光の乱舞する世界を抜け、周囲は暗澹たる闇に星たちを散りばめた宇宙のそれへと戻っていた。そして眼下に広がる赤砂の星こそが、全ての終着点である。アヴァンにとって、皆にとって。

 そして、この自分……タクト・マイヤーズにとって。

 

「座標確認……惑星アビスフィア、衛星軌道上です」

「ああ」

 

 そして、と背後のヴァニラが告げる。

 

「艦影多数確認。エルドゥルの近衛艦隊です」

「やっぱり……」

 

 いずれにせよ、二人を阻む壁は厚い。こちらを察知したのか、いくつもの戦闘母艦から見たことの無い人型兵器が発進、戦線の展開を始めていた。その数は十や二十ではない。各々に武器を構える百を超える機械人形たちの軍勢である。

 そしてその後方にはまさに壁となるべく敷き詰められた艦隊が何百という砲塔をこちらに向け、一斉砲撃の態勢に入っていた。

 だが我らが英雄の口元には笑みが浮かぶ。自信たっぷりに、余裕たっぷりに、しかしそれを感じさせぬ冷静な口調でヴァニラに尋ねる。

 

「展開数比は?」

「およそ万対一です」

「普通なら突破は?」

「正面からはまず無理でしょう。迂回すればあるいは」

 

 その通り。あれだけの戦力と真っ向からぶつかろうとは考えない。常識の範疇で考えれば、だが。

 

「うん。じゃあ、俺たちは?」

 

 タクトはにやりと口元を吊り上げた。絶対の可能性を確信したものだけが得る、魂の昂ぶりだ。

 

「正面から行きましょう。正々堂々と」

 

 ヴァニラもその全てを察して微笑む。輝かしい勝利を約束する、勝利の女神の祝福である。もはや二人に怯ませるものは何も無い。

 金色に輝く六つの翼を羽ばたかせると、巻き起こった金砂の嵐がこちらに迫る機械人形の第一陣を粉みじんに破砕した。さらに後方に位置する艦隊の装甲を激しく揺らす。

 

「よし、突入だ!」

「はい……行きましょう」

 

 

銀河天使大戦 The Another

〜破壊と絶望の調停者〜

 

第三章

第五節 時空の果て(前編)

 

「ドライブアウトまで、あと一時間です。艦長」

「総員戦闘配置だ。エンジェル隊はスクランブル準備、通常空間に復帰と同時に出撃」

「了解!」

 

 タクトの後を追うエルシオールもまた、間もなくアビスフィアへたどり着こうとしていた。タクトのGAがクロノ・ドライブに突入してから間髪入れずに自分達も続いたおかげで、到着の誤差は十数分に抑えられているはずだ。

 しかし前途は多難である。まずアヴァンへの具体的な対抗策が無い。彼らは勝算のまったく見出せない戦いを挑もうとしていた。

 そして予想され得る第三勢力―――――エルドゥル艦隊の存在だ。アヴァンだけでも厄介なことこの上ないのに、さらに敵の数が増えるとなれば、ますます勝ち目が見えなくなってくる。

 

「せめて偵察を行なう時間があればよかったんですけど」

「分かっているだろ? 一刻を争う状況だ」

 

 ぼやくアルモをレスターがやんわりと諭す。ですよねー、と苦笑いを浮かべながら仕事に戻る彼女を横目に見つめていると。これがついつい見惚れてしまうわけで……

 

「か・ん・ちょ・お〜?」

「う、うむ……?」

 

 不謹慎だと言わんばかりに眉を吊り上げるココ。これには艦長殿もたじろぐばかりである。

 

「まったく……これから大規模な戦闘が待ち構えているというのに、そんな呆けていられては困ります! 初々しい恋人同士みたいにされては士気にも関わります!」

「むう、いや、しかしだな」

「なんですか!?」

「妻の体を気遣うことは大事だと思うのだが……」

 

 ビシィッッッ

 レスター君の爆弾発言にココが、いやエルシオール全体が何か壊れたような破砕音を響かせた。その場にヘナヘナとへたり込むココは、口元からエクトプラズムっぽいものが出てきていたが、五秒ほどで復活し一気に思いの程を捲くし立てる。

 

「どっ、どどどどどどっ、どおいうことですか!? 妻ッて妻ッて、ええああもうさっぱり訳が分かりマンボーですよ! マンボーがフューチャーしてマーボーみたいな、ぐらいに意味不明です!」

「分かった。分かったから落ち着け」

「これが落ち着けますかァァァァァッ! しかも妻の体を気遣う!? 体を気遣うってことは、やっぱり生○とか○経とかそういう方面!? そうなると導き出される結論は……」

 

 そして大きく仰け反ったまま硬直するココをレスターとオペレーターたちが固唾を呑んで見守る。数分が経過すると、

 

「私のアルモが艦長に孕まされたぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁっ! ウワアァァァァァァァンッッッ!!!」

「なぜそうなる!?」

 

 泣き叫びながらブリッジを飛び出すココ。方向を間違えていたら、壁を突き破って宇宙空間へ飛び込んでいたかもしれない勢いで走り去っていく。いつから彼女のキャラはこんな風になってしまったのだろうか。

 そんなココと入れ替わりで入ってきたフォルテはレスターを一瞥すると、

 

「ちゃんと認知してあげるんだよ」

 

 と、励ますように肩をポムポムと叩いた。どうやらフォルテの中では、レスターが無理矢理アルモを○○った挙句、×××しちゃって、もうクッチャラハピハピということになっているらしい。

 一方のレスターもこのままでは色々とマズイ事に気付いたのか、一つ咳払いをして事情を語り始めた。

 

「率直に言うと、アルモは妊娠三ヶ月べぶらっ!?」

 

 アンドロイド兵を一撃で打ち倒すスーパーボクサー・クールダラスを一発KOでマットに沈めるアルモ選手。右の拳から禍々しい気炎が立ち上っているが気にしてはいけない。

 

「分かったのはついこの間なんですけど、状況が状況なんで事が治まるまでは秘密にしようって決めてたんです。それをココがバラしちゃうから……」

 

 ココの走り去った方向を見据えると、今度は左の拳からドス黒いオーラが噴き上がった。もうヤル気満々、といった風体である。

 

「じゃあ、妻っていうのは?」

「ヴァル・ファスク戦役の後で籍だけ入れたんです。だから今はアルモ・クールダラスなんですよ、実は」

「ほー、めでたいじゃないか。万事解決したらミルフィーにウェディングケーキでも焼いてもらおうかね」

 

 めでたいことである。何せ資料によれば苗字が存在しなかったアルモだ。喜ぶのも当たり前に違いない。

 

 

 

 

『マスター……やっぱり、アヴァンさんの目的は……』

 

 艦首格納庫――――――最終点検を終えたフィアネスの前で北斗とアウトローは肩を並べ、『神鳴り』を秘めた機神を見上げていた。

 

「分からん。今度ばかりは、いつもの悪ふざけとは違うようだがな」

『でも』

「奴のお膳立てにしては、出来が良すぎる。俺にこんな機体を回してきたほどだ、何か裏があることは確かだろう」

 

 今更ではあるが、北斗にはアヴァンが自分をエルシオールと合流させた理由が分かり始めていた。特に先日のオペレーション・リカバームーンの戦闘で、半分以上確信できるほどに。

 

「アヴァンは間違いなく、エルシオールの戦力低下と皇国軍総司令部の造反を見越して、俺をエルシオールと引き合わせた。事前にフォルテやランファと面識を持っていた俺なら協力を断れまいと踏んでな」

『そこまで、予測していたと?』

「かどうかは分からん。しかし結果として白き月は奪還され、タクトは新たな力に目覚めた。偶然とは思えん」

 

 そして、戦力の中枢を担ったのは間違いなく北斗とフィアネスである。彼とこの機体がなければ作戦は成功しなかっただろう。

 

「俺に霞払いをやらせたのだ。しかし―――――」

『その目的が、分からないんですね』

「分からん訳ではない。ただいくつも候補があって、確証が持てないだけだ」

 

 今のアヴァンに比べれば、かつて自分が身を置いていた組織の首領などの目的は単純明快ではなくとも、ハッキリしていたと言える。何せ『世界征服』だ。その真意は別にしても、これほど分かりやすい目的はないだろう。

 だがアヴァンは目的も真意も予測がつかないのだ。アビスフィアにいることは分かっている。しかし何故そこにいるのか、そこで何をしようとしているのか、まるっきり見当がつかないのである。

 

「直接本人から聞き出せばすむことだ。今ここでは、どうしようもない」

『そう、ですね』

「ところでアウトロー。紋章機の格納庫で組み上げていたあの機体は……」

 

 ふと気になって尋ねてみる。見たところ旧時代の人型兵器であったが、操縦できるパイロットは北斗以外いないはずだ。まさかレスターが搭乗するわけでもあるまい。

 

『あれは僕の機体ですよ、マスター♪』

 

 パタパタと犬耳を動かすアウトロー。屈託のない笑顔が魅力的だったが、今の北斗はそれどころではない。

 

「………フォルテか?」

『はい』

「戦いが終われば……分かっているな」

『だから、今できることをしたいんです』

 

 しばらく会わない間にずいぶん成長したものだ、と横で真摯な面持ちを浮かべる少年を北斗は微笑ましく、そして誇らしく思う。

 少年の顔は幼く、しかしその眼差しは男のそれだった。

 

「旧式だが、いけるな?」

『ジ○ン最強の量産機に、ワンオフ仕様のチューンを施してあります』

「後ろは任せる」

『はい!』

 

 その折、艦内放送でクロノ・ドライブ終了の十五分前であることが告げられる。同時に格納庫も慌しくなり、すぐに二人にもスクランブル待機が指示された。

 フィアネスのコックピットで最終チェックを済ませると、北斗はブリッジに通信を入れた。レスターに一つ申し入れておくことがあったのだ。

 

『どうした、少佐』

「今回、敵は恐らく我々に狙いを絞っているはずです」

『根拠は』

「現状で活動可能で、かつアビスフィアという解答に辿り着けるのは我々だけだからです。そして我々に合わせた布陣と戦術で対抗してくるでしょう。つまり―――――」

EMを中心とした機甲部隊による迎撃、だな。艦隊はあくまで壁か』

「はい。正面から衝突すれば物量でこちらが押し切られる。その前に防衛ラインを突破し、アビスフィア地表への降下を提案します」

 

 それはつまり、エルシオール単艦で敵陣を抜け、アビスフィアへ辿り着くということだ。こちらが少数戦力であり長期戦が出来ない以上、止むを得ない選択ではある。

 

『エルシオールの守りはどうする』

「ドライブアウト予定座標から最短距離で降下するならば、持ちこたえられるでしょう」

『分かった。ただし彼我戦力に差がありすぎれば別のプランを考えるぞ』

「はっ、ありがとうございます」

 

 敬礼し、通信を切る。

 やはりレスター・クールダラスは優秀な軍人だろう。部下からの助言を受け入れ、しかし鵜呑みにはしない。冷静な判断力が生きている証拠だ。タクトが不在となってエルシオールの艦長職を引き継いだことで、その資質が本格的に開花したと見るべきか。

 

『ドライブアウト、一分前! 通常空間に復帰後、ハッチ開放! 各機発進態勢を維持!』

 

 

 

 

 強力なクロノ・ドライブ反応を事前に察知することは決して難しいことではない。惑星間航行速度から減速する際に生じる何層ものエネルギーフィールドと干渉波を計測することで、いつ、どこに、どの方向から出現するのか判別できる。

 エルドゥル艦隊―――――正式には皇国軍総司令部直属・第二近衛軍団は、一時は崩壊した防衛ラインの再編を中断し、迎撃態勢に移行した。修理と補給を終えたMS14A『ゲルググ』の三個小隊が先行し、敵の出現に備える。

 

「ドライブ反応増大! 来ます!」

「第二師団、第四師団は最終ラインまで後退、態勢を立て直せ。第三師団は現状を維持、時間を稼げ」

 

 現在、この第二近衛軍団は四つの師団で構成されている。だがその内、二つの師団は先ほど新型機との交戦によって戦力の大半を失っていた。新型機とは言うまでもなくEMX01GA、ギャラクシーエンジェルである。

 

「敵艦実体化! 数、一! 識別照合、エルシオールです!」

「全軍戦闘態勢! 出せるMSは全て出せ! なんとしても奴らを行かせるな、追撃に降下した陸戦隊が挟まれるぞ!」

「了解!」

 

 その時、彼らのはるか前方で幾筋もの閃光が宇宙を走った。同時に無数の爆発が巻き起こり、先行していたゲルググ隊が全滅したとオペレーターが上ずった声で報告する。

 黒煙を振り払い、たった一つのフレアが戦場を直進する。持ったグレイブを一薙ぎし、なおも阻む後続の敵機を斬り捨てるそれは、

 

「雲散霧消の太刀……やればできるものだな」

 

 絶望の化身、破壊をつかさどるもの、フィアネスと闇舞北斗である。

 彼らの取った戦術はこうだ。まずフィアネスが先行して敵の第一陣を叩き、切り崩したところでエンジェル隊が突入をかける。オペレーション・リカバームーンと同じような流れだが、今回は完全に真正面から切り込むのみ。別方向からの陽動などは期待出来ない。

 ましてフィアネスが高性能であるとはいえ、単独では数において圧倒的に勝る敵の侵攻を抑えることなどできないはずである。

 

「このフィアネス……舐めてもらっては困るな」

 

 徒党を組み、再度前進する敵部隊はまるで津波の様だ。しかし北斗は怯むことなく、最後のカードを場に出した。

 

「マニュアル・モード、セット。RCRの出力をミリタリー・マキシマムに設定」

 

 機体をその場に固定し、腰を据えた。胴体部から甲高いエンジンの回転音が、まるで魔王の咆哮のようにコックピットに響き渡る。

 

「供給電力をBOZシステムに集中。グラビティ・スタピライザー、フルドライブ!」

 

 鋼の鎧に封じられた雷神の怒りが、ゆっくりと鎌首をもたげた。

 背部の大型ブースターが盛大なフレアと電光を噴き上げていく。膨大な量のエネルギーがフィアネスに集中していた。

 だが機体への負担も大きい。フレームが軋み、それでもエネルギーが不足していると警告アラームが盛大な大合唱を始めていた。しかし北斗はあろうことか、本来ならば切ってはならないスイッチに手を伸ばしたのである。

 

「生命維持装置など……必要ないッ!」

 

 コックピットへのあらゆるライフラインが停止し、代わりにモニターがグリーンに点灯した。同時にフィアネスの胸部装甲が展開し、中からジェネレーターのコア・ブレード(中枢制御弁)がせり出してくる。

 

「さぁ、神の吐息―――――熱い愛の囁きを、その身に受けろ!」



 コア・ブレードを中心に発せられる青白い雷光が宇宙を、エルドゥル艦隊を―――――アビスフィアを照らし上げる。まさに神の雷と呼ぶに相応しい神々しさを纏って、光はなおもその輝きを増していく。

 

「愛しているぞ、お前達……! ブレス・オブ…ゼェェェェウスッッッ!」

 

 解き放たれる神の怒りは戦場を闊歩する敵という敵をすべて焼いていく。先頭のゲルググたちは数秒足らずで跡形もなく融解し、後方に控えていた艦隊は粉微塵に打ち砕かれた。

 名の通り、雷神の吐息は数多の雷となったのである。

 

「本艦前方の敵反応、全て消失。強力な電波障害のため、詳細は確認できませんが……」

「まさか、これほどとはな」

 

 出撃する際に北斗は『つむじ風を起こす』と言っていたが、こんな切り札を残していたなどレスターには予想できなかった。

 

 

 一方、格納庫で待機していたランファはというと……

 

「北斗さぁぁぁぁぁん! あたしにも愛を囁いてぇぇぇぇぇっ!」

「ランファ、落ち着いて。ねえ、ランファってば〜」

 

 激しく身悶え――――訂正、取り乱していた。

 

 

 

 

「馬鹿な! 第三師団が壊滅だと!? たった一機のEMにやられたというのか……!」

 

 その報せに第二近衛軍団・旗艦『エルドリッチ』のブリッジは震え上がった。二十メートル弱の機動兵器のどこに、それほどの火力が秘められていたのか。しかし現実に第三師団からの通信は途絶え、最大望遠の光学センサーを以ってしても友軍の姿を見止める事は出来なかった。

 

「エルシオールはどうだ?」

「不明です。先ほどの攻撃の影響らしく、エルシオールを確認した座標周辺ではレーダー類が一切使い物になりません」

「対空監視を怠るな。奴らは必ず仕掛けてくるぞ」

「はっ!」

 

 よもやこのような事態に陥るとは、考えてもみなかった。白き月に潜伏している友軍から送られてきた情報によれば、エルシオールはクロノ・ブレイクキャノンを装備せずに出港したとある。ならば軍団一つを真正面から相手には出来まいと踏んだのだが……

 

G Planは完成の域にある、ということか」

 

 遺失技術の解析はそこまで進んでいた、ということだろう。こちらも例の物が配備されていなければ撤退さえ考えなければならないほどに、だ。

 

「ハーネットを出せ。配置パターンはプランB、自動迎撃モードで待機せよ」

「了解。ハーネット1、ハーネット2……起動シークエンス開始」

「ハーネット3およびハーネット4は指定の座標へ移動中。レーダーに反応なし」

 

 これで守りは万全だ。ハーネットの火力とレーダーレンジは極めて高性能であり、四機あればアビスフィアに接近する敵の大半をカバーできる。艦隊を一箇所に集中させていたのは、これがあったからこそできる運用であった。

 

「ハーネット2、起動完了。離艦します」

「ハーネット1は第八起動シークエンスでエラー発生。現在、再起動中」

「対空網の完成が急務だ。作業、急げ!」

 

 急速に防衛網の穴が狭まっていく。このままでは十数分で何人たりとも近づけぬ最強の布陣が完成してしまうだろう。ハーネットの攻撃能力を持ってすればエルシオールも危険だ。

 だが―――――

 

「レーダーに感! 紋章機です、数は五!」

「何!? どこだ!」

「ハーネット3が捕捉しました。すでに大気圏を突破しています!

「ありえん……いつの間に―――――まさか!」

 

 ハーネット3は軍団本隊からそう遠くない位置にある。だがそれなら艦隊でも捕捉出来ていたはずである。しかし相手が大気圏に突入するまではその影すら見つけることができなかった。

 

 

 

 

「ハッキングとは考えたね、アウトロー」

『いえ、そんなぁ』

 

 アウトローの機体を抱えたハッピートリガーは悠々とアビスフィアの空を下っていく。カンフーファイターやトリックマスター、他の紋章機も同じように警戒しながら降下していた。

 

『敵の中に紛れ込み、通信回線から艦隊のレーダーシステムに侵入。監視網からわたくし達だけを見事に消した、というわけですわね』

 

 ミントが感心したように頷く。

 カラクリは彼女が言った通りだが、この作戦を可能としたのは何よりアウトローの搭乗機にあった。

 

『相手がMS14A『ゲルググ』の同型機を多数運用していたからできたんです。運が良かったというか何というか』

 

 アウトローの機体はMS14S『ゲルググ』。エースパイロット用のカスタム機であり、出発前に白き月の技術部から譲り受けたものだ。恐らくエルドゥルの部隊が白き月からデータを盗用して機体を生産していたことを、彼らも知っていたのだろう。

 いや、だからこそ、アウトローに託したに違いない。

 

「ところで、行き先は分かっているのかい」

『ハッキングした時に一緒に調べておきました。こっちです』

 

 ハッピートリガーから分離するMS14Sが案内するように先行する。エンジェル隊が従うように後に続くその先には、巨大な渓谷が広がっていた。

 

 

 

 

 石造りの大広間の中心で二人は寄り添いあい、ただ太古の時代から続く宿命をなぞっていた。

 

「ここで、全てが始まった」

 

 アヴァンが懐かしむように語る。

 彼にとっておよそ八億年もの昔、この星で出会った少女―――リンスと共にこの大広間でそれと遭遇したのだ。当時は同族相食む戦争が続いており、二人が手にした力で、仲間達と共に終戦へと漕ぎ着けるまで時間はかからなかった。

 

「戦いが終わった後、俺たちはテラフォーミングの一環で造られた森の中で暮らし始めた……たった一年、だったけどな」

 

 そしてリンスが短い天寿を全うした後、アヴァンは全てに決着をつけるべく旅に出た。無数の平行宇宙を渡り歩く中でクリスタルを巡る闘争に何度も巻き込まれた。その途中で大切なものを得ては失うことを繰り返し、復讐の黒炎に身を焦がしながらもここまで辿り着いた。

 そしてこの世界も、ただの通過点に過ぎない……はずだった。

 

「クロノ・クエイクによって崩壊した世界を復興させた後、リフレジェント・クリスタルの兵器転用……RCRジェネレーターの開発に着手した。ようやく試作一号機が完成し、そのテスト中にエルシオールと遭遇した」

 

 協力することに抵抗はなかったし、必要なことではあると考えていた。ただ正直に言えば、最終決戦の時に身を挺して庇ってやるつもりなど無かったのだ。

 

「じゃあ、どうして?」

「君がいたからだ」

「え……私?」

「理由は、いまさらいう必要なんか無いだろ」

 

 頬を赤らめるアンスをそっと抱き寄せながら、しかしアヴァンは険しい面持ちを浮かべている。

 

「けど、この世界も限界だ。これ以上、新しい時代に耐えられない」

「どういうことですか」

「今の世界はクロノ・クエイクによって一度崩壊した、というのは知っているだろう?」

「ええ」

「その時に、一度この世界は消えてしまった。跡形も無く消滅したんだ」

「えっ!?」

 

 それは偶然が幾重に折り重なった不幸な事件だった。

 旧世界でクロノ・クエイクが発生したその瞬間、別の世界――――いわゆる平行世界でも似たような大災害が発生していたらしい。宇宙そのものを揺るがすほどの力を持つ二つの災害は共鳴・連鎖反応を引き起こし、まったく無関係な多くの平行世界を巻き込み消滅させたのだ。

 だが問題はその後にある。

 世界には元々、損失箇所には修復作用が働くようになっており、今回の大消滅でも同じ力が働いた。だがこの世界には修復に必要な『モノ』が無い。

結果、様々な世界の残滓が集められ、現在の世界を再構築した。しかし、それは極めて危険なことだ。分かりやすくいうなら、一つのコップに水と油と塩と胡椒と水銀とカドミウムetc,etc…を入れてかき混ぜるのと同じなのである。

 そして世界というコップのキャパシティを完全にオーバーし、今やその中身は爆発寸前というところまで来ていた。本来ならば混ざり合うはずの無い物が結合すれば、拒絶するしかないのだから。

 

「そんな―――――」

「だが最後の手段が残っている。世界を在るべき流れへと戻す、最後の方法が」

「え?」

「その為の俺と、リフレジェント・クリスタルだからな」

 

 にっ、と笑ってみせるアヴァン。

 彼はいつもそうだ。肝心のところは全て一人で背負い込んで、周りの誰も傷つかないようにしようとして……失敗する。

 

「アンス?」

「今、物凄く不安になりました」

「オイ……それは酷いぞ」

「当然のリアクションです。大体、貴方は――――」

 

「アヴァン!」

 

 

 

 

 振り返れば靡く蒼い髪。かつて仲間と呼んだ男はそこにいた。

 

「来たか。タクト・マイヤーズ……遅かったな」

「ここは、何なんだ? ここで何をしようとしているんだ。それにアンスまで」

「………」

 

 アヴァンとアンスに対峙する、タクトとヴァニラ。後ろにはエンジェル隊の面々と北斗、アウトローまで揃っている。

 アビスフィアの中でも最も深い渓谷である『ストナ・バレー』。その奥にこの遺跡はあった。何らかの研究施設が併設されていたが、その最深部こそが彼らのいる大広間だった。

 高さは数十メートル。二百メートルuはあるだろう。かつて何かを安置していたのか、巨大な台座も見受けられた。

 

「ここは始まりの地だよ、タクト。俺とリフレジェント・クリスタルの」

「なるほど、神殿ってわけか……じゃあ教えてもらえるかな、クリスタルはいったい何なんだ?」

 

 これにアヴァンが顔を渋らせた。警戒しているわけではなく、どうにも応え方が分からないような、そんな表情だ。

 

「……まあ、お前ならいいか。リフレジェント・クリスタルは、世界を守護する最後の鍵だ」

「世界を守護する、鍵?」

「そうだ。世界の修復能力ですら不可能なダメージによって崩壊の危機に瀕した時、一からやり直すためのバックアップシステムさ。俺が持つ絶大な能力は、クリスタルを守護するために与えられた一機能に過ぎない」

「なん、だって……」

「分からないのか、タクト・マイヤーズ。俺はこの気に食わない世界を崩壊させ、最初からやり直すと言っているんだよ」

 

 鼻で笑い、アヴァンはなおも全てを卑下する。

 

「お前ならば分かるだろう、人の業の深さを。覇権と共に腐敗する国家、貧困に喘ぐ民衆、闘争の果てに見える夢の儚さ……その全てから開放するには――――」

「冗談じゃない!」

 

 タクトが吼えた。そんなものは願い下げだ、と言わんばかりに。

 

「俺たちは自分達の世界に絶望しちゃいない、まだ終わるわけにはいかないんだよ!」

「もっと、他の方法があるはずです」

 

 エンジェル隊もヴァニラと共に訴える。命の輝きは誰かによって踏みにじられるべきではないのだ。

 

「そうです。わたし、まだやりたいことがたくさんあります!」

「ミルフィーじゃないけど、アンタの言っていることはお門違いよ。だいたい、人間なんて誰かを裁くほど偉くないわよ」

「生きる意志を剥奪することは、到底許せるものではありませんもの。アヴァンさんとて分かっているはずですわ」

「そういうこった。あたしらはさっさとお前さんを叩きのめして……」

「絶対に連れて帰りますから。アヴァンさん」

 

 不屈の意思。

 希望を捨てないその強さ。

 だからこそ………

 

「フ……フフフフ、アハハハッハハハハハッハハハハハハハッ!」

「な、何が可笑しいんだ!」

「いや、だからこそ! お前たちだからこそ……! クククッ、フハハハハハハハッッッ!」

 

 狂気とさえ思えるほどの嘲笑。だが、彼に寄り添うアンスの顔に不安の色はない。まさか洗脳の類か、とは思ったがタクトは彼女に呼びかける。

 

「アンス! 今ならまだ間に合う、こっちに来るんだ!」

 

 アンスは黙って首を横に振る。言葉は要らない。それもまた固い決意の証だった。

 

「私はここですべてを……真実を見届けます。だから、もう……」

 

 後戻りは出来ないのだ。彼の全てを知ってしまったから、どこまでもついて行くと約束したから。彼の真意を知った今、共に歩むことを恐れはしない。

 

「皆、アヴァンを止めるんだ」

 

 タクトもついに、拳を握り締める。もはや力を持って食い止めるしかないと悟ったのだ。

 

「いくよ、皆!」

『はいっ!』

 

 まずランファが前に出た。前傾姿勢を保ちつつアヴァンへと直進する……!

 

「ウリャアアアアアアアアッ!」

 

 突き出される鉄拳を、アヴァンはアンスを抱き寄せたまま残る手で難なく受け止めた。だが今度は下からの膝蹴りでアヴァンの腕を引き剥がし、

 

「このぉぉぉぉオオオオッ!」

 

 さらに連撃。拳に肘、さらに蹴りに膝と踵を織り交ぜたラッシュが襲い掛かった。まさに嵐か竜巻の如き猛攻を前にしても、アヴァンは顔色一つ変えずに全て受け流していく。

 

「ん……?」

 

 ラッシュが一瞬止まり、ランファの姿が目の前から掻き消える。同時に一発の銃弾がアヴァンの左肩を撃ち抜いた。フォルテの放ったライフル弾だ。

 

「ふん……愛しの彼女の前じゃ本気は出せないかい?」

「アンス、先にコスモに戻れ。いいな」

 

 アンスがタクトたちとは反対の方向の出口へ駆け出す。その姿を見送り、アヴァンは改めてエンジェル隊と向き合った。その瞳の蒼がいっそう深くなっている。

 

「ようやく本気ってわけ? カッコつけてくれちゃっ……!?」

 

 身構えるランファの表情が一変する。フォルテやミルフィー、タクトたちも同様だ。今やアヴァンの全身から青く輝くオーラが立ち昇り、大広間―――――否、遺跡全体がそれに共鳴するように激しく揺れているのだ。

 

「いかん! 皆、早く逃げろ!」

「え?」

「クリスタルの力を使うつもりだ、このままでは巻き込まれるぞ!」

 

 北斗が叫びながらランファを腰から抱えて走り出す。フォルテたちもアウトローに乗って大広間を飛び出した。

 

「ほ、北斗さん!?」

「喋るな。舌を噛む」

 

 崩れる天井を避けながら北斗はランファを抱き上げ、目にも留まらぬ速さで通路を疾走する。アウトローが前方でマジックハンドを巧みに操り瓦礫を払い除けていくおかげで、降り注ぐ瓦礫はさほど気にならなかった。

 

「しかし、これは……ッ!」

「空気や瓦礫が……吸い寄せられてる!?」

 

 床に散らばる天井の破片や倒れた柱が、見えない何かに引きずられる様にランファたちとは逆の方向へ―――――アヴァンの方へ動き始めたのだ。そして北斗にはこの現象の正体が、見えていた。

 

「重力異常――――アヴァンめッ! アウトロー、急ぐぞ!」

『イエス・マスター!』

 

 アウトローのエンジンが吼え、北斗のスピードが一段と増す。遺跡の入り口まで辿り着いた時には『ストナ・バレー』はもう崩落を始めていた。

 重い地鳴りが一行を焦らせる。各々の機体を飛び立たせ、さらに数十キロ離れて尚も離れようかという、その時だった。

 

「あれ、何なんですかー!?」

 

 ミルフィーが谷の方角を指差し叫ぶ。

 皆が見れば、崩れ果ててクレーターと化した『ストナ・バレー』に発生した巨大な漆黒の球体が途轍もない速度で、遥か天に向かって撃ち出されたところだった。

 数秒のあいだ、静寂が場を支配する。

 

ゴガアアアァァァァァァァッッッ!

 

 そして響く轟音から、漆黒の球体が何かを破壊したことだけは確かめられた。ミントがトリックマスターのレーダーを使い、状況を把握しようと奔走する。

 

「な、何だったんだい。今のは……」

『ブラックホールだ』

「ブ、ブラックホール!?」

 

 ブラックホールといえば恒星進化の最終段階とされる天体である。燃え尽きた恒星が重力のために収縮してできる、超重力で光さえ吸収してしまう黒色小天体のことだ。はっきり言えば、こんな地上で発生するはずがない。

 仮に発生したとしても、ほんの十数秒で半径数キロ以内はあらゆる物が吸い込まれて何も残らないだろう。自分達が生きていられるはずがないのだ。

 

「あいつは、あんなモンをポンポン撃ってくるのかい……」

『いや、それはないはずだ』

 

 北斗が首を横に振る。

 

『先ほどの攻撃はどちらかというとアヴァンではなく、遺跡から撃ち出されたもの。アヴァンはエネルギー供給を行なっていただけだ』

「なんで、そんなことが言い切れるんだい?」

『二発目の傾向が見られない。恐らく今ので発射装置である遺跡が消滅したか、あるいはシステムに異常が生じたか。いずれにせよ、俺たちは今のうちにエルシオールと合流するべきだな』

 

 楽観的な意見ではあるが、ブラックホールが発生した影響で遺跡のあった谷が殆ど消滅してしまっていることは確かだ。そしてエルシオールが現在、手薄になっていることも―――――

 

「俺は、アヴァンを追う」

「タクト!?」

「すまない、みんな。でもこんな状況だからこそ、あいつを野放しには出来ないと思うんだ」

「分かった。お前は別行動でアヴァンを追跡してくれ。行くぞ!」

 

 

 

 

「敵艦、尚も接近! 敵EM多数!」

「対空砲、弾幕! 奴らを近づけるな! 面舵30、下げ舵20! エンジェル隊はまだか!?」

「アビスフィア地表で巨大な重力異常が発生、通信がつながりません!」

 

 直後、遥か前方で戦闘衛星と思しき機影が突如として爆発―――――いや、消失した。そして同時にエルシオールのレーダーが強力な重力異常を感知する。爆発の余波が周囲の敵艦を薙ぎ払い、さらにエルシオールの艦体を揺さぶってその凄まじさを物語っていた。

 

「ぐぅっ!……エンジェル隊への呼びかけは続けろ! こんなところで沈むわけにはいかんぞ!」

「りょ、了解!」

 

 しかし先ほどの重力異常はいったい何だったのだ。戦闘衛星を一撃で破壊し、さらに周囲の戦艦さえ巻き込むほどの威力……この星は一体――――!?

 

「敵EM、対空網を突破!」

「ちっ!」

 

 エルシオールへ肉薄する一つ目の巨人。両手に構えたライフルを照準し、ブリッジへとその銃口を向ける。距離にして数十メートル。回避も防御も絶望的だった。

 

『やらせはしませんぞ!』

 

 刹那、敵のEM――――――ゲルググの両腕が一刀のもとに斬り落され、さらに返す太刀が胴体を両断する。上下対となったビームナギナタを油断なく構え、さらなる敵へ警戒する独眼。

 

「これは――――!?」

 

 敵やアウトローの乗機と同型――――ゲルググである。しかし白く塗装された装甲と頭部の飾り角が只ならぬプレッシャーを与えていた。

 通信から聞き取れる快活な老戦士の名乗りは、

 

『やあやあエルシオールの皆さん! この白き超新星の狼、ウォルコット・O・ヒューイが助太刀いたしますぞ!』

「ウォ、ウォルコット中佐!?」

 

 さらに続けて二機のゲルググを斬り捨て、まるで時代劇の侍のようにポーズを決めるウォルコットのゲルググ。

 

「艦長、知っているんですか?」

「知らんのか!? かつて第二方面軍が未確認生命体群と交戦した際に多大なる戦果を上げた特殊工作部隊F6フェアリー隊のパイロット――――その凄まじい戦闘力故についた呼び名が……白き超新星の狼! だが数年前に現役を引退し、今は隠居生活だったはず」

『いやはや、こんな状況ですからな。おちおち縁側でチェスも出来ませんので、こうして現場復帰というわけですな。マーッコイコイ』

 

 快活だが不可思議(もとい不気味)な笑いで誤魔化すウォルコット。しかし、それでも旧時代の機体をレストアし、さらに第一級封鎖区域にまで単独で辿り着くことは不可能なはず。

 

「艦長! 本艦の後方にドライブアウト反応多数です!」

「何!?」

 

 そして出現する見慣れぬ艦隊にレスターたちは今度こそ驚愕した。

 まず旗艦が問題だった。何せ本星の工場で未だ建造中のはずだった新造戦艦『武蔵三型』なのだ。様々な新技術を盛り込んだ、エルシオールに代わる皇国防衛特務戦隊の旗艦として開発の経緯を聞かされていたレスターとアルモは、目を点にするしかなかった。

 そして注目すべきは艦隊の所属である。

 

『こちらは皇国宇宙軍零番艦隊司令、烏丸提督である―――エルシオール、これより貴艦を援護する』

「エルシオールのレスター・クールダラスだ。感謝する」

 

 皇国宇宙軍零番艦隊。一部のミリタリーマニアや軍事評論家の間でのみ存在を噂される、トランスバール皇家直属の近衛部隊らしい。聞いた話では作戦遂行における独自の権限を持ち、総司令部ですら命令権を持たず、ただ皇家の存続のためにのみ活動するという……

 また一説には強力な陸戦部隊を擁し、四ヶ月前の惑星オルタネリアにおける対異星人防衛作戦にて戦力の中枢を担ったとされている。

 誠に謎多き艦隊なのだ。

 

 

 だがありえない増援の出現にもエルドゥル第二近衛軍団はまったく動じない。先ほどのアビスフィア地表からの砲撃でハーネットの一機が破壊されてしまったが、戦力はまだこちらが優勢である。艦が数隻増えたところで戦況が覆るわけではないのだ……

 

「ハーネットを前線に回せ! 奴らを叩き潰すのだ!」

 

 いかに戦力が増えようと、ハーネットの火力の前ではエルシオールとて風前の灯だ。あのコスモさえエンジェル隊の力を借りねば太刀打ちできないほど強力なのだから。

 

「後方に熱源、紋章機です! ハーネット1と交戦中!」

「ゲルググを二小隊送ればよい。エルシオールさえ沈めればこちらの勝ちだ!」

 

 

 

 

「ぬうぅっ!」

 

 縦横無尽に張り巡らされたハーネットのワイヤークローに機体の手足を絡め取られ、北斗は唸りながらヘリオン・グレイブの刃先だけを走らせ抵抗する。かろうじて右腕の自由は確保したが、頼みの綱であるヒュペリオン・ランチャーやエンジェル・スレイブは射出機構をワイヤーで押さえられてしまい、使うことができない。

 

『北斗さん!』

「俺に構うな! この程度で―――――ッ!」

 

 ブースターを噴射させ、強引に機体を後退させながらグレイブでワイヤーを切断する。

 

「押さえられると思うな! フィアネスを!」

 

 しかし、こんなところでハーネットと遭遇するとは北斗たちにとって予想外だった。アビスフィアの重力圏から離脱した直後、恐らくエルシオールの追撃に向かうハーネットと鉢合わせてしまったのだ。

 カンフーファイターのスピードを以ってしても離脱する前に火砲で退路を絶たれてしまい、結果こうして真正面から撃ち合うことになっている。

 

『くうっ! こいつ……!?』

『フォルテさん!?』

 

 ワイヤークローの直撃を受けたハッピートリガーがよろめき、そこへさらに多数の鉤爪が獲物を引き裂こうと迫る。例え機体の装甲が優れていたとしても、これでは数秒と耐えられまい。

 だが助けに向かおうとするアウトローを、彼女は制した。

 

「よしな! アンタまで巻き込むわけにはいかないよ!」

『フォルテさん……』

「それに、これぐらい自分で何とかしなきゃ、ね!」

 

 不完全な姿勢でなお機体を捻り、回避を試みる。だが瞬く間にワイヤーに機体を捕縛され、身動きを取れなくなってしまった。

 

『フォルテさん……』

 

 アウトローの思考の中で、フォルテの指示と自分の欲求とがぶつかり、鬩ぎ合う。助けは不要と言う彼女の意思と、彼女を守りたいという自分の意思。果たしてどちらを尊重すべきなのか……所詮人に仕える機械(バイク)に過ぎない彼には出せないはずの答えだ。

 だけど、と彼の心は叫ぶ。

 今の自分は何故ここにいるのか?

 フォルテたちと出会ったあの日、所有者である北斗との合流を優先せずフォルテたちと行動を共にし続けたのは何故か?

 

(決まっている……それは)

 

 フォルテを主人とし、彼女に仕えることを受け入れたのは何故か!?

 彼女と共に戦場を駆け抜けることを同意したのは何故か!?

 

(僕は……僕は――――――)

 

 バイクでしかなかった自分を受け入れてくれたあの人を。

 使われるだけの道具だった自分を、優しく抱きしめてくれたあの人を!

 

『フォルテさんを!』

 

 大切な何かがひび割れ、砕けていく音が聞こえる。だが気にしてなどいられない。今成すべきことは唯一つ!

 

『守りたいんだぁぁぁぁぁぁァァァァァッ!』

 

 吼える。ただ猛々しく、無遠慮に自分を叱咤する。同時に彼の思考の奥で縛り付ける何かが完全に砕け、弾け飛んだ!

 乗機である蒼きゲルググをハーネットの前に飛び込ませ、今もハッピートリガーを拘束し続けるワイヤークローの根元に、日本刀状のビームセイバーを思い切り突き立てる。

 

『アウトロー!?』

『僕は、僕は……フォルテさんが大事なんです!』

 

 ビームセイバーを引き抜き、邪魔者を排除せんと暴れまわるワイヤークローの群れから後退しつつ叫ぶ。

 

『だから戦います! フォルテさんが止めても、守りたいんです!』

 

 ハーネットの各所に備えられた重力砲が火を噴き、飛び回る虫を払い落とそうとする。その圧倒的な攻めを掻い潜り、しかしアウトローは胸をすくような充足感に満たされていた。

 少年は今、機械としてではなく完全なヒトとしての自我を確立したのだ。愛する女性を守りたいという、切なる願いを礎にして彼は男――――熱くたくましい漢の魂を手にしたのである!

 

「成長したな、アウトロー」

『マスター……僕は』

「今は後だ。さっさとケリをつけるぞ」

『ハイ!』

 

 北斗は微笑を浮かべ、パートナーの成長を心から祝福した。

 

そして、今!

熱き漢だからこそ為せる必殺の奥義が炸裂する!

 

「いくぞ、アウトロー! エンジェル隊!」

『いっきましょ〜!』

『北斗さんとならどこまでも!』

『お熱いですわね〜』

『合点承知だよ!』

『準備は万全です!』

『マスター……!』

 

 フィアネスのFCSがハーネットの構造をスキャンし、その弱点をくまなく調べ上げていく。ワイヤークローの大半を失い、近接防御力の低下したこの状態なら……

 

「よし……! 皆、波状攻撃で一気に押し切る!」

『なら最初はあたしね! 砕け、アンカークロォォォォッ!』

 

 先手を切ったのはランファだ。数を減らされた触手の群れではカンフーファイターのスピードを阻むことは出来ない。炸裂する鉄拳に大きく後退を余儀なくされるハーネットが、まるで怒ったかのようにエンジンを唸らせた。

 同時に各部の重力砲が起動し、エンジェル隊へと狙いを定める。

 

『あら、そんなのお見通しですわ? フライヤーダンス!』

 

 そう、感情に任せた攻撃など謀略の女王の前では無意味である。瞬く間にフライヤーに重力砲を破壊され、残された攻撃手段は半減したワイヤークローのみである。

 

「ミルフィー、フォルテ、ちとせ! 奴の腹に大穴を開けてやるぞ!」

『はーい! ばばーんとハイパーキャノン!』

『ストライクバースト! ブチ抜けぇぇっ!』

『この一撃で決めます! フェイタル・アロー!』

「覚悟しろ……エンジェル・スレイブ、ヒュペリオン・ランチャー! 一斉射撃だ!」

 

 真っ向から紋章機三機とフィアネスの火力をぶつけられ、機体構造の半分近くを失いながらもハーネットは生きていた。最後の足掻きなのか、フォルテに向かって突進を仕掛けてきた。

 

「アウトロー、行けるな!?」

『はい……行きます!』

 

 アウトローのゲルググがゆらり、とビームセイバー抜き放ち半身に構える。背中のスラスターが盛大なフレアを噴き上げ、ぐぐっ、と身をかがませる。

 

『僕は……』

 

 アウトローの脳裏で見たこともない、白いナッツのような物体が割れ、少年の意識が無限大に広がっていく。静かに、ゆっくりと、眼前に迫る敵を見据え、構えた刃を返す。まさに明鏡止水の境地……

 

『フォルテさんを――――――』

 

 蒼のゲルググが宇宙を駆ける。接近するハーネットはもはや巨大な山か壁のようで、こんなちっぽけな刀では切り崩せるはずもない。

 しかし、

 

『愛しています――――――!』

 

 魂は肉体を凌駕し、想いは現実を超越する。

 放たれた閃光の一撃は下から上へとハーネットを動力部ごと両断し、アウトローはその後方へ大きく走り抜けていた。広大な荒野の惑星を背景に、二つの機械は雌雄を決した。

 ハーネットは一瞬の間を置いて爆散し、その炎に照らされてアウトローのゲルググがより青く輝く。

 

『これが僕の愛の形……ジーク・シュトーレン』

 

 強大な敵を打ち倒し、アウトローは愛の偉大さに涙した。少年の一途な想いが成し遂げた偉業を、仲間達が祝福する。

 

『アウトローさん、かっこいいです〜』

『さすが北斗さんのパートナーね』

『御見それ致しましたわ。まさかお二人の愛がこれほどとは』

『やめないか、ミント。照れるじゃないよ〜』

『フォ、フォルテ先輩……?』

 

 そして北斗はどこかやるせない感じを漂わせつつ、話題の転換を図ることにした。このままでは何か色々とまずいことになりそうだったのだ。

 

「うむ。さすが息の合った合体攻撃。これは名前をつけるべきだな」

『そうですね〜』

『何か良いのあります?』

『名前といわれましても』

『う〜ん……』

『やはりここはエンジェル隊ですから、それにちなんだ名前が良いのでは?』

「そうか。ではこういうのはどうだ? 『闇舞北斗と愉快な仲―――――」

 

 北斗の期待と羨望の詰まった台詞を、

 

『ギガ・ギャラクシー・フォーメイションでどうでしょう?』

『おお〜!』

 

 アウトローの一声とエンジェル隊の歓声が打ち砕いた。こう、完膚無きまでに、粉微塵である。

 

「い、いやな……『闇舞北斗と愉快な仲間―――――」

『さ、決まったことだし早いとこエルシオールと合流するよ!』

『は〜い!』

 

 一斉に飛び立つ紋章機とアウトローのゲルググ。

 一人残された北斗は、

 

「や、『闇舞北斗と愉快な仲間達による一撃必殺殲滅砲火』の、どこがいかんというのだァアアァァァァァァアァァァァァァァッッッ!?」

 

 

 

 

 漆黒の宇宙。

 どこまでも続く、静謐なる闇。

 足元に広がる熱砂の惑星からは、生命の息吹は届かない。

 ただ流れる時間の中で、戦の勝ち鬨と断末魔を遠くに聞きながら、蒼き離反者は最後の時を待っていた。

 

「アヴァン」

 

 傍らの愛する女がその名を呼ぶ。

 

「何をするつもり……?」

 

 黄金色の髪を、不安の色に染まった瞳を揺らして男の胸元に擦り寄る。

 

「歪めてしまった世界を是正する」

 

 蒼の瞳は迷うことなく、女の髪に指を絡め、頬を撫でる。

 

「在るべき流れへ進むように……」

 

 そして支払う代償はこの命。言葉に表さずとも、彼女にその意図は伝わってしまっていたのだろう。男の胸に顔をうずめたまま、叶わぬ願いを口にする。

 

「全てを終わらせて戻ったら、私を抱きしめて」

「ああ、いくらでも」

 

 口づけ、その華奢な細身を抱きしめる。忘れてしまわぬように、無くしてしまわぬように……ただ、抱きしめる。

 

 それで、戦いの準備は整った。

 

 

 

 戦場へ。

 億分の一つの勝算もない戦いへ。

 しかしそれをあるがままと受け入れ、銀河の守護者たる天使は決戦の地へと飛翔する。

 

「ヴァニラ……一つ、いいかな」

「はい」

 

 タクトは、そのもはや力の篭もらぬ腕で少女を抱き寄せる。

 

「俺が死んだら、代わりにアイツ……んっ」

 

 恋人の悲壮な願いを拒むように、ヴァニラはその口を自分の唇で塞いだ。ゆっくりと、互いの温もりを感じあって、二人は顔を離す。

 

「生きて帰る。それが、約束です」

「そうだった、ね……うん、そうだ」

 

 もはや叶わぬ願いだと分かっていても、それだけが二人の支えだった。

 

 

 

 

 決戦の地。アビスフィア、衛星軌道上……ちょうどエルドゥル艦隊とレスターたちが交戦している宙域の、惑星を挟んだ反対側である。

 

『来たか……』

 

 恒星を背にコスモがフラッシャーエッジを腰のラッチから抜き放つ。

 

「ここで、決着をつけよう」

 

 アビスフィアの月を背に、ギャラクシーエンジェルが金色の翼を大きく伸ばした。

 もはや二人に言葉は必要ない。己が信念のために道を違え、ぶつかり合うことを覚悟した二人ならば……

 裏切り。

 策謀。

 そしてヴァニラの死。

 諸々の因縁を超越し、本当の意味で決別するために。

 

『手加減は、いらないな』

「全力で行く。好きにすればいいさ」

 

 遥か彼方で弾けた光を合図に、二体の機神が同時に動いた。

 腰から斬り上げるコスモの刃を、

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

銀河天使 必殺

エンジェリック・マグナム!

 

 金色の光を纏ったGAの右の拳が弾き飛ばす。エネルギー粒子流体を収束させた光の手甲は命中と同時に炸裂し、戦艦すら一撃で粉砕するほどの威力を持つのだ。

 一切の武装を装備しないEMX01 GAが何ゆえ皇国最強と謳われるのか。それは不動の守りでも、韋駄天の如き俊足でもない。

 

「まだだっ!」

 

 機体を勢いに乗せて回転させ、繰り出す渾身の回し蹴りがコスモの左肩を捉える。身を反らし、かろうじて直撃は回避するも左肩の装甲は熔解し、ずたずたに引き裂かれてしまった。

 これが、GAが最強と呼ばれる所以。

 守りも攻めも可能とする、絶大なるエネルギー出力機関。そしてそれを制御し得るシステムこそが、この機体の真髄なのである。

 

『っの……舐めるなぁぁぁぁぁっ!』

 

 フラッシャーエッジを強引に叩きつけ、GAを押し返す。間合いを取りつつ態勢を立て直すタクトだったが、

 

「くっ!?」

 

 その異変を瞬時に感じ取り、さらに機体を後退させて警戒する。

 

『フラッシャーエッジ、フルドライブ!』

 

 ギュオオオオオオオオオオオオッッッ

 

 コスモの手元でフラッシャーエッジが唸りを上げる。噴き出す光の刃が細く、限りなく細く収束し、同時にグリップがコスモの背の丈ほどまで突き出し、まるで槍の様に形状を変化させたではないか。

 

『スパイカーモード、セットアップ!』

 

 フラッシャーエッジ・スパイカーとでも呼ぼうか。油断無く光の槍を構える紫紺の騎士を前に、タクトの頬を冷や汗が伝う。

 

 一秒…沈黙が二人の間合いを支配する。

 二秒……徐々に、その間合いが近づいていく。

 三秒………双方、機神の双眸に光が走り、

 

『「でやあああああああああっ!」』

 

 光速の戦闘が開始された。

 穿つ光速槍を受け流し、タクトが金色の拳を打ち出す。

 砕く光速拳を凌ぎ、アヴァンが金色の矛先を突き放つ。

 だがその戦いは戦場の拡大というレベルを完全に上回っていた。一度の攻防だけで数百メートルもの距離を必要とし、より立体的な戦術を用いるならばさらに数倍の空間が必要となる。

 さらに広大な宇宙を、まさに縦横無尽に駆け抜けながらの死闘は瞬く間に無数の敵すら巻き込んでゆく。

 

「このおっ!」

『邪魔だっ!』

 

 コスモの刺突の衝撃で巡洋艦が数隻吹き飛ばされ、GAの一撃でさらに数隻が薙ぎ払われる。余波だけで他の艦がバランスを崩し、友軍艦に激突する。

戦況も混乱していた。レーダーを飛び回る二機の機影が寄しくもかく乱効果をもたらし、敵味方の識別が困難になってしまったのだ。もはや隣り合わせの艦を目視で確認するだけで精一杯なほどに。

 

「くうっ!」

『ちぃぃっ!』

 

 一際強くぶつかり合い、そして離れる二人の距離は一瞬のうちに惑星の直径までになっていた。一呼吸置き、構え直す。

 それだけで、次が全力の一撃であることは互いに理解できた。

 

「ふぅぅぅぅぅ――――――っ」

『はぁぁぁぁぁ――――――っ』

 

 出力が、放出されるエネルギーが桁違いに増大する。それだけで宇宙を震わすほどのプレッシャーが双方に襲い掛かった。だが呼吸は互いに乱れない。極限までに高められた集中力は揺るがない。

 

『っ!』

 

 先手を取ったのはアヴァンだった。振り上げたフラッシャーエッジを元の剣型に戻し、その刀身を伸ばす。その長さは遥か数千メートルを超え、なお伸びる。限界まで引き伸ばされた光の剣はおよそ二万メートル。

 

『これで終わりだ! タクト・マイヤーズ――――――!』

 

 柄を両手で掴み、肩に担ぐように構える。それだけで小惑星帯の一部が消し飛んだ。

 

『我が一撃を受けろ――――――――!』

 

秘奥義 光速剣

輝閃ノ太刀




 もはや切っ先という果てが見えぬ剣を振るうアヴァンが銀河天使目指し直進する。その進撃で第二近衛軍団――――エルドゥル艦隊が次々に宇宙の塵と化していく。もはや紫紺の魔刃を止めることなど、誰が出来ようか

 この絶望的な光景を前にしてなお、タクトは勇敢に対峙する。

 

「お前こそ、これで最後だ!」

 

 GAの右脚が金色に輝く。エネルギー粒子流体が収束・加速しているのだ。その輝きはGAそのものを包み込み、まるで夜空に輝く月のように周囲を照らし上げる。

 

「いくぞ―――――――っ!」

 

銀河天使 究極必殺

ルナティック・ブレイカー!

 

 アビスフィアに突如として出現した黄金の月がアヴァンに向かって加速する。突き進む、それだけで巻き込まれたエルドゥル艦隊の艦艇たちは粉砕され、あるいは弾き飛ばされ惑星の地表へ落下していく。

 

「アヴァ―――――――――ンッ!」

「タクトォォォォォォォォォッ!」

 

 

 

 巻き起こる輝きの嵐を、遠方より静かに見つめるエルシオールたち。二人の激突を事前に察知した彼らは烏丸提督ら第零番艦隊と共に安全圏まで退避していた。

 これほどの戦いになると、誰が予想していただろうか。ぶつかり合うだけで軍団一つが消し飛ぶような戦いなど……

 

「タクト……帰って来いよ?」

 

 親友の呟きは、果たして届くのか――――――――




 

 

筆者たちの必死な解説コーナー(やっちゃったゼ!編)

 

アヴァン「はい……銀河天使大戦第三章五節……お読みいただきアリガトウゴザイマス」

 

ゆきっぷう「テンション低いYO!? もっとハイに行こうぜ! ハイによ!」

 

アウトロー『そうですYO! もっと明るく行きましょう! 明るく!』

 

アヴァン「るせぇっ! こっちゃシリアスバトルで神経すり減らしてんだ、子供の仮面ラ○ダーごっこみてえにキャイキャイやってんじゃねえんだ! ちゃっかり告ってウハウハか!? え、このマセガキめ!」

 

アウトロー『はうッ!』

 

北斗「そうだぞ、アウトロー! フォルテみたいなガサツな女など止めておけ! 俺がもっと素晴らしい女性を紹介してやる! 例えばそう、この『静さん(12年物)』はどうだ!? 淑やかで(風味が)、大人びた(深い味わい)いい人だぞ〜!」

 

アヴァン・アウトロー『それは日本酒!』(北斗の持つ酒瓶を指差し叫ぶ)

 

北斗「くっ……ダメか……もうアウトローとは、人間の基準で恋愛を語り合うことはできないというのか……ッ!」

 

アヴァン「それはお前だ、この変態酒フェチ野郎」

 

北斗「何ィッ!? 貴様とて似たようなものだろう! このメロンフェチエイリアンがッ!」(あくまで否定はしない)

 

アヴァン「んだと〜!?」

 

北斗「何を〜!?」

 

スパカーン! スパカーン!(二人の脳天に炸裂する−ドライバー)

 

アヴァン「ぎゃぁぁあぁぁっっ!」

 

北斗「ぐわあああああぁぁぁぁぁっ!?」

 

アンス「くたばりなさい、変態ども!」

 

アヴァン・北斗「「この、腐女子め……」」

 

アンス「……………(ぷちっ)」

 

ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!? 

パタッ…

 

アンス「やっと黙りましたか……さて、じゃあ本編の解説をやりましょう」

 

 

 

銀河天使大戦の世界とは!?

 

ゆきっぷう「前からチョコチョコ書いていたけれど、本作の世界観は極めて特殊なものとなっておるのですよ、アンスさん」

 

アンス「そのようで……具体的にはどうなっているんですか?」

 

ゆきっぷう「とりあえず列挙すると……原作『ギャラクシーエンジェル』の旧時代をベースに機動戦士ガンダムシリーズ、マブラヴ・オルタネイティヴ、とらいあんぐるハート3外伝『魔法少女リリカルなのは(PCゲーム)』といったところだな」

 

アンス「ごった煮ですね」

 

ゆきっぷう「ごったって言うな! ここまで絞り込むのだって大変だったんだぞ!?」

 

アンス「し、絞り込み!?」

 

ゆきっぷう「おうともよ! 最初はスーパーロボット大戦だとか、魔装機神だとか、永遠のアセリアだとか……挙げたらもう、一ページぐらい使いかねんよ?」

 

アンス「………なるほど、タハ乱暴氏が止めた理由が良く分かりました」

 

ゆきっぷう「だろ? まあ話が少し逸れたけど、次にどうやってこの世界が出来たのかを解説しよう」

 

アンス「珍しく普通な流れですね……」

 

ゆきっぷう「話の腰を折るな。まあ分かりやすく例えると、さっき挙げた『ガンダム』やら『マブラヴ』やら『なのは』やらをミキサーにかけて、ジュースにしたものが『銀河天使大戦』なのだよ」

 

アンス「ふむふむ」

 

ゆきっぷう「けれど、そのジュースはなんと! 自分が注がれているコップを溶かし始めてしまった。それを何とかしようというのがアヴァンの目的、らしいよ?」

 

アンス「分かり易すぎですね」

 

ゆきっぷう「そうか?」

 

アンス「つまり、ジュースの材料が平行世界で、ミキサーがクロノ・クエイクで、材料をミキサーにかけて出来上がったジュースが今のトランスバールの宇宙?」

 

ゆきっぷう「その通り。でも正直言うと、書き始めた当時はこんな設定は無かったんだ……」

 

アンス「ええっ!?」

 

ゆきっぷう「だって、その頃はまだマブラヴ・オルタはまだ発売してなかったし?」

 

アンス「そういえば……そうですね」

 

(銀河天使大戦の立案および執筆開始は04年末で、オルタは06年発売です)

 

ゆきっぷう「その頃の俺はまだ『なのは』じゃなくて、『恭也×忍orノエル』で苦悩する日々だったし!?」

 

(タハ乱暴氏に貸して頂いた『とらハ123DVDエディション』で、ゆきっぷうは真っ先に3…そして忍ルートをチョイスしている)

 

アンス「けっこうマイナー路線!?」

 

ゆきっぷう「アセリアなんてこの間『聖なるかな』の限定版に付属していたPS2の逆移植版を初めてプレイしたばっかだし……」

 

(そのため、『聖なるかな』ソフト自体は未開封で、部屋の隅に安置されている)

 

アンス「まだクリアしてないでしょが!」

 

(アセリアルートで2周するという馬鹿をやったため、他のヒロイン攻略はまったく進んでいない。だって、アセリアだけでお腹一杯だし……)

 

ゆきっぷう「ともかく、書いている二年の間に設定資料も様変わりしたってことさ」(分厚いファイルを取り出すゆきっぷう)

 

アンス「これが、諸悪の根源……」

 

ゆきっぷう「ん?」

 

アンス「いえ、何も」

 

ゆきっぷう「書き始めた頃はこんなじゃなかったんだが、気付いたら三倍になっていた」

 

アンス「そうですか……その割にはメカニック関連ばっかりですね?」

 

ゆきっぷう「うん」

 

アンス「キャラクター設定がほとんどないですね?」

 

ゆきっぷう「うん」

 

アンス「私の設定はどこですか?」

 

ゆきっぷう「思いつきだから、用意してないよ。ちゃんと文章化したのはこの間のあとがきが初めてなんだよね」

 

アンス「………」

 

ゆきっぷう「そう考えると、ティティガ・エルドゥルとかブレーブ・クロックスも書いてないなぁ」

 

アンス「……………私は一話限りのB級悪役と同じ扱いですか!?」

 

ゆきっぷう「そだね」

 

アンス「もう、いいです……」

 

 

今回のシナリオについて

 

ゆきっぷう「いよいよ最終局面だよ」

 

アンス「そうですね。というか、初っ端からネタですか」

 

ゆきっぷう「レスターとアルモのことか?」

 

アンス「ええ。いつの間に妊娠を?」

 

ゆきっぷう「第二章のあとがきで、ヴァニラが妊娠したとかそんな話をしてた頃に……」

 

アンス「そこですか!? いや、だって、そんな……」

 

ゆきっぷう「安心したまえ、アンス君。君ももうすぐおめでた通知が来るよぼっ!?」

 

アヴァン「いい加減黙りやがれ!」

 

アンス「………」

 

アヴァン「アンス、いいか? 落ち着いて聞いてくれ」

 

アンス「……来ないんですか?」

 

アヴァン「へ?」

 

アンス「『おめでた通知』」

 

アヴァン「………」

 

アンス「………」

 

アヴァン「う、うぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

しばらくお待ちください

 

北斗「では代わって、ここからは俺が解説をしよう。あの二人に関してはしばらく放置してやってくれ。色々と溜まっているらしい」

 

アウトロー『溜まるって、汚れですか?』

 

北斗「……お前はまだ知らなくていいことだ。…まあ、今は五節の話だ」

 

アウトロー『はい。それにしてもマスターは最初から全力全壊でしたね?』

 

北斗「まあな。後半にアヴァンとタクトの戦闘をメインに据える以上、構成としては前に持ってくる以外なかったのだろう」

 

アウトロー『いきなり最強武器投入ですもんね』

 

北斗「それを言ったら、アウトロー。お前は、お前は……ッ!」

 

アウトロー『はい、もう気分はマブラヴの白銀武さんですね〜。守りたい世界があるんだ、みたいな感じで』

 

北斗「俺のフィアネスより、そしてアヴァンとタクトの戦闘シーンよりも描写が長いとはどういう了見だ、ゆきっぷう!?」

 

ゆきっぷう「黙れっ!」

 

北斗「何!?」

 

ゆきっぷう「そして聞いて下さい!」

 

アウトロー『急に丁寧な口調に変わった上に、腰が低くなった!?』

 

ゆきっぷう「タハ乱暴の描く『Heroes of Heart』の中で、アウトローは一介のサポートメカとしてしか扱われていなかったんです。そんな折、同氏に銀河天使大戦への出演を快諾していただいて私は思いました! 『彼に、この少年バイク(誤字に在らず)に脚光を浴びせちゃおう。主人公並みに』と!」

 

北斗「き、貴様……」

 

ゆきっぷう「そして私は様々な技術書(主にBL漫画)を読み漁り、この純白のバイクに、どこぞの死神博士バリの様々な改造を施しました。擬人化し、犬ミミと犬シッポをつけ、年上系でバインバインなフォルテをヒロインに据え、あまつさえ禁じ手とされていたキ○・○マト的人格構成を付加したのです! それもすべては……すべてはアウトローのためにやったこと」

 

アウトロー『ゆきっぷうさん……』

 

ゆきっぷう「でも私は後悔していません! たとえ腐女子と罵られようとも、アウトローの勇姿を垣間見ることが出来たならば! そして健気だけれど愛情に飢えた犬ミミ美少年に人の温もりと愛を教えてやれたのならば! 私は地獄に落ちてもいい!」

 

アウトロー『ゆきっぷうさん、そこまで僕のことを……』

 

北斗「だがアウトローよ。コイツのマ改造は思いつきの行き当たりばったりだったぞ。例の設定資料ファイルにお前のデータが無かった」

 

アウトロー『僕のことは遊びだったんですねぇぇぇぇぇぇっっ!?』

 

ゆきっぷう「ま、待て! 違う、違うんだ! ただ執筆中に構想を思いついただけで、メモを取らなかっただけで、遊びだなんて断じてチョモランマッッ!?」

 

バキューン バキューン

ドガガガガガガガガガガガガッ

パスン パスン パスン

 

しばらくお待ちください

 

 

ヤット登場、キャラクター紹介第三弾

アヴァン・ルース

 

アヴァン「ふっ……今思えば長い道のりだった」

 

北斗「アンス、俺と続いてオリジナルキャラクター紹介も三回目だ。主人公が三回目にならないとできないとは、これもゆきっぷうの無計画さ故か」

 

アヴァン「その突拍子のない計画に振り回されるタハ乱暴は、たまに不憫に思えてくるぜ」

 

北斗「いやいや、そのタハ乱暴の悪影響をモロに受けて変貌してしまったゆきっぷうにごく稀にだが同情するぞ」

 

アヴァン「お互い……」

 

北斗「変な親を持ったな……」

 

アヴァン・北斗「「はあ……」」

 

ユウ・ユキ「「じゃあ紹介するよ〜」」

 

アヴァン・北斗「「ぐわあっ!?」」(ユウとユキに突き飛ばされる)

 

ユウ「え〜と」

 

ユキ「………どこから、話す?」

 

アンス「まずは簡単なプロフィールでしょう」

 

ユウ「りょ〜か〜い。白き月の使徒『アヴァニスト・V・ルーセント』、本名アヴァン・ルース。背丈はおよそ170p前後、体重は五十数キロと推測され、その年齢はちょっとした天体規模、みたいな? 正確な年数や事細かな情報は公開されている設定資料の方に載ってるよん」

 

アンス「じゃあ、一言で言うと?」

 

ユキ「メロン馬鹿、女たらし、ドジマヌケ、ゾンビ爺……?」

 

アヴァン「待てぇぇぇぇぇぃっ! いくら俺が北斗より歳(あくまで実年齢)が上だからって爺はねえだろ! しかもゾンビ爺ってなんだ!?」

 

ユキ「殺しても殺しても起き上がる変態爺だから」

 

アヴァン「へ、変態までつけやがったな!」

 

ユキ「客観的事実。実際、私とユウは……(ぽっ)」

 

アヴァン「そこで頬を赤らめるなっ!」

 

北斗(目が据わっている)「では次に、この男の本性を語らねばなるまい。こいつは事ある毎に暴れまわる激情家でな。酷い時など数百人もの女をはべらせてやりたい放題……落ち着けアヴァン、まずはそのバ○ターライフルをしまえ」

 

アヴァン「お前にだけは言われたくなかったぜ、闇舞北斗」

 

ユウ「あながち間違いじゃないけどね」

 

北斗「なんだってぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

ユウ「あたしとユキがいれば充分すぎるでしょ」

 

北斗「た、確かに中○生以下と思しき少女二人は充分、危険だな」

 

ユウ「むー、解釈の方向性が微妙に違う」

 

北斗「とにかく、アヴァン・ルースという男の裏側は非常に危険なことに変わりはない。第二章でこいつが裏でどんな策謀を張り巡らせていたか、見ていこう」

 

ユウ「話題を持ってった〜」

 

北斗「アヴァンの野望計画第一段階は、実は第一章ですでに始まっていた」

 

ユキ「言っていることが変わっている」

 

北斗「細かいことは気にするな。さてアヴァンは影で人型機動兵器を皇国に普及させるべく様々な手段を講じていたが、その一つが白き月のプラント、そしてアーカイブ・テリトリーの開放だ。第一章二節、RCSの修理という名目でアヴァンは白き月の封鎖区画の封印を解いたのだ。これによって白き月は人型兵器の開発に必要なサンプルやデータを入手するきっかけを得ることができた。

そしてアヴァンの失踪後、白き月に保管されていた大量の資料とRCSの稼動データなどを流用して、軍は開発プランを立ち上げた……」

 

アンス「それがG Planなんですね」

 

北斗「あくまで自発的な発案と計画の進行をアヴァンは望んでいた。でなければ優れた兵器は誕生しないからだ。完成した一号機・ギャラクシーは欠陥兵器だったが、最終的にはヴァル・ファスク戦役において多大な戦果を挙げている」

 

アンス「なるほど……」

 

北斗「そして肝心のギャラクシーとパイロットであるタクトを育てるためには、多くの実戦経験と稼動データが必要だった。そこでアヴァンは計画を次の段階に移行させた。第二段階はつまり、実戦データの提供だ。といっても実際にデータを渡すのではなく、ギャラクシーとタクトに実戦経験を持たせることによるが」

 

アンス「じゃあ、テラス4を襲撃したRCSは……」

 

北斗「うむ。タクトと直接交戦したRCSブルーはアヴァンが操縦していた。圧倒的な敵の強さを目の当たりにしたタクトたちはギャラクシーの強化に邁進せざるを得なくなり、次の惑星アトムの事件では活動時間の短さと地形適応を解消することに成功している」

 

アンス「代わりにクールダラス艦長のお父上がお亡くなりになってしまいましたが……」

 

北斗「大きな犠牲はそれだけではない。惑星アトムではブレーブ・クロックス率いる革命軍により核兵器が使用され皇国軍の陸戦部隊は壊滅した。また革命軍に占拠された拠点を奪回する戦闘では、革命軍の兵士が百名以上惨殺されているように、敵味方問わずには甚大な被害が出てしまった。

ところでブレーブ・クロックスといえば第一章番外編で、俺とフォルテたちが逮捕したはずだったな」

 

アンス「そういえば……そうですね。いつの間に惑星アトムに」

 

北斗「それもアヴァンの仕業だ」

 

アンス「やっぱり」

 

北斗「うむ。第二章でテラス4の襲撃事件までの間にクロックスを脱獄させたアヴァンは惑星アトムに赴き、発掘された人型兵器『グフ』を含む大量の兵器と物資を提供している。さらに襲撃事件後にはどこから持ってきたのか、短距離弾道ミサイル数基と核弾頭まで奴らに渡しているのだ」

 

アンス「そ、そこまで?」

 

北斗「だが当て馬としては申し分なかった。この事件が終わった時点で、タクトはギャラクシーをほぼ完璧に使いこなすことができるようになっていたしな。タクト自身の人間的成長も含めて、アヴァンが望んだとおりの結果となったことは間違いない。

 だがアヴァンにとって計算外だったのはこの後だ」

 

アンス「ヴァル・ファスクの襲来、ですね」

 

北斗「その通りだ。今までの戦闘はアヴァンによってある種コントロールされたものだったが、突然のヴァル・ファスクの出現は奴の計画に大きな狂いをもたらした。極端な言い方をすれば、目が離せなくなったわけだ」

 

アンス「と、言いますと?」

 

ユウ「一部隊の戦力で対応できる事態では無くなったんだよ、お姉ちゃん。第二章五節を読めば分かると思うけど、これまでは少数しか出てこなかった人型兵器が大量に敵として襲い掛かってきたことは、エンジェル隊とタクトに大きな負担を強いる羽目になっちゃったんだ」

 

北斗「そしてネガティヴ・クロノ・フィールドという特殊兵器が投入されたことにより、友軍の援護も期待できない状況にまで追い込まれては、いかにエルシオールとて最悪の結末が充分あり得る」

 

ユキ「だから、助っ人を連れてきたの」

 

北斗「黒き月の管理者・ノアの参戦によって切り札を手にしたタクトはヴァル・ファスクの首領ネフューリアを撃破し、戦いは無事に幕を閉じた。タクトとエンジェル隊、そしてエルシオールがこの一連の事件を通じて皇国軍の一戦力からより大きな存在へと成長したことは間違いない。だが何ゆえアヴァンが回りくどい方法で干渉してきたのか……その目的や真意は次回の銀河天使大戦で読者の皆様自身の目で見極めて欲しい」

 

アンス「というか、質問なんですけど」

 

北斗「ん?」

 

アンス「アヴァンはエオニアの戦乱から一年ぐらい寝たきりの重傷だったはずですが?」

 

北斗「それは、あれだ。リフレジェント・クリスタルの修復能力が働いていたんだろう。たぶん一週間ぐらいでメロンを二、三玉ぐらい一気に食えるぐらいには回復していたはずだ」

 

アンス「そうですか……(だったら早く戻って来いっての、ケッ)」

 

北斗「い、今変な声が聞こえなかったか?」

 

アンス「いやですわ、闇舞さん。空耳ですよ、空耳」

 

北斗「そ、そうか」

 

ちとせ「はい、はい! 質問です!」

 

北斗「な、なんだ? 烏丸ちとせ少尉」

 

ちとせ「北斗さんはアヴァンさんと付き合いが長いんですよね?」

 

北斗「あ、ああ……不本意ながら」

 

ちとせ「ず、ずばりですね……アヴァンさんの弱点を教えて欲しいんですけど」

 

シヴァ「む、待て! 抜け駆けは許さんぞ!」

 

アンス「抜け駆けって、陛下はもうフラれたじゃないですか!」

 

ちとせ「そういえば、そうですね」

 

シヴァ「ええい、私はまだ諦めはせん! 諦めはせんぞぉぉぉぉぉぉ……っ」

 

 

北斗「さて、今度は銀河天使大戦では語られないであろうタハ乱暴とのリンク関係を話すことにしようか」(椅子に座りながらちらり、と後ろを見る)

 

アヴァン「そうだな」(椅子に座りながらちらり、と後ろを見る)

 

ちとせ(は、放してください! 私がアヴァンさんの隣に座るんです!)

 

アンス(正式なヒロインは私です! 私が座ります!)

 

シヴァ(ええい、見苦しい! ここは平等に私が座る!)

 

アンス・ちとせ((それは平等じゃありません!))

 

北斗「血生臭いな」(一昨昨日の方角を見つめる)

 

アヴァン「ああ、そうだな……」(明々後日の方角を見つめる)

 

ユキ「じゃあ、わたしたちが」(アヴァンの左膝の上にちゃっかり座る)

 

ユウ「座っちゃおー」(アヴァンの右膝の上にちゃっかり座る)

 

ちとせ・シヴァ・アンス(あああぁぁぁぁぁぁっっっ!?)

 

北斗「さて決まったことだし、始めるか」

 

アヴァン「そうだな。それで、何から話す?」

 

北斗「とりあえず、過去に付き合ったことのある女性の数を教えてもらおうか」

 

アヴァン「ひぃ、ふぅ……ところで、ユウとユキも入れるのか?」

 

ユウ「入れるよねー?」

 

ユキ「当然」

 

アヴァン「じゃあ、アンスも入れて八人だな」

 

北斗「つまり、今まで奴の毒牙にかかった女性が八人もいるということだ。奴は甘い囁きと共に女性の弱みに付け込み、じわじわと………落ち着けアヴァン、その右手に造ったブラックホール・クラスターを消すのだ」

 

アヴァン「お前にだけは言われたくなかったぜ、闇舞北斗?」

 

北斗「さて前回のあとがきでこの作品が、タハ乱暴の『Heroes of Heart』本編および外伝と密接にリンクしている話はしたな」

 

アヴァン「んー、まあな。というか、『Heroes of Heart』関係より、普段のアイツラの会話がリンクしていると思うんだが……」

 

北斗「ともかく現在、アヴァン・ルースがこのような怪物に成長してしまったのは、すべてタハ乱暴の余計な一言と……」

 

アヴァン「ゆきっぷうの阿呆の如き対抗心が発端だった。そのケースの一例をご覧頂こう」(映写機がカタカタと回転を始める)

 

 

タハ乱暴『おーい、マイブラザーもといゆきっぷうー!』

 

ゆきっぷう『どうした、マイブラザーもといタハ乱暴よ?』

 

タハ乱暴『仮面ラ○ダー龍騎のDVDを持ってきた。さあ見よう!』(ここが余計)

 

ゆきっぷう『おお、分かった』

 

(鑑賞後)

 

ゆきっぷう『いいなあ、仮面ラ○ダー』(この辺りが阿呆)

 

タハ乱暴『いいだろう、カッコいいだろう!』

 

ゆきっぷう『よし、うちのアヴァンもラ○ダーっぽくパワーアップだぜ!』

 

タハ乱暴『ではこの資料を貸してやろう。参考になるかもしれん』(ここも余計)

 

 

北斗「この要領でタハ乱暴はゆきっぷうを扇動し、アヴァンはゆきっぷうの手によって人外の存在へと変貌していったのである」

 

アヴァン「うっうっ……それもこれも、すべてはゆきっぷうが―――――」

 

北斗「ゆきっぷうが?」

 

アヴァン「この世に生を受けたことが悪いんだぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

北斗「いや、まあ、そりゃそうだ。だがそれを言ったら……奴さえ……タハ乱暴さえいなければ光は、光はぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!」

 

(全身から怒りのオーラを巻き上げ、咆哮する二人)

 

アヴァン・北斗「「出て来い、クソ親父どもォォォォッッ!」」

 

 

ズガァァァァァァァンッ(落雷によって銀河の一部が吹き飛ぶ)

 

アヴァン・北斗「「死に晒せや、コラァァァァァァッ!」」

 

ドゴォォォォォォォンッ(謎の閃光によって銀河の一部がさらに吹き飛ぶ)

 

アヴァン・北斗「「タダで済むと思っとんのか、ワレェェェェェッ!」」

 

バギャァァァァァァアッ(衝撃波によって銀河の半分が粉々になる)

 

アヴァン「俺の人間性を―――――」

 

北斗「俺の光を―――――――」

 

アヴァン・北斗「「返しやがれェェェェェェェッ!!!」」

 

チュドムッ

 

 

 

ユウ「げほっ、げほっ……ユキ〜大丈夫〜?」

 

ユキ「う、うん……とりあえず?」

 

アンス「終わりましょっか? 帰ってご飯にしましょう」

 

ユウ・ユキ「は〜い」

 

アンス「今夜はバネッサさんも呼んで、家ですき焼きよ」

 

ユウ・ユキ「わ〜い」

 

 

アヴァン「俺の……すき焼き(メロン入り)……ガクッ」

 

北斗「バネッサ……いつから、付き合いが? ぐふッ」





いよいよ最終決戦。
美姫 「タクト、アヴァン、共に譲れないのね」
さてさて、その結末は如何に!?
美姫 「非常に気になる所で次回へ」
むむむ、一体どうなるんだろう。
美姫 「次回もお待ちしております」
待っています。



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