水野邸の方々に大変気に入られた恭也

恭也はいったいどうなるのか?

そして山百合会の面々と共に遊びに行く先で待ち構えているものは

でわでわ〜〜

 

 

 

薔薇に愛されしもの

 

『恭也といっしょ』

 

 

 

まだ真夜中と言ってもいい時間帯、蓉子は寒さのせいで、目を覚ましてしまった。

 

「寒いわね……。」

 

ぽっかりと自分の前に空洞の出来ているベッドで、半分意識が朦朧としながら蓉子は呟いていた。何かを求めるように手を掛け布団の中で彷徨わせると、小さな暖かさを持ったものに触れた。

 

そう……それは恭也の背中であった。

眠っているはずなのに、いつの間にか蓉子の腕による拘束を抜け出した恭也は、少々距離を置いた位置で、すやすやと安らかな寝息を立てていたが、半分意識を飛ばしている蓉子にはそんな事は関係がなかった。

 

その温もりを感じると女性としての本能だろうか、恭也の背中に腕を這わせ自分のほうを向かせた後、自らの胸元に来るように引き寄せ、今度こそ逃がさないといった感じでガッチリと抱きしめると満足したのか、再び夢の世界へと旅立っていった。

 

 

 

次の日の朝

雀たちのさわやかな囀りと共に、恭也は目を覚ました。

そして欠伸でもしようと口を開こうとしたが……

 

「ふぁうぅぅ……。」

 

上手く欠伸も出来なかった。

何故か?蓉子によって胸元にて拘束されている恭也は口を上手く開くことが出来なかったのであった。

 

「ひょ、ひょうこおへえはん(蓉子お姉さん)」

 

顔に当たる、蓉子の柔らかな胸の感触に思わず恭也は赤面しながらも何とか蓉子に起きてもらい、この拘束を解いてもらおうとしたが……。

 

「〜〜?あ〜、恭也くんだ〜。もうちょっと寝ようね〜〜。」

 

寝起きのせいか、蓉子の瞳は少々虚ろで……恭也のことを視認するとさらに腕の拘束を強くし、体を小さくし縮こまるとまたまた小さく寝息を立て始めてしまった。

 

(にゃ〜、起きてくださいよ〜蓉子お姉さん〜)

 

 

………結局、恭也の声にならない助けを呼ぶ叫び声は、蓉子の暖かくだが一向に離してくれない抱擁によって揉み消されるのであった。

 

 

 

 

 

「ほんと〜に、ゴメンなさいね恭也君。」

 

あの後、小一時間ほど立った後、蓉子は普段起きる時間になるといつものように、否いつも以上にさわやかな朝を迎えたのであったが、反対に恭也は少々酸欠気味のせいか、はたまた羞恥心のせいか顔を真っ赤に染め上げて意識を飛ばしていた。

 

その後、慌てて蓉子が介抱をし、何とか恭也が気がつくと、ほっと一息ついた後にこうして朝の食卓を囲んでいる最中に深々と頭を下げて謝っていたのであった。

 

「あ、あの……。その、もういいです。僕もいけなかったんですし……。」

 

寒いこの季節なのに、布団の中に凍える空気が入るスペースを作ってしまった自分もいけなかったと恭也もまた申し訳なさそうに目元に涙を溜めながら謝罪していた。

 

「いいのよ、恭也君は謝らなくて。本当に悪いのは私だったんですから。」

 

座っていた、椅子から立ち上がりそっと恭也のそばによるとこわれものでも扱うかのようのそっと優しく抱きしめてから、もう一度蓉子は謝罪した。

恭也はというと蓉子の暖かな温もりと、頭を撫でてくれる優しい手つきにうっとりと目を細めていた。

 

「あらあらあら。朝からラブラブね〜、ホント姉弟のようね〜。」

 

「そうだね、どうだい恭也君。いっそのことうちの子供にならないかい?」

 

「ちょ、母さん!!それに父さんも!!」

 

二人がいつの間にか自分たちのことを眺めて、嬉しそうな表情で会話を重ねていたので蓉子は驚きと、そして小さな不満のせいか小さな叫び声を上げてしまった。

 

「にゃぅ?」

 

自分のことを見つめてくる三人の視線に気がついたのか、小首をかしげ『?』の表情を浮かべて視線を送る恭也。

そんな彼の姿に、両親の二人は見事にハートを射抜かれたのか、放心していた。

 

「もう、父さんたちの事は放っておいて私たちは朝食にしましょう

トーストでよかったかしら?恭也君。」

 

「え、えっと……いいんですか?あのままで………。」

 

顔を赤くしてどこか遠くを見ているような表情をしている蓉子の両親のことが気になったのか、瞳を少しばかり潤ませて蓉子の顔を見上げている恭也。

そんな彼の姿に蓉子は内心で

 

(もう、恭也君のそういう表情があの二人を放心させているんだけどね……。)

 

などと思ったが、口にはしなかった。

告げても多分恭也は理解できないだろうし、もし分かったとしたら少なからず罪悪感を今の恭也なら受けるだろうと思った蓉子なりの思いやりからであった。

 

「さ、座って。ベーコンと目玉焼きと……後、恭也君にはこれね。」

 

食事をするためにも、恭也のことをひとまず座らせると蓉子は次々と料理を並べる。

トーストにサラダ。ベートンと目玉焼き。自家製のジャムであろうビン。恭也のために昨日買っておいたデザートのプリン。

 

そして、最後に恭也の前にそっと置いたのは……。

 

「あの、蓉子お姉さん。これなんですか?」

 

小さな湯気を上げているマグカップの中身が分からなかった恭也は、そのカップを差し出した蓉子に質問をした。

 

「ホットミルクよ。体が温まるし、それに恭也君みたいな子はちゃんとミルクを飲まないとね。」

 

小さくウィンクをしながら、自身も椅子に座り恭也と一緒に小さく手を合わせてから

 

「「頂きます。」」

 

朝から、色々と会話を重ねながら食事を進めていく恭也と蓉子。

会話と言っても、それぞれが聞きたいことを聞き、それに答えるといった形ではあったが二人は穏やかな朝食を済まそうとしていた。

 

……だが

 

「僕だけ、プリンを食べるなんて悪いです〜。」

 

「ダメよ、恭也君に食べて欲しくて買ったんですもの。ちゃんと食べて。」

 

蓉子と恭也の間を行ったりきたりするプリン。

そう、恭也は遠慮していた。いくら蓉子の善意によるものとはいえ、自分だけ食べるのは気がひけたのである。

 

「もう……恭也君は遠慮し過ぎよ。」

 

「にゃう……。ごめんなさい。」

 

「そこで謝らないの………。そうね、じゃあこうしましょう。」

 

小さく体を縮こまらせながら謝る恭也の姿を見て、何か解決策は無いかと考えた蓉子はふといい考えが浮かんだ。

自分の手の中にある、程よく冷えたプリンのふたを開け、そっとスプーンを使いその柔らかなカスタードをすくい上げると

 

「はいアーン。」

 

スプーンを差し出した。

そして恭也は、というと差し出されたスプーンを思わず口に含んでしまった。

 

「どう?美味しい?」

 

「は、はい……。でも……。」

 

「じゃぁ、今度は恭也君がお姉さんに食べさせてね♪」

 

つまりは、蓉子の考えたのは二人で食べようという妥協案であった。

だが、ただ二人で食べるのではない。食べさせあうのであった。

 

「ふぇ??あぅ……あの、じゃあアーン。」

 

パクッと差し出されたスプーンを口に含む蓉子。

そんな彼女の仕草を見て、恭也は顔を真っ赤にしながら尋ねた。

 

「あ、あの……美味しいですか?」

 

「もちろん美味しいわよ。恭也君が食べさせてくれてるんだしね。」

 

こうして、蓉子は小さな雛鳥のように口をあけてプリンを食べる恭也の姿を堪能し、また恭也に食べさせてもらいまさに至福のひと時を過ごすのであった。

 

「あら、いけない。もうこんな時間……ほら父さんも母さんもいつまでも固まってないで早く朝食済ませないと遅刻するわ。」

 

いつまでも固まっている両親に対して一言告げると、恭也のことを自分の部屋へと再び連れて行き共に、着替えそして学園へ行く準備をするのであった。

 

「恭也君は……そうね、これを着てね。それと、見たらダメよ。」

 

自身の持つ服を適当に取り出し、恭也に着るように渡すと、自分も制服に着替えるためにいそいそとパジャマを脱ぎ始める蓉子。

そんな蓉子に対して恭也は慌てて後ろに振り向き蓉子の着替えを見ないように心がける。

 

(あぅぅ〜)

 

内心困った悲鳴を上げながらも、自分も着替えなければならないため、いそいで服を脱いでゆく。

 

そうこうしている内にいつの間にか時間は過ぎそして……

 

「それじゃあ、恭也君行きましょうか?」

 

「はぁ〜い。」

 

「ほら、きちんとマフラーを巻かないと。外は今日も寒いんだからね。」

 

恭也の首もとに巻かれている自分の上げたマフラーを慣れた手つきで巻きなおしてあげる。それを終えると二人で仲良く手を繋ぎ学園へ行くためのバスに乗るために歩き出すのであった。

 

 

「そういえば恭也君は、カラオケとかに行ったことがなかったのよね?」

 

「はい、えっと……僕の家ってその……。」

 

瞬間、表情を暗くさせる恭也

そんな彼のことに気がつきながら、蓉子はそっと空いている左手を小さな彼の頬に当てて撫でてあげる。

 

「それじゃあ、何も知らないからお姉さんが教えてあげるわね。

と言っても私も余り知らないのだけどね。」

 

ペロッと舌を出しながら小さくおどけた表情で話しかけてあげる蓉子。

そんな彼女の表情につられたのか、恭也は先ほどの暗い表情とはうって変わって明るいいつも通りの笑みをこぼした。

 

「はい!お願いしますね。」

 

『キュッ』と抱きついてくる小さな体を抱き返してあげて、蓉子は満足げな表情を浮かべながら、また手を繋いで学園への道のりを歩くのであった。

 

 

 

 

いつものようにマリア像の前で祈りをささげるように跪き瞳を閉じ始める蓉子。

そんな彼女の表情を恭也はボーっとした様子で眺めていた。

 

今の彼女の横顔はとても神秘的で、目の前にあるマリア像のように自然と恭也は惹かれていたのであった。

 

「あら、ごきげんよう恭也君。」

 

そんな彼の後ろからは、幾人もの最上級生たちがいつの間にか恭也のことを囲むようにしていた。

 

「あ、あの……お、おはようござ……あっ、違った。ご、ごきげんよう。」

 

慌てて頭を下げながら、朝の挨拶をしようとしたが、ここでの挨拶の仕方が違ったことを思い出した恭也は、またまた慌てて挨拶を途中で切り顔を真っ赤にしながら挨拶を返した。

 

そんな、小さな子の仕草が可愛らしかったのか、恭也のことを知っていて今現在彼のことを取り囲んでいる彼女たちは口元に手を当てて「クスクス」と小さな笑いを浮かべていた。

 

「にゃう……。」

 

真っ赤にしていたはずの顔をさらに赤くして困ったような表情でいると

 

「あら、ダメですよ。皆さん、この子は小さいのですから…。」

 

そっと、恭也の前に立って彼の表情、そして姿を隠すように蓉子はたちながら笑みをこぼしているもの達にやんわりと忠告する。

背に隠された恭也はというと、『キュッ』と彼女のスカートの裾を握り締めて半分顔を隠すようにしていた。

 

「ごきげんよう、紅薔薇様。悪い意味で笑ったわけではないんですよ。恭也君が余りに可愛かったからつい……。」

 

「そう?ならそういう事は、恭也君に言ってあげて。」

 

思わず笑ってしまった三年生たちは恭也と視線を合わせるためにしゃがみ込み、誤解を解くために話しかけた。

 

「ゴメンなさいね、恭也君。別にあなたのことがおかしくて私たちは笑ったわけじゃないのよ?仕草が可愛らしかったから思わず……

それでも、君のことを傷つけたのに違いないわよね。本当にゴメンなさいね。」

 

そういわれると、隠れていた恭也もまたそっと出てきて

 

「あ、あの……ごめんなさい。僕もその悪いですし。」

 

ペコリと頭を下げて謝った後、小さくはにかむ様に恭也は微笑んだ。

それからは恭也の仕草が余りに可愛らしかったせいか、色々と撫でたり触られたりして愛撫されるのであった。

 

 

 

「もう、人気者ね…恭也君は。」

 

「え??」

 

「そういった仕草もね、私たちのことを魅了してくれるのよ。」

 

蓉子が何を言いたいのか分からなかった恭也はますます困ったような表情をしていたがやがて……

 

「えっと、僕は……その……。」

 

「恭也君は恭也君らしく、それが一番♪」

 

ふいに恭也の背後から声がしたかと思うと一気に後ろから体全体を抱きしめられた。

 

「もう聖、あなたね……。恭也君が驚いているから離しなさい。」

 

目を見開いてパチパチと瞬きをしている恭也の表情から、いきなり抱きつかれた事による同様と判断した蓉子は、聖に離れるようにいったが……

 

「僕、勘が鈍ったかな?」

 

「「え??」」

 

声をはもらせながら恭也のことを見詰める二人。

そんな二人の視線に気がついたのか、恭也は慌てて首を横に振り

 

「な、何でもありません。えっと早く教室に行きましょう、蓉子お姉さん。」

 

「あ、ちょっとぉ恭也君!?」

 

慌てるようにして手を引いて蓉子と教室へ向かおうとする恭也。

そんな恭也に引っ張られて危うく体勢を崩しそうになりながらも、手を繋ぎ廊下を歩いていくのであった。

 

 

 

そのまま、引っ張られるようにして蓉子は恭也と共に教室に入っていった。

するとどうだろう、蓉子たちより先に来ていた生徒たちは二人の姿を見つけると近づいて来て挨拶をかけてくるのであった、それも全員が……。

 

「ごきげんよう、蓉子さん。それに恭也君。」

 

蓉子は何故こうも挨拶をかけられるのか不思議であった。

確かに普段から、挨拶はかけられはするがここまではまずなかった。

そんなことを考えているよう事は対照的に、恭也は慌てふためきながらも挨拶を返していた。

 

「あ、あのあの、ごきげんよう。」

 

そんな恭也の稚い仕草を見ていると、彼のことを囲んでいる少女たちは内心では黄色い絶叫を上げていた。

 

(可愛らしいですわ……)

 

(ギュゥって抱きしめたくなっちゃう。)

 

(羨ましいです……蓉子さんたちは恭也君とご一緒できて……)

 

などなどと思いながらも、はしたなく声を上げることなく、口元に上品な笑みを浮かべながら恭也と挨拶を交わすことで想いが満たされていた。

 

(そういうことね……。皆さん恭也君が来るのを待ちどおしく思っていたのね。)

 

答えが分かると蓉子は自身の口元に浮かぶ笑みを抑えることが出来ないで居た。

昨日一日で一緒に過ごした恭也とのひと時。

自分があの可愛らしく愛しいあの子のことを一時的にとはいえ独占できていたのだ。

 

そんなことを思うと、どうしても微笑を浮かべずに入られなかった。

 

「あ、あの、蓉子お姉さん。ここ教えてください。」

 

蓉子から借りていた算数の教科書の一部を指差し自分に質問しに来る恭也。

少し甘えるかのようなその仕草に思わず頬を緩ませながら蓉子は頷いた。

 

「もちろんいいわよ。さぁ、そこに座って……そこはね。」

 

周りから寄せられる羨ましげな視線を浴びながら蓉子は内心思っていた

 

(この場所だけは譲ってあげる事は出来ないわね。)

 

母猫に甘える子猫のように、すっかり甘えるようにして色々と質問をしてくる恭也の姿を見ながら、彼女はそう思わずに入られなかった。

 

 


〜あとがき〜〜

 

ふぅ、久しぶりに書いたな……薔薇愛。

 

黄薔薇様「そうね、それにしても私たちの出番がなかったわね。」

 

って、いつの間に。

 

白薔薇様「あれ?ずっと居たよ?それにしてもどうして早く遊びに行かせてくれないのよ。」

 

まあ朝の何気ない情景と一般性とたちに可愛がられる恭也のことを書きたかったんですよ。

次回、次回こそは遊びに繰り出す予定ですので申し訳ないです。

 

紅薔薇様「まあ、仕方ないわね。私はいい思い出来たし許してあげるわ。

では皆様、ごきげんよう。」

 

でわでわ〜〜




投稿ありがと〜。
美姫 「久し振りの恭也くん〜」
そして、久し振りの壊れた美姫……。
美姫 「そこまで酷くはないわよ」
へいへい。
さて、この薔薇に愛されしも、早いもので9話。
次は何と、大台の10話ですよ。
美姫 「タカさん、投稿本当にありがとうございます〜」
パフパフドンドンドン!
さて、次回はいよいよ遊びに行くことになるのか?
美姫 「果たして、外に出た恭也はどんな反応を見せるのか」
それでは、また次回で。



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