「本艦の針路上に第三防衛網を構築中、距離22000! 編成は巡洋艦6、戦艦3! ヘクトール16、四個小隊!」

「第一、第二防衛網の残存艦隊はポイント67A・91Sにて集結を開始! 集結中の艦隊に攻撃能力を認めず!」

 

 突入開始から十分が経過していた。エルシオールは最大戦速のまま皇国軍の防衛ラインを半ば強引に突破し、敵陣の懐を潜り込もうと今も前進を続けている。

 そのとき、エルシオールを一際大きな衝撃が揺さぶった。敵の艦砲射撃がエルシオールの右舷を掠めたのだ。

 

「敵砲撃がシールドに干渉! 損害なし!」

「針路そのまま、応戦しつつ突破! フィアネスとトリックマスターは前方の敵に集中させろ!」

 

 とはいえ北斗とミントはよくやっている。すでにそれぞれ十数隻の艦艇を無力化し、敵の注意をエルシオールへひきつけることに成功していた。ただそれに伴ってエルシオールも少なからず損害を被っている。この彼我戦力差では持久戦はもとより不可能だ。

 

「白き月周辺に展開中の敵戦力の43%が本艦に向けて移動を開始! 最終防衛網に穴が開きました!」

「よし……! 全セクションに通達! 作戦は第二段階に移行! 残りの紋章機は発進だ!」

「了解! 全ユニットに通達、作戦は第二段階に移行する! 繰り返す、作戦は―――――――」

 

 レスターの号にオペレーターたちが各セクションにその報告を始める。

 

『待ってたよ、艦長! やっと出番かい!?』

「そうだ。いけるな?」

『当たり前さ! いくよ、皆!』

『了解!』

 

 艦底部から取り付こうとしていた敵EMを吹き飛ばしながら三人の天使が出撃する。立て続けに接近中の巡洋艦4隻の推進器を沈黙させ、エルシオールの突入口を広げていく。

 

「うりゃあああああああああああっ!」

 

 一方のランファも一分の隙もなく敷かれた護りの中を縫うように飛び回り、敵の指揮系統を混乱させていた。彼女の姿を捉えることのできない相手からしてみれば、それが何であるかすら判別できないのだ。

 

「邪魔なのよぉぉぉぉぉおおっ!」

 

 アンカークローで立ち塞がる戦艦を押し退けて、エルシオールに向かって道を切り拓いていく。エルシオールの侵攻を物理的に阻むべく密集していた彼らにとって、それは致命的だった。

 まるでドミノ倒しのように隣り合う艦艇が次から次へと接触し、相互に干渉しあって身動きが取れなくなっていく。完全なすし詰め状態だ。相次ぐ緊急事態にエルシオールに向かう艦隊も足並みが乱れている。

 

 

 その光景を目の当たりにしていた皇国軍総司令、ティディガ・エルドゥルは年老い磨り減った歯を軋ませた。齢七十を超える老将軍が怒り狂う様を、モニター越しに蒼い髪を揺らして彼は嘲笑う。

 

「何がおかしい!?」

『いやいや、何事も思うようには進みはしないということですよ。総司令殿?』

 

 普段の彼を知るものならば、今の馬鹿丁寧な口調はとても想像が出来ない。だがティティガを激昂させるには充分すぎた。

 

「クリスタルを独占している貴様が何を言うか、ルーセント!」

『分不相応な力は滅びを呼ぶだけだよ、ティティガ・エルドゥル?』

「滅びを避けるために、力が必要なのだ!」

 

 そもそもこの老人はトランスバール皇国の中でも屈指の大豪族の一つ『エルドゥル家』の現当主である。代々名立たる軍人を輩出してきた名家に生を受けた彼もまた、先人達に恥じぬ武勲の数々を挙げてきた。

 生まれ付いての武人であったティティガはその歳六十を過ぎても前線での軍務にこだわっていた。だがさる鉱脈惑星のクーデターを鎮圧した際の負傷を機に、皇国軍総司令部の幹部への栄転を言い渡される。

 この老人にとって『家』への『一族』への貢献こそ最優先事項であり、前線での軍務がそれだった。それを取り上げられてしまった彼は、いかに後方の権力が偉大かを痛感するに至った。

 もとより優秀な軍人であった彼は、ならばと組織内で一気にのし上がりついには総司令官の座を手にした。ちょうどエオニアがクーデターを起こす半年ほど前のことだ。

 そして『力』という妄執に取り付かれた彼が出した結論はエルドゥル家を、皇国を支配する地位にまで押し上げるというものだった。

 

『クリスタルで世界は支配できませんよ?』

「黙るがいい。私の判断に間違いはない」

 

 だが蒼髪をなびかせる彼は事も無げに、その全てを否定する。

 

『力への執着が思考の偏重を生み、正しく結論に至ることを妨げている。それではせいぜい、間違えないのが精一杯』

「なっ!?」

『今からそれを証明して差し上げます。そこでごゆるりとお待ちあれ』

 

 途切れた通信。

 ノイズの向こうで嗤う死神を見て、ティティガは背筋を強張らせた。

 

銀河天使大戦 The Another

〜破壊と絶望の調停者〜

 

第三章

第三節 光臨せよ、その名は……

 

 

「行かせはせん!」

 

 ヘリオン・グレイブを振り上げ、北斗はフィアネスをヘクトールの群れへ向けて突進させた。瞬く間に六機のヘクトールの首が切り落とし、さらに敵の集結地点へ突入する。

 背部の大型ブースターを巧みに操り、回転機動で艦砲射撃を回避。さらにワンテンポ遅れて襲い掛かる誘導弾を、グレイブを旋回させて切り払う。

 

『後ろですわ!』

「っ!」

 

 振り抜いたヘリオン・グレイブをそのまま後方に向け、ライフルモードで三連射。別方向から北斗の背後を狙っていたヘクトールの一個小隊は装甲を吹き飛ばされ、力無く宙に漂った。

 

「助かったぞ、ミント」

『お礼はいいですわ。それより……』

 

 薙ぎ倒したヘクトールの残骸。その向こうから無数の大型ミサイルがエルシオールへ侵攻していた。その数はすでに千を超え、今もなお後続の出現は途切れない。

 

『どうします?』

「下手に撃ち落せば敵味方構わず甚大な被害が出る。確実に推進系を破壊しなければ」

『しかし……』

 

 しかしこの数は半端ではない。とてもではないが撃ち漏らしてしまうだろう。

 ミントのそんな不安を察したのか、北斗はにやりと口元を吊り上げた。

 

「俺たちならできる。俺と、君の機体なら」

『ああ!』

 

 彼女も気付いたようだ。

 紋章機の中で唯一、超広範囲の制空権を制圧可能な兵装を持つトリックマスターならば。愚将たちの浅はかな知恵を見抜き、弄ぶ『謀略の女王』ならば。この幼稚な力技の策など容易に突破して見せよう……!

 

『いきますわ……フライヤー!』

 

 射出されるオービットユニット・フライヤー。三枚のブレードを展開し、主の命じるままに戦場を駆け抜ける。

 遥か遠方で爆発光が瞬き始め、その数はどんどん増え始めた。十…五十…百……もはや前方には閃光と言う名の横断幕が織り上げられている。

 だがやはり限界があったのだろう。二人の機体のレーダーには、迎撃を突破したミサイルの影がいくつも映し出されていた。そしてそれに随伴するように点滅するヘクトールの反応も。

 敵も天晴れなものだ。艦隊支援という目的に開発・導入されたヘクトールをここまで柔軟に運用してみせるとは。ましてミサイルの護衛(この場合は身代わりと言うべきだが)として随伴させる。この決断力は並みの指揮官では発揮できないものだろう。

 

「ふっ、だが……」

 

 フィアネスが力を溜めるかのようにその身を屈ませ、

 

「詰めが甘い! 飛べ、天使達!」

 

 ブースターユニットの装甲が展開し、左右それぞれ三つずつ、六つの光が戦場へ解き放たれる。フライヤーに比べて一回りも二回りも小型ではあったが、確かに同じタイプのオービットユニットだった。

 

「このエンジェル・スレイブから逃れられると思うなッ!」

 

 光が走る。

 プラズマ光と共に爆音が轟き、生き残った数十基のミサイルとヘクトール隊へと襲い掛かった。

 小型である分小回りが利く。それを利用してエンジェル・スレイブは確実にヘクトールとミサイルの死角を突き、仕留めていく。

 

『な、なにが起こったんだ!?』

『来るな! 来るなぁぁぁぁぁっ!』

『動かない!? どうしてっ!』

 

 駆動系を、推進系を破壊されて行動不能に陥るヘクトールたちを無視し、北斗は索敵にフィアネスの全センサーを集中させた。ミサイル攻撃の第二波がいつ来ても対応できるようにするためだ。

 案の定、別方向から接近する熱源を複数感知したフィアネスは、躊躇無くその方向へ突進した。

 

 

 

 

 急発進・急旋回・急制動。通常では到底考えられなどしない突飛な回避機動の中、ミルフィーユは滑らかな動作で次の目標に照準を合わせていた。いかな理由があれど、六機の紋章機の内で最も高い戦闘能力を有するとされる『ラッキースター』のパイロットである彼女は、やはり高い操縦技術の持ち主であった。

 運だけでは決して左右されない、もっと根本に位置するそれは、紛れも無く彼女自身の努力の結晶である。

 いやミルフィーユだけではない。他のメンバー達も『二度とあのような悲劇は繰り返させなどしない』と、この一ヶ月の間に猛トレーニングを積み重ねてきた。

 

「こっちの敵は全部動けなくしました!」

『よくやったよ、ミルフィー! 前はミントたちに任せて、あたしらはこのままエルシオールの護衛だ!』

「はいっ!」

 

 もう左右後方から接近する艦影は無い。交戦した艦隊の大半は搭載兵装を無力化されて追撃する意義を失い、残りは推進装置を破壊されて遥か後方へ取り残されていた。

 この短時間で、ここまで敵戦力を退けることが出来たのは何も彼女達の実力だけではない。この戦闘に参加する意味を見出せぬのか、交戦状態に入らなかった艦艇の多くは道を譲るかのように後退していった。おかげで彼女達は必要以上に消耗せずにここまでたどり着くことが出来たのだ。

 もはや残すところは未だ前方で抵抗を続ける主力艦隊である。しかしこの最後の砦には文字通り続々と増援が合流しており、構築された防壁は強力な火砲で粉砕しなければ突破は不可能だった。

 

「くっ……!」

 

 今この時、レスターは決断を迫られていた。

 このまま玉砕覚悟で突入するか。

 それともエルシオールとエンジェル隊の一斉砲撃で突破口を開くのか。

 前者はこちらに大損害をもたらし、後者は相手に多大なダメージを与えてしまう。可能な限りと付け加えてはいたが、やはり友軍艦を撃沈することだけは避けたかった。

 接触まで、あと31秒――――――

 

「高熱源反応、距離21000! 敵艦隊の頭上ですっ!」

「何っ!?」

 

 オペレーターの報告にレスターが反応する刹那、巨大な光の剣が遥か天蓋より無数に降り注ぎ、エルシオールの正面に展開する防衛艦隊を両断した。駆け抜ける熱と衝撃、撒き散らされる戦艦の残骸がブリッジを激しく揺さぶる。

 

「続けて移動熱源、展開中の敵艦隊へ接近!」

「識別照合……RCSブルー、レッド!」

「馬鹿な、何故奴らがこの戦闘に介入するんだ!?」

 

 メインスクリーンに映し出される、つがいの人型。

 皇国に相対する以上、ここで自分達が潰し合って消耗することはアヴァンたちにとって大きなメリットになる。にも拘らず、このように攻め入ってくるなど、理由が考え難い。

 

『分からん話ではない』

「どういうことだ、少佐」

『アヴァン・ルースが相対していたのは、あくまでリフレジェント・クリスタルの入手を目論む勢力……つまり皇国宇宙軍だ』

「その皇国と敵対関係にある俺たちは、もはや蚊帳の外というわけか」

『敵ではないが味方でもない。そういったところだろう』

 

 北斗との会話の間に敵艦隊の眼前までエルシオールは迫っていた。こうなればもう是非を問うまでもない。

 

「最大戦速で突っ切れ! 突入目標、エルシオール専用ハンガー! 迎撃はエンジェル隊に任せろ、シールド出力全開!」

「了解、両舷全速! 針路修正!」

「シールド最大展開、敵砲撃減衰率92%!」

 

 だが敵の追撃も生半可ではない。十数機のヘクトールが多方向から迫り、艦砲射撃の激しさ増す一方。総司令部直属というだけあって、外周の守りのようにこちらに手心を加えてはくれないようだ。

 正面以外の全周囲からの攻撃にエルシオールの損害が爆発的に広がっていく。もう後部甲板のほとんどが吹き飛び、左舷のミサイル発射筒や対空砲などの兵装は殆ど死んでしまった。

 左の守りが薄くなった瞬間、そこへ戦艦では最も対処し難い機動兵器―――――ヘクトールの一個中隊が群がっていく。そのうちの一機がもはや機能していない対空防御を掻い潜り、エルシオールへ取り付こうとビームセイバーを抜いた。

 

「いかん!」

 

 北斗が叫び、フィアネスをそちらへ向かわせようとするが、集中砲火を回避しながらの移動では到底間に合わない。ヒュペリオン・ランチャーもエンジェル・スレイブも全て他方向の防衛に手一杯で、ここへまわす余裕など無かった。

 光線剣を振りかぶり、迫るヘクトール。

 だが唐突にその頭部が、いや全身が雷に打たれたように痙攣し、前後左右にガクガクと揺さぶられた。だがここは宇宙空間である。増してこんな戦場で、自然現象として急に雷が発生することはまずありえない。

 

「これは―――――――!」

 

 モニターしていたアルモが驚きの声を上げた。

 無理も無い。白き月の向こう側から突如出現したRCSレッドが両肩のチェーンガンをヘクトールに向け、容赦ない銃撃を加えていたのだ。狙われた投擲兵は全身を高速貫通弾に撃ち抜かれ、爆散すらせずに挙動を停止した。

 

「馬鹿な……こいつらが、援護だと?」

 

 レスターが唸る。

 アヴァンの言葉が正しければ、あの二機を操縦しているのはユウとユキ……年端もいかぬ二人の少女なのだ。アヴァンに対する狂信とも言うべき信頼を寄せる彼女達が、どうしてこのような行動に出たのか。

 

(だが、今は……!)

 

 そう、今は目の前の戦闘に集中しなければ。沸いては尽きぬ疑問を頭の片隅へと押し込み、レスターは艦長席を立った。

 

「ハンガーに突入後、歩兵部隊の上陸が完了するまで接舷! 上陸後はすべての外部ハッチを封鎖しろ!」

「はいっ!」

「これから俺は歩兵部隊の指揮を執る。エルシオールの指揮権は副長が引き継げ!」

「了解! 指揮権を引き継ぎます!」

 

 そこで一度レスターは言葉を切り、アルモを見つめた。彼女もまたレスターへと視線を向ける。だがそれは一瞬のことだ。この一瞬で互いに言うべきことは言ったのだろう、伝えるべきことは伝えたのだろう。

 無言でブリッジを離れるレスターの背を、アルモは最後まで見送ることはせず、ただ己の使命に意識を集中させていた。

 

 

 

 

「陛下! 敵突入部隊が再集結を開始しました!」

「!」

 

 ついに始まったか。管制室のシヴァは内心で毒づきながらも、伝令に報告の続きを促した。

 

「突入部隊は全7ゲートのうち、第二及び第六ゲートで再突入を試みています。しかも第六ゲートではヘクトール三機の搬入が確認されています」

「馬鹿な! 白き月の中でEMを使う気か!?」

 

 確かにハンガーなどの一部施設は、EMが充分活動できるほどの空間がある。そして現在自分たちがいるアーカイブ・テリトリー最下層「プラント」も同様だ。何より問題なのはその脅威以上に、動力のクロノ・ツインエンジンの存在である。エンジンが破損・暴走すれば白き月が内部から崩壊しかねない。

 

「これではうかつに攻撃でき――――――わぁっ!?」

 

 ゴゴンッ……と突然の衝撃に上下左右と揺さぶられ、シヴァは思わず尻餅をついていた。

 

「何事だ!?」

13番ドッグの隔壁が損傷! エ……エルシオールです! エルシオールが隔壁を破ってドッグへ突入しました!」

 

 なんということか。外の守りと破って、ついに彼らはここまでやって来たというのだ。ドッグのカメラから送られてきた映像では、すでに接舷して上陸の準備を始めている。

 いや、接舷というよりは、ただ単に艦首を内壁へ突っ込ませただけなのだが。

 

「まったく、無茶をしてくれる」

 

 毒づくシヴァだったが、その口元は笑っていた。

 ともかくこれで何とかなりそうだ。最悪の場合、あの機体だけでも彼らに託すことができればそれでいい。

 

「直ちに搬出準備だ! 手の空いている者は侵入してくる敵に備えよ!」

 

 

 

 内部突入要員として緊急招集されたフォルテとちとせ、アウトローは、他の上陸メンバーと共に艦首格納庫で最後のミーティングを受けていた。ハッピートリガーとシャープシューターは機体のコンセプト上、白き月の艦船収容通路での戦闘は困難と判断されたためである。

 

「現在エルシオールを追撃中の敵戦力は、今通ってきた白き月の艦船収容路で闇舞少佐とミルフィー、ランファ、ミントが迎撃中だ。どれだけ持ち堪えられるか分からない以上、俺たちは迅速に行動する必要がある」

 

 ギャラクシーの耐圧パイロットスーツに身を包んだタクトがハンディツールから簡易スクリーンを表示させた。ちなみにタクトの装備は、下手な野戦服よりもこのパイロットスーツのほうが防御力に優れていたからだ。

すでに敵の突入部隊は展開し、第三層への侵攻を開始している。ここからテリトリーを挟んで反対側の第六ゲートにはヘクトールまで配備されており、向こうが本腰を入れていることが分かる。

 

「俺たちは二手に分かれて行動する。まずレスター隊が最寄りの第2ゲートに集結中の敵突入部隊を襲撃、こちらへおびき寄せる。敵の注意を逸らしたところで俺とフォルテがアウトローで第三層へ突入し、陛下を救出する。ちとせはレスター隊を支援」

『了解!』

 

 各々ライフルを背負い、艦首格納庫のハッチが開くのを待つ。今エルシオールは頭から施設に突っ込んだ状態で停止している。収容路で敵を振り切りためにスピードを出し過ぎたことが原因だ。

 だが接舷したことに変わりはない。そしてこれから作戦は次に段階に進むのだ。レスターが通信を全回線に繋げて叫ぶ。

 

「作戦は第三段階に移行する! 繰り返す、フェイズ3に移行だ! 上陸を開始する!」

『ハッチを開放します。皆さん、ご武運を!』

「ああ、行ってくる!」

 

 ココのコールに答えると格納庫の隔壁が持ち上がり始めた。同時にヴァニラ親衛隊の数人が開いた隙間からすばやく外へ飛び出し、安全を確保する。続いて残りのメンバーが外へ出ると、奥から敵の歩兵がこちらへ駆け寄ってくる様子が見えた。

 

「タクト、ここは俺たちに任せろ!」

「分かった……頼むぞ!」

「早く行け!」

 

 レスターの檄に押されながらアウトローに跨る。ライフルを背負い直し、フォルテの腰に腕を回すと、

 

『しっかりつかまって下さい。ご主人様の運転は激しいので』

「そ、そうなのか」

「変なこと言ってんじゃないよ、まったく」

 

 変なこととは運転が激しいことなのか、それともフォルテをご主人様と呼ぶことなのか。

 タクトがそのことを追求しようとした時、不意にその脳裏に、

 

 

 

タクトさん

 

 

 

 彼の名を呼ぶ声が響いた。それはあまりに弱々しく、小さなものでまるで幻聴か何かとしか思えないほどだったが。

 

「どうしたんだい?」

「い、いや……」

「びびってんじゃないよ!?」

 

 タクトが反論する前にフォルテがアクセルを吹かし、爆音が周囲に轟く。

 

「自動迎撃モード起動、任せるよ」

『了解です』

「行くよ!」

 

 タイヤが路面との摩擦で火花を散らす。

 刹那、まるで抜き放たれた白刃の如くアウトローが発進した。立ちふさがる兵士を切り裂くように突き飛ばし、ゲート前へ肉迫する。

 

『正面、MBT二両! 装甲車三両!』

「サタンポッド、スタンバイ! 吹っ飛ばせ!」

 

 車体の装甲が展開し、今までマジックハンドなどが収められていた場所からロケット砲が突き出した。マジックハンドの数を減らし、当初から搭載されていた武装を装備し直したのだ。

 戦車の砲塔がこちらを向いた。照準……

 

『ロックオンされています。着弾予測……正面左!』

「あいよ!」

 

 右へ流れるのと同時に撃ち出された砲弾が、ギリギリのところでアウトローたちを逸れた。

 

『第二射、正面……手前12メートル!』

 

 瞬間的にフォルテはアウトローのサスペンションを限界まで引き絞った。頭を押さえ込む腕が震える。本来アウトローは巨漢が乗り回すようなモンスターマシンなのだ、それを女の腕力で御すことは並大抵ではない。

 

「タクト!」

「何!?」

「飛ぶよ!」

「へ!?」

 

 眼前で砲弾が大地を穿った。その瞬間、サスペンションの反動と着弾の衝撃で白狼が大きく跳躍する。そのままゲート前に展開していたバリケードを跳び越え、着地。

 路面を滑りながら反転し、正面に今も砲塔を回転させてフォルテの姿を追う戦車を捉える。

 同時にロケット砲が火を噴き、対装甲炸薬弾が鋼の城を吹き飛ばした。

 

『吹っ飛ばしました』

「上出来だよ。あとでご褒美だ」

『はい』

 

 

 

 

『第二砲塔沈黙! 左舷の弾幕が……!』

『敵機接近! 接触まであと5、4―――――』

 

 衝撃、爆発。

 第一艦橋ごと艦体を光線剣で両断され、戦艦「プロヴディフ」はその役目を終えた。進宙から八年と三ヶ月余り……長いようで短い戦いであった。

 プロヴディフを撃沈したRCSブルーはさらなる標的を求めて旋回する。その事務的で冷徹、そして余りに残酷な動作を行なうのは、蒼き髪の少女――――ユキである。無論、レッドを操縦しているのはユウだ。

 そもそも何故彼女たちがこうして戦場に出ているのかといえば、今回の戦闘を傍観するというアヴァンにアンスが食って掛かったことが原因だ。

 

『どうして行かないんですか!?』

『行く理由がない。手を貸す理由もない。俺たちはあいつらを裏切ったんだぞ、アンス?』

 

 もはや自分達にとってエルシオールも、皇国軍も、味方ではない。協力する必要がない。リフレジェント・クリスタルの存在を追及するなら排除するのみ、という関係でしかないのだ。

 

『あなたって人は、あなたっていう人はっ!』

『げふっ! ががぶっ!?』

『もう少し人情とか、義理とか、仁義とか無いんですか!』

『べべぼっ! ユキ、タオル! タオル!』

『人でなし! 冷血漢! 女垂らしっ!』

『ま、待て……最後のはちょっとチガおばあああああああっ!?』

 

 語れば長くなるので悶着の動向は割愛するとして、結局アンスがアヴァンに平手打ちを十数発叩き込んで説得(?)し、間接的に支援するという運びになった。

 なったのだが………

 

「ユウ、アウは見つかった?」

『白き月に入っていったみたいだけど、そこから先は分かんない』

 

 肝心のアヴァン本人がどこかに行ってしまったのだ。

 両肩のチェーンガンで巡洋艦を蜂の巣にしながらユウが答える。特殊戦兵装を搭載しているRCSレッドの索敵能力は非常に高い。標準型のブルーの軽く三倍近いエリアをカバーし、かつ手の平サイズの熱源まで識別可能な精度を持つ。

 とはいえ、白き月という巨大で複雑な構造を持つ施設内まで一人の人間を追尾することは難しい。ましてや現在は戦闘中なのだ。そこまでの余裕もない。

 

「まあ、いいや……」

『でも中は結構大変そうだよ? 量産型もウヨウヨしてるしさー。アウはともかく、エルシオールに何かあったら計画に面倒だし』

「………私が行く。援護、よろしく」

『やっぱそうなるよねー』

 

 ユキはRCSの針路を反転させると、今も敵が群がり続ける艦船収容口へ突入した。突然の乱入者に困惑するヘクトールを邪魔とばかりに蹴り飛ばし、慌てて旋回しようとする巡洋艦のブリッジをレーザーライフルで射抜く。

 

(ヘタクソ……ジ○ンのザ○のほうが、まだ動く)

 

 旧式機のほうがマシだと評する辺り、彼女も手だれのようだ。

 そもそもユウとユキはかつてアヴァンも言っていたように戦災孤児である。とある紛争地帯で出会った少女達の境遇に涙したわけではない(らしい)が、ちょっとした気まぐれと責任感から二人を養女にしたという。少なくともアヴァンはアンスに、そう説明していた。

 

『このロリコン! 変態! ピーピーピー!(最後は自主規制)』

 

 というのが、その時のアンスの第一声であった。いやはや、世間一般の目は何とも厳しいものである。

 しかし彼女達もただ養ってもらうのでは面白くない(世界のあちこちへ連れまわされるので、こと娯楽には困らなかったが)。家事全般を手伝い(よくキッチンや洗濯機が吹き飛んだ)、強引に夜伽に行ったり(アヴァン自身は逃げ出すことも多かったらしい)、ついには機動兵器の操縦まで手を出したところでアヴァンもさすがにストップをかけた。

 一応自分の娘である、そんな危ない真似はさせられない(その前に夜伽を止めろよ、我が息子)。させられないのだが、そこを愛娘達の決意の強さとか、我の強さとかで押し通ってしまって現在に至る。

 

『才能はあったらしいんだがね。困ったことにさ』

 

 アヴァンが溜息混じりにそう洩らしていたことは、ユウもユキも知らないことだ。

 閑話休題。

 相次ぐ爆発で通路が一時的に塞がる間にさらに奥へ。表の敵はユウがまとめて相手をしてくれているはずなので、しばらくは敵も追いつけないはずだ。数キロはあるだろう艦船通路を進むと、各ハンガーへ続く分岐路に到達した。

 そしてここが、外部の敵に対するエルシオールの最終防衛ラインである。

 見れば、EMX03と三機の紋章機がヘクトールや巡洋艦相手に大立ち回りを演じていた。そして彼らが、侵入してきたユキに気付かないはずがない。

 

『ついに来ましたわね……』

 

 フライヤーを展開させながらミントがつぶやく。裏切り者を討つ事にためらいはない様子だったが、

 

『ユウちゃん、ダメ!』

「私は、ユキです」

 

 やはりボケをかますミルフィーユ。ユウもユキも機体に搭乗した状態で名乗っていない以上、間違えるのも仕方ないといえばそうなのだが。

 

『とにかく、戦うなんてダメですよ! そもそもどうしてここに来たんですか?』

 

 それは言うまでもなく彼女達のサポートなのだが、だからといってそう答えるわけにもいかない。こちらの意図は、誰にも知られてはいけないのだから。

 

「エルシオールと事を構える気は、ないです……今は」

『今は、か……信じにくいな』

「信じるのはお前の勝手。闇舞北斗」

 

 会ったことの無い筈の男の名を呼ぶユキに、ランファは一瞬訝しがるも今はそれを気にしている場合ではないと考え直した。なにせ敵はまだ湧くように出てきているのだから。

 

『これからどうすんのよ、アンタ』

「中のEMを、潰します」

 

 その言葉に今度は全員が息を呑んだ。

 まさか彼らが白き月の内部にまでヘクトールを展開しているなど思いもしなかったからだ。量産化に成功したとはいえ、動力に使われているクロノ・ストリングスは屋内戦闘には危険すぎる。前述のように、万が一爆発すれば大惨事どころの騒ぎではない。

 

『……任せる』

 

 そう言ったのは北斗だった。アヴァンのコスモならまだしも、遠距離・制圧戦を得意とする彼のフィアネスは施設内での格闘戦に向いていない。とはいえやって出来ないことではないし、北斗自身もやれる確信は持っていた。

だがここで外からの増援を阻止することが最重要であり、敵対関係であるユキとランファたちを組ませることは得策ではない。

 そして何より、

 

『君の腕は知っている。頼む』

 

 ユキの操縦技術が極めて高いものだと知っているからこそ、この決断は出来るのだ。

 

『え、ちょっと!? いいんですか、北斗さ―――――』

『うん! ユキちゃん、皆をよろしくね!』

 

 抗議するランファを隅に押しやってミルフィーユが明るく頷いた。敵と味方という区分と、友人という関係を切り離して考えているのだろう。だからこそ、まだアヴァンたちを信じられるのかもしれない。

 

「ふふっ。悪いようにはしないよ、ミルフィーさん」

 

 一瞬だけ笑って見せると、ユキは機体を整備班用の通路へ滑り込ませた。大型の機材や資材を、巨大な隔壁を開閉せずに小型艇で牽引・運搬するための通路だ。戦艦などは無論通れないが、RCSEMぐらいのサイズならある程度の余裕を持って進入できる広さはある。

 一方のランファたちも奥へと消えていったRCSを見送る間などなく、徒党を組んで迫る巡洋艦の群れと相対していた。もはやいくつかの疑問を追及する暇などない。

 

 今は信じて、戦う。

 

 様々な憶測が脳裏を過ぎるランファにとって、それが唯一出来ることだった。

 

 

 

 

「第六ゲート、耐久強度半減! あと五分以内に突破されます!」

「第二ゲートから侵入した敵兵士は、合流したシュトーレン大尉が迎撃中!」

「シュトーレンは第二ゲートの安全を確保次第、エルシオールへ帰投するよう伝えろ!」

 

 遠くから聞こえてくる銃撃音、駆動音、破砕音。それらは徐々にその大きさを増してきていた。間違いなく敵はすぐそこまで来ようとしている。敵兵士がここ――――零番ハンガーへなだれ込み、自分達を蹂躙するのも時間の問題だ。

 シヴァはもう一度、それの状態を確認した。

 すでに最終調整の段階まで進んでいたため、その姿はほぼ完成しているといっていい。

 

「あとは……」

 

 これをどうやってエルシオールまで運ぶか。

 ドッグまで直通の機材搬出用エレベーターさえ使えれば何とかなるのだが、これは突入部隊の侵攻を阻止するために充填封鎖の真っ最中だ。今すぐの復旧は無理だろう。

 せめてパイロットが来てくれれば、何とかなるのだが……

 

 

 

 一方、そのパイロットは後ろの守りをフォルテに任せ、単身でアーカイブ・テリトリーの最深部を目指していた。広大な施設を進む彼の装備品にオートマップの類はない。だが彼は迷うことなく正しい道を選び続けていた。

 

 

タクトさん

 

 

 脳裏に反響する声のする方へ、根拠を超越した直感でタクトはそれを道標に走り続ける。近づけば近づくほど声は激痛を伴うほどの存在感を以って彼の意識を圧迫する。

 痛い。

 苦しい。

 そして何より、その全てが理由も無く愛しい。

 放したくない。

 抱きしめていたい。

 押さえきれない衝動が彼を突き動かす。十を超える隔壁を潜り抜けたその先で、ついにタクトはそれと対峙した。

 

「はぁっ……はぁっ!」

 

 手前に広がる、エルシオールの艦首格納庫ほどの面積の作業スペース。その最奥から伸びる一本のタラップ……そして眼前にそびえ立つ、見覚えのある白銀の巨神。

 

「これ、は……っ!」

 

 タクトは瞬時に理解した。

 これはギャラクシーだ。

 各部に差異はあれど、この存在感は間違いなく自分と共に戦ってきたあの巨人なのだと受け入れる。

 

「来おったか」

「ルフト先生!?」

 

 作業スペースに続く階段から駆け上がってきた恩師に驚きの声を上げる。だがルフトはそんなことは気にも留めず、タクトを奥へ案内した。

 

「お前さんはアレに乗るんじゃ」

「ギャラクシー、にですか」

「うむ。準備も整っておる」

 

 機体へ続くタラップの前まで来ると、ルフトは振り返る。タクトも同じように背後へ向くと、

 

「シャ、シャトヤーン様!」

 

 悲しみと喜びを湛える月の聖母の姿がそこにあった。

 

「よく来てくれました。マイヤーズ」

「自分は……務めを果たしに来ただけです」

「務め」

「はい。ヴァニラと約束したんです、生きると」

「そうでしたか……気をつけて」

「ありがとうございます」

 

 微笑む聖母に一礼し、タクトはそのコックピットへと駆け出した。直後ズズン、と背後から衝撃が響く。振り返り見れば最後の守りの隔壁が破られていた。

 

「うろたえるな! 行け、マイヤーズ!」

 

 そんなタクトを一喝するのは、シヴァだった。纏った衣服はボロボロになり、額からは軽度ではあるが出血もあった。だが彼女は銃を持ち、他の衛兵を率いて侵入してくる兵士達と銃撃戦を続けている。

 

「陛下……!」

 

 戻りたいという気持ちを押さえ込み、タクトはコックピットへ滑り込んだ。レイアウトは前のギャラクシーとは殆ど変わらない。唯一の違いは、複座であることぐらいか。

 

(ヴァニラも、乗せるつもりだったのか?)

 

 しかし今追及するべき疑問はそれではない。

 機体制御用のシステムを立ち上げ、状態をチェックする。まったく新しいバージョンではあったが、前のギャラクシーの設定を明らかに引き継いだセッティングになっていた。しかも機体はすでに起動状態にあり、いつでも発進が可能だった。

いくらエルシオールが接近していたとはいえ、ここに来る人間が自分とは限らないのだ。だが即出撃可能な状態といい、OSの設定といい、これは紛れもなく自分が来ることを想定している。

 ズズン、と再び大きな衝撃。視界をそちらに向けると、

 

「もう来たのか!?」

 

 侵入してきた歩兵部隊にシヴァたちが銃撃を加えて押し返す。だがそれとていつまで持ち堪えられるだろうか。

 

『我らに構うな!』

 

 再びの喝に、タクトの狼狽が止まる。

 

『この程度の窮地、女皇たる私が切り抜けられぬと思ったか!』

「し、しかし!」

『私は往けと言ったぞ、マイヤーズ!』

「ですが……っっ!」

 

 これでは彼女達は死に行くようなものだ。向こうは正規軍。不十分な装備、訓練、戦力でどうにかなる相手ではないのだ。

 

『案ずるな』

「!」

『私とて、アヴァンの横っ面を引っ叩くまで死ぬつもりはない』

「………」

『ならばさっさと往ってこの戦いを終わらせ、そしてあの馬鹿を連れ戻せ。いいな?』

 

 ああ、とタクトは理解した。

 彼女もまた自分のすべきことを認識し、行動している。その結果がどうなろうとも、自分の信じた道を歩むことを止めなかった。

 

「………陛下」

『なんだ?』

「また、後で」

『うむ』

 

 白銀の機体が一瞬、屈みこむ。そして次の瞬間には、天井の発進口へ大きく跳躍していた。音も揺れもなく、静謐の中に激動を秘めた、刹那の出撃であった。

 

 

 

 

 銃撃は止まない。

 エルシオールへ続く唯一の侵入経路である艦首格納庫を護る彼らの疲労は、もはやピークに達していた。倒しても湧いて出てくるアンドロイド兵。そして前衛を陽動に別ルートから侵入を試みようとする特殊部隊。

 すでにエルシオールの歩兵戦力は二手に別れ、敵の挟撃作戦を阻止すべく行動していたが、押し切られるのは時間の問題だった。実際、別働隊にかく乱され、レスターたちはついに艦首格納庫を放棄し後退せざるを得なくなったのだから。

 

「弾薬は、あと、どれだけだ?」

「これが最後になります」

 

 そう言ってライフルのマガジンをレスターに手渡すのは、ヴァニラ親衛隊のリーダーだった。アルモやオペレーターたちも武装はしていたが、彼女たちは今、艦の機能を停止させるハッキングへの対処に追われている。

 

「やれるだけの事をするだけだ」

「ええ」

「このライフルは君が使え」

「え?」

 

 その時、ついにブリッジの扉が破られた。中へなだれ込んでくるアンドロイド兵を銃撃で押し返そうとする中、レスターはあろう事かその只中へ単身躍り出た。

 

「シィィィィッ!」

 

 唸る拳が、アンドロイド兵の頭部を粉砕する。さらに二撃目が胴部をかち割り、人形兵はその場に崩れ落ちた。

 

「呆けるな! 援護射撃は続けろ!」

『りょ、了解!』

 

 背後から迫る別の兵士に振り向きざまの回し蹴りを叩き込み、さらに左右から迫るアンドロイドに向かって投げ飛ばす。バランスを崩したところへ正確な右ストレートで頭部を砕けば、相手は沈黙する以外ない。

 

「動かないでっ!」

 

 少女の叫びが届く刹那、回避の予備動作に入っていたレスターはその身を強張らせ、動きを止める。そして次の瞬間、

 

バシャッ!

 

 レスターの背後でライフル弾に頭蓋を貫通された兵士が、脳漿を撒き散らして倒れ込んだ。

 

「助かったぞ、烏丸少尉」

「それより次が来ます!」

 

 ブリッジの後方に陣取ったちとせは、フォルテから借り受けたSDV『ドラグノフ』狙撃銃を構え直した。オートマチック機構を取り入れ、狙撃銃でありながら連射が可能なSDVは遠距離からの面制圧さえ可能とする。

 ガン!

 

 先頭の一体が股関節を潰されて倒れる。

 

 ガン!

 

 二体目が胸部を破壊されて、辺りに電子部品を撒き散らした。

 

 ガン!

 

 続く三体目と四体目はまとめて頭部を撃ち抜かれ機能を停止する。

 これほどの狙撃能力とは、シャープシューターのパイロットを務めるだけのことはある。

 

「さすがだなっ!」

「それほどでもないですよっ!」

 

 だがそれも限界だった。

 ついにアルモたちの攻性防壁が押し切られ、ハッキングがエルシオールの機能の殆どをダウンさせてしまった。照明が消え、それを勝機とばかりに敵兵が一気に突入してくる。

 そこから完全包囲まで数秒足らずだった。あらゆる方向から銃口を向けられ、レスターたちは抵抗する術を奪われてしまったのだ。

 

「くっ……」

「無駄な抵抗はやめるのだな。レスター・クールダラス中佐」

 

 アンドロイドの群れの奥から現れる老将軍、ティティガ・エルドゥルが告げた。

 

「エルドゥル……総司令!?」

「諦めろ。包囲は完全だ。そして間もなく白き月の制圧も完了する」

 

 淡々と、彼は絶望という結末を言い放つ。

 

「そしてリフレジェント・クリスタルの全てを手に入れ、我々エルドゥル家がこの銀河の頂点に立つのだ」

「それが目的か」

 

 はらわたが煮えくり返るのを感じながら、レスターがティティガを睨みつける。

 

「優れた国家とは、優れた支配者が頂点に立つことで誕生するのだ。そして支配を永久のものとする力が必要なのだよ」

「貴様……」

「吼えるな。私はお前のような下等民と喋っている暇はない」

 

 次の瞬間、ティティガの拳銃が火を噴いていた。眼前で飛び散るマズルフラッシュを他人事のように見つめながら、

 

「ぐっ―――――」

 

 レスターはブリッジの床に倒れ伏した。見る見るうちに床を鮮血が汚していく。

 

「私はこれで失礼する。しっかり始末しておけ」

 

 アンドロイド兵の一体にそう告げ、ティティガはブリッジを去っていった。

 

「艦長!」

 

 すかさずアルモがレスターに駆け寄り、その体を揺すり起こす。だがすでに彼の意識はない。呼吸こそしているものの、あまりに弱々しい息遣いが最悪の結末を予感させる。

 

「艦長、しっかりしてください! ねえ、返事をして! レスターっ!」

 

 アルモの呼びかけも虚しく、出血は止まらない。そして無情な現実は終わらない。

 

 

 

 私は見る。

 私は聞く。

 私は触れる。

 そして私は知る。

 

――――カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ

 時は流れ、されど思いは閉ざされる。魂の牢獄は今日も憤怒と憎悪で満ちている。とぐろを巻いて唸る蛇は、いつかその身さえ喰らい尽くすだろう。

 生者など瞬く間に発狂してしまえる世界で、亡者の狂信が吹き荒ぶ荒野で。少年は狂ったように自身を呪い、近づく全てをなぎ倒し、青く碧く蒼く染まっていった。

 愛した友たちが朽ち果てようと、

殺してくれ

 愛した女たちが朽ち果てようと、

消してくれ

 自身の全てが朽ち果てようと、

終わりにしてくれ

 

死を許されない少年の罪は永久に朽ち果てぬ。

 

 

 

 

――――カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ、カチカチ

 気付けばそこはどこかの教会の聖堂。陽光を湛えるステンドグラスを背に少年は語り続ける。果てしなく並ぶ長椅子の一つに腰掛け、私は少年の大仰な叫びを聞いていた。

 

 神の御業成す大釜。

 万理を紐解く大聖典。

 常世に光り輝く大結晶。

 呼び名は幾つあれど、それらはすべて『これ』――――リフレジェント・クリスタルを指す偽装にして装飾に過ぎない。しかし『これ』の本質を知る者はこの宇宙にいったいどれ程居ようか。

 数多の伝承に斯くありき。

 曰く、『これ』は無限の力を生み出す。

 曰く、『これ』はあらゆる知識の宝庫。

 曰く、『これ』は不死をもたらす妙薬。

 

 けれど私は疑う。これらの内に真実はあるのだろうか。様々に観測された事実ではあったとしても、それが必ず『これ』の本質を語るわけではないのだから。

 ならば、と少年は頭を振った。

 

 曰く、『これ』は滅亡を呼ぶ災いの徴。

 曰く、『これ』は再生を導く救世の書。

 

 確かにこれなら、より本質的な定義を成しているかもしれない。夢うつつに私がつぶやくと、少年はけれど、とまた頭を振った。

 

 曰く、『これ』は―――――

 

 

 

 

「うう……っ?」

 

 明滅する視界に頭痛を覚えながらタクトは首を左右に振った。記憶が混乱している。自分はどうして、こんなところに……

 見慣れたコックピットを見回して状況を確認する。

 

(気絶していたのか?)

 

 そうだ。シヴァたちからこの機体を預かって、出撃したことまでは覚えている。どうやら発進時に生じた加速のGに耐えられず意識を失ったらしい。

 とにかくまずはこの機体に慣れなければ。このままではエルシオールを助けに行くこともままならない。タクトは手早くコンソールを叩き、マニュアルを手元のディスプレイに表示させた。

 

「型式番号、EMX01GA?……ギャラクシーとは、やっぱり違うのか?」

 

 そして続く機体の詳細なデータを見たタクトを驚愕という衝撃が襲った。

 ジェネレーター出力6万キロワット以上。

 最大連続稼働時間1年以上。

 最高飛行速度は亜光速と推定。

 グラビティ・スタピライズド・スラスターユニット。

 エネルギー粒子流体膜制御システム搭載etc, etc…

 

「なんなんだ、これは……」

 

 オーバーテクノロジーという域を遥かに逸脱したスペックに寒気さえ覚える。自分に果たしてこれを使いこなすことが出来るだろうか? 発進しただけで搭乗者の意識を奪うほどなのに……

 しかし状況は彼に迷う時間を与えてくれはしない。レーダーを見れば交戦を続ける艦艇の殆どが、エルシオールの後を追って白き月の内部へ突入を始めていた。先ほどまで戦っていたはずの二機のRCSの姿も見当たらない。

 防衛ラインの崩壊。

 殺到する敵。

 蹂躙される戦場――――――!

 

(くそっ)

 

 最悪の結末が脳裏をよぎる。

 このままでは自分達は、シヴァを奪還するどころか全滅してしまう。あの男に追いつくことも、真実を確かめることも出来ないまま終わってしまう。

 

「くそ……ぉっ!」

 

 今まで何度も鉢合わせてきた、そして跳ね返してきた絶望感がいよいよタクトの全身を支配し始めた。手が小刻みに震える。胸が痛いほど脈打つ。あらゆる力が彼から失われていく。

 

 もう終わりなのか?

 

 何も出来ないまま終わるのか?

 

 また、大切なモノを守れないまま(・・・・・・・・・・・・)……?

 

「――――――――!?」

 

 渦巻いていたイメージが弾ける。

 戦い続ける仲間達。

 傷つき倒れる親友。

 

「あ、あ―――――――」

 

 失われる命。

 大切な命。

 そう、大切な……ヴァニラの命。

 

「あ、あああああああああああっぅっっ!」

 

 そうだ。思い出せ、自分は何のために戻ってきたのか。

 これ以上失わないために。

 失った命に報いるために。

 

「ぅぅぅぅうぅぅうううっ………」

 

 恐れるな。

 畏れるな。

 怖れるな。

 愛しい少女との約束を果たすまで、もう決して立ち止まりはしない……!

 

「うおおおおおおおおおおおっっっっ!」

 

 躊躇なくスロットルを開くと、機体は巨大な咆哮を上げて応えた。骨格が軋み、膨大な量のエネルギーが全身を駆け巡っていく。許容量を超えて溢れ出したエネルギーは粒子となってコックピットを満たし、宇宙を照らし広がっていく。

 その輝きは黄金。

 何者にも屈せず、衰えず、色褪せない至高の波動が、タクトに気付き包囲を始めていたヘクトールたちを怯ませる。

 まさに覚醒の時。

 人智の結晶たる白銀の巨人が、ついにその双眸に真の輝きを宿す。胸部のクリスタル型センサーに無数の光が走査し、あらゆる敵と退治するかの様に上体を仰け反らせた。

 

「これが……」

 

 そう、これこそが新たな英雄の器。

あらゆる脅威から、すべての外敵から、絶対的な宿命からさえも、この銀河に生きるかけがえのない全てを守護する天使の長。

 

EMX01GA……Galaxy Angelです』

「えっ!?」

 

 操縦桿を握る自分の手に、不意に添えられる白く小さな指。見れば操縦席で暴れまわっていた金色の粒子が収束し、一つの形を成してゆくではないか。触れる指は腕へ、体へ……そしてタクトの頬を優しく撫でた。

 優しさを象徴する、つぶらな瞳。

 何度も触れた、白磁の肌。

 金色なれど、滑らかな絹糸のような髪。

 

『……タクト、さん?』

 

 何より愛しさに満ちた、その息吹。

 聞き違える事のない、その声色。

 これは決して幻覚でも幻でもない、確かな真実。金色の輝きを纏った少女はいつもの笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 侵攻部隊をやっと押し返したかと思えば、シヴァたちは新たな脅威と直面していた。純白の装甲を纏う巨人、ヘクトールである。

 こちらも対装甲ロケットなどで反撃を試みるが、他に展開する陸戦部隊の妨害を受けて上手くいかない。

 炸裂する榴弾。相次ぐ爆発に弾き飛ばされてシヴァは床を転がった。

 

「陛下!」

 

 すかさずルフトがフォローに入る。シャトヤーンも何人かの護衛と共にシヴァの側まで駆け寄ってきた。

 

「案ずるな……この程度!」

 

口の端に滲む血を飲み込み、痛む体を起こして銃を構える。

 

「皇国の主たるものが、なんとも無様なものだな」

「エルドゥル……!」

 

 EMと兵士達に護られながら現れたのはティティガ・エルドゥル、この事態の原因を作り出した男だ。

 

「そこまでして皇国を自分のものにしたいか!」

「お前たち皇族に任せてはおけんだけだ。地獄でトランスバールの未来を指をくわえて見ているがいい」

 

 ジャキッ

 

 周囲の兵士達が一斉に銃を構える。

 

「だがその前に、お前には白き月のリフレジェント・クリスタルの在り処を教えてもらわねばな」

「誰が貴様に教えるか」

「では仕方がないな。兵士諸君、此度の反乱の首謀者を射殺せよ」

 

 よくもまあ、ぬけぬけとそんなことが言えるものだ。

 内心で毒づきながら、シヴァは成す術がないことに歯軋りした。こんなところで終わりたくはない。だが―――――

 

「死ね」

「断る」

 

 言葉が重なる。自分ではない。

 一人はティティガだ。では、もう一人は……?

 自分に向かって降り注ぐ銃弾の雨を見つめながら、シヴァはそれが如何なる理を以って弾き返されているのか(・・・・・・・・・・)理解できなかった。

 

「やあやあ、総司令殿。お言葉通りそのお命、頂きに参りました」

 

 不敵な笑みを浮かべ、

 纏った黒衣のコートを翻し、

変わらず輝く蒼髪を靡かせて、

 ―――――アヴァン・ルースはシヴァの眼前に降り立った。

 

「お、お前はっ!」

 

 言葉は続かない。炸裂する爆炎が視界を消し飛ばす。一瞬、天地が分からなくなってその場から動くことすらままならない。ギギギ、という倒壊音を遠くに聞きながらシヴァはその瞳を開いた。

 ハンガーの惨状は酷いものだった。殆どの壁は崩れかかっており、内装が露出している。倒れたヘクトールは頭から床に突っ込み、大穴を穿っていた。

 周りでは燃え続ける炎の中で、無数の死体が転がっている。もはや敵も味方も関係なかった。シャトヤーンもルフトも自分の後ろで倒れていた。気を失っているだけだろう。

 だが、今のシヴァは目の前の男を見つめるだけで精一杯だった。

 

「アヴァン、なぜ」

 

 そこから先は言葉にならない。

 どうして裏切ったのか。

 どうして助けに来たのか。

 どうして、何も言わずに……

 

「その力さえあればぁっ!」

 

 叫んだのはティティガだ。崩れた壁の瓦礫から這い出すと、シヴァの傍らに降り立った青年に銃口を向けた。

 

「その力があれば、私は全てを支配できる。民衆は平伏し、家臣は跪き、平穏と名誉が永遠に約束される……」

 

 さあ、と。

 額から血を流し、もはや息も絶え絶えになりながら、理想にとり憑かれた老人は手を伸ばす。

 自分の欲した全てを。

 自分の願った全てを。

 

「さあ、私に力を……リフレジェント・クリスタルを……」

 

 それこそが彼の存在意義。飽くことなき支配への執着だけが傷ついた体を突き動かしていた。

 

「わた―――――――」

 

 叫び終わる前に、ティティガの体はアヴァンの掌から放たれた衝撃波に弾き飛ばされる。そうして命の全てを使い尽くして、尽き果てぬ幻想に『支配』されたエルドゥル家最後の家長は事切れた。その遺体はたちまち業火に飲み込まれ、焼かれていく。皇国宇宙軍という一大組織のトップとしては余りにあっけない幕切れであった。

 だがそれで戦闘が即座に停止するわけではない。未だ稼動する無数のアンドロイド兵は、自分達を殺すべくこちらに迫ってきていた。

 

「あ、アヴァン……?」

「大丈夫だ」

 

 見上げる女皇を、青年は見下ろすことはない。

 舞い散る火の粉からシヴァを守るように漆黒の外套を広げながら、アヴァンは余裕の笑みを崩さなかった。彼に倣ってシヴァも視線をアンドロイド兵の群れへ向けると、

 

『ギギ……ビッ……』

『プログラム……損害……侵入……』

『ガガ………ジ……』

 

 ガシャン、ガシャン、と次々にアンドロイドたちは壊れたおもちゃの兵隊のように倒れていく。まったく状況が理解できないシヴァをよそに、

 

「彼女が、目覚めたか」

 

 アヴァンは安堵するかのように呟いていた。

 

 

 

 異変はミントたちの目の前でも起こっていた。

 突如として制御を失い、次々に壁に激突する敵艦たちを、彼女達は呆然と眺めているしかない。

 

『いったい何が、起きたっていうの……?』

 

 混乱するランファを、北斗が静かに止めた。

 

『何者かが敵兵器の制御システムにハッキングし、行動不能にしている』

 

 だが彼でもその犯人を特定することは出来ないらしい。モニターの向こうでその表情が曇っていた。

 だが何より、

 

「これは……」

 

 すべての通信回線から聞こえてくる、柔らかな歌声。春の森に差し込む暖かな陽光を思わせる、陽だまりのような優しい歌。

 その声はエンジェル隊にとっては懐かしく、

 

「どうして……?」

 

 そしてもう失われたはずの歌声である。

 

 

 ほどなく歌が戦場を満たし、あらゆる戦闘が停止する頃。

 ようやくユキはエルシオールのブリッジへ辿り着いた。その背後には破壊され尽くしたアンドロイド兵の残骸が無数に散らばっている。片手には拳銃を握り締め、もはや地獄絵図と化してしまったであろうそこへ足を踏み入れる。

 

「あ………」

『あ………』

 

 事はすでに終わっていた。アンドロイド兵はすべてシステムを狂わされて沈黙している。中にいた人間に死者は一人もいないようだ。

 

 ただ一人、

 

「……お邪魔、しました」

 

 愛する女の膝の上で傷ついた体を休め、安らかな寝息を立てる戦士がいた。周囲にはキラキラと舞い散る黄金の粒子。恐らくこれはナノマシンで、彼の傷を癒したのは間違いないだろう。

 ユキは軽く敬礼をすると、ゆっくりと踵を返した。

 

 

 

 

 白き月を包囲するように展開していた総司令部直属艦隊は、そのすべての機能を彼の者に制止させられていた。ティティガの息のかかった――――――否、エルドゥル家に仕える武人達の軍団はもはや、成す術もなく敗北を認めるしかなかった。

 生命維持装置を除くあらゆる戦闘機能を無力化されてしまったのだから。

 新たに出現したそれに向かっていたエンブレムモジュール・ヘクトールもまた同様に機体の制御を奪われ、パイロット達はその神々しさに心を奪われていた。

 畏怖、畏敬、だがそのいずれでもない感情。

 それが自分達を護り、導く存在であることを魂が受け入れているのだ。

 

 

 

 

 金色の輝きに包まれながら二人は再会を果たしていた。

 微笑む少女を力いっぱい抱きしめ、タクトは問うように呟く。

 

「本当に、生きて……」

 

 その温もりを確かに感じながら、けれど未だ信じられない。なにせ彼女は自分の目の前で息絶えたのだから。どうして生きていられるのか、到底信じられなかった。

 

『これが……私を、導いてくれました』

「え? これって」

『ランファさんのお守りです』

 

 腕の中で少女が差し出したもの、それは彼女の誕生日にランファがプレゼントしたお守りだった。あの時は、結ばれた二人に今さら恋愛成就など、と笑っていた。

そのお守りも役目を果たしたためだろう、真っ二つに割れてしまっていた。

 

『もう一度、叶えてくれました』

「……………」

『私と、タクトさんの恋を』

 

 そう言って少女はもう一度、心の底から嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、ほんとうに?」

『はい。また、貴方の傍に』

 

 居させて下さい、と続ける少女の唇を、タクトは優しく奪っていた。もう込み上げる愛しさを押さえ切れなかった。

 さらに難解なものとなったアヴァン・ルースの目的。

 想像以上に深かった皇国軍の暗部。

 そして仲間達の安否。

 だがそれらの疑念を押し退けて、二人は互いの温もりを確かめ合う。それさえあれば、例えこの先に何が待っていてもきっと大丈夫だから……

 

「これからはずっと……もうずっと一緒だ」

『はい』

「放さないからな」

『はい』

「愛してるよ、ヴァニラ」

『私もです。タクトさん……愛してます』

 

 

 

 

 その日、白き月の戦闘に参加したあらゆる兵士達は、その姿を見たという。ある者は艦橋に立ち、ある者は宇宙を漂いながら。

 月の頂点に座して、

 月を包み込むように十二の翼を広げ、

 月を癒すかのように柔らかな光を放つ、

 

「天使の光臨とは、まさにこの事だな……」

 

 ユウのRCSのマニピュレーターに立ちながら、アヴァンもまた見つめていた。

 宇宙に燦然と輝く、銀河天使の姿を………




筆者たちの必死な解説コーナー(第三回・喜びのラインダンス編)

 

ゆきっぷう「第三章三節……終わったぁぁぁぁぁぁ……」

 

タハ乱暴「『Heroes of Heart』……おわんねぇぇぇぇぇぇ……」

 

レスター「身内ネタはよさんかっ!!!」

 

(レスターの右ストレートが唸る)

 

ゆきっぷう「はぎょっ!?」

 

タハ乱暴「ぐぼぉわぁあッ!?」

 

北斗「……何で、ゆきっぷうまで殴られねばならなかったんだ?」

 

アヴァン「……勢いだろ?」

 

ゆきっぷう「と、ともかく今回でようやく最終決戦への扉を開く準備が出来たということで。まずは恒例の機体解説から」

 

タハ乱暴「ところでゆきっぷう、何で今回俺も出演してるん? 俺の出番はもう終わったんじゃないんかい?」

 

ゆきっぷう「It’s 一蓮托生。OK?

 

タハ乱暴「I can’t understand English. 我日本語理解不能」

 

ゆきっぷう「いや、お前さ。自分の息子達の解説もしないうちに撤収する気だったのか?」

 

タハ乱暴「最期(誤字に非ず)まで面倒見ろってか? まぁ、いいけどさ。……んで、今回はどの機体の解説をやるんだ? あのアンドロイド兵士か?」

 

ゆきっぷう「北斗ー! お前の父親が(ありもしない)養育義務を放棄しようとしているぞー!」

 

北斗「自分の尻ぐらい自分で拭ける分には歳いっているつもりなんだがなぁ…。まぁ、とりあえず、なんとなくではあるが殴っておこう」

 

“パキューン!”(明らかに殴った擬音ではない)

 

アヴァン「北斗……解説役を二人まとめて射殺して、お前は何がしたいんだ?」

 

(アヴァンの足元で息絶えるゆきっぷうとタハ乱暴)

 

北斗「大丈夫だ。ほれ、見てみろ。早くも再生を開始している」

 

タハ乱暴「お、おのれ北斗ぉぉぉぉ……お前なんて今後出番なしだ……ぐふぅ」

 

北斗「……解説、やるか?」

 

アヴァン「こうなるだろうと思って、設計図面をパクっておいた。終わる頃には治ってるだろうしな」

 

ゆきっぷう「俺に、再生能力はないぞ?………ぷぎゅう」

 

北斗「……さて、今回解説するのはこの機体だ」



アヴァン「これがタクトの新たなマシィィィッンッ!!! EMX01GA、ギャラクシーエンジェルだっっ!」

 

北斗「ついに出たか…真の主人公機ギャラクシーエンジェル……原作のタイトルをそのまま流用することによってもはや撃墜率は限りなく0に……」

 

アンス「そんな設定はありません」

 

北斗「なんだ、ないのか」

 

アンス「原作タイトルと被せることでそれなりの人気上昇を狙っていたようですが……撃墜率の変動はどちらかというとヴァニラの方で……」

 

アヴァン「なぁ、お二人さん……そろそろ、先進めてもいいかな?」

 

北斗「アヴァン……そこはかとなく腰が低いのは何故だ?」

 

ユキ・ユキ「「もう尻に敷かれてるから」」

 

アヴァン「うるさいっ! だまれっ!」

 

北斗「夫婦喧嘩はさておいて。では、機体の解説に入ろうか。EMX01GA、本章におけるトリであり、今後のタクトの愛機となる機体だ。まずは詳細なスペックなどを語る前に、本機開発の経緯から説明しよう」

 

クレータ(目が輝いている)「この機体はギャラクシーの試験運用開始前から建造が始まっており、ギャラクシー以上のスペックを獲得した儀礼用EMを目標としていました」

 

北斗「儀礼用EM?」

 

クレータ(目が輝いている)「はい。本来ギャラクシーは低迷を続けている皇国の威信回復のために用意されたシンボルです。マイヤーズ大佐との相乗効果により、本編では描写はありませんでしたが、ヴァル・ファスク戦役後には全盛期の八割まで支持率は回復しています」

 

タハ乱暴(再生率:43%)「第一次世界大戦、ドイツの撃墜王リヒトホーヘンは、搭乗する自分のフォッカー戦闘機、率いる部下達の機体すべてを赤く塗装し、敵の戦意を煽ったことで『赤い男爵』と呼ばれたが、リヒトホーヘンの赤い部隊の存在感は、敵だけでなく味方、前線の部隊や将兵だけでなく一般の国民にも強い影響を与えた。リヒトホーヘンの部隊が戦果を挙げるその都度、国民は沸き立ち、未来への希望と戦争への勇気を分け与えられた。それと同じことが、ギャラクシーに乗る皇国の英雄、タクト・マイヤーズにも求められた」

 

クレータ(目が輝いている)「そして欠陥兵器であったギャラクシーの抱える問題の全てをクリアーし、現時点での皇国軍において最新鋭にして最強、究極の兵器を目指して開発されました。ただ開発への道のりは前途多難で挫折する日々が……」

 

ゆきっぷう(復元率:0.2%)「最新を通り越した未知の技術を導入しようとしていたからな。なにせタクトたちが乗り込んでくる直前までテスト起動すらままならなかったほど。その動力源が良い例だ」

 

北斗「旧陸軍の三式戦『飛燕』と同じ轍を踏んだわけだ。もっとも、兵器開発は苦難と挫折と、それを克服する過程でもあるわけだから、ある意味どうしようもないといえば、どうしようもない。とはいえ、開発には白き月の技術スタッフが総動員され、また、皇族からも表沙汰に出来ない予算が投入され……紆余曲折の末、本機はようやく完成した。それが……」

 

アヴァン「タクトたちが白き月に乗り込む三日前だ……」

 

クレータ(目が燃えている)「ホントギリギリだったんですよぅ。とまあ、こんな過程を経て完成したギャラクシーエンジェルなんですがぁ……」

 

アヴァン「班長、目が怖いぞ?」

 

北斗「技術屋の性なのだろう……気にしてはいかん」

 

クレータ(目からビームが出ている)「では新しく搭載された機能を紹介しますっ! まずはエネルギー粒子流体膜制御システムですっ! これは、これはぁぁぁっ――――――――あ」

 

プツッ……バタッ

 

アンス「頭に血が上りすぎましたね」

 

北斗「いや、単純に電池が切れただけだろう。では代わって俺が。ギャラクシーエンジェルの装甲材には主にエネルギー流体処理を施した超々エンゼル合金が使用されている。これは装甲表面に組み込まれた発振回路が極薄のエネルギー粒子流体膜を展開することで実弾・エネルギー兵器問わずにその軌道を逸らし、完全にシャットアウトすることが出来る装甲技術だ。エネルギー粒子流体膜の生成装置がフル・パワーで稼動する際には機体が金色に輝くらしい……というのは、ゆきっぷうの書いた設計図面によるところだ。

ただ、粒子流体膜の増産速度に若干の問題があり、最大で連続七秒間しか効果を発揮することが出来ない。逆に言えば七秒間ならば戦艦の主砲クラスのエネルギー照射にも耐えられるということでもある。そして通常、戦闘中に同一箇所に攻撃が命中する確率はかなり低い。またこのエネルギー粒子流体膜は高機動時の際に機体の残像を残す効果があり、いわゆる質量を持った残像が発生するようにもなっている。ゆきっぷうの設計図面によれば、通称『エンジェル・ブリッツ』とのことだ。……天使の電撃か、なにやら薄ら寒いものを覚える、恐ろしい名前だな」

 

アヴァン「なんでさ?」

 

北斗「天使の電撃……雷は、神を咽び泣かせるから、『かみなり』なんだぞ? もう、反逆する気満々じゃないか? 反抗期まっさかりだ」

 

アヴァン「お前の機体にも付いてるだろうに……。

 次は推進系の話だ。機体各部には、紋章機に搭載されていたグラビティ・スタピライザーを発展させた、グラビティ・スタピライズド・スラスター(通称GSS)を持っており高い運動性と機動性を誇っている。もともとグラビティ・スタビライザーは機体の運動ベクトルを重力制御によって、その進行方向の操作を容易にする『推進補助装置』で、宇宙船や宇宙艇にとってまさに革新的な推進技術だった。しかし操縦系との連動が難しく、現在の技術では事実上再現不可能とされていた。

 従来のスタピライザーは推進器とは独立した機構を持っていた。GSSではそれを完全に一体化し、『重力制御による推進装置』まで昇華することでシステムを完成の域にまで持っていくことに成功している」

 

アンス「こんな馬鹿みたいな仕様だなんて……開発者の苦労が手に取るようにわかるわ……」

 

タハ乱暴(再生率:68%)「ぜぇぜぇぜぇぜぇ……」

 

ゆきっぷう(復元率:0.04%)「aoidaksrmpajfcmslpfojspaph……」

 

北斗「……ほうっておこう。さて次は武装についての説明だ。――と、ここで普通なら機体解説の際に何よりも優先して説明するべきはエンジンではないのか……という方々は、安心してほしい。それにはちゃんと理由があるし、解説も後でする。さて、ではこのゆきっぷうから預かった設計図面を……」

 

アヴァン「設計図面を……!?」

 

北斗「……」

 

アヴァン「……」

 

北斗「……」

 

アンス「……どうしました?」

 

北斗「……ない」

 

アヴァン・アンス「「What’s!?」」

 

北斗「いや……どこにも、書いていないんだ。ギャラクシーエンジェルの武装についての、記述が」

 

タハ乱暴(再生率:74%)「スパロボ的に言うと武装『格闘』だけってことさ♪」

 

ゆきっぷう(復元率:マイナス96%)「そもそも式典なんかで使う機体なのに、標準で一般兵装は搭載しないよ」

 

タハ乱暴(再生率:71%!?)「ただ、皇国のシンボルに死なれたら不味いから、だから機体が撃墜されないよう防御面は限りなく充実してるんだよ。エネルギー粒子流体膜制御装置は実際的な盾として、GSSは誰にも追いつくことの出来ない逃げ足として。……現実の兵器でいうと、SR71『ブラックバード』みたいなもんさ。結局あの機体、逃げ足の速さだけで今日まで撃墜機0だったわけだし」

 

アンス「ところで皆さん……特に作者と監修」

 

皆さん『はい?』

 

アンス「ヴァニラ復活について、何かコメントを」

 

北斗「……それについての謎解きは、次回まで持ち越しって話なんだがなぁ…。とりあえず、俺はまだ彼女とは会ってないわけだし……」

 

タハ乱暴(再生率:78%)「そもそも俺は監修だから、会うとしてもここでだけだし」

 

アヴァン「ノーコメント」

 

ゆきっぷう(復元率:94%)「ああ、それはだね。グレイ・イレ○ンがヴァニラの断末魔とカガ○スミカの脳波に反応して一種のクロノ・ドライブ反応を―――――――」

 

北斗「次回に持ち越しって言っておるだろうがぁッ!」

 

タハ乱暴(再生率:85%)「そうだぞ、ゆきっぷう。作者のお前が進行を滅茶苦茶にしてどうする? 北斗、こんな男にはお前の正義の鉄拳を……」

 

北斗「応! 喰らえィッ!! ホクッッッッッッッッッットォオ!!!」

 

“キラーン!”

 

(北斗の三白眼がギラリと光り、その左手が黄金に輝く)

 

北斗「ぷぁぁぁぁ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼んんんんんっっぅっちぃ!!!」

 

“パキューン! パキューン!”(明らかに鉄拳の擬音でないのが、2つ)

 

(ゆきっぷうとタハ乱暴は風になった)

 

アヴァン「というわけで第三回、筆者たちの必死な解説コーナー前編はこれにて終了です。小休止の後、後編をお楽しみください」

 

北斗「……というわけで、CMをどうぞ」

 


 暖かな陽光に刺激され、恭也はゆっくりと目を開けた。となりではシーツに包まったあられもない姿の忍が豪快なイビキを立てている。ここはいつもの屋敷ではない。木造の一軒家だ。というか山小屋に近い。

 ここはウミナリ村。雪山の中腹に位置するのどかな山村である。ここは温泉客がたまに訪れるほか、巨大なモンスターを狩猟するハンター達の拠点としても機能している。

 

「起きろ忍。なのはたちとの待ち合わせに遅れるぞ?」

「にゃあぁ……こんがり肉、もう一個……」

 

 恭也はベッドから降りると、手早くインナーを纏い、装備の点検を(・・・・・・)始めた。まず手に取ったのは老山龍とよばれる巨大龍の角で造られた二振りの小太刀である。状態を確認すると、恭也は迷わず眠っている忍の頭を蹴り飛ばした。

 

「あいったぁぁぁぁぁっ! 何するのよ、恭也!」

「お前、俺の小太刀に肉の脂まみれの手で触ったな……!?」

 

 うむ。それはさすがにマズイ。切れ味が落ちてしまうぞ。

 そして恭也が防具の収められた箱を開けようとしたところで、家のドアが勢いよく開け放たれた。

 

「恭ちゃーん! クエスト受注してきた……よー……」

 

 飛び込んできたMiyukichiは抜き放った火竜の短剣を(神速を発動させながら)恭也に向かって振り下ろした。短剣がまとう炎のオーラによって忍の髪の毛が縮れていく。

 

「何をするMiyukichi! お前は毎朝毎朝、イノシシ狩りなら独りで行け!」

「やだよ、やだやだ! そしたら恭ちゃん、絶対に忍さんと雪獅子とか狩りに行っちゃうんでしょ!?」

「ええい、それが目的か! Miyukichi!」

 

 たまらず恭也も脂まみれの双剣で押し返す。モンスターを狩る前に自分の妹(義理)の命を刈ってしまいそうな勢いだった。

 

 

 その頃、集会所では……

 

「おそいなー、お兄ちゃん」

「そうだね。何かあったのかな?」

 

 ここでも公認カップルに指定されていた、なのはとクロノの姿があった。

 

 とらいあんぐるハンター・ポータブル2nd

 

 いつか後悔する日が来る!



北斗「……結局あいつは何が主張したかったんだ?」

 

ティハ・ランボー「……さぁ?」

 

ゆきっぷう「では後編行きますよ〜」

 

アヴァン「何をする気だ?」

 

ゆきっぷう「オリキャラ解説第一弾! 改めてアンス・ネイバートの巻!」

 

アンス「何でですか!?」

 

北斗「普通なら、アヴァンを第一に解説してやるべきではないのか?」

 

ゆきっぷう「いや、やろうと思ったら悉くネタバレになるぞ。あいつのプロフィールは」

 

タハ乱暴「少なくとも次回まで待て、とのことだ。アヴァンだけでなく、ユウとユキも。あとウチの馬鹿息子と、犬耳になっちゃった純白のカラス君も……。いや、ツバメの方が適切かな? この場合」

 

ゆきっぷう「囲われちゃったからなぁ……うんうん」

 

北斗「お前がそうさせたんだろうがぁぁッ!」

 

アヴァン「で、で? 解説は?」

 

トゥアハ・乱暴「なんでお前がいちばん知りたがっているんだ? むしろ、お前がいちばん知っていなきゃいかんポジションのキャラクタだろうが」

 

アヴァン「え? それもそうか。じゃあ、早速。

 えほん。アンス・ネイバート、23歳(第三章開始時)、身長176センチ、体重……不明(に、しておかないと殺される)。白き月の技術研究士、エルシオール整備副班長を経て任官、エオニア反乱の後G Plan遂行責任者となる。EMXシリーズの基礎設計を担当した他、ヴァル・ファスク戦役においては決戦兵器の開発に尽力した技術者の鑑だ」

 

北斗「鑑?」

 

アヴァン「そうだ! 貴様には分かるまい、北斗! 夜な夜なドライバーを研ぐ彼女の姿ゲボォオオオッ!?」

 

アンス「余計なこと言わないで! これでは私が変態じゃないですか!」

 

タハ13(サーティン)ランボー「HAHAHAHAHA! この話に登場するオリキャラが、変態でなかった試しなんて……おっと、アンス、そんなドライバーの先端をこっちに向けるのはやめたまえ。僕達は互いに言葉を理解できる人間じゃないか。話せば分かる!」

 

北斗「逆にいえば、話さなければ分からないということで、それはつまり、相手に話す気がなければ会話は成立しないから、つまるところ……」

 

アヴァン「ドライバーは、どう足掻いても飛ぶ」

 

タハ乱暴「ぎゃっぴぃぃぃぃいいいいっっ!!!」

 

北斗「……進めよう。彼女の両親は傭兵で、幼少の頃に母は病死し、父は戦場で行方不明だそうだ。その後独力で機械工学を学び、白き月の巫女としてスカウトされたのは十八歳ごろのこと。

 周囲の環境にも恵まれ、以後は機械マニアとしての道を順風満帆に歩むことに……アンス、落ち着け、話せばわか――――――」

 

“カカカカカカカカッ”

 

アヴァン「さっき自分で言ったこと、忘れてるな。ちなみに性感帯は……まて、アンス、落ち着け、話せば―――――――」

 

 

 

……しばらくお待ちください。

 

 

 

北斗(顔中包帯まみれ)「……まったく、酷い目に遭った」

 

アヴァン(片腕と片足が無い)「とまあ、彼女は普段とは裏腹に極度の恥ずかしがりやなのでした。だから初めての時も……まて、アンス、これぐらいは許せ! 一応恋人だろ!? な、な、な――――――!?」

 

アンス「ま、まあ貴方がそう言うなら……少しぐらいはいいですけど……」

 

北斗「……見ての通り、惚れた相手に結構弱い辺り、意外と尽くすタイプの一面を持つのも、彼女の特徴だ。……性格の話が出たので、そろそろそちらの方面の解説も行なおう」

 

被害者O(ボイスチェンジャー加工済み)『アンスさんは技術屋らしく真面目で、探究心に溢れ、新しい技術も積極的に取り入れようとする、まさにアヴァンさんが言った通り、技術者の鑑みたいな人です。基本的に冷静で頭の回転の良い人ですが、↑を読んでいただければ分かるように、ちょっと短気で気性の荒い、アヴァンさん曰く「恥ずかしがりや」さん的な一面も持っています。技術者としてのアンスさんの姿勢にはバイクとして……ゲフンゲフン……もとい、人間として尊敬するべき面の多い人物でもあります。

……ただ、その嗜好が……すごく、個性的で……いわゆるフジョ――――ピー』

 

北斗「ア○トロー!? しっかりしろアウ○ロー!! くそぅ、いったい誰がこんなことを―――――!!」

 

タハ乱暴(北斗は無視して)「彼女の趣味嗜好は白き月の巫女になってから醸成されたという話がある。両親がともに傭兵だった彼女にとって、一般の娯楽はほぼ縁遠いものだった。そこに新しく放り込まれた白き月という環境……特に、クレータ班長との出会いは、彼女に大きな転機をもたらしたとのことだ。……技術者としても、腐じょ――――ぐはぁッ!」

 

(倒れ伏すタハ乱暴。けど、誰も心配しない)

 

アヴァン「そのため、一時期ゆきっぷう腐女子疑惑も浮上したぐらいだ。まあ、こんなものでいいか?」

 

北斗「もう少しだけ書いておこう。彼女は技術研究者としても優れた人物だが、それをまとめるチームの長としても優秀な人格者でもある。G Planの完遂に邁進していた頃の彼女を見ればそれは一目瞭然だろう。とても責任感の強い人物でもある。また、危険な代物と理解していながらタクトをギャラクシーに乗せた辺り、仕事至上主義な面もあるな。ただ、そのことについては彼女自身かなり悩んでいたことからも、単に冷血な人物ではないことが分かる。

 アヴァンが戻ってきてからは、ゆきっぷう曰く『乙女チック回路』が作動して凄まじいツンデレぶりを見せていた。上記の理由からずっと悩んでいたアンスが、自分の弱さをアヴァンの前で曝け出した瞬間、この物語の中における、真の意味での二人のロマンスが始まった。……ちなみにゆきっぷうは、あの辺りを書いていた時点で、初めてツンデレという言葉を知ったらしい」

 

ゆきっぷう「とまあ、こんな感じでこれからオリジナルキャラクターの紹介を続けていく予定……です。ではまたー!」

 

アヴァン「む、待て! 俺とアンスの赤裸々ライフの紹介が……」

 

アンス「しなくていいですっ!」





おおおお! ヴァニラの復活だよ!
美姫 「本当に良かったわね」
うんうん。本当に良かったよ。
美姫 「ヴァニラも復活して、これからどうなっていくのかしらね」
次回も待ってますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る