良いな……)

 

時折恭也の髪や肩に頭を埋めるようにしたり、二人でひとつのマイクで響かせるように歌う姿を見ていると、自分もやってみたいと思うのは当然のことであろうか。

 

「「「「「「「恭也君、次は私と歌いましょうね!」」」」」」」

 

皆、一斉に次の歌う権利をめぐって恭也に迫っていった。

 

 


〜あとがき〜〜

 

アカン、長くなりすぎ……。

 

祥子「ちょっとよろしいかしら?」

 

ヒッさ、祥子様……一体どのようなご用件でしょうか?

 

令「聞きたいのはね、実際にある曲かってことだよ……特に恭也君の歌った歌が。」

 

あ、そんなことですか。

恭也君の歌は勝手に作りました〜いや〜MONGOLIAN CHOP SQUADに出てくる曲“SISTER”とかにしようかと思いましたけどそっちのほうがよっぽどネタかなと思いましてやめました。

 

祥子「じゃあ、白薔薇様の歌っていた曲のほうは?」

 

あれは実際にあります。

ホントは『愛し子よ』のほうを歌って欲しかったですけど、流石にちょっとマズイので

 

令「それじゃあ、早く執筆のほうしてくださいね。

あなたの遅筆ぶりに皆様きっと呆れてますよ。」

 

す、すみません。精進します

でわでわ〜




志摩子がマツケンサンバ。
美姫 「納得のような、そうでないような」
でも、面白いのは確かだね。
美姫 「そうよね。これで、振り付けしながらとかだったら」
恭也と二人で。
美姫 「そう、二人で」
…………こ、これは。
美姫 「ちょっと見てみたいわね」
うう〜ん、やるなタカさん。
美姫 「ありがとうございます」
次回も楽しみに待ってますね。
美姫 「待ってまーす」



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