―――――白き月奪還から六時間後

 

 

 エルシオール一行はルフトの案内でアーカイブ・テリトリーの最深部、零番ハンガーに集まっていた。目を覚ましたばかりのレスターも、アルモに肩を借りてなんとか顔を出している。

 ハンガーは先の戦闘でかなり損傷していたが、機能自体は殆ど損なわれていないのだとルフトは言う。もっとも、彼の背後では倒れ伏したEM『ヘクトール』の撤去作業が続けられていたが。

 しかし何ゆえ、彼らがこんなところに集合しているのか。まだエルシオールや白き月の復旧作業は残っているのだが……

 

「帰って、くるわよね……?」

「大丈夫だよ。タクトさんなら、きっと」

 

 不安げなランファの手をミルフィーが握り返す。この激戦の中、ただ一人で出撃した彼の行方を誰もつかめていなかったのだ。

 待つことしばし、

 

「まだかい?」

『五分も経っていません、ご主人様』

 

 ぼやくフォルテに執事服に身を包んだアウトローが応える。その様はまさに『従順ではなく忠実な僕』である。

 永遠とも思える数分が過ぎた。誰もが痺れを切らす中、

 

「ようやく来たか」

 

 ルフトの傍らで腕を組み、俯き黙っていたシヴァが天を仰ぐ。一同がつられて視線を頭上へ向けると、幾重もの隔壁の開閉音が聞こえてきた。機動兵器搬入用のエアロックだ。

 程なくしてハンガーの天井が左右に割れ、

 

『!』

 

 レスターとエンジェル隊が目を見張り、シヴァが安堵の息を漏らした。

 舞い降りたのは白銀の天使だ。何十トンという重量を感じさせない静かで柔らかな着地は、それが兵器であることを一瞬忘れさせるほど。

 片膝をついて膠着姿勢を取った天使の腹部装甲が展開し、まだ数メートルはある高さを彼は事も無く飛び降りてきた。

 

「……………」

 

 その場にいた誰もが息を呑んだ。

 その場にいた誰もが、この奇跡に驚愕し、込み上げる感情を抑えきれずにいる。

 彼の両腕が抱くのは、一人の少女。もはや永遠に失われたはずの命……

 

「ただいま、みんな」

 

 

銀河天使大戦 The Another

〜破壊と絶望の調停者〜

 

第三章

第四節 正義の代償

 

 

「タクトさ〜ん!」

「タクトっ!」

「タクトさんっ!」

「タクト、こいつっ!」

「タクトさん!」

 

 エンジェル隊の皆が、感動を抑えきれずに駆け出した。待ちわびたリーダーの帰還に沸きあがる。そして、

 

「遅いぞっ!」

「はぶっ!?」

 

 エンジェル隊の誰より速く渾身の右アッパーをタクトの顎へ容赦なく叩き込むレスター。つい先刻まで重傷で歩くのもやっとだった男とは思えない動きだ。

 

「いきなり酷いじゃないか、レスター。ヴァニラも驚いてるだろ?」

「むむ……? 幽霊か?」

「幽霊じゃ、ありません」

 

 タクトの腕の中でしっかり否定するヴァニラ。髪や瞳の色が金色に変化してしまっていたが、その姿も仕草も声も紛れも無くヴァニラ・H本人だ。

 と、同時に駆け寄ろうとしていたエンジェル隊の動きがぴたりと止まった。何やら黙考すること数秒、

 

「どけタクトッ!」

「わブッ!?」

 

 フォルテに突き飛ばされて床をごろごろと転がるタクト。彼から放り出されたヴァニラをランファがしっかりキャッチして、すかさず残ったメンバーが彼女を取り囲む。

 

「ヴァニラ〜、よかったよ〜」

「このぉっ! 心配かけさせて、ホントに……」

「でもよかったですわ、こうして私達のところへ帰ってきてくれましたもの」

「ヴァニラ先輩、よかった……本当に……」

「あたしゃ、もう、もう……」

『ご主人様、ハンカチを』

「ありがと、アウトロー。ぢぃぃぃぃぃぃんっ」

 

 ついでとばかりにエンジェル隊にそれぞれハンカチを配り出すアウトロー。ここまでくると、彼の執事っぷりも板についているとしか言いようが無い。

 

「えーと……俺は?」

「あきらめろ、英雄」

 

 ぽむ、とシヴァに肩を叩かれてタクトはがっくりとうなだれた。タクトとしては自分とヴァニラ揃って皆にワイワイ囲まれて……というのを想像していたらしいのだが。

 

「ほっほっほ……現実とは上手くできとるのぉ」

 

 まったくもって仰るとおりです、ルフト先生。

 そして、完全に話から置いていかれた男がまた一人……

 

「そろそろ本題に移りたいのだが……?」

『………………』

 

 アウトローの献身ぶりに(悔し)涙を流しながら北斗が苦言を呈すると、全員が物凄く白けた眼差しを彼に向けた。あのアウトローさえもだ。

 

『はあぁぁぁぁあぁっ』

 

 空気を読め、と言わんばかりに全員が溜息をついた。なぜかアウトローも。さらに揃って首を横に振って『やれやれ』ジェスチャーをする。もちろん、アウトローも一緒に。

 

「……………」

『……………』

 

 もう一度、白けた視線。それでようやく皆は何事も無かったかのように、やれ「そういえばこの機体はどうしたんですか〜?」とか、やれ「やっぱり幽霊なんじゃないの?」とか、やれ「タクトとはどこまでいっておるのだ」とか。北斗の提案どおり本題に戻っていった。

 

 

 

 

「で、どこから話せばよいか?」

 

 場所をいつものティーラウンジに改めて、シヴァが話を仕切りなおす。彼女を中心にタクトとレスター、そしてエンジェル隊たちが円卓を囲む中、最初に口を開いたのは北斗だった。

 

「まずは現状の確認をお願い申し上げます」

「うむ……とはいえ、私も報告が来ているわけではないからな」

 

 言ってシヴァはアルモに視線を向けた。本調子ではないレスターに代わって処務に当たっていた彼女ならば、ということだろう。

 アルモも頷き、ハンディツールを片手に取った。

 

「今から五時間十二分前……原因不明のシステムトラブルにより行動不能に陥った総司令部直属の主力艦隊が武装解除、及び投降した事により戦闘の完全停止を確認しました。同時にオペレーション・リカバームーンは成功したといえます。

 戦闘終了から一時間後にはシヴァ女皇陛下を中核にした臨時司令部を白き月に設置、皇国宇宙軍総司令部の機能は全てこちらに引き継がれました。

 臨時司令部は現在までにエルシオール及びRCSとの交戦で損耗した各方面艦隊の再編成および再配備を続行中。本星圏の防衛機構は64%まで復旧しています。あと24時間以内には最低レベルの80%を確保できるとのことです」

 

 あれほどの激戦であったにも拘らず、ここまで迅速に機能が復旧しているのには訳がある。友軍艦の大半は独自の判断でエルシオールとの交戦を避け、損耗を最小限に抑えていた。彼らの優れた状況判断能力によって今の防衛ラインは支えられているのだ。そして多くの艦艇が臨時司令部の指示に従って艦隊を再編し、それぞれのポジションに就いている。

 

「なおRCS二機は、戦闘終了から十分以内に白き月の観測圏外へ離脱した模様。臨時司令部は追跡部隊を派遣しましたが、行方は掴めていません。エルドゥル家配下の親衛艦隊も同じタイミングで駐留していた衛星港を発進、以後は完全に姿を消しています」

「まだ諦めていないようだな……往生際の悪い」

 

 シヴァの嘆息にエンジェル隊が首をかしげる。彼女達はまだこの辺りの裏事情を知らされていなかった。

 

「先の戦闘で死亡したエルドゥル家当主、ティティガが皇国宇宙軍の総司令官であることは知っておろう」

「え? 初耳です。その人が総司令だったんですか?」

「ちょ、ミルフィー……っ!」

 

 素直に即答するミルフィーユをランファが横から小突いた。話の腰を折るな、と言う意味だろう。

 だがシヴァは特に気分を害した様子も無く、話を続けた。

 

「こやつは以前から皇国の支配権を己の物とすべく謀を巡らせておってな。三ヶ月前、お前たちに下ったリフレジェント・クリスタル捜索任務はその一端だ。

 奴……と言うよりもエルドゥル家はリフレジェント・クリスタルがもたらす膨大な量のロスト・テクノロジーと、無限大のエネルギーを手にし、皇国に君臨するつもりだったらしい。詳しいことを聞き出す前に黒幕のティティガ本人が殺された故私の推測も混ざっているが、恐らく間違いないであろう」

「殺された? いったい誰にですの?」

「………アヴァンだ」

『!?』

「我々をハンガーに追い詰めたティティガの前に、奴は現れたのだ」

 

 そして、不可思議な力を用いてティティガとその軍勢を一蹴した。その時の光景は、まさに圧倒的としか言いようがない。光が瞬いたと思った刹那、何もかも破壊し尽くされ、全ての敵が彼にひれ伏していた。

 

「そうなると、アヴァンとリフレジェント・クリスタルの情報が欲しいところだね。今まで聞いた限りだと、何やら密接な関係があるみたいだけどねぇ」

「そうだな」

『マスター……』

 

 ぼやくフォルテを肯定し、北斗は意を決したように閉じていた瞳を開く。アウトローが心配そうに見つめるのを、北斗は片手で制した。

 

「俺があいつらと何がしか繋がりがあることを、この中の何人かはすでに勘付いていると思う。そしてその直感は正しい」

「北斗、さん……」

「だがこれだけは宣言しておく。俺は間違いなく君達の協力者であり、仲間だ。君達が俺を信じる限り、俺は君達を裏切らない。そして協力も惜しまないつもりだ」

 

 高々と告げ、北斗は円卓を見回す。異を唱えるものがいないことを認め、彼は語り始めた。

 

「まず俺とアヴァニスト・V・ルーセント――――――いや、アヴァン・ルース との関係から話そうか。俺と奴は共に、君達で言うところの旧世界の出身だ。当時の奴とは敵同士だったがな」

「え? ええっ!?」

 

 北斗もまた、遥か古代より時を越えてきた人間だったのだ。ローテクのようなハイテク――――ある意味ロスト・テクノロジーの塊だったアウトローのことを考えれば、納得もいく。

 

「ヴァル・ファスクの襲来以前から内紛は続いていたからな。もっともクロノ・クエイクによって、そういったしがらみを気にしている場合ではなくなった。生き残るためには全ての人間の協力が不可欠だった。奴とはそこで初めて協力関係を結んだ。

 それから俺はアウトローと共にコールドスリープに入り、白き月の調査隊によって目覚めたのが今から四年前。後は知っての通りだ」

 

 エオニアの反乱前からルフト大臣の直属諜報員として活動し、反乱終結後はアポリオンとしてクーデターの阻止などに奔走していた。それ以後はランファとたまに顔を合わせていた。

 

「エオニアが事を起こす前からアヴァンとはすでに再会していた。辺境で小さな修理屋を営んでいた奴から、この世界の様々な情勢を聞いた俺はルフト大臣――――もとい将軍に紹介され、諜報員として活動を開始した。これでもシヴァ陛下の脱出には一枚噛んでいたんだぞ?」

 

 それはちょっと意外な事実だ。しかし徐々に本題から離れ始めていることに気付いたのか、北斗は軽く咳払いをして誤魔化した。

 

「エオニアの反乱終結後、俺は行方をくらましたアヴァンを追っていた。もっとも惑星アトムのクーデターに奴が介入していた情報を掴み、現地に到着した時にはすでに核が使われた後だったが……

 それから程なくしてヴァル・ファスクの再来。そして同時にアヴァンがエルシオールに合流した時点で、俺は奴からある依頼を受けた」

「それが、あたしたちに合流することですか?」

 

 ランファが問いかけると、北斗は難しい顔をした。

 

「正確には違う。本来の俺のポジションはいわば今のアヴァンだからだ」

「つまり……本来なら、北斗少佐が裏切るはずだった?」

「ああ。それもティティガの協力者、という形でな」

 

 なるほど、アウトローが心配するわけだ。結局のところ、この闇舞北斗もアヴァンと同じスタンスの人間だったのだ。

 

「だが実際に合流してみればすでにアヴァンが離反した後で、話があべこべになってしまっていたからな。流れとしては俺がエルシオールに残るのが筋だろうし、真偽を問おうにも奴がいないのではどうしようもない。君達が俺を信じられないと言うのなら、俺は黙ってこの艦を降りるだけだ」

 

 信じるのか、信じないのか。

 余りに唐突過ぎる真実の暴露に、立ち込める重苦しい空気に、その場にいた誰しもが思考を硬直させていた。しかし、

 

「少佐。皇国防衛特務戦隊、戦隊長として命じる」

 

 タクトだけが揚々と、流れるように、けれど厳格な口調で告げる。自ずと北斗の顔も一段と引き締まった。

 

「先の宣言どおり、その技能を遺憾なく発揮し、持てる全てを尽くして我々の信頼に応えてくれ。それでいいね、みんな?」

「は〜い!」

「あ、あったり前でしょ! あたしは最初から信じてるわよ!」

「タクトさんには敵いませんわ」

「あたしゃ、アウトローがいれば別に、ねえ」

「さすが、です」

「大佐………」

 

 意見がまとまったところで、タクトは改めて北斗に話の続きを促す。そしてここからが、自分達が必要としている部分なのだと、皆が感じ取っていた。

 

「アヴァンとリフレジェント・クリスタルの関係だな。ただこれから話すのは、あくまでアヴァン本人が主張する理論と諸々の文献を照らし合わせた推論だということだけは、断っておくぞ」

 

 どうやらアヴァンとより深い接点を持つ北斗でも、やはり推論と言うレベルの情報しか持ち得ていないらしい。だがそれでもより真実に近いことに間違いはない。

 

「超古代に存在したとされる、様々な『力』を体現したシステムは知っているか? 例えば呪われし神子達の遺産、人類の守護者たる鋼の魔神、持ち主の願いに呼応して奇跡を引き起こす魔法杖、振るえば必勝と謳われる聖剣、神酒と呼ばれる不死の妙薬、神との誓約を納めた聖櫃、聖者の血を受けた杯、万物の根源たる大釜……挙げればきりが無いが、いずれもが人間の理解の範疇を超えた現象を引き起こすキーアイテムだ」

 

 そしてそのいずれもが、この世界には存在するはずのない代物である。だからこそ伝承として人々の間で語り継がれ、崇められ、求められるのだ。

 

「リフレジェント・クリスタルは、いわばこれらの起源に位置する存在だと俺は考えている」

「『なんでもあり』ということか?」

 

 レスターの疑念に北斗が頷く。

 しかしそうだとすれば、ティティガが必死だったことも納得がいく。こんなデタラメな代物を手にすれば、銀河の一つぐらい支配できるというものだ。

 

「確かに不可能なことなど何も無いだろう。だが俺の知る限り、デメリットもまた存在する。一つは、クリスタルの力を引き出す際に膨大な負荷が使用者にかかること。人間と言う小さな蛇口から何万トンもの水を流すようなものだ、当然だろう」

 

 自分の思うまま、好き勝手に力を発揮できるわけではないらしい。最悪、真正面から戦わなければならない自分達にとっては、せめてもの救いだ。

 

「それからもう一つ、これが重要なのだが……以前、奴がこの艦を庇って機体ごと行方不明になったな?」

「エオニアのときのことですね?」

「そうだ、ランファ。常人なら間違いなく即死というあの状況から、アヴァンはどうやって生還したと思う?」

「そりゃあ、やっぱり……リフレジェント・クリスタルが治したんですか?」

 

 謳い文句どおりなら、あれ程の窮地も難なく乗り越えられるはずだ。どれほどの傷を負ってもたちまち癒され、絶大な力にその身を護られているというのなら……その男は不死であり、無類無敵の超存在に違いない。

 

「だが奴はリフレジェント・クリスタルの恩恵によって生き長らえたわけではない」

「どういう、ことですか?」

「奴はな、ヴァニラ。クリスタルによって無理やり生かされているんだ。あらゆる自然の、世界の理に反して、な」

 

 それは死にたくても死ねないということ。人としての終わりが絶対に来ないのだ。果たして百年程度で肉体同様に磨耗し尽くす人間の精神が、何百年、何千年という時間の経過に耐えられるだろうか。

 生きているうちに幾度と無く直面する過ちや悲劇に、何万回耐えられるだろうか。自分が何事も無く生き続けるのに対し、周囲の友人や家族、恋人が老い朽ち果てて逝く現実に、正気でいられるだろうか。

 つまりはそういうこと。クリスタルを一度でも自分のものとすれば、あらゆる世界から外れた存在になってしまう。それは何より孤独で、人では到底生きていけない己一人だけの世界なのだ。

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 何かに気付いたようにタクトが叫んだ。額に脂汗を流し、鬼気迫る表情でもう一度情報を反芻する。

 

「アヴァンは死にたくても死ねないんだよな? クリスタルの所為で」

「そうだ」

「ということは、アヴァンはクリスタルのメリットもデメリットも受けている……もうリフレジェント・クリスタルを持っているって事じゃないか!」

「正確には、少し違う」

 

 北斗は苦々しく否定した。まるで心底憎悪する悪魔の名を呼ぶかのように、

 

「奴こそが、リフレジェント・クリスタルそのもの。数あるそれらの中における究極の一……リフレジェント・クリスタル・オリジナルなんだ」

「クリスタル、そのもの……」

「究極の一って……」

「オリジナルなんですの!?」

 

 もはや二の句も継げなかった。超常的な力を持つクリスタルの頂点に立つ存在などと……悪い冗談にしか聞こえない。

 

「もっともこの世界に散在しているクリスタルは、オリジナルを真似て人間が作った出来損ないのダミークリスタルに過ぎん。機能も情報回路と反応炉しか持たず、良くてせいぜいクロノ・ストリングス程度の出力しか出せない」

「ダミー? でもアヴァンさんはレプリカ・ジェネレーターとかって言ってましたよ?」

 

 ミルフィーユが疑問を投げかける。確かにアヴァンは最大出力でコスモを戦わせた時、機体のジェネレーターを『リフレジェント・クリスタル・レプリカ』と呼んでいた。

 

「レプリカはオリジナルが生成したクリスタルのことだ。単純な出力は遠く及ばないが、それでも持っている機能自体はオリジナルとさして変わらないという。奴が以前言っていたレプリカ・ジェネレーターは、クリスタルを初めて兵器転用した例だと言っていたが……」

「それがまさか、RCS……!?」

 

 さすがにここまでくると、情報がごちゃ混ぜだ。堪りかねたフォルテがテーブルをバシン、と叩いて解説を中断させた。

 

「一度整理するよ。この世界にはリフレジェント・クリスタルが三種類あって、オリジナルとレプリカ、ダミーだ。んでアヴァンはその頂点に位置するオリジナルなんだね?」

「うむ」

 

 ともかくアヴァン自身が、ティティガたちが追い求めていたリフレジェント・クリスタルだったというわけだ。とはいえその目的までは明確にはならなかった。

 

「やはり奴の狙いまでは分からないか……」

「せめて行き先だけでも、見当がつけばね」

 

 苦々しげにつぶやくレスターとタクトに、今度はシヴァが重い口を開いた。

 

「行き先ならば分かるぞ」

「へ、陛下?」

 

 零番ハンガーでの戦闘が終わった後、立ち去ろうと踵を返したアヴァンは一言だけ告げたのだ。シヴァの引き止める言葉を遮って、ただその名だけを口にした。

 

「『アビスフィア』。奴はそう言っていた」

「確か、テラス4が在った惑星だな」

 

 レスターの表情が曇る。父の眠る星の名は、彼にとってある種のトラウマになっていた。

 

「すまぬ、クールダラス……」

 

 シヴァが頭を下げる。

 そして父を殺したのは、紛れも無くアヴァンの謀略である。レスターにとってアヴァンは、何よりもまず肉親の敵だった。

 しかし何故アビスフィアなのか。あの惑星は確かに因縁深い場所だ。ギャラクシーの最終運用試験、皇国初のクリスタル発掘現場……だがそれ以上の要素があの惑星にはあるのではないだろうか。

 

 

 

 

「やはりというか、相変わらず無茶苦茶な話ですね……」

 

 アヴァンの正体について一通り『張本人』から語り聞かされ、アンスは深い溜息をついた。特に驚いた様子も無ければ悲しんでいるわけでもなく、はっきり言えば呆れ果てている、だろう。

 

「そういう薄いリアクションは傷つくなぁ」

「だいたい、今更『俺は人間じゃない』なんて言われても……ああやっぱりそうか、ぐらいにしかなりませんよ。非常識で見栄っ張りで自己中心的で、何を考えているかまったく分からない奴だから」

「お、おい……」

「誰も嫌いとは言ってないでしょ?」

「ぅぅ」

 

 ふふふ、と柔らかな笑みを浮かべるアンスに、照れ隠しなのかアヴァンはつい、とそっぽを向いた。

 二人を照らすのは無数のディスプレイから漏れる光だけ。時折明滅するそれらによって浮かび上がるシルエットは、どこか神秘的ですらあった。

 不意に、アンスが尋ねた。

 

「私達は、どこに行こうとしてるの?」

「アビスフィアだ」

「え……?」

「あそこには、俺が最初にリフレジェント・クリスタルを発見した遺跡があるんだよ。トランスバールが発掘したものとは別の奴だ」

 

 腰掛けたシートに体を沈ませ、黄金色の液体を湛えるグラスを傾けながらアヴァンは半ば独り言のように言った。

 ここはアヴァンたちの活動拠点となっている、高速宇宙艇のブリッジだ。本来ならば飲食禁止なのだが、艦長(威厳はまったく無い)であるアヴァンはまったく気にしていない。ユウとユキもお構い無しだ。

 ちなみにグラスの中身は『メロン酒』というアルコールである(実在します)。

 

「ぶぶぅっ!……そんなものが、あそこに!?」

 

 向かいのシートでウーロン茶を飲んでいたアンスが思い切り噴き出しながら驚きの声を上げる。噴き出されたお茶がコンソールを濡らしていたが、それを指摘するだろうユウたちは、ユキと揃ってシャワー中だった。

 

「気付きませんでした……データには無かったはずですが」

 

 ギャラクシーはもとより、アビスフィアは皇国軍のあらゆる試作兵器の演習場である。その地形は完璧に把握されており、テストの内容によって適切な演習エリアを選定することさえ可能なのだ。

 その未踏の領域が存在しないはずの惑星で、なお人の手の届かない場所があったとは……

 

「それで、遺跡には何があるんですか?」

「色々だ。俺がその頃に乗っていた機体や、クリスタルに関する断片的な情報とか……決着をつけるには絶好のロケーションだろう」

 

 決着、という言葉にアンスが眉をひそめる。

 

「………また、殺すんですか」

「いや―――どうだろうな。少なくともクリスタルを奪い取ろうなんて考えてる連中には消えてもらわなきゃならないけど」

 

 すでにこの高速宇宙艇はアビスフィア近域まで到達していた。だが今は小惑星帯に身を隠し、こうして談話に耽っているのには理由がある。

 

「展開している皇国軍ですか? あの、エルドゥルとか言う……」

「正確には親衛隊なんだけど……まあ、そうなる」

 

 ティティガがエルシオールと同時期に派遣していた調査艦隊だ。どこで情報を入手したかは分からないが、それとも皇国が最初にクリスタルを発見した惑星ということで目星をつけていたのかもしれない。

 

「ま、見つけたとしても遺跡には入れないからな。そう気にすることでもないさ」

「どういうことですか?」

「ちゃんと封印してあるんだよ。開けられるのは俺かアイツか……あとは今のヴァニラだけだろう」

「ヴァニラで思い出しました! あの新型にはヴァニラが乗っていたんですか!? そもそもユキから、生き返ったとか聞きましたけど!?」

 

 ああ、いつの間あの二人のことを呼び捨てに……彼女達の距離が縮まっていることに頷きつつも、アヴァンはにやりと笑みを浮かべた。まるで悪戯が成功して得意げな少年のような……

 

「ちょっと面白いおまじないを、ランファがしていたからなぁ。それにあやかったのさ」

 

 

 

 

「とまあ、前置きはこれぐらいにしてだ」

「前置きだったのか……」

 

 唸るレスターはさておいて、北斗はその視線をヴァニラに向けた。

 本来ならばもはや黄泉路へ旅立ったはずの少女である。どんな屁理屈を押し通したとしても、死者を蘇らせることなどロスト・テクノロジーでも無理なはずだ。

 そしてこの疑念は、誰もが皆抱いているはず……

 

「俺の話はあくまで客観的観測によるものだ。だから、ここから先は主観的観測に切り替えさせてもらう」

「え……?」

 

 エンジェル隊、そしてタクトやレスターさえも顔をしかめた。そしてヴァニラだけが、少しだけ表情を曇らせている。

 

「ヴァニラ……?」

「お話します。私がどうして、再びここへ戻って来られたのか」

 

 

 言ってしまえばお膳立ては整っていたのだ。

 時間と空間を超越して、人間の魂―――――人格情報を転送する物質(マテリアル)

 転送された情報を観測・保存し得る、人智の及ばぬ受容器(レセプター)

 保存された情報から人格を再構成し、『ヒト』としての機能を与える機構(システム)

 この偶然の一言では説明できない三要素が連動して機能したことにより、ヴァニラ・Hという『ヒト』は、その在り様を変えてしまいながらもついに生き長らえた。

 

「その三要素を担ったのが、ランファさんからの御守りであり……EMX01GAです」

GAが?」

「はい。あれの動力にはリフレジェント・クリスタル・レプリカが使われていますから」

「クリスタルを積んでいるのか!?」

 

 そう。ギャラクシーエンジェルの動力はリフレジェント・クリスタル・レプリカを組み込んだ改良型クロノ・ツインエンジンを搭載している。白き月の最深部で極秘裏に建造されていた理由はこれだったのだ。

 

「そして、使われているクリスタルこそが……今の私の、本体です」

「ああ、そういう……ことか」

 

 クリスタルの持つ、情報保存能力と演算処理能力。

 彼女が今ここにいる最大の理由……それは皮肉にも、リフレジェント・クリスタルの恩恵によるものだった。

 

「私と言う人格を籠められたクリスタルを持つGAは、ただの兵器ではなくなりました。もっと大切な意義を持ちました。大切なヒトを永遠に護り続ける、という強い遺志です」

 

 遺志、という言葉に間違いはない。

 今の彼女は死人である。人としての器を失い、それを別の物で補っているだけの亡者と言っても間違いではない。彼女の死は周囲の世界に認識され、受容された事実。それはどうあっても覆らない。

 だから彼女は死人。奇跡の残滓を纏い、死してなお歩み続ける『ヒト』ならざる何か。

 

 『ヒト』は一生に一度しか死ぬことが出来ない、とされている。正確に言えば、死んだヒトがもう一度死ぬ、という事象を観測した人間は今のところいない。臨死体験というケースもあるが、あれは完全に『死んだ』わけではなく『死に掛けた』にすぎない。だからその後、体験者が死んでも、結局死んだ回数は一回だ。

 今の彼女のように、『死んだ』後に生者の前に姿を現すことは、人間ではまずありえない。それはもう、亡霊(ゴースト)亡者(リビングデッド)の領域の話なのだ。

 既に亡き命……

 如何にヒトの温もりを取り戻そうとも、決して消し去れぬ傷跡。

 

「ごめんなさい、タクトさん……私はもう、人じゃ……」

「ヴァニラ、いいんだ」

 

 泣きじゃくる少女を、タクトは優しく、そして強く抱きしめた。

 

「人でなくても、ここにはヴァニラの心がある。だから、いいんだ」

 

 あやすように、ヴァニラの髪を梳く。頬を撫でて涙を拭う。

 大切なのは心。人として在り続ける、という確かな意思なのだと、タクトは思う。夢で聞いたあの声も、今や宿敵に成り果てたあの男もそう言っていた。

 

「一つ、確認なのだが」

 

 北斗が口を挟む。彼にしても、一つだけ確かめなければならないことがあった。

 

「君はリフレジェント・クリスタルと同化したわけなんだが、クリスタルについて何か新しいことを知っているか?」

 

 クリスタルに取り込まれた彼女ならば、北斗も知りえぬ情報を持っているかもしれなかった。だがヴァニラは申し訳なさそうに首を横に振った。

 

「そうか……」

「すみません」

 

 これでなおのこと、真実をアヴァン本人から聞き出さなければならなくなった。クリスタルのことも含めて……

 

 

 

 

―――――惑星アトム・衛星港『クォンタム』

 

 砂塵舞う荒野の惑星に浮かぶ、円筒状の巨大建造物。

 アトムの中でも最大規模を誇る民間用宇宙港であるここは、かつての内乱の際も現地住民達の反抗拠点として重大な役割を担っていた。余り知られていないが、軍事拠点としての機能は今も生きていたりする。

 その秘密区画で、皇国宇宙軍零番艦隊司令官・烏丸提督はある要人との会談に臨んでいた。用意された応接間は即席のものであったが、趣のある調度品とそれを扱う人間のたたずまいによって、そうであることを感じさせない。

 

「しかし、よろしいのですかな?」

 

 事前に知らされていた相手の要求を改めて吟味し、烏丸提督は渋面を作った。

 

「我々を収容し、補給、さらには発掘兵器の供与まで……皇国軍に知られれば、ただ事ではありますまい」

「お心遣い感謝します……ですが、それは貴殿の案ずることではありません。各々に為すべきことを為すだけです。今日を生きるために」

 

 確かにその通りだ、と烏丸提督も無言で頷く。しかし驚くべきは、そう述べて彼に微笑みかける年端も行かぬ少女が、この一国家のトップであるという事実だろう。

 彼女、神代首相は女皇陛下直々の勅令によって現在に地位に任ぜられたと聞く。任命当初はあれこれと不安の声も多かったが(アトム国内はその真逆であった)、今では皇国政界に無くてはならない人材となっていた。特に外交関係での活躍は目覚しく、現地住民の良き理解者として多くの支持を得ていることは、辺境暮らしの長い烏丸提督の耳に届くほど有名だ。しかも就任から数ヶ月でこれほどの評価を得るなど、並大抵ではない。

 また重要人物であるが故、命を狙われることも少なくないそうな。一度、TVの生中継撮影中に襲撃を受けたことがあったが、たった二人のボディガードによって犯人グループは一人残らずお縄についたという。

 そんな彼女だからこそ、ここまで強引な手法を用いたことが腑に落ちない。この点について尋ねると、表情が一瞬険しくなった。

 

「もはや時間が無いのです。あの日……亡き父がアヴァン・ルースと共に一斉蜂起を起こすとしていた『調停の刻』まで、一ヶ月も無い」

 

 彼女の実父であるブレーブ・クロックスが、アヴァンから物資や情報の提供を受けていたことは提督も聞き及んでいた。だが、まさか、皇国を相手取ったクーデターまで計画していたとは……

 

「彼が皇国軍より離反したことは存じ上げております。皇国に弓引く立場ならば過去の計画を利用することも厭わぬ筈。それだけは、なんともしても阻止しなければ」

 

 封印されていた亡き父の最後の呪縛が、もし彼によって解き放たれればどうなるか。最悪の事態を招いた諸々の原因……それを育てる温床となったのは紛れも無く惑星アトムとされても否定は出来ない。

そうなれば彼女がこれまで築き上げてきた全てが、

 ここに来るまでに犠牲になった命の全てが、

 

「何もかもが無駄になってしまう……」

 

 俯く神代首相の肩を、提督がそっと叩いた。

 

「ご安心ください。我等も微力を尽くして事に当たりますゆえ、ともに彼奴めの悪行を食い止めましょうぞ」

「提督……ありがとうございます」

 

 

 

 

―――――白き月を出港して一週間が過ぎた。

 

 唯一の手がかりである『アビスフィア』を目指しエルシオールは漆黒の海原を行く。その道中で対アヴァンの想定され得るあらゆる状況について幾度も会議がもたれた。

 特に彼の尋常ならざる戦闘能力はタクトたちを悩ませた。エルシオールで最強クラスであるフォルテとランファを圧倒するアヴァンに、如何に対抗するか。とりあえず『総員による包囲殲滅』という形に収まったが、具体的な対抗策は見出せていない。

 今日のミーティングを終え、解散した一行の中で北斗はすぐさま宛がわれていた自室に取って返し、一抱えもあるジェラルミンケースを持って艦首格納庫へと向かった。途中で冷酒を一瓶買うことも忘れない。

 格納庫に着くや否やその片隅に陣取り、広げたビニールシートに上で様々な部品を並べていく。スプリング、バレルはもとよりグリップカバー、マガジンなどなど……それらを一つ一つ手にとって状態を確かめ始めた。

 しばらくメンテナンスを怠けていたことを不謹慎にも会議中に思い出し、こうして銃を分解してみるとあちこちに汚れがたまっていた。スライドの金属疲労もずいぶん蓄積している。

 カチャ、カチャ……ゴトリ……

 

「北斗さ〜ん、何やってるんですか〜?」

「見ての通り、銃の手入れだが」

 

 駆け寄ってきたランファからチェックの終わったパーツを遠ざけつつ答える。しかしその素っ気無い仕草がこの後、壮絶な悲劇を生むなど誰も予想だにしなかった……

 

「レーザー銃とか使わないんですか?」

「性に合わんのでな。他にも理由は色々あるが……こいつは頼りになる銃だ」

 

 言いながら北斗は組み上げた拳銃――――ブローニング・ハイパワーを念入りに最終点検を行なっていく。

 

「そういうところはフォルテさんとそっくりですね」

「確か彼女もスターブルガー・オールドアーミーを使っていたか。それも含めて一度話をしなければならないな」

「え?」

「俺のアウトローを誑かしおって……よもやプロポーズまで……ぬぅ、在りうる」

「いや、ナイナイ」

 

 どんな想像をしているのか、北斗のこめかみに青筋が走る。ランファの突っ込みもあまり効果が無いようだ。

 

「ちょうどいい機会だ……今から行って真相を確かめてやろう」

「ほ、北斗さん?」

「フォッフォッフォッフォッフォッフォッ……」

 

 不気味な笑いがやけにはっきりと響き渡る。

 即座に組み上げたブローニングに実弾を装填し、予備のマガジンを咥えて北斗は格納庫を飛び出した。プロの戦闘者の動きに圧倒されながらも慌ててランファも後を追うが、

 

ガガガガン! チュイン、チュイン! ドムドムドム!

 

 いきなり聞こえてきた銃撃音に足を止める。というか、フォルテと格納庫の出口で鉢合わせたらしい。ついでに耳をつんざく罵声まで聞こえる始末。

 

「さあフォルテ! 今日こそ俺の相棒を返してもらおうか!」

「やなこった! この騒ぎが終わったら、あたしらは辺境のリゾート惑星へハネムーンに行くんだよ!」

「認めん! 断じて認めん! アヴァンの前にお前を蜂の巣にしてアウトローを奪還させてもらうぞ!」

「その前にアンタを『ロ○コン』の『シス○ン』の変質者だって周囲にばらしてやるよ! この写真を見な!」

 

 激しい銃撃戦の最中にフォルテが取り出した一枚の写真。それは北斗がどこかの町の酒場で年端も行かぬ少女とワインを飲み交わしているシーンが納められていた。

 誠に持って、いかがわしい。

 

「北斗さん、そんな……」

「ラ、ランファ!?」

 

 北斗が振り返れば、そこにはおよよと泣き崩れたランファの姿があった。

 

「私のことは遊びだったんですね? ひどいです、この間はあんなに激しく……(以下自主規制)」

「てめぇ……ランファにまで手を出してやがったのか……」

「ちょ……ま……落ちつ……」

『許さん!』『ひどいですぅぅぅぅぅっ!』

 

 フォルテがどこからとも無く取り出したRPG7対戦車ロケットが北斗の顔面に炸裂した。轟く爆音、飛び散る炎に弾き飛ばされた彼の体をランファの寸掌が捉え、天井へと叩きつける。

 

 ドグシャアァァァァァァッ!

 

 崩落する天井と共に床へ落ちた北斗の背中を二人が『げしげし』と踏みつける。その光景のなんとシュールなことか……物陰から見守っていたアウトローは流れるはずの無い涙を流したとか……

 

 

 

 

 紋章機用の格納庫の片隅で、白き月から運び込まれた巨大なコンテナの一つが開け放たれようとしていた。納められていたのは雄々しい飾り角を頂くロボットの頭部だ。ただギャラクシーやヘクトールのように人間の顔を象った作りではなく、ザ○やグ○のような一つ目――――モノアイ・タイプ。しかも塗装は深い蒼。

 いまや忌むべき、あの男のパーソナル・カラーだ。

 

『はい、確認しました。データ通りですね』

 

 だが受取人であるアウトローは満足気に頷いていた。

 実はこの荷物、白き月の中でいつの間にやら結成されたアウトロー・ファンクラブ『無法者の東の果て』(メンバーの全てが白き月のスタッフで、会長は月の聖母という噂)からの贈呈品。

 はっきり言って、ロスト・テクノロジーの横流しは重犯罪であり、まったくもって無法者もいいところだ。しかしそのすべてを愛の一言で承認する管理人(黒)が一番恐ろしい。

 

『じゃあ、後は………』

「コックピットの内装と操縦系の改造ね?」

『手伝います』

 

 決戦までに、これを仕上げなければ。

 かつて公国最強の量産機と謳われた、この機体を……

 

 

 

 

 一方そのころ、タクトは艦首ハンガーでGAのレクチャーを受けていた。ぶっつけ本番で動かしたは良いものの、実装されている各種機能を把握しないままアヴァンとの決戦に臨むことは無謀でしかない。

 というわけで、彼の前で教鞭を取るヴァニラ(何故か白衣姿)のレクチャーはすでに一時間を越えていた。

 

「――――以上が、GAに搭載されている機能の概要です。まとめると推進系のGSS(グラビティ・スタピライズド・スラスター)、防御系のエネルギー粒子流体膜生成制御装置。そして背部推進ユニットを中心に構成されるエネルギー粒子翼『エンジェル・ダース・ウイングズ』と、GAの全機能を統括し、さらに各種サポートを行なう改良型HSTLです」

「とりあえず質問が」

「はい」

HSTLは大丈夫なのか?」

 

 前のギャラクシーが装備していたHSTLは、アヴァンとアンスによってパイロットの脳と精神に致命的なダメージを与える可能性が指摘されていた。その問題点が解決したという報告を、まだタクトは受けていない。

 

「大丈夫、です。システム自体の改良で用途外の情報をほぼシャットアウトできるようになっています。それに私とタクトさんの二人でHSTLの情報を共有しますから、今までのマルチタスクによる負担は軽減できます」

「要するに今まであった無駄を省いたわけか……」

「はい。それにナノマシンを媒体にして他の兵器やコンピュータをハッキングしたりも出来ます」

「じゃあ、この間の戦闘で起きた大規模のシステムトラブルは……」

GA……いえ、私がやりました」

 

 まさかヴァニラと再会の喜びを分かち合っている間に、その彼女がこんな事をやってのけていたとは……夢にも思わなかった。よくよく考えてみると間抜けな話だ。

 このままだと恥ずかしい事この上ないので、無理矢理に話題を元に戻す。

 

「えーと、それで……エンジェル・ダース・ウイングズだっけ? それってどんなの?」

「『銀河天使』の名の通り、天使の翼です。通常時で六枚、最大出力で十二枚まで展開できる、強力なエネルギー翼です。もともとGAは、操縦系にH.A.L.Oを使っていますから、慣れれば自由に動かすこともできると思います」

「慣れる暇はさすがに無さそうだけどね。まあ、何とかなるか」

 

 タクトは余り気に留めていないようだが、H.A.L.Oシステムは男性に比べて女性の方が高い同調率を発揮する。そのため現在のエンジェル隊は適正試験に合格した女性のみで構成されている。

 紋章機の分析がほぼ完了した当時(現在から二年以上前だが)、H.A.L.Oも含めたロスト・テクノロジーの塊であったため、運用は白き月の管轄で行なわれる事が適切だとされた。そこで同時期に設立された白き月直属の『エンジェル隊』への配備が決定したのである。

 エンジェル隊は皇国軍の中でも皇王直下の近衛軍に属し、ロスト・テクノロジーの発見・探求・管理を担う『月の巫女』の一部隊である。そういう意味でも紋章機をエンジェル隊に預ける事はなるほど妙案であった。

 

 だがH.A.L.Oの分析・改良は白き月内部で続けられていた。男性が使用しても高い同調率を発揮できれば、操縦システムの新機軸として普及できるのではないか。しかし往々にして平和な時代の続く皇国で兵器としての研究を続けることは困難で、エオニアの反乱が皇国全土に広がる一ヶ月前には半ば凍結状態にあったという。

 戦後、その研究をG Planが引き継ぎ完成させたのが、GAに搭載されている『H.A.L.OU』である。操縦者と機体の同調率を限界まで引き上げ、それは簡単な動作であれば操縦者の思考のみで稼動するレベルにまで到達したらしい。

 

「―――――レクチャーは以上です。質問は、ありますか?」

「いや、いいよ。もうお昼だし、ご飯を食べてから操縦訓練をしよう」

 

 どうやら今ヴァニラがトツトツと語っていたH.A.L.Oに関する口述(だったのか!?)を、事も無げにスルーしたタクトは何食わぬ顔で立ち上がった。彼女としてはまったくもって不満なことである。

 

「じゃあ、早速食堂に―――――」

 

 普段と変わらない、屈託の無い笑顔が歪む。

 軽快な言葉が詰まる。

 顔の筋肉が引き攣った。

 全身の血液が逆流し、激痛があらゆる臓物を食い破るような感覚。

 

「ゴボッ!……ゴッ、ハッ……ブハッ!」

 

 気付けば片膝をついて辺り一面にビチャビチャと赤い液体を撒き散らしている。ヴァニラの声が遠い。そのまま崩れ落ちる体を何とか動かして受身を取りつつ、服が汚れたなぁ、とどこか他人事の様に実感が湧かなかった。

 

 

 

 

 突然の召集を受けたエンジェル隊は五分と経たずに医務室前に集合していた。タクトが倒れたと言われれば辺境からでもすっ飛んでくるような彼女達である。実際、パワーバイクで艦内を全力疾走してきた隊長さんはレスターにこっぴどく叱られていた。

 

「……で、どうなんだい? タクトは」

「俺にもわからん。ケーラ先生とヴァニラの診断待ちだな」

 

 これまでに二度ほどタクトは意識を失って倒れたことがあった。一度目はヴァル・ファスクの人造兵士としての因子が活性化した時。二度目はアヴァン離反の激闘後、HSTLの反動とヴァニラの死のショックに耐え切れずに。いずれも生命そのものの危機には至らなかった(と正確には言えない部分もある)のだが、今回のように吐血を伴うという肉体的損傷が無かったことは確かだ。

 不意に医務室のドアが開き、ケーラとヴァニラが出てきた。どちらの表情も曇っている。

 

「どうだった?」

 

 レスターの端的で、しかしもっとも的確な問いにケーラは首を横に振った。

 

「率直に言うわ。大佐の体は崩壊を始めている。あと持って一ヶ月……それも絶対安静にしての話よ。医者としてはEMのパイロットなんて到底させられないわ」

「体の崩壊、ですの? 具体的にはどんな?」

「そのままの意味よ。つまり肉体を構成する組織の結合そのものが壊れ始めている。分かりやすく言えば体がだんだん氷みたいに溶けていくようなものね」

「うそ、そんな……」

 

 ひどい、とミルフィーの言葉は続かない。あまりの事実に体がついていかないのだ。

 

「原因は一ヶ月前のあの戦闘の時、大佐が押してはいけないボタンを押したこと」

HSTLのリミッターですね」

 

 呟くちとせの目尻には涙さえ浮かんでいた。これ以上使えば命の保障は出来ない、と誰も知らないところでアヴァンとアンスは言っていた。知っているのは二人とタクト、そして自分だけ。

 

「アヴァンさんが言っていました。あれは人間の精神を蝕むものだと……そしてアンスさんも、タクトさんも知っていたはずです。使えば、命を削る諸刃の刃だと」

「な……なんで黙ってたんだい!」

 

 懺悔の様に喋り続けるちとせの胸倉をフォルテが怒りに任せて掴み上げる。

 

「どうしてそういう大切なことを! あたし達に黙ってたんだ!? 裏切り者の糞野郎への義理立てかい!?」

「違います……違うんです」

「何が違うって言うんだ!」

「言えば必ず、皆さんはタクトさんを止めます。そしてタクトさんはそれを望んでいない……」

「だとしても、軍人として報告する義務はあったはずだよ!」

 

 ちとせを責め立てるフォルテの腕をその華奢な指が掴み、ゆっくりと引き離して行く。先ほどとは違う、明らかな意思を伴って。

 

「フォルテ先輩は、何も分かっていない」

「!?」

「なぜタクトさんが、エルシオールを降りたのか。なぜギャラクシーのテストパイロットに志願したのか」

「上の命令じゃないのかい……!」

「だとしても、タクトさんを乗せるなら正式採用後でもよかったはず。危険なテストパイロットをさせる必要はありません」

「………」

「なるほど、分かりましたわ」

 

 全てを見抜いたのか、ミントが心なしか柔らかな笑みを浮かべていた。ちとせもフォルテも、周囲の皆も静かに彼女の言葉の続きを待つ。

 

「実用性の低い時代遅れの兵器を新戦力として導入するなんて、キチガイ染みた方針だと思ってましたが、そういうことだったのですわね」

「何が言いたいんだ?」

「艦隊支援用だとか、皇国のシンボルだとか、急ごしらえの量産計画だとか……すべて、たった一人の英雄さんの我侭から派生しただけですの」

 

 それはつまり、他ならぬ彼が――――――

 

「もう、いいだろう……?」

「タクトさん……寝ていなければ」

 

 ヴァニラの制止も振り切って、土気色の英雄は引き攣った笑顔を作った。それはまるで、自分の弱さを自嘲するかのような。

 医務室のドアの向こうから姿を見せたタクトは死人のようだった。痩せこけたわけでもなく、足取りが心もとないわけでもない。ただ、全身から今まであった生気や活力がすっかり失われてしまっていた。

 

「後ろで護られているだけで、助けられるかもしれない仲間が死んでいく様を見るだけの今に耐え切れなかった……それだけだよ。でもそんな臆病者の俺の我侭が、結局、皆を巻き込んでしまった」

 

 新兵器エンブレム・モジュール。

 七六四番二次戦力整備計画『G Plan』。

 試作一号機『ギャラクシー』。

 試作二号機『コスモ』。

 試作三号機『フィアネス』。

 量産一号機『ヘクトール』。

 今や皇国の新たな戦力の要となりつつあるこれらは、すべてたった一人の男の願望によって生み出されたものだった。

 自分も共に戦いたい。

 自分も共に護りたい。

 分をわきまえない身勝手な願いに突き動かされる形で計画は始まった。そしてプロジェクトを担当したアンスの優秀さが裏目に出る形で、計画はあるはずの無い具体性と将来性を獲得してしまう。

 開発は順調だった。頓挫していた各種研究を引き継ぐ形でプロジェクトは大型化の一途を辿り、ついに完成した試作機は実戦で驚くべき戦果を挙げ続けた。主力艦隊が手をこまねく反乱勢力を鎮圧し、襲来した侵略者を討ち取ったそれはもはや、彼の絵空事では済まなくなっていた。

 払った代償も大きかった。気付けば自分は半ば人間ではなくなっていたし、ここまで来る間に散った命も数知れない。それでもこのまま世界は良い方向へ向かうと信じて疑わなかった。

 自分の願った力が、護りたかった仲間が、最愛の命を奪うまでは。

 

「みんな、すまない………」

 

 もう一度掠れる声で謝ると、彼の体は糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。

 

 

 

 目を覚ませばそこは医務室ではなく自室のベッドだった。ゆっくり体を起こすと関節があちこち痛んだ。身動き一つでこれでは、艦内を動き回るのは相当難儀だろう。

 まあ、タクトとしても医務室ではなくここに寝かされている時点で大方悟っていた。もう自分は、手遅れなのだと。現に医務室の前で倒れてから今目を覚ますまで、丸三日経っている。およそ健康な体ではない。

 

「おはようございます、タクトさん」

「ヴァニラかい?」

「はい。……これから、どうしますか」

 

 これから、か。

 決まっている。アビスフィアまで行ってアヴァンの真意を確かめて、あいつをぶん殴って連れて帰る。それ以外に何があるだろうか。

 呟いてみて、タクトは意外と自分が迷っていないことに驚いた。死期が近いと人間は存外取り乱さないというが、なるほどこういうことらしい。

 

「今、エルシオールは停止しています。タクトさんの様子を、見るためです」

「そんなこと、やってる場合じゃないだろうに……ぐっ」

 

 立ち上がろうとして、走る激痛に苦悶の声を漏らす。それでも何とかドアの前まで歩いていくと、その体を少女がそっと支えた。いや、止めた。

 

「行くんですか?」

「ああ」

「どうしても、ですか?」

「どうしても、だよ」

 

 

「ふぅ……」

「お疲れですね、艦長?」

「いや、あいつほどじゃない」

 

 艦長席に腰掛けたままレスターは自嘲気味に笑う。

 タクトの容態次第では引き返さなければならない(話を聞いた限り、引き返したところで意味も無さそうだが)今、彼の思うところはやはり親友の心である。

 自分なりの信念を貫いてきたタクトを知っているだけに、このまま終わってしまうことを望んではいまい。しかし戻れば治療法の見つかる可能性もゼロではないだろう。

 やはり、如何にアヴァンといえど親友の命には代えられない。

 

「―――――戻るべきか」

「ですね……ケーラ先生からも帰還の催促が来てますし」

「よし。全セクションに通達、本艦はこれより百八十度回頭し――――」

 

 そこでレスターの指示を遮るように警報が鳴り響いた。艦内の気密漏れを報告するものだ。すぐさまオペレーターの一人が確認を取り報告する。

 

「艦首格納庫! 回路への直接入力です、リニアカタパルトの起動およびレール展開を確認!」

「またか!? 誰がやっている!」

GAです! GAが発進体勢に入っています!」

GA? タクトめ、あの馬鹿野郎が!」

 

 罵りながらGAとの通信回線を強引に開かせる。

 一方でレスターはやはりとこの事態を受け入れ、また安堵していた。あいつはこと器用に他人との距離を保ち、世渡りの上手い男だ。しかし自身のけじめのつけ方はとことん実直で、頑固一徹で融通がきかんのである。

 もっともそれを知ったのは、ここ最近のことだったが。

 

「行くのか、その体で」

『ああ。こんな体でも』

「そうかい………」

『そうだよ………』

 

 しばし沈黙。モニターに移った親友の顔は白くも生気に満ちていた。到底死に行く人間のものではなかった。ならば引き止めることなど誰が出来ようか。

 

「行け、勝手にしろ」

『行くさ、勝手にするとも』

 

 にやり、といつもの笑みを浮かべ、二人は互いに笑いあった。腐れ縁などと言ったところで、深いところで相手を慮り、理解しているのだ。

 

『皆を、頼むよ』

「ああ」

『俺の机に辞表があるから、陛下に渡してくれ』

「分かった。気をつけてな」

『ありがとう、レスター』

 

 親友は旅立った。

 黄金の燐光を吹き散らし、

 その眼差しは振り返ることなく、

 最後の戦場を目指して羽ばたいていった。

 

「……ふん。俺たちが――――」

 

 レスターは再び各セクションへ指示を出す。帰還ではない、真逆の行動だ。自分なりに全ての決着をつけるための第一歩だ。

 

「見逃すと思うなよ、バカタクトめ。機関始動、最大戦速!」

「了解! エルシオール発進します!」

 

 

 

 

 グランド・テキスト、照合開始……適合率20%以下。

 時空境界歪曲率さらに増大。危険域到達まで150.31時間。

 

 ―――――――――あと、一週間。

 

「アウ……」

「ユウか、どうした?」

「エルドゥル艦隊に増援が合流。ハーネットも四機、確認したよ」

 

 どうやら連中は黒き月からデータを抽出し、復元したらしい。あれを一基建造するのに人一人を殺さなければならないが、アヴァンとエルシオールを撃破し得る現存の兵器はこれぐらいだ。故にこの選択は間違いではない。しかしこれで彼らは確実に、最悪な形で敵をもう一人増やしてしまったのだ……

 ブリッジで情報収集を続けながら、アヴァンは口元を歪ませた。

 

「馬鹿共が。それで止められる俺ではないさ」

 

 ふん、と鼻を鳴らしてアヴァンはブリッジを出る。力をセーブしていた前回と違い、枷を外した今ならハーネットといえど別段注意するような相手ではない。

 故に注視すべきは間もなく現れるであろう銀河天使のみである。

 

「アヴァン?」

「状況が変わった。降下するぞ。コスモのコックピットで待機してくれ」

 

 通路の先で待っていたアンスにそれだけ告げて、自室のドアをくぐった。デスクの上に予め用意してあった二挺の拳銃を懐に納め、ハンガーへ急ぐ。

 もともとアヴァンはエルシオール(正確にはタクト)の到着を待って、その上で行動を起こす算段だった。しかし思ったよりも状況が進行したため、プランを繰り上げざるを得なくなった。

 『調停の刻』の発動である。

 

「どうだ?」

 

 ハンガーでコスモを含めた機体の最終チェックを行なっていたユキに声をかける。いつもなら「万全」の一言が返ってくるのだが、今回ばかりはそうでもなかった。

 

「左腕フレームが耐久限界。フル稼働で五分と持たない」

「自己修復は?」

「間に合わないよ。最低でもあと三日は必要だから」

「分かった。誤魔化しながら使うさ」

 

 心配そうに見上げるユキの頭をクシャクシャと引っ掻き回してやると、怒るわけでもなく「わうわう」と可愛く唸った。

 こういう少女らしい仕草に胸が締め付けられるのは、別に『ロリ○ン』だからという理由だけではない。

 

「行ってくる。留守を頼むぞ」

「了解。RCSは二機ともホットで待機させるから、何かあったら呼んで」

「おう」

 

 コスモのコックピットに滑り込むと、すでにアンスがパイロットスーツを纏って待っていた。副座もしっかり用意してある。

 

「これからどうするのよ? エルドゥルの残党相手に特攻でもするの?」

「まさか。いくら俺でもそんな無茶は、しないさ」

 

 アビスフィアの衛星軌道上に集結しているエルドゥル艦隊の数はかなりのものだ。戦艦だけですでに二十を超えており、巡洋艦や駆逐艦を含めれば百近い。無論、あの量産型EM・ヘクトールも多数配備されているだろう。

 そんな只中へアンスを連れて真正面から戦うなど、アヴァンといえども無謀なことらしい。

 

「じゃあ―――――」

「遺跡に降りる。奴らにばれないようにな」

「……分かりました。今が約束の時、ですね?」

「ああ。君に全ての真実を見せるよ」

 

 エルシオールを離反する日に、アヴァンが彼女に告げた約束の一つ。今まで隠し通してきた真実を……時の闇に埋もれし世界の姿を見せる。

 そして。

 

「だから、俺から離れるな」

「ええ」

 

 それがもう一つの約束。二度と離さず、彼女を護り続ける。

 二人の確認が終わった頃を見計らって、ハンガーのハッチが開いていく。この高速艇にはエルシオールのように、カタパルトなどの発進装置は装備されていない。あくまで格納・整備・輸送のための艦艇なのだ。だから搭載機は自機の推力のみで発艦しなければならない。

 

「ロックボルト解除……隔壁の開放を確認」

『アウ、いってらっしゃい』

『おみやげヨロシクね〜』

 

 ユウとユキの底抜けに明るい見送りに二人揃って失笑してしまう。まるでこれからピクニックか何かに行くようなノリだ。しかし実際は、血みどろの戦場を闊歩するのである。その現実を紛らわすための、彼女達なりの気遣いなのかもしれない。

 

「よし。では行って……?」

 

 発進しようとする今まさにその時だった。レーダーが、アビスフィアをはさんだ向こう側にワープアウトする反応を検知したのは。よりにもよって、エルドゥル艦隊の真正面である。

 

「い、いったい何が……?」

「ドンピシャでお客さんの到着だよ、アンス。しかもメインゲストだ」

 

 高速艇から送られてくる極長距離望遠の映像がコックピットのサブモニターに映し出された。ちょうどこちらから見て、アビスフィアの真上に現れたそれは黄金の燐光を巻き上げながら六枚の翼を広げていく。

 

「さあ、始めよう。タクト・マイヤーズ」

 

 

あまねく星の守護者と、

光り輝く背徳者の、

 

 

最後の聖戦を

 

 

筆者たちの必死な解説コーナー(焦りのセニョリータ編)

 

ゆきっぷう「お疲れ様です、銀河天使大戦第三章四節いかがだったでしょうか〜」

 

タクト「俺、もう倒れるのイヤだよ……今回は吐血シーンまであったしさぁ」

 

ゆきっぷう「心配イランよ、タクト君。もうすぐクライマックスだからね、もうドバドバのズバズバですよ?(意味不明)」

 

タクト「だからイヤなんだよ……っ!」

 

ゆきっぷう「それはさておき、今回の話で色々と謎の解明が進んだ(と信じたい)わけでして。同時に掲載されている(あくまで予定は未定)設定資料集を一緒に読むと、『なるほど、こういうことか! オノレ、ゆきっぷうめ!』となること請け合いでございますです」

 

タクト「アヴァンの正体とか、一回こっきりでお蔵入りした新兵器とかも載ってます。ちなみにこのあとがきを書いている時点で未完成です」

 

ゆきっぷう「い、言わんでもいいことを! まったく……ちょっとフライング書いてしまうと、この銀河天使大戦の世界は原作に加えて三つの作品の要素をベースに構成されていたりします」

 

タクト「ギャラクシーエンジェルだけじゃなかったのか!?」

 

ゆきっぷう「それでも良かったんだが、アニメに登場する元ネタをばらすとマズイあれこれの事を考えると、複数の作品の要素を織り交ぜたほうがやりやすかったのさ」

 

タクト「例えば?」

 

ゆきっぷう「そうだなぁ……クロノ・クエイクの別名がヒドゥンだったり?」

 

タクト「………おい」

 

ゆきっぷう「あとは、うーん……『べ〜た』って正確に表記すると『BATE』だったり?」

 

タクト「……こら」

 

ゆきっぷう「まだ他にも色々混ざってるんで、よかったら探してみて下さいな〜」

 

タクト「探せるかよっ!」

 

ゆきっぷう「でも真面目な話で、多世界解釈の上に成立する平行世界を統合した混合世界……っていうのが本来のギャラクシーエンジェルという作品の世界観なのよね。俺の推論だけど」

 

タクト「まあ、確かに……ロスト・テクノロジーも物によっては系統自体まるで違うこともあるなぁ」

 

ゆきっぷう「だからその内、他の作品がどういう風に銀河天使大戦に関わっていたのか書こうかな、と企んでいる昨日の俺」

 

タクト「今日は?」

 

ゆきっぷう「銀河天使大戦の続編を……やりたいなぁ、とか」

 

タクト「そりゃ、確かにUは出てるけどさ」

 

ゆきっぷう「その前にエンブレム・モジュールで可変機構を完成させねばならんがな。これがまた難しいんだよ、Zってさ」

 

タクト「……刻の涙かよ」

 

ゆきっぷう「単独での変形システムの確立はフレームの強度や搭載できるジェネレーターのサイズに著しい制限をもたらしてしまうからな。その意味で言えばあの機体は傑作といえるだろうよ」

 

タクト「そうかい」

 

ゆきっぷう「淡白な反応だなぁ……いいか? そもそもZプロジェクトは――――はぶっ!?」

 

ガシッ!(ゆきっぷうの頭が何者かに掴まれ、持ち上げられる)

 

アヴァン「要らぬことばかり口走りやがって。こいつの妄想癖には困ることこの上ない」

 

グシャッ!

 

タクト「ア、アヴァン?」

 

ベキベキベキ……ッ!

 

アヴァン「どうした、タクト」

 

ミシミシミシ……グチャッ!

 

タクト「いや……ゆきっぷう、潰れてるぞ?」

 

アヴァン「気にするな」

 

タクト「いや、でもな」

 

アヴァン「では後半戦、いってみよー」

 

タクト「しかも棒読みだし」

 

 

 

チェンジ

ハカイダー02

 

第832話

風になれ! 炸裂、必殺シルバー・トルネード!

 

 

北斗「な、なんだ? このタイトルは……?」

 

ゆきっぷう「お前の紹介コーナーだ。ゲッター風にアレンジしてみたボラッ!?」

 

アヴァン「俺の紹介はまだなのか?」

 

タハ乱暴「いや〜お前の紹介はまだできねぇって。まだリフレジェント・クリスタルについてチョロッとしか説明してないんだから」

 

北斗「だからといって本作メインのキャラではなく、ほとんどゲストみたいな俺の紹介もどうかと思うが

 

タハ乱暴「とはいえなぁ、ユウとユキを紹介しようにもアレはアヴァンとセットっていう話だし」

 

北斗「セット?」

 

タハ乱暴「ユウがハンバーガーで、ユキがポテトで、アヴァンが布巾。ドリンクはアンス」

 

アヴァン・ユウ・ユキ・アンス「「「「チョットマテ!」」」」

 

タハ乱暴「What’s!?

 

アヴァン「何故俺が布巾なんだ!? 俺はどう考えてもオレンジジュースだろ
!?」

 

ユキ「私は……ガーデンサラダ」

 

ユウ「どっちかっていうと、シェイクがいいなぁ」

 

アンス「……ミスタードーッツの方が好きなんですけど?」

 

北斗「好みの話になっているではないか。……このままでは例の如く脱線に次ぐ脱線で収拾がつかなくなってしまう。かといって、自分で自分の紹介をするというのものな……

 

タハ乱暴「安心しろ、北斗! 今回の紹介に関しては頼もしい助っ人を、俺が許可を出して連れてきた!!」

 

北斗「なにッ!?」

 

ゆきっぷう「俺、そんな話聞いてないぞ!?」

 

タハ乱暴「ナニを隠そう俺の独断だからなでは、紹介しよう。今回のあとがきのために連れてきた特別ゲスト……謎の(自称)美少女スナイパー・ミスB.K.だ!!!」

 

アンス「……謎の?」

 

ユウ「美少女?」

 

ユキ「スナイパー?」

 

アヴァン「Oh! バネッサじゃない……くぅあっ!」

 

ぱきゅーん(アーマライトが火を噴く)

 

B.K.「私達スナイパーは他人に決して正体を知られてはならない職業なのです……

 

タハ乱暴「おおッ! プロだ! プロフェッショナルの台詞だ!!」

 

北斗「バネッサ、お前いったい何をしにき……たああああッ!!」

 

ぱきゅーん ぱきゅーん

 

B.K.「私の言っていることが理解できませんか?」

 

北斗・アヴァン「「い、いえいえ、そんなことは」」

 

B.K.「じゃあ、おとなしく黙っていて下さい」

 

北斗・アヴァン「「い、いえす・あい・まむ」」

 

タハ乱暴「最近出番与えてやってないからな〜怒ってる、怒ってる」

 

ゆきっぷう「だからといって、ここで出番を作るなよ。読者が混乱してしまうではないか」

 

タハ乱暴「HAHAHAHAHA! そんな細かい事をいちいち気にしてたら物書きやってけねぇぜ!(いつもと言っていることが違う) さて、バネッサ、早速北斗の紹介をし……てぐふああッ!!!」

 

ぱきゅーん ぱきゅーん ぱきゅーん

 

B.K.……これで邪魔者はいなくなりましたね」

 

ゆきっぷう「そうだな。まずは北斗とB.K.さんの立ち絵から」



ゆきっぷう「右側が北斗(本邦初公開)、左側がミスB.K.(やっぱり本邦初公開)だ」

 

B.K.「わ〜、相変わらずへったくそな絵ですねェ〜〜〜〜〜」

 

アヴァン「そうか? じゃあタハ乱暴に描き直してもらおう。ああ、そうしよう」

 

タハ乱暴「あんた方は俺っちに死ねとおっしゃる?」

 

B.K.「それにしたって……私はもっとぼんっで、きゅっで、ばきゅーんな体型ですよ。身長だってもっと高い、グラマーなんですから」

 

タハ乱暴「……

 

北斗「…………

 

B.K.「な、なんですかその沈黙と生温かい視線は?」

 

北斗「……いや、いい。紹介を、始めてくれ」

 

アヴァン「ではさっそく。闇舞北斗、享年30……酒と女(小生中心)に溺れた生涯……マテ、とりあえずその拳銃を下ろせ?」

 

北斗「貴様にだけは言われたくなかったよ、アヴァン・ルース」

 

B.K.「えっと……始めてよかったですか?」

 

タハ乱暴「応。たったと始めてやってくれ(なぜか苦しげな表情)」

 

B.K.「それでは、改めまして……皇国軍情報局第六課所属コードネーム『アポリオン』こと闇舞北斗。身長187220cm、体重345kg(いずれシェイプアップするでしょう)。一応の戸籍上の年齢は65歳ですがその実年齢はアヴァンさんと同じで本人もよく覚えていないとのこと。なんでも、100回目の誕生日を迎えた辺りから数えることをやめちゃったみたいです」

 

タハ乱暴「北斗に関する基本的なデータは、第一章番外編『〜パイ包み焼き』で紹介したので、ちゃっとおさらい程度で進めよう(なぜか苦しげな表情)」

 

B.K.「はい。……酒好きです。以上!」

 

北斗「……早ッ」

 

アヴァン「じゃあ、ここからが本題――――――この男の本性についてだ。奴は狡猾で残忍な男で、幼い少女を見ると片っ端から……マテ、その腕を下ろせ?」

 

北斗「貴様にだけは言われたくなかったよ、アヴァン・ルース?」

 

B.K.「えっと……続けても?」

 

ゆきっぷう「ああ、かまわんよ。二人とも好きでやっているからな」

 

B.K.「男同士のコミュニケーションってわけですか

 

北斗・アヴァン「「それは違う!!」」

 

B.K.……さて、先ほどアヴァンさんが言ったように、ここからが本題です。北斗の本性……というより、出自ですね。彼も、私も、もともとタハ乱暴作『Heroes of Heart』本編および外伝に登場するキャラクターで、何故、その北斗がゆきっぷうの作品に登場するに至ったかについては、第三章第一節のあとがきにて説明した通りです」

 

アヴァン「だからここでは、どうやって北斗が銀河天使大戦の世界に辿り着き、どのように関わっていったかを話そう」

 

B.K.「そのためには実は、まだ完結もしていない『Heroes of Heart』の裏設定について語らなければなりません。実はこの作品は、なななんと、ゆきっぷうの『銀河天使大戦』と密接にリンクしていた(しちゃった)話だったのです!!」

 

ユウ・ユキ・アンス「「「な、なんですってぇ!?」」」

 

タハ乱暴「HAHAHAHAHA! 実はそうなんだよ(笑いながらも苦しげな表情)」

 

北斗「俺がハカイダー02になるまでの経緯に関しては、このあとがきをゆきっぷうとタハ乱暴が製作している時点で、タハ乱暴の怠慢によりまだ書かれていないが、ハカイダー02になって以降、俺はある理由から『Heroes of Heart』世界だけではなく、別なる平行世界を旅していた。どうやって一介の改造人間に過ぎない俺が、そんな次元を超越するような真似ができるようになったかについては、まぁ、この怠惰な男の、いつ掲載されるかも分からない話を待っていてくれ」

 

タハ乱暴「いや、俺だって、あの、苦労してるんですよ?(苦しげを通り越して怪しげなる表情)」

 

B.K.……とにかく、北斗はハカイダー02になってからはある事情で旅をしていました。その旅の最中に、アヴァンさんと出会ったのです」

 

北斗「最初、俺達は敵同士だった。いや、今も決して友好関係を結んだわけではないが、敵の敵は味方という場面も多々あり、一応、冷戦状態ということになっている(銀天本編での対立は無視して)」

 

アヴァン「左様、我が妻たちの無念……晴らすまではな」

 

ゆきっぷう「色々と禍根があって、それを乗り越えた二人の男は奇妙な友人(?)関係になっていた、というわけだ(の発言は無視)。そして、そのびみょ〜な協力関係を利用して、アヴァンは今回の事件を引き起こしたのだよ〜」

 

タハ乱暴「ここで時系列について説明すると、北斗とアヴァンが出会ったのは『Heroes of Heart』外伝から本編までの間で、今回の事件は本編終了後の話ということになっている(胸を張る怪しげなる表情)」

 

B.K.「では、いよいよこの世界……つまり『銀河天使大戦』世界における2人の関係について、解説していきたいと思います。そもそもの発端はクロノ・クエイク以前の、旧世界まで遡ります」

 

アヴァン「俺と奴の戦いの最中に発生したクロノ・クエイクは多くの平行世界を巻き込み、ビックバンもかくやの大崩壊へと発展した。UC0167年の話だ」

 

北斗「ここでいうUCとは、宇宙世紀のことだ。つまり、『機動戦士ガダム』とそれに連なる諸作品群の世界だな。このクロノ・クエイクの後、崩壊した世界を見た俺達は、とりあえずお互い生き延びるために、なによりもう戦っている場合ではなかったから、一時休戦して、協力関係を結ぶことにした。アヴァンが、アヴァニスト・V・ルーセントを名乗るようになった直前の出来事だ」

 

アヴァン「俺は白き月を利用して復興させ、北斗は諸々の紛争を鎮圧し、トランスバール建国の礎を築いた。その後は冷凍睡眠などで時代を超え、エオニアの戦乱に応じて活動を再開した、というわけだ」

 

B.K.「冷凍睡眠から目を覚ましたのはアヴァンさんの方が先でした。その後目覚めた北斗は皇国軍の情報部のエージェントとして活動を開始するわけですが、その際、すでに目覚めていたアヴァンさんにある依頼を受けたのです。それが……

 

アヴァン(メロン酒摂取中)「だからよ〜、バネッサ君。俺はそこでこう言ったわけよ! 『俺に万一のことがあれば、エンジェル隊のサポートとかはお任せしちゃうぜ〜』みたいな〜」

 

北斗「そして、万一のことが、あった。それが第一章第三節のことで、この時点で俺がエンジェル隊のサポートに回るはずだったんだ。そのための伏線張り……というより、正式に配属された際に互いのコミュニケーションが円滑に進むよう、顔合わせのための『パイ包み焼き』だったんだが……どういうわけか、第二章……つまりヴァル・ファスク戦役の時も、エンジェル隊のサポートに回ったのはアヴァンだった。そればかりか、本来俺に回されるはずだったコスモは、アヴァンが乗っていた。この辺りから、なにやらきな臭くなってきたわけだ」

 

アヴァン(唐突に酔いが醒める)「キナ臭いとは何だ? 俺とて止むに止まれぬ事情があってだなぁ」

 

B.K.「事情?」

 

北斗「それは、まぁ……ネタバレ禁止だから、次回にでも」

 

B.K.「なるほどここまでの流れを読者にも分かり易いように私が整理しますと……

 

タハ乱暴「整理すると……?(肩で息を切らす怪しげなる表情)」

 

B.K.「とうとう北斗は別世界の女性にも手を出したってことですね!!(怒)」

 

北斗「……マテ、なにゆえそうなる!?」

 

ゆきっぷう(改修型)「何を言っているんだ、闇舞北斗。お前はすでに、ランファ君と縁談が持ち上がっているではないか! すでに式の手配も済ませてあるらしいし、こっちで腰を落ち着ける気にでもなったか?」

 

北斗「いや、あれは向こうが勝手にそういう話を進めているというだけで、そこに俺の意思は介在していない……!」

 

アウトロー「わ〜い! マスターおめでとうございます。マスターがランファさんと籍を入れるってことは、僕もずっとこっちの世界にいられるってことですよね? ご主人様とずっと一緒にいられる〜」(犬耳をパタパタさせる)

 

アヴァン「良かったじゃないか、アウトロー。北斗という生贄一人で多くの人が幸せになれるんだ。いやはや素晴らしい! めでたい! ワンダホー!」

 

アンス「……どこをどう整理したらそういう話になるんですか(ひとり冷静なツッコミ)」

 

 

北斗「……さて、色々とまだ謎が残っているが、とりあえず俺のことはこれぐらいだな。というわけで、今回のあとがきはこれにて終了……

 

B.K.「ちょっと待ってください!」

 

北斗「な、なんだバネッサ! 人が折角、綺麗に場を締めようとしてい……るぼふぁああッ!!」

 

ずきゅーん ずきゅーん

 

B.K.「まだ、私の紹介が終わっていません(にっこり)」

 

アヴァン「いや、紹介も何もバネッサ君は本編に登場すらしていな……いぐおはああッ!!」

 

ずどーん ずどーん

 

ユウ「そういう、空気読まないこと言っちゃダメだYO」(RCSレッドに搭乗)

 

アンス「でもそれなら、いい加減イニシャルを使うのは止めたほうが良いような気がしますけど?」

 

B.K.「ふーふーふーだからこそ、この瞬間のためにこそ、今までイニシャル表記に徹してきたんじゃないですか!? 本当は私だって、ちゃんと名前で登場したかったんですよぅ」

 

北斗「ね、猫なで声を出しても、いつもと大して変わらないぞバネッ……さるべぇぇぇじゃあああッッ!!!」

 

とぱぱぱぱんっ とぱぱぱぱんっ

 

B.K.「ふぅ、ちょっとだけ静かにしていてくださいね、マイ・ダーリン ……ではでは、いよいよ今回のあとがきのトリ、戦乱渦巻き混迷するこの世界に希望の光を差し込む天使とみまごう乙女……このバネッサ・キースリングの紹介を……!」

 

タハ乱暴「も、もう限界だぁッ!」

 

全員『What’s Happen!?』

 

タハ乱暴「先ほどからある外的侵入者の侵攻を阻止するために、人知れず結界を張っていたが、もう限界だ! みんな逃げるんだ。来るぞやつが……来るぞ…………夏目改め闇舞光ぐぉぉおおおああああああ――――――ッ!!」

 

 

 

……そして世界は文字通りの光に包まれ、後に残されたのは――――――

 

 

 

北斗「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

光「北斗、私というものがこっちにありながら、あなた浮気してたんですか?」

 

バネッサ「な、何をちゃっかり『私というものがありながら』なんて言ってるんです光さん? 北斗も、光さんではなく私に謝ってください!」

 

アヴァン「人のあとがきブチ破ってまで痴話喧嘩すんじゃねぇぇぇぇっ! もう面倒だ、二人まとめて北斗と結婚しちまえ!」

 

ユキ「っていうか、今回証明されたことはアウと一緒で闇舞北斗が女ったらしだってことだけ?」

 

アヴァン「失敬な! 俺のどこが女ったらしだというのだ!? 俺はちゃんとけじめをつけているだろう!」

 

ユウ・ユキ・アンス「「「どこが?」」」

 

アヴァン「む、それは、ほら、な?」

 

ユウ・ユキ・アンス「「「ど・こ・が?」」」

 

アヴァン「……………今夜はまとめてかかってこいやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

アウトロー「……ああ〜、男の人って〜……

 

タハ乱暴「いくつも〜愛を持っているのねぇ〜〜〜ってか?」

 

 

北斗「……なぁ、タクトぉ?」

 

タクト「ん、なんだい」

 

北斗「女って生き物はよぉ……うっうっと、嗚咽を漏らす北斗)」

 

タクト「……(タクト、無言で北斗の肩を叩く)」

 

北斗「なんだかな、もうランファでもいいような気すらしてきたよ」

 

アウトロー「わ〜い!(にっこり) わ〜い!(ニヤソ) わ〜い!(にっこり)」

 

ヴァニラ「タクトさん。お茶の時間です」

 

タクト「ヴァニラ〜、今行くよ〜」

 

北斗「………なぁ、クロミエよぉ?」

 

 

 

 

タハ乱暴「……終わっとけェッ!!」

 

ゆきっぷう「あとがきブチ抜き修理費、占めて38万ギャラ。月末までによろしく頼む」





ヴァニラが復活したのは嬉しい限り。
美姫 「けれど、そうそうその雰囲気に浸っていられない」
と言うか、滅茶苦茶気になる所で次回!?
美姫 「ああ、どうなるの」
次回が気になる〜。
美姫 「次回を待ってますね」
ではでは。



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